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第2部 大帝国のヤンデレ皇子に囚われたりなんてしない!
第3章 アリーシャ、帝都に辿り着く
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「……コレが、ガルトブルグの帝都にして宮殿 "クリスパレス" かぁ……。想像してた以上に…………」
その先に続く言葉を思いつけずに、私は沈黙してしまった。
ガルトブルグの帝都は宮殿と一体化している。RPGにはよくある、フィールド上から城に入ると城下町も何も無く、すぐさま城の建物の中で、お店や住民の家も全て城の "中" にあるような、あんなイメージだ。
さらにその帝都兼宮殿は、周囲の岩山の灰色の石を切り出して造られているので、パッと見、岩山と同化して見える。
大陸でも一番の財力と軍事力を誇る大国らしく、規模はとてつもなく大きいが、その造形はお世辞にも優美だとか壮麗だとか言えるものではなかった。
例えるなら、ブロック形のオモチャを適当にグチャグチャ組んでいって、とにかく大きくしてみました……とでも言うような。無機質な立体パズルでも見ている気分だ。
「しかも灰色一色かぁ……。いくら大帝国でもコレはちょっとなー……。こんな所でお妃様をやるなんて、考えただけで気が狂いそうだわ……」
外側から眺めただけでも陰鬱な気持ちになったが、中に入るとさらに気が滅入る。
「うわー……こりゃ、迷路みたいだなー」
「実際、迷路になってるんだよ。ガルトブルグはかつて、たびたび他国や魔物の襲撃を受けてきた。だからこんな岩だらけの辺鄙な場所に帝都を築き、町自体を岩山の宮殿の中に囲い込み、さらには内部を迷路状にして敵の侵入を防いでいるんだ」
曲がりくねった道をトロトロ進む馬車の外で騎士たちがそんな会話をしているが……もっともらしく作られたその話は、実は完全に後付けな設定だ。元はと言えば私と創君が、とにかく複雑な構造の都市を作ってみたかっただけなのだ。
『世界に1つくらいは迷宮都市みたいなの作りたいよねー』
『アレだろ?道が立体交差してたり、店の中とかトンネルを通り抜けなきゃ行けない場所があったりするんだろ?』
『でもって一人くらいは、ずっと道に迷い続けてる人がいたりして……』
そんな会話、してたなー。……なんてことを思い出していると、馬車の外から声が聞こえてきた。
「なんって複雑な都市なの!? 全っ然目的地にたどり着けないじゃない!」
……あぁ、例の永遠の迷子さんだ。こんな設定にしちゃってゴメンナサイ。
しかし、ずっと迷い続けているとなると、食事や睡眠はどうしているのだろう……。
それとも実は、プレイヤーの目が届いていない間に、ちょこちょこ目的地や家に辿り着けていたりするのかな。
「……なんて、他人の心配してる場合じゃないか。このままじゃ私、囚われの身だもんね」
とりあえず私はゲーム制作思い出しメモに目を通す。日記帳という体裁をとっていると、怪しまれず荷物に入れられるので便利だ。
ガルトブルグ帝国は大陸でも聖王国クレッセントノヴァに次いで古い歴史を持つ国で、その帝都は古代帝国ユウェンタスの遺跡の上に築かれている。現在の皇帝はクリスティアーノの実の父親だが、この父親がちょっといろいろ困った人なのだ。
「……で、ガルトブルグ編のボスはこのクリア父なんだっけ……。古代帝国の呪いの剣に取り憑かれて狂戦士化、かぁ……。大丈夫かな。レッド勝てるかな?」
旅立ちを見送って以来、レッドには会えていないし連絡も取れない。
ストーリーの都合上、必ずクリスパレスを偶然訪れてくれることは間違いないが……。
「……で、偶然シェリーロワールの騎士たちが姫を攫われて困っているところに遭遇し、姫の捜索に協力することになる、と。ガルトブルグ編はクリスパレス自体がダンジョンだからなぁ……。厄介そう……」
迷路のような都市兼宮殿の中をボスのいる場所まで辿り着かなければならない勇者も大変だが、囚われの身からの脱出を図りたい私にとっても厄介だ。
「ガルトブルグ編は終盤、クリスパレス全体がヤバいことになるからなぁ……。下手に出歩くと危険かも。大人しくレッドが助けに来るのを待ってるのも、ひとつの手かな……」
囚われずに済めばそれがベストではあるのだが、今回はシェリーロワール編と違って "何が何でも囚われたくない" というほどではない。
なぜなら、ガルトブルグ編は幽閉場所が "クリスパレス内の一室" とハッキリ分かっている。地下でも牢獄でもなく、衛生環境が悪いということもなさそうだ。
