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大貴族vs大貴族
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「そこまでだ」
公子は立ち上がり、男娼に覆い被さっている大領主と対峙する。
「ドルガン・エンバス。
貴殿は禁止薬物を作り、
販売貴族社会に幅広く頒布させた罪、
禁薬を使用した罪、無辜の民を無理やり手籠にした罪、
王家に叛逆した罪に問われている」
「な、その声……どこかで……」
あまりにも女装が完璧すぎて、さしもの大貴族でも相手が同じ大物貴族であることがわからないらしい。
しゃら、と頭を傾げて飾りの音を鳴らしながら、フリードは嘲笑をゆるりと浮かべる。
「ふ。
薬を使って頭が回らんらしい。
その欲望のせいで、
何もかもを失うというに」
「……その目、その髪、
どこぞで見覚えがあると思えば……」
見下ろされてはたまらんとプライドを刺激されたものか、同じ土俵に立とうとしたドルガン・エンバスは力をいれた足を踏みとどめることができず、その場でふらりと倒れた。
「ぐぬぅ」
「……どうやら興奮冷めやらぬようだ」
フリードのいう通り、エンバス領主は裸であったため、薬の影響がもっとも持続的に発揮する下半身が大事なところに集中している。そのためうまく力が入らないらしい。頭だけじゃなく股間にも血がのぼっている。
両腕を使って屹立しようと試みているが、弱々しく震えるばかりだ。
「どうも開発新薬はご老体には合わないらしい。
……ここまで情けない醜態を晒すとは情けない」
「き、さま……」
「グリューネグ家に教えてやりたいものだ、
長年の政敵がここまで弱っていると」
「う、ぐぅう……っ。
なんと、なんということだ……っ」
口から泡をふきながら、それでも睨めつけるようにして公子の前で悪態をつくドルガン・エンバス。
「貴様はっ……!
はは、なるほど、確かに天女よ、
体を交わしたものはすべて天国へと旅立たせるという、
極上のっ、くそ、
獣王の、ぐ、ううう、
なんたることだ、まさか、
王家のものが……っ、
我がエンバス領の、内部にまで食い込むとは!」
「証拠はすべて、抑えている。
目撃者はこのフリードリヒ・シュタイネン・ヴォルだ」
「くそくそ、くそっ!
王家の目が、ここまで侵入するとは!」
「大人しく縛につけ。
……安楽死はさせてやらないが、
多少の見栄えの良い死に際は与えられることだろう。
慈悲と知れ」
床を絶え間なく、しかし乱雑に叩きながらドルガン・エンバスはその本性でもって耳障りに騒いだ。
瞬く間に、それは巻き起こる。
…………僕の視界には、それは黒くて大きな生き物。
まるで馬に近い……妖怪、のようなものに見えたんだ。
(うわ、とんでもないものが出てきた)
四つ足の生き物、なのは間違いない。
とても体が大きく、何か暗黒の覇気のようなものさえ纏っている。
(さすがは大貴族)
獣人の貴族は概ね気性の強い本性を持っている。
例に漏れず、この老人もそれなりの力を持っていたようだ。若い年頃であれば、それこそ山のように聳えるような強力ささえ持っていただろう。ただ、栄枯盛衰。時間は過ぎる。甘い果実は桃だが、時間泥棒に売るほどの欲望に負け、己を律せず、欲望の赴くままに自己研鑽を怠った末路は……言葉にすることすら虚しい。
「スレイプニル、だ。リヒ。
気を付けろ」
なんだか強そうな名前を持っているようだ。二つ名、というやつだろうか。
やぶれかぶれになったやつは何をするかわからない。
まさしくこのジジイは、それを体現した。
「っ!」
こちらの体制を整わせるはずもなく、敵はまっすぐにフリードに突撃してきた。
巨躯を生かした特攻。馬、の形をしているのでそりゃあもう早い。素早すぎて、僕は……間に入る前に、
「ぐ、気様っ、
武器を」
公子様の手には、頭に忍ばせていた先の尖った武器があった。
「ふん。
手ぶらで忍び込むバカもあるまい」
まるで手慣れた仕草で、フリードは手にある武器を回転させて先端を敵に向ける。
