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相談中……。相談中……。
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公爵の領地はこの獣王のおわす都よりもしばし、北西に近いところにあるらしい。
(おや?)
なんとはなしに僕は眉を上げて、まじまじと鳩報告の書面を眺めていると、ローランパイセンが僕の様子を気にかけてきた。
「どうされました? リヒト様」
「んー、なんとなく聞き覚えのある地方名だな、
と思って」
「曲がりなりにも公爵領だからねえ~、
それなりに有名っしょ!」
なんという適当な反応。
僕は発言したことを後悔した。
「しかし初夜権、ねぇ」
「まー、華やかな都会とは別世界ですからねぇ、
田舎は」
「いくらなんでも田舎とひとくくりにするには、
うん、少し……気にはなるけど」
(都会、では処女権(初夜権)はないようなものだし)
あえていうなら僕が……というか、男だけど。
両方嗜む男ならばともかく、獣人でかつ童貞はそれほど多くはない。なぜなら、発情期があるからだ。かつ、さっさと愉しむ、のが当たり前の考え方である。僕の童貞話は腐れ縁の友人たちには散々に揶揄われ、両親や両親の友人たちにまで拾われていって……ネタにされまくっていたため、こう、改めて出てきた初夜権、に懐疑的にはなるというものである。
「……あー、なるほど」
少し、文面を読み込んでいくとカラクリが見えてきた。
鳩氏もうん、と僕の顔色をみて頷いている。格好はちゃんと服を着ているので寒そうではないのが幸いなローラン。
「やばいっしょ?」
やばいってもんじゃない。
「……どうしようかな」
騒がしく帰ってったローラン・グアランからの報告書は、明らかに国に報告、もとい、婚約者であるところのフリードリヒに伝えた方が良い内容だった。鳩氏にも、任せた! と言われている。
「リヒト様、いかがなさいますか?」
「そうだね……まずは、やはりフリードに、
話した方がよさそうだ」
相談し、どうすればいいか。
開襟したほうがいい情報、否、事件だ。
「そうですね」
ルフスさんも同意見だ。
「……ただ、少しだけ疑問点が。
お相手の立場が思いの外高いのと、
……証拠が」
「ああ……まあ、そうだね……」
毎度のことながら、この手の話には物的証拠が少なすぎた。
視線を落として見つめる先にある、その小瓶の群れは鳩氏から届けられたほやほやのブツ。
「この薬物すべてが、該当するものらしき、
ものだけれど。
……フリードに確かめてもらうけれど、
けど、さ。
本当の証拠にはまだなり得ない……」
鳩氏も、鳩の協力者たちからも良いものを送ってくれたが、いかんせん、これらが証拠となりうるかと言われれば、まだ不足気味だ。なんたって、これらは物的証拠ではあるものの、とある貴族が作ったものである、という証拠にはなり得ないからだ。ただの流通品である。裏の。
「一番良いのは、やっぱり、突撃、かなあ」
天井を見上げなら、僕はぼやく。
(うちが作ったものではない、
どこぞの誰かに濡れ衣を着せられた、
と主張されたらそれで終わりだ)
僕と同じ考えを持つルフスさんも、頬に手を当て、同様にため息をついた。
「そうですね。
その、貴族の家から出た、という証があれば、
一番の証拠なんですけれども」
「てことは、やっぱり突撃、公爵家かな」
「まだその公爵家様が決定、とは
いえない段階ですが……、
現物を使っているところを捕獲できれば、
一番良いですね」
「……それと、ごまかせないように、
しなければならない、か」
「はい。
……できれば、フリードリヒ様と帯同していただければ、と」
「そうだよね……」
貴族を相手に戦えるのは、貴族だけだ。
それも、高位か、あるいは同程度の地位を持つ貴族。
(まだ僕は婚約者ではあるとはいえ、
未だ結婚はしていない……)
同程度の地位、にみられるとはいえ、相手が相手だ。
油断はできない。地方領主はその地域の王様であるからね。
王様相手にぶつけられるのは、同じ王様だけ。
「下級貴族、と言われてしまえば、
それまでの立場だからね、僕は」
「そんなことはございませんけれども、
もしそんなことを言われたならば、
俺が本性を表して踏み潰してご覧にみせます」
ルフスさんが鼻息荒く頼もしいことを言ってくれる……。
その日の応接室は、鳩が帰ったあとも談笑が続いた。
(おや?)
