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小人の女の子
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ここは、ヴァリエッタ王国。様々な種族の生き物たちが住まう国。そんなヴァリエッタ王国にある、森の奥深くに、小さな女の子が住んでいました。
私はリリー。7歳の女の子。お父さんとお母さんは私が3つの時に死んじゃったけど、私へっちゃらだよ。だって、私にはたくさんのお友達がいるもの!
まずは、空を自由に飛ぶことが出来る鳥族のセウ。水色でとっても綺麗なのよ。よく私を乗っけて飛んでくれるの。
お次は大きな体で力持ちの熊族のベア。毛がふっかふかで気持ちいいのよ。いっつもおしゃれさんで、たまに私のお洋服も作ってくれるわ。
あとあと、すっごく足が早い鹿族のディア。ディアは美容師さんだから、髪を切るのがとっても上手なの。
まだまだいるけど、一度に言ったら覚えきれないわよね。また今度教えてあげる。
え?小人族の大人はいないのか?大丈夫よ。こんなにたくさんのお友達がいるんだから。本当はお父さんのお手紙に、お父さんのお友達のフリックさんっていう人を頼りなさいって書いてあったんだけど、心配しないでっていう内容の手紙をその人に送っといたの。
そんなことより、今日はみんなで夜のお散歩に行く日なの。だからお弁当を準備しなくっちゃ。
今日はローストビーフのサンドイッチを作るの。みんなで食べたらきっと美味しいわ。
まずはソース。砂糖、醤油、酢、オリーブオイル、ニンニクをすりおろしたもの、そして玉ねぎをすりおろしたものをまぜる。…玉ねぎをすりおろすのは苦手よ。だって涙が出てきちゃうんだもの。前が見えないわ。あ、あまった玉ねぎの端っこはみじん切りにして使うわ。そしたら10分間煮込む!
煮込んでいる間にパンに挟む具材たちを切ってしまいましょ。
玉ねぎは薄く切って水にさらす。これも10分くらいかしら。あとは、レタスとトマトをカットして、・・・あ!
メインのローストビーフも切らなくっちゃ。ローストビーフは朝作っておいたの。我ながらとっても美味しくできたわ。・・・よし!
あとはバゲットに切込みを入れて、バターをぬる!
それにしても、やっぱりセウたちの分も作ると大変ね。体が私の何倍もあるんだもの。バゲットに切込みを入れるだけで疲れちゃうわ。
さて、10分たったわ。そしたら、ローストビーフにソースをよくからめて、全部はさんだら・・・完成!!
ピンポーン
あら、もう時間かしら。
「はーい。だあれ?」
扉を開けると、茶色いもふもふが目の前にあったので、リリーは思わず抱きつきました。
「ベアね?いらっしゃい。まだ集合時間じゃないわよね?」
「ああ、でも渡したい物があってね。今日の散歩用にと思って作ってきたんだ。きっと似合うよ。」
そう言ってベアが取り出したのは白いワンピースでした。裾に綺麗な花柄の刺繍が施してあり、後ろの首元にはリボンがついているもので、リリーは一目で気に入りました。
「とっても素敵ね。ちょうど何を着ていこうか迷っていたの。ありがとう。」
「ふふ、喜んで貰えて嬉しいよ」
「それに、ベアの服も素敵ね。そのパッチワークのベスト、とっても可愛いわ。あら、その腕につけている青いリボン素敵ね。どこの生地?」
「ああ、綺麗だろう。街にあるタハトっていう店だよ。あそこは品揃えが素晴らしいよ。店主のペコラさんもとてもいい方だしね。」
「あら、あの赤色の屋根の可愛らしいお店ね。見かけた事はあったけれど、入った事はなかったわ。明日行ってこようかしら。ちょうど食材を買いに行かなくちゃいけなかったのよ。」
「それなら私も一緒に行ってもいいかい?仕事用の布を買いたくてね。」
「もちろんよ、有名デザイナーさん。」
リリーがからかうようにそう言うと、ベアははにかむように笑いながら礼を言った。
