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作戦は、こう2
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「しかし」
「フリード」
今度は彼の両手をぎっちり掴み、上目遣いで狙いにいく。
「ダメ?」
「うっ」
「僕、どうしても殴り……、
ううん、後始末するつもりなんでしょ?
連れてってほしいな、ね、フリード」
「だ、だがっ」
それでも断ろうとする頑固さに、僕はまたひとつの技を使う。
掴んだ彼の両手、その指はだいぶ硬い。指先なんて特に。普段座り仕事をしている、なんて言ってるのは伊達ではないだろう。なんだか可愛く見える。節のある大きな、少なくとも幼い僕よりも大きな指先。働いている男の指だ。
「リ、ヒ……」
フリードの混じり気のない、息の止まるような声。
僕はフリードの指先に、音のない口付けをする。柔らかく、まるで啄むようなものだったけれど、じ、と見上げると彼の白い肌はすでに赤い色で染まっている。
「お願い、フリードリヒ。
僕、勝手についていっちゃうよ?」
さらには首を小さく傾げる。
すると、フリードはその美しい女装からはとてもじゃないが発することはないであろう、雄々しい呻き声を少し漏らしながら何やら必死に呟きながら俯き、数分の沈黙後、見上げた顔はすっかり涙目で、僕に対し、コクンと頷いた。
(……可愛いのはフリードのほうなのでは?)
と思ったが、僕オリジナルの技に陥落したフリードを前に言うのも憚られた。というか部下がいるというのに、また冷静に立ち戻った精神性もすごい。ちなみに手は離れていない。今度は婚約者殿の手が僕の片手をがっちりと拘束中。
「リヒ……どうしてそう、
可愛いことばかり言うのです?
俺をどうにかするつもりですか?
はぁスベスベで可愛い……」
(小声で何か言ってる……)
そして少し大きめな声で、部下たちに指示を飛ばしている。
謎の脊髄反射だが、僕の手を指先で撫でながら僕の要望を聞き入れてくれたので、まあいいか……。いいのかな……。
(まあ、僕の希望が叶えばよし、だし)
「リヒト様。
公子様。
それでは、いってまいります。
……お二方のご武運をお祈りしております」
「うん。ルフスさんもお気をつけて」
「はい。承知いたしました」
「……無事に帰還せよ。
リヒトが……不安になって破壊し尽くすから」
「はい。ご心配をおかけしません」
くすくすと笑いながら、ルフスさんは薬の制作現場へと騎士、そして護衛らと共に向かう。
他にも目に見えない侵入社員ならぬスパイがエンバスには入り込んでいるので、意外と武力は多いのだ。制圧しなければならないため、多少、人数は多くつけている、とはフリードの談。
鳩の一味、彼らは僕らのスターダムを夢見ていたけれども、この目的のため、まあがっかりとしつつ、話のネタになると目眩し役を買って出てくれた。ありがたい。彼らはエンバスの男衆の前に出て、できる限り時間を稼ぐつもりのようだ。
「……行くぞ」
「はっ」
小さい声で、しかし、確実に向かう。
その矛先は、エンバス領主。その証拠だ。
「フリード」
今度は彼の両手をぎっちり掴み、上目遣いで狙いにいく。
「ダメ?」
「うっ」
「僕、どうしても殴り……、
ううん、後始末するつもりなんでしょ?
連れてってほしいな、ね、フリード」
「だ、だがっ」
それでも断ろうとする頑固さに、僕はまたひとつの技を使う。
掴んだ彼の両手、その指はだいぶ硬い。指先なんて特に。普段座り仕事をしている、なんて言ってるのは伊達ではないだろう。なんだか可愛く見える。節のある大きな、少なくとも幼い僕よりも大きな指先。働いている男の指だ。
「リ、ヒ……」
フリードの混じり気のない、息の止まるような声。
僕はフリードの指先に、音のない口付けをする。柔らかく、まるで啄むようなものだったけれど、じ、と見上げると彼の白い肌はすでに赤い色で染まっている。
「お願い、フリードリヒ。
僕、勝手についていっちゃうよ?」
さらには首を小さく傾げる。
すると、フリードはその美しい女装からはとてもじゃないが発することはないであろう、雄々しい呻き声を少し漏らしながら何やら必死に呟きながら俯き、数分の沈黙後、見上げた顔はすっかり涙目で、僕に対し、コクンと頷いた。
(……可愛いのはフリードのほうなのでは?)
と思ったが、僕オリジナルの技に陥落したフリードを前に言うのも憚られた。というか部下がいるというのに、また冷静に立ち戻った精神性もすごい。ちなみに手は離れていない。今度は婚約者殿の手が僕の片手をがっちりと拘束中。
「リヒ……どうしてそう、
可愛いことばかり言うのです?
俺をどうにかするつもりですか?
はぁスベスベで可愛い……」
(小声で何か言ってる……)
そして少し大きめな声で、部下たちに指示を飛ばしている。
謎の脊髄反射だが、僕の手を指先で撫でながら僕の要望を聞き入れてくれたので、まあいいか……。いいのかな……。
(まあ、僕の希望が叶えばよし、だし)
「リヒト様。
公子様。
それでは、いってまいります。
……お二方のご武運をお祈りしております」
「うん。ルフスさんもお気をつけて」
「はい。承知いたしました」
「……無事に帰還せよ。
リヒトが……不安になって破壊し尽くすから」
「はい。ご心配をおかけしません」
くすくすと笑いながら、ルフスさんは薬の制作現場へと騎士、そして護衛らと共に向かう。
他にも目に見えない侵入社員ならぬスパイがエンバスには入り込んでいるので、意外と武力は多いのだ。制圧しなければならないため、多少、人数は多くつけている、とはフリードの談。
鳩の一味、彼らは僕らのスターダムを夢見ていたけれども、この目的のため、まあがっかりとしつつ、話のネタになると目眩し役を買って出てくれた。ありがたい。彼らはエンバスの男衆の前に出て、できる限り時間を稼ぐつもりのようだ。
「……行くぞ」
「はっ」
小さい声で、しかし、確実に向かう。
その矛先は、エンバス領主。その証拠だ。
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