「……さあ、どこまで足掻くか。
やってみせろ、ドルガン・エンバス」
公子は立ち上がり、男娼に覆い被さっている大領主と対峙する。
「ドルガン・エンバス。
貴殿は禁止薬物を作り、
販売貴族社会に幅広く頒布させた罪、
禁薬を使用した罪、無辜の民を無理やり手籠にした罪、
王家に叛逆した罪に問われている」
「な、その声……どこかで……」
あまりにも女装が完璧すぎて、さしもの大貴族でも相手が同じ大物貴族であることがわからないらしい。
しゃら、と頭を傾げて飾りの音を鳴らしながら、フリードは嘲笑をゆるりと浮かべる。
「ふ。
薬を使って頭が回らんらしい。
その欲望のせいで、
何もかもを失うというに」
「……その目、その髪、
どこぞで見覚えがあると思えば……」
見下ろされてはたまらんとプライドを刺激されたものか、同じ土俵に立とうとしたドルガン・エンバスは力をいれた足を踏みとどめることができず、その場でふらりと倒れた。
「ぐぬぅ」
「……どうやら興奮冷めやらぬようだ」
フリードのいう通り、エンバス領主は裸であったため、薬の影響がもっとも持続的に発揮する下半身が大事なところに集中している。そのためうまく力が入らないらしい。頭だけじゃなく股間にも血がのぼっている。
両腕を使って屹立しようと試みているが、弱々しく震えるばかりだ。
「どうも開発新薬はご老体には合わないらしい。
……ここまで情けない醜態を晒すとは情けない」
「き、さま……」
「グリューネグ家に教えてやりたいものだ、
長年の政敵がここまで弱っていると」
「う、ぐぅう……っ。
なんと、なんということだ……っ」
口から泡をふきながら、それでも睨めつけるようにして公子の前で悪態をつくドルガン・エンバス。
「貴様はっ……!
はは、なるほど、確かに天女よ、
体を交わしたものはすべて天国へと旅立たせるという、
極上のっ、くそ、
獣王の、ぐ、ううう、
なんたることだ、まさか、
王家のものが……っ、
我がエンバス領の、内部にまで食い込むとは!」
「証拠はすべて、抑えている。
目撃者はこのフリードリヒ・シュタイネン・ヴォルだ」
「くそくそ、くそっ!
王家の目が、ここまで侵入するとは!」
「大人しく縛につけ。
……安楽死はさせてやらないが、
多少の見栄えの良い死に際は与えられることだろう。
慈悲と知れ」
床を絶え間なく、しかし乱雑に叩きながらドルガン・エンバスはその本性でもって耳障りに騒いだ。
瞬く間に、それは巻き起こる。
…………僕の視界には、それは黒くて大きな生き物。
まるで馬に近い……妖怪、のようなものに見えたんだ。
(うわ、とんでもないものが出てきた)
四つ足の生き物、なのは間違いない。
とても体が大きく、何か暗黒の覇気のようなものさえ纏っている。
(さすがは大貴族)
獣人の貴族は概ね気性の強い本性を持っている。
例に漏れず、この老人もそれなりの力を持っていたようだ。若い年頃であれば、それこそ山のように聳えるような強力ささえ持っていただろう。ただ、栄枯盛衰。時間は過ぎる。甘い果実は桃だが、時間泥棒に売るほどの欲望に負け、己を律せず、欲望の赴くままに自己研鑽を怠った末路は……言葉にすることすら虚しい。
「スレイプニル、だ。リヒ。
気を付けろ」
なんだか強そうな名前を持っているようだ。二つ名、というやつだろうか。
やぶれかぶれになったやつは何をするかわからない。
まさしくこのジジイは、それを体現した。
「っ!」
こちらの体制を整わせるはずもなく、敵はまっすぐにフリードに突撃してきた。
巨躯を生かした特攻。馬、の形をしているのでそりゃあもう早い。素早すぎて、僕は……間に入る前に、
「ぐ、気様っ、
武器を」
公子様の手には、頭に忍ばせていた先の尖った武器があった。
「ふん。
手ぶらで忍び込むバカもあるまい」
まるで手慣れた仕草で、フリードは手にある武器を回転させて先端を敵に向ける。
「……さあ、どこまで足掻くか。
やってみせろ、ドルガン・エンバス」
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