それから、リリーはベアにお茶とお菓子を出してまた準備をしに家の中に戻りました。
さて、このワンピースにはどの靴が合うかしら。
んーー、この赤いサンダルか、茶色のブーツか…。
‥よし!ブーツにしましょ。髪は三つ編みにして、あ!青いリボンで結ぼう!ベアとお揃いね!ディアとセウの分も用意しときましょう。
夜20時過ぎ、青いリボンを揺らしながら楽しそうに森の中を歩いている四人組がいました。明かりは彼らが持っているランプと月明かりだけ。夜の森は恐ろしく暗い為、ランプと月明かりでは足元を少し照らす事しかできません。
しかし彼らは、そんな事お構いなしに楽しく話をしながらずんずんと歩いていました。
「やっぱり夜のお散歩は最高ね。とってもドキドキするわ。」
「空からだと‥町の夜景がきれい…だよ。」
「えー、僕も見たーい!僕もサンタさんのトナカイみたいにとべたらなぁー。」
ディアがそう言いながらぴょんぴょんとジャンプすると、頭の上に乗っていたリリーは振り回されてしまいました。
「あはは、ディアやめてー」
リリーは振り回されながらも、とっても楽しそうです。
「ディア、リリーは私の上に乗せてもいいんだよ?」
「セウの…上でも‥いい。」
「ごめんてー。リリー大丈夫?」
「ええ。ちょっと楽しかったわ。」
それから少し歩くと、本日の折り返し地点である湖が見えてきました。湖の周りには、月明かりとは別の明かりが灯っています。どうやら先客がいるようです。
「こんばんは、蛍さん達。あなた達もお散歩へ来たの?」
「こんばんは」
「そうだよ」
「もちろんお酒を持ってね」
「君も飲むかい?」
「ダメだよ、子供だもん。」
「小人族でしょう?」
「大人かもよ」
「じゃあ一緒に飲もう」
辺りを美しく照らしながら、片手にお酒を持って騒いでいた蛍たちがわらわらとリリーたちの周りに集まってきます。
「ごめんなさい。私まだ7歳なのよ。」
「えー」
「残念」
「なんだー」
「大丈夫!僕特製ドリンクを持って来たからそれで乾杯しよう。」
ディアはがさごそとかばんの中を漁ると、ジュースの入った瓶をじゃじゃーんと言いながら取り出しました。
「私のサンドウィッチもあるわ。」
「じゃあ乾杯しよう」
「祭りだ」
「夜はこれからだね」
「ん?小人のリリー?聞いたことある気がする」
「僕知らなーい」
「私も―」
「早く飲もー」
「楽しいねー」
蛍たちの会話はなかなか途切れません。まわりに大量の空の酒瓶が転がっているので、すでに結構な量を飲んでいるみたいです。
「よぉーし。みんな―準備できたー?」
「「「おーー」」」
こうして、夜の長い長い宴が始まりました。
「リリー、このサンドウィッチすごく美味しいよ。」
「うん!めっちゃ美味しい!」
「ん・・・美味しい・・」
「喜んでもらえてよかったわ。」
彼らのもふもふもちもちしたほっぺがもぐもぐと動く様子を、リリーはにまにまとしながら眺めていました。
「よし歌うか」
「歌おう」
「いいね」
「何歌う?」
「やっぱあれだよ」
「あれだね」
『お月様が照らします。お酒を飲む僕らを照らします。美味しい魚と美味しいお酒を食べて飲んで食べて飲んで。僕らは毎日騒ぎます。この世にお酒がある限り。僕らは飲み続けます。お月さまの元で。・・・』
「すっごい歌だなー。」
「ええ、なんとも独特な歌詞ね。」
『飲むぞー』
『歌えー』
『騒げー』
みんなが楽しく騒いでいる中、がさりと音を立てながら近づいて来る人影があった。
僕は旅人。名前は秘密さ。
今日は町を少し離れて森の方を歩いていたんだけど、気付いたらもう日が落ち始めていてね。今から町に向かうのは無理だから森で野宿をすることにしたんだ。それで、もう疲れて寝る所だったんだけど、近くで騒いでいる人達が居るみたいでね。うるさくて眠れないし、楽しそうだから行ってみることにしたんだ。