ただ一点問題があるとすれば、例のヤンデレ皇子クリスティアーノが毎日のようにやって来て、ネチネチと陰湿な言葉責め――もとい、脅迫めいた求婚をしてくるということなのだが……
「……ま、なるようにしかならないか。しばらくは様子見かな……」
その先に続く言葉を思いつけずに、私は沈黙してしまった。
ガルトブルグの帝都は宮殿と一体化している。RPGにはよくある、フィールド上から城に入ると城下町も何も無く、すぐさま城の建物の中で、お店や住民の家も全て城の "中" にあるような、あんなイメージだ。
さらにその帝都兼宮殿は、周囲の岩山の灰色の石を切り出して造られているので、パッと見、岩山と同化して見える。
大陸でも一番の財力と軍事力を誇る大国らしく、規模はとてつもなく大きいが、その造形はお世辞にも優美だとか壮麗だとか言えるものではなかった。
例えるなら、ブロック形のオモチャを適当にグチャグチャ組んでいって、とにかく大きくしてみました……とでも言うような。無機質な立体パズルでも見ている気分だ。
「しかも灰色一色かぁ……。いくら大帝国でもコレはちょっとなー……。こんな所でお妃様をやるなんて、考えただけで気が狂いそうだわ……」
外側から眺めただけでも陰鬱な気持ちになったが、中に入るとさらに気が滅入る。
「うわー……こりゃ、迷路みたいだなー」
「実際、迷路になってるんだよ。ガルトブルグはかつて、たびたび他国や魔物の襲撃を受けてきた。だからこんな岩だらけの辺鄙な場所に帝都を築き、町自体を岩山の宮殿の中に囲い込み、さらには内部を迷路状にして敵の侵入を防いでいるんだ」
曲がりくねった道をトロトロ進む馬車の外で騎士たちがそんな会話をしているが……もっともらしく作られたその話は、実は完全に後付けな設定だ。元はと言えば私と創君が、とにかく複雑な構造の都市を作ってみたかっただけなのだ。
『世界に1つくらいは迷宮都市みたいなの作りたいよねー』
『アレだろ?道が立体交差してたり、店の中とかトンネルを通り抜けなきゃ行けない場所があったりするんだろ?』
『でもって一人くらいは、ずっと道に迷い続けてる人がいたりして……』
そんな会話、してたなー。……なんてことを思い出していると、馬車の外から声が聞こえてきた。
「なんって複雑な都市なの!? 全っ然目的地にたどり着けないじゃない!」
……あぁ、例の永遠の迷子さんだ。こんな設定にしちゃってゴメンナサイ。
しかし、ずっと迷い続けているとなると、食事や睡眠はどうしているのだろう……。
それとも実は、プレイヤーの目が届いていない間に、ちょこちょこ目的地や家に辿り着けていたりするのかな。
「……なんて、他人の心配してる場合じゃないか。このままじゃ私、囚われの身だもんね」
とりあえず私はゲーム制作思い出しメモに目を通す。日記帳という体裁をとっていると、怪しまれず荷物に入れられるので便利だ。
ガルトブルグ帝国は大陸でも聖王国クレッセントノヴァに次いで古い歴史を持つ国で、その帝都は古代帝国ユウェンタスの遺跡の上に築かれている。現在の皇帝はクリスティアーノの実の父親だが、この父親がちょっといろいろ困った人なのだ。
「……で、ガルトブルグ編のボスはこのクリア父なんだっけ……。古代帝国の呪いの剣に取り憑かれて狂戦士化、かぁ……。大丈夫かな。レッド勝てるかな?」
旅立ちを見送って以来、レッドには会えていないし連絡も取れない。
ストーリーの都合上、必ずクリスパレスを偶然訪れてくれることは間違いないが……。
「……で、偶然シェリーロワールの騎士たちが姫を攫われて困っているところに遭遇し、姫の捜索に協力することになる、と。ガルトブルグ編はクリスパレス自体がダンジョンだからなぁ……。厄介そう……」
迷路のような都市兼宮殿の中をボスのいる場所まで辿り着かなければならない勇者も大変だが、囚われの身からの脱出を図りたい私にとっても厄介だ。
「ガルトブルグ編は終盤、クリスパレス全体がヤバいことになるからなぁ……。下手に出歩くと危険かも。大人しくレッドが助けに来るのを待ってるのも、ひとつの手かな……」
囚われずに済めばそれがベストではあるのだが、今回はシェリーロワール編と違って "何が何でも囚われたくない" というほどではない。
なぜなら、ガルトブルグ編は幽閉場所が "クリスパレス内の一室" とハッキリ分かっている。地下でも牢獄でもなく、衛生環境が悪いということもなさそうだ。
ただ一点問題があるとすれば、例のヤンデレ皇子クリスティアーノが毎日のようにやって来て、ネチネチと陰湿な言葉責め――もとい、脅迫めいた求婚をしてくるということなのだが……
「……ま、なるようにしかならないか。しばらくは様子見かな……」
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