囚われの姫は嫌なので、ちょっと暴走させてもらいます!~自作RPG転生~

津籠睦月

文字の大きさ
28 / 162
第2部 大帝国のヤンデレ皇子に囚われたりなんてしない!

第13章 アリーシャ、皇子とデートする

「……本当に私だと分からないようですね。町民からこのようにフランクなあつかいをされたのは初めてです。新鮮ですね……」
 
 町民エリアに下り、屋台で適当に買い食いをしてブラつく。
 
 実を言うとデートの経験が全く無いので、縁日で創君と一緒に出店を回りまくった時のような感じになってしまったが、庶民のデートを知らないクリスティアーノが相手だ。まぁ、これで良いだろう。
 
「町の人たちも、まさか皇子がこんなカッコでデートしてるとは思わないでしょ。さっきのオジさんも『兄ちゃん、皇子様によく似てるねー』とか言ってたけど、全然疑ってなかったし」
 
「……町の人々が私のことをあんなに好意的に見てくれているとは、知りませんでした……」
 
 屋台で買ったホットドッグに似たパンに視線を落とし、しみじみとクリスティアーノが言う。
 
 彼に町の人たちの "皇子" に対する評判を聞かせるのが目的だから、そこは意図的いとてきに話を振っていった。
 私はクリスティアーノを愛してあげられないけど、既に彼のことを愛している町の人たちの反応を見れば――自分が誰かから愛されているのだということを知れば、ゆがんでしまった心を変えられるかも知れない。
 
 美味しいホットドッグ風パンをむさぼりながら、私はクリスティアーノを注意深く観察する。
 これまでの "いかにも皇子様" な完璧笑顔や、私を監禁してからの病んだ表情に比べたら、だいぶ年相応としそうおうの素直な顔を見せてくれるようになった気がするが……。
 
 ……それにしても、このパンおいしい。
 お城の高級料理も悪くないけど、私にはやっぱりこういうファーストフードとかファンクフードとかB級グルメ的なモノの方が合ってる気がするなー……。
 
「あら?リーシャさんじゃない。ひょっとしてデート?って言うか、ウッソ、やだ。彼氏サン、クリスティアーノ様に似てない!?」
「あれ、チェリーちゃん。こんな所で何してるの?ひょっとしてまた迷子?」
 
 ちょうど良いところにチェリーが通りかかった。
 
 チェリーは食い入るようにクリスティアーノの顔を凝視ぎょうししてくる。
 
「リーシャさんったら、どこでこんな逸材いつざいを見つけてきたのよ!? あの……彼氏さん、お名前は……?」
 
 ズルい!と言いたげな顔で私を見た後、チェリーは恥じらう乙女の表情でクリスティアーノの名をたずねる。
 
 困惑こんわくした顔で沈黙ちんもくするクリスティアーノに代わり、私が偽名をでっちあげた。
 偽名というか……元々私と創君の間での彼の通称名なのだが。
 
「この人はクリア。皇子に似てるけど、見ての通り、ただの小粋こいきなタウンボーイよ。ねぇチェリーちゃん、もし良かったら、この人にもクリスティアーノ皇子への愛を語って聞かせてくれない?」
 
「え!? ちょっと、いきなり何言い出すのよー。こんなクリスティアーノ様とよく似た男子にそんなこと語るなんて、まるで愛の告白みたいじゃない!」
 
 最初のうちこそ、そんな風にキャッキャと照れていたチェリーだったが、それから数分もたないうちに私たちの隣にどっかり座りこんで熱弁をふるい始めた。
 
「クリスティアーノ様はもっとむくわれるべきなのよ!お父上からもお母上からも満足に愛をそそいでもらえない孤独の中、それでも曲がることなく皇子の務めを必死に頑張がんばってこられたのだもの!」
 
 今日もチェリーの話は情熱的だった。熱が入り過ぎて、今にも身を乗り出し、クリアの手をにぎめそうな雰囲気だ。
 
 話を聞くクリアは……何だか不思議な表情をしていた。
 目からウロコが落ちたような……悪い夢から覚めたような……それでいて、どこか泣きそうな表情にも見える。
 
「あっ、いっけなーい。さすがにもう行かないと、店の皆に怒られちゃうわ」
 
 語るだけ語りくして満足したらしいチェリーがそう言ってその場を離れても、クリアはしばらく動かなかった。
 私は声をけず、だまってその様子を見守る。
 
「……こんなにも、私のことを知ってくれている……想ってくれている人が、いたのですね。私は今日までその存在を知らず、想ったことも考えたこともなかったと言うのに……」
 
 ぽつり、とクリアがつぶやく。とても重いつぶやきだった。
 
「皇子として、次期皇帝として頑張っていると、彼ら、彼女らは私をめてくれる。しかし私は、ただ理想化された皇子像をなぞっていただけ……。皇帝になるということは、彼ら、彼女らを守っていくということでもあるのに……それを全く、考えてこなかった……」
 