森の中は真っ暗で、一人だと少し心細いね。でも、愉快な歌声と暖かい光が少し先に見えてきたから気分は最高だよ。それに、微かにお酒の匂いもする。森の中なのにここまで香りが飛んでくるなんて、相当飲んでるね。旅にお酒は必須だよ。この先に入る人達とは仲良くなれそうだ。
『飲めー』
『歌えー』
『僕もまぜてー』
『騒げー』
蛍たちが陽気に歌っている途中に、今日初めて聞く歌声がまざった。しかし、気付いたはリリーだけのようだ。
「あら?だれかしら?今の。」
「こんばんは、小人のお嬢さん。いい夜だね。」
リリーが首をかしげていると、背後からいきなり声が聞こえてきた。振り向くと、ベアと同じくらいの身長の人間の男が立っていた。
「こんばんは。あなたも夜のお散歩に来たの?」
「いや、僕はこの陽気な歌声につられてね。旅の途中で、今日はこの森に野宿をする予定だったんだよ。君はこの森に住んでるのかい?」
「あら、旅人さんだったのね。そうよ。そこにいる彼らは友達のベア、ディア、セウ。そしてさっき出会ったばかりの蛍さん達。」
「あれ?リリー、その人は?」
「ん?なんだ?この辺じゃ見ない顔だな。」
「だれー?」
「ようこそー」
「お酒飲むー?」
「歌うー?」
「つまみがきれそうだよー」
「ねー名まえはー?」
「今追加分取りに行ってるー。」
「ねむーい」
ベアが旅人に気付いて声を掛けると、続いて他の者たちも一気に集まり出した。新しい客人の登場に皆興味津々です。
「僕は旅人。きみらの陽気な歌声とお酒の香りにつられてやって来たんだ。」
旅人が良く通る声でそう告げると、蛍たちが一斉に「お酒!」と叫んだ。
それからは旅人も加わり、再びどんちゃん騒ぎが始まった。旅人は、蛍たちに囲まれてひたすらお酒を飲んでいるようだ。
しばらくして、その辺で寝始めてしまう者たちが出てきて、森にいつもの静けさが戻って来た頃。旅人が旅の話をきかせてくれると言うので、みんなが彼の周りに集りました。
そして、みんなが座ったのを確認すると、旅人はお酒を片手に、足を組んで優雅に話し始めました。
「あれはたしか2年くらい前の春だったかな。僕はキレイなお花畑を歩いてたんだ。辺り一面、どこを見てもお花しかない所でね。でも、その中にぽつんとひとつだけ井戸があったんだ。そこの花畑は誰かが管理しているものではなくてね。その辺にはあまり人も住んでいなかったし、不思議だと思わないかい?まあ、旅人や行商人の為のものかな、とも考えたんだけど。少し異質な空気をまとっているような気がしたんだ。旅人の勘ってやつだよ。とりあえずそばに行って中を覗いてみた。そしたら、井戸についていた手を滑らせてしまって、井戸の中に落ちてしまったんだ。でも、落ちた割には何の痛みもなくて、恐るおそる目を開けてみたら、目の前には井戸の中とは思えない程普通の景色が広がっていた。普通に明るくて太陽があって、草木もあり、そして国もあった。そして、なんとその国は…。あ、ごめん。これはなしちゃだめなやつだった。えーっと、これじゃなくてー。」
「え?」
「ひどい」
「すごい気になるんだけど。」
「旅人さん。それはひどいわ。とっても気になるじゃない。」
「そうだそうだー」
「うん…。ぼくも…、きになる…。」
みんなが文句を言うなか、旅人はさらっとした笑顔で「ごめんごめん」と言うと、また語り始めた。
「去年の夏。僕はある島に行ったんだ。そこは地震が多かったり、時々謎の声がするという噂があった。心霊好きな人の間では有名なスポットらしいよ。
とりあえず、島に向かった僕は島の住人に話を聞いてみたんだ。
「こんにちは。この島に住んでいる方かい?」
「ええ、そうよ。」
「謎の声って本当に聞こえるの?」
「ああ、なるほど。」
その女性はにまにまと笑いながらこう続けたました。
「とりあえず、この島を楽しんで!運が良ければ真相を知ることができると思うわ。」
「えぇ。…わかったよ。ありがとう。」
そうして、とりあえず島を見て回ることにしたんだ。