なんとはなしに僕は眉を上げて、まじまじと鳩報告の書面を眺めていると、ローランパイセンが僕の様子を気にかけてきた。
「どうされました? リヒト様」
「んー、なんとなく聞き覚えのある地方名だな、
と思って」
「曲がりなりにも公爵領だからねえ~、
それなりに有名っしょ!」
なんという適当な反応。
僕は発言したことを後悔した。
「しかし初夜権、ねぇ」
「まー、華やかな都会とは別世界ですからねぇ、
田舎は」
「いくらなんでも田舎とひとくくりにするには、
うん、少し……気にはなるけど」
(都会、では処女権(初夜権)はないようなものだし)
あえていうなら僕が……というか、男だけど。
両方嗜む男ならばともかく、獣人でかつ童貞はそれほど多くはない。なぜなら、発情期があるからだ。かつ、さっさと愉しむ、のが当たり前の考え方である。僕の童貞話は腐れ縁の友人たちには散々に揶揄われ、両親や両親の友人たちにまで拾われていって……ネタにされまくっていたため、こう、改めて出てきた初夜権、に懐疑的にはなるというものである。
「……あー、なるほど」
少し、文面を読み込んでいくとカラクリが見えてきた。
鳩氏もうん、と僕の顔色をみて頷いている。格好はちゃんと服を着ているので寒そうではないのが幸いなローラン。
「やばいっしょ?」
やばいってもんじゃない。
「……どうしようかな」
騒がしく帰ってったローラン・グアランからの報告書は、明らかに国に報告、もとい、婚約者であるところのフリードリヒに伝えた方が良い内容だった。鳩氏にも、任せた! と言われている。
「リヒト様、いかがなさいますか?」
「そうだね……まずは、やはりフリードに、
話した方がよさそうだ」
相談し、どうすればいいか。
開襟したほうがいい情報、否、事件だ。
「そうですね」
ルフスさんも同意見だ。
「……ただ、少しだけ疑問点が。
お相手の立場が思いの外高いのと、
……証拠が」
「ああ……まあ、そうだね……」
毎度のことながら、この手の話には物的証拠が少なすぎた。
視線を落として見つめる先にある、その小瓶の群れは鳩氏から届けられたほやほやのブツ。
「この薬物すべてが、該当するものらしき、
ものだけれど。
……フリードに確かめてもらうけれど、
けど、さ。
本当の証拠にはまだなり得ない……」
鳩氏も、鳩の協力者たちからも良いものを送ってくれたが、いかんせん、これらが証拠となりうるかと言われれば、まだ不足気味だ。なんたって、これらは物的証拠ではあるものの、とある貴族が作ったものである、という証拠にはなり得ないからだ。ただの流通品である。裏の。
「一番良いのは、やっぱり、突撃、かなあ」
天井を見上げなら、僕はぼやく。
(うちが作ったものではない、
どこぞの誰かに濡れ衣を着せられた、
と主張されたらそれで終わりだ)
僕と同じ考えを持つルフスさんも、頬に手を当て、同様にため息をついた。
「そうですね。
その、貴族の家から出た、という証があれば、
一番の証拠なんですけれども」
「てことは、やっぱり突撃、公爵家かな」
「まだその公爵家様が決定、とは
いえない段階ですが……、
現物を使っているところを捕獲できれば、
一番良いですね」
「……それと、ごまかせないように、
しなければならない、か」
「はい。
……できれば、フリードリヒ様と帯同していただければ、と」
「そうだよね……」
貴族を相手に戦えるのは、貴族だけだ。
それも、高位か、あるいは同程度の地位を持つ貴族。
(まだ僕は婚約者ではあるとはいえ、
未だ結婚はしていない……)
同程度の地位、にみられるとはいえ、相手が相手だ。
油断はできない。地方領主はその地域の王様であるからね。
王様相手にぶつけられるのは、同じ王様だけ。
「下級貴族、と言われてしまえば、
それまでの立場だからね、僕は」
「そんなことはございませんけれども、
もしそんなことを言われたならば、
俺が本性を表して踏み潰してご覧にみせます」
ルフスさんが鼻息荒く頼もしいことを言ってくれる……。
その日の応接室は、鳩が帰ったあとも談笑が続いた。
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