 これは……思った以上に効果があったようだ。
 クリアは顔をおおい、自分自身への疑問を投げかける。
 
「私は、今まで何を考えて生きてきたのでしょう……」
 
 ……どうしよう。話が思っていたより重くなり過ぎて、私の手にえなくなってきた気がする。
 
「えっと……えっとね……だったら、これから国民のことを大事に想う愛ある皇帝を目指したらいいんじゃないかな」
 
 我ながら「軽いなー」と思いながらも、精一杯せいいっぱいのアドバイスを口にする。
 
 その時、ふと視界のはしを何か見覚みおぼえのある影が横切った。
 無意識に目を動かしてその正体を確認し、私は思わず叫びそうになった。
 
「……レッド!? どうしてココに!?」
感想 3

あなたにおすすめの小説

私を欠陥品と呼ぶ執事長が鬱陶しいので、侯爵夫人として排除することにしました

菖蒲月(あやめづき)
ファンタジー
「欠陥品に払う敬意など無い」 結婚後もそう言って嫌がらせを続けるのは、侯爵家の執事長。 どうやら私は、幼少期の病が原因で、未だに“子を産めない欠陥品”扱いされているらしい。 ……でも。 正式に侯爵夫人となった今、その態度は見過ごせませんわね。 証拠も揃ったことですし、そろそろ排除を始めましょうか。 静かに怒る有能侯爵夫人による、理性的ざまぁ短編。 ________________________________ こちらの作品は「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

男娼を買ったら、かつての婚約者でした

志熊みゅう
恋愛
 王宮魔術師エマ・カバネルは、三十歳独身。十年前に婚約者クロードに裏切られて以来、結婚を捨て、仕事だけを支えに生きてきた。だが強すぎる魔力ゆえに抑えきれない『欲』を抱える彼女は、ある晩女性専用娼館『秘密の園』を訪れる。  そこでかつて自分を傷つけたクロードによく似た男娼エリクと出会う。甘い言葉と抱擁に癒やされ、エマは少しずつ心を許していく。  しかし王宮の政争に巻き込まれ、唯一生きがいになっていた仕事にも裏切られた彼女は、王都からの逃亡を決意する。せめてもの感謝にエリクを身請けし、自由を与えたはずが、彼はエマを追って現れる。  そしてその正体は、十年前に彼女を捨てたクロード本人で――。裏切りと後悔の果て、二人は失った愛と向き合う。

試験でカンニング犯にされた平民ですが、帝国文官試験で首席合格しました

あきくん☆ひろくん
恋愛
魔法学園の卒業試験で、私はカンニング犯に仕立て上げられた。 断罪してきたのは、かつて好意を寄せてくれていた高位貴族の子息。そしてその隣には、私を嫌う貴族令嬢が立っていた。 平民の私には弁明の余地もない。私は試験の順位を辞退し、その場を去ることになった。 ――だが。 私にはもう一つの試験がある。 それは、帝国でも屈指の難関といわれる帝国文官試験。 そして数日後。 その結果は――首席合格だった。 冤罪で断罪された平民が、帝国の文官として身を立てる物語。

村が滅んで旅に出る ~フェリシアの、のんびり旅日記~

霧ちゃん→霧聖羅
ファンタジー
 流行病で村が滅んだ。 身寄りをなくしたわたしは村を捨て、ひとり旅立つことにした。 ――そういえばわたし、|にぃに《・・・》がいるんじゃなかったっけ?  五歳のころに王都にある大神殿に連れていかれた(らしい)兄の存在を思い出したわたしは、ダメもとで兄のもとを訪ねることにしたんだけど―― 5/1   0時・7時・12時・18時の4回更新 5/2~6 7時・12時・18時の3回更新 5/7~  毎日12時更新予定

家族に忘れられていた第五王子は愛され生活を送る

りーさん
ファンタジー
 アズール王国の王宮には、多くの王子や王女が住んでいる蒼星宮という宮がある。  その宮にはとある噂が広まっていた。併設されている図書館に子どもの幽霊が現れると。  そんなある日、図書館に出入りしていた第一王子は子どものような人影を見かける。  その時、父である国王にすら忘れられ、存在を知られていなかった第五王子の才覚が露になっていく。

わたくしのものを私物化するお姉様が、社交界で大変なことになってしまったそうです

柚木ゆず
恋愛
「あら? そのネックレスは、アリス様がミファレア様に贈ったものですよね?」  わたくしミファレアの姉エミーリラお姉様がパーティーに着けていったネックレスは、以前わたくしから奪い取ったもの。参加者のおひとりがその事実に偶然気付かれ、『妹への贈り物を自分のものと言い張り身に着けている』と大騒ぎになってしまったそうです。  これにより演じ続けていた『妹想いの優しい姉』像は崩壊し、白い目で見られるようになってしまったお姉様。そんなエミーリラお姉様はわたくしに八つ当たりをしたあと、どうにかして丸く収めようと作戦を練り始めたのですが――

卒業パーティーで魅了されている連中がいたから、助けてやった。えっ、どうやって?帝国真拳奥義を使ってな

しげむろ ゆうき
恋愛
 卒業パーティーに呼ばれた俺はピンク頭に魅了された連中に気づく  しかも、魅了された連中は令嬢に向かって婚約破棄をするだの色々と暴言を吐いたのだ  おそらく本意ではないのだろうと思った俺はそいつらを助けることにしたのだ

過保護すぎる家族に囲まれて育ったら、外の世界が危険すぎました 〜冷酷公爵の父と最強兄たちに溺愛される日々〜

由香
恋愛
過保護な父と兄たちに囲まれて育った少女。 初めての外は危険だらけ——のはずが、全部“秒で解決”。 溺愛×コメディ×ほんのり成長の、ほっこり家族物語。