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第5部 新魔王と結婚なんて、お断り!
第22章 アリーシャはスカイ王子の洗脳を解きたい
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私が質問すると、スカイは途端に挙動不審になった。
「はッ!? え、いや……僕とあなたは、初対面です。べ、べつに、以前から監視カメラで観察して顔を覚えているとか、そんなこともないですから!」
緊張のあまりなのか、こちらの訊いていないことまで、勝手に白状している。
……この人、本当に天才少年なのかな。
「自分のことは、ちゃんと分かってる?メトロポラリスのことや、ブルー王子……お兄さんのことは……」
「は?僕はメトロポラリス出身の天才科学者スカイ。欲望のままに世界を穢す人類に嫌気が差して、魔界に寝返った。兄などいないし、ブルー王子など知らない」
スカイ自身のことを問うと、急に喋りがなめらかになった。
だが、その答えはまるで、予めインプットされた説明を読んでいるかのようだ。
しかし……なるほど、そういう "設定" で洗脳されているのか。
「それはニセモノの記憶だよ!あなたはメトロポラリスの王子で、おじい様の遺志を継いで、SHIROを人類の役に立てるために……」
だが、私の言葉は途中でブランに遮られた。
「そこまでにしていただこう。姫よ、我が軍の科学技術顧問に、あることないこと吹き込んで惑わすのは、やめていただきたい」
ブランの目には、不穏な光が宿っていた。
これ以上話したら、何をされるか分からない。
私は口を噤まざるを得なかった。
だが、さっきのわずかな言葉だけでも、スカイを動揺させるには充分だったらしい。
「……王子?おじい様?……SHIRO」
スカイは戸惑ったように、私の言った単語を繰り返し、瞳を揺らす。
ブランはチッと舌打ちし「これでは、また洗脳し直しではないか」と小さくつぶやいた。
「姫よ、今宵はもう失礼する。だが、姫にはいずれ必ず、私の妃となっていただく。覚悟しておいていただこう」
そう言うとブランは、スカイの肩を抱いて半ば無理矢理歩かせながら、私の部屋を去って行った。
扉が閉まり、施錠の音が響いた途端、私はへなへなとその場に座り込む。
「ど……どきどきしたぁ……っ!心臓に悪過ぎる……!」
特に、壁ドンされて、近い距離から迫られた時はヤバかった。
ブランのことは、正直イケメンだと思う。
だが、さすがに出会ったばかりの相手と、いきなりそんなことにはなりたくない。
まして、結婚なんて……。
何とかスカイを救い出して、この魔界を出なければ。
「……これから、どうしよっか?どうすればスカイの洗脳を解けると思う?……ねぇ、白兵衛」
私はポケットから白兵衛を取り出し、訊いてみた。
フェアウェルランド牢獄でゲーヘンナムたちに取り囲まれたあの時、私はとっさに白兵衛をポケットにしまっていた。
白兵衛は会話もできるロボットペットだが、元はドロップアイテム扱い。
実は、ポケットに入れたり出したりすることが可能なのだ。
《新魔王ブランの洗脳は、カンペキではないようだワン。さっきのように、真実の記憶で揺さぶりをかければ、解ける可能性があるワン!》
「そっか。確かに、かなり動揺してたよね。しかも、SHIROって単語に、一番反応してたような……」
言いながら、目の前の白兵衛をじっと見つめる。
まさに今、ここにそのSHIROがいるんだよね……。
《スカイは、青春のほとんどを、SHIROの開発に捧げていたワン。思い入れがあるのは当たり前だワン。ボクにとって、スカイは育ての親。ボクもスカイを助けたいワン》
何となくジーンとなって、私は白兵衛の頭をヨシヨシしてあげた。
「そうだよね。助けたいよね。でも実際、どうすればいいと思う?」
スカイは一瞬動きを止めたが、すぐに答えを導き出してくれた。
《ボクがスカイと直接会って、話をしてみるワン。アリーシャちゃんがこの部屋から出たら、大変な騒ぎになるワン。でも、ボクだけなら騒ぎにならないはずだワン》
「それだ!さすが白兵衛!」
廃校の七不思議クエストの時もそうだったけど、本当に白兵衛の電脳は頼りになる。
「本当にスゴいね。頭いいねー」
褒めながら、再び頭をヨシヨシする。
すると、白兵衛は頭を左右に振った。
《ボクは、データ保存された、たくさんの "問題解決法" を、状況に応じて "まとめて" いるだけだワン。本当にスゴいのは、過去に自分の知恵で問題に対処してきた先人たちだワン》
「それはそうかも知れないけど……私には、何も思いつかなかったし……」
《それは、アリーシャちゃんの人生経験が、まだまだ少ないからだワン。『こういう時には、こうすればいい』というノウハウを、たくさん覚えていけば、そのうちに自分の頭で解決できるようになるワン!》
「つまりは "伸びしろ" がありまくりってことだね?ありがとう、白兵衛」
謙虚な上に、人を励ますスキルまで持っているなんて、本当によくできたロボットペットだ。
「じゃあ、当面の目標は、白兵衛をスカイに会わせることだね。明日、ヴィヴィアンヌさんたちがお世話に来たら、頼んでみよう」
《それがいいワン!》
何にせよ、明日にならなければ何も始まらない。
そうと分かると、私はサッサとベッドに入り、眠りに就くことにした。
いろいろあり過ぎて、どっと疲れた一日が、こうしてやっと終わりを告げた。
「はッ!? え、いや……僕とあなたは、初対面です。べ、べつに、以前から監視カメラで観察して顔を覚えているとか、そんなこともないですから!」
緊張のあまりなのか、こちらの訊いていないことまで、勝手に白状している。
……この人、本当に天才少年なのかな。
「自分のことは、ちゃんと分かってる?メトロポラリスのことや、ブルー王子……お兄さんのことは……」
「は?僕はメトロポラリス出身の天才科学者スカイ。欲望のままに世界を穢す人類に嫌気が差して、魔界に寝返った。兄などいないし、ブルー王子など知らない」
スカイ自身のことを問うと、急に喋りがなめらかになった。
だが、その答えはまるで、予めインプットされた説明を読んでいるかのようだ。
しかし……なるほど、そういう "設定" で洗脳されているのか。
「それはニセモノの記憶だよ!あなたはメトロポラリスの王子で、おじい様の遺志を継いで、SHIROを人類の役に立てるために……」
だが、私の言葉は途中でブランに遮られた。
「そこまでにしていただこう。姫よ、我が軍の科学技術顧問に、あることないこと吹き込んで惑わすのは、やめていただきたい」
ブランの目には、不穏な光が宿っていた。
これ以上話したら、何をされるか分からない。
私は口を噤まざるを得なかった。
だが、さっきのわずかな言葉だけでも、スカイを動揺させるには充分だったらしい。
「……王子?おじい様?……SHIRO」
スカイは戸惑ったように、私の言った単語を繰り返し、瞳を揺らす。
ブランはチッと舌打ちし「これでは、また洗脳し直しではないか」と小さくつぶやいた。
「姫よ、今宵はもう失礼する。だが、姫にはいずれ必ず、私の妃となっていただく。覚悟しておいていただこう」
そう言うとブランは、スカイの肩を抱いて半ば無理矢理歩かせながら、私の部屋を去って行った。
扉が閉まり、施錠の音が響いた途端、私はへなへなとその場に座り込む。
「ど……どきどきしたぁ……っ!心臓に悪過ぎる……!」
特に、壁ドンされて、近い距離から迫られた時はヤバかった。
ブランのことは、正直イケメンだと思う。
だが、さすがに出会ったばかりの相手と、いきなりそんなことにはなりたくない。
まして、結婚なんて……。
何とかスカイを救い出して、この魔界を出なければ。
「……これから、どうしよっか?どうすればスカイの洗脳を解けると思う?……ねぇ、白兵衛」
私はポケットから白兵衛を取り出し、訊いてみた。
フェアウェルランド牢獄でゲーヘンナムたちに取り囲まれたあの時、私はとっさに白兵衛をポケットにしまっていた。
白兵衛は会話もできるロボットペットだが、元はドロップアイテム扱い。
実は、ポケットに入れたり出したりすることが可能なのだ。
《新魔王ブランの洗脳は、カンペキではないようだワン。さっきのように、真実の記憶で揺さぶりをかければ、解ける可能性があるワン!》
「そっか。確かに、かなり動揺してたよね。しかも、SHIROって単語に、一番反応してたような……」
言いながら、目の前の白兵衛をじっと見つめる。
まさに今、ここにそのSHIROがいるんだよね……。
《スカイは、青春のほとんどを、SHIROの開発に捧げていたワン。思い入れがあるのは当たり前だワン。ボクにとって、スカイは育ての親。ボクもスカイを助けたいワン》
何となくジーンとなって、私は白兵衛の頭をヨシヨシしてあげた。
「そうだよね。助けたいよね。でも実際、どうすればいいと思う?」
スカイは一瞬動きを止めたが、すぐに答えを導き出してくれた。
《ボクがスカイと直接会って、話をしてみるワン。アリーシャちゃんがこの部屋から出たら、大変な騒ぎになるワン。でも、ボクだけなら騒ぎにならないはずだワン》
「それだ!さすが白兵衛!」
廃校の七不思議クエストの時もそうだったけど、本当に白兵衛の電脳は頼りになる。
「本当にスゴいね。頭いいねー」
褒めながら、再び頭をヨシヨシする。
すると、白兵衛は頭を左右に振った。
《ボクは、データ保存された、たくさんの "問題解決法" を、状況に応じて "まとめて" いるだけだワン。本当にスゴいのは、過去に自分の知恵で問題に対処してきた先人たちだワン》
「それはそうかも知れないけど……私には、何も思いつかなかったし……」
《それは、アリーシャちゃんの人生経験が、まだまだ少ないからだワン。『こういう時には、こうすればいい』というノウハウを、たくさん覚えていけば、そのうちに自分の頭で解決できるようになるワン!》
「つまりは "伸びしろ" がありまくりってことだね?ありがとう、白兵衛」
謙虚な上に、人を励ますスキルまで持っているなんて、本当によくできたロボットペットだ。
「じゃあ、当面の目標は、白兵衛をスカイに会わせることだね。明日、ヴィヴィアンヌさんたちがお世話に来たら、頼んでみよう」
《それがいいワン!》
何にせよ、明日にならなければ何も始まらない。
そうと分かると、私はサッサとベッドに入り、眠りに就くことにした。
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