まずは腹ごしらえをしに、その島で一番人気のハ―ヴというお店に行ってみた。そこの魚料理はほんっとうにおいしかったなぁ。塩をまぶして火であぶった丸焼きだったり、ハーブのいい香りがする焼き魚、アクアパッツァ、刺身もおいしかったなぁ。どれもお酒に合うしね。…今思ったんだけど、僕食べ過ぎだね。
…それから、海の風にあたりにいこうと海岸沿いに散歩に行ったんだ。その日はとてもいい天気でね、空は真っ青で、海は透き通った水色。きらきらしていてまぶしいほどだったよ。
でもその時僕はだいぶ酔っていたからね、ごつごつとした岩場をふらふらとした足取りで歩いていたら、足を滑らして落ちてしまった。幸い、そこは浅い場所だったから溺れる事はなかったよ。
その後、水面から顔を出して、岩に手をついて呼吸を落ち着けていたら、近くから声が聞こえてきてさ。「大丈夫?」って。辺りを見渡してみても、近くには誰もいなかった。気のせいかな?って思ったんだけど、やっぱり「怪我はない?」って聞こえてきた。
そして、ふと手をついている岩を見たんだ。少し動いた気がしてね。じっと見ていると、ゆっくりと扉が開くように動いていたんだ。動きが止まると、僕は現れたそれを見て思わず叫んでしまったよ。だって目の前に自分の体と同じくらいの大きさの目があったんだから。
この世界には色々な生き物がいるから、普段なら大きい目を見ただけでは驚かないんだけど、岩だと思っていたものにいきなり目が現れたからね。正直少し怖かったよ。でも、とりあえず生き物だと分かったからには話かけてみようと思ってね。
「ありがとう。大丈夫だよ。僕は旅人。きみは?」
「私はトルト。亀だよ。」
少し話しをしてみると、僕はこの島の正体がわかってきた。みんなももうわかったよね。
そう、この島は彼女の甲羅だったんだよ。面白いよね。でも、地震と謎の声の理由が分かってすっきりしたよ。
そういえば、最初に話した彼女は何故このことを教えてくれなかったんだろう?って思うよね。トルトに聞いて見たら、島の人間はみんなそうだよって言ってたよ。「よその人達が、私の事を知らずに、いろいろ考察をしてるのが面白いんだとさ。」って。
さて、これで亀の島『シュトライヒ島』の話は終わりだ。
子の話は君たちにしたのが初めてなんだけど、あまり広めないでほしいな。
その方が面白いだろう?」
こうして、彼の悪戯をたくらむ子供のような表情で放ったその言葉で彼の物語は幕を閉じた。
「亀さん!?」
「そんなとこあるんだー」
「最後悪い顔してたー」
「ねー」
「行ってみたーい」
「海の幸‥じゅるり」
「僕も旅したーい」
それぞれ楽しく感想を言いあいながら、蛍
たちはまた騒ぎ出した。
リリーがその様子をベアたちと一緒に楽しそうに眺めていると、旅人が近くに来て、「隣に座っても?」と尋ねた。リリーが首を縦に振って了承すると、お礼を言って静かに隣に腰掛けた。
「少し聞いてもいいかな?」
「ええ、いいわよ。」
「君のご両親は?」
「私が3つの時に亡くなったわ。」
「そうか・・・。ねえリリー。フリックさんがとても心配していたよ。一度連絡してみたらどうかな?誘拐されたんじゃないかって、警察に届けて町中に捜索ポスターを貼っていたよ。」
「…フリックさんと知り合いなの?
「ああ、旅の途中で出会ってね。」
「なぜ私がフリックさんの捜している子だと分かったの?」
「両親を3つの時に亡くした小人族の7歳でリリーという名の女の子なんてめったにいないだろう?まあ、とりあえず心配してたって事だけ伝えておくよ。」
(「手紙を読んで変に誤解したのね。とっても迷惑だわ。」)
「わかったわ。教えてくれてありがとう。今度きちんと挨拶をしに行ってくるわ。」
「うん、それがいいよ。それじゃあ僕はそろそろ寝るとするかな。おやすみ。再会を楽しみにしているよ。」
「おやすみなさい。良い夢を。」
「じゃあねー。さっきの話、おもしろかったよ!」
「おやすみなさい」
「ばい‥ばい…。」
こうして旅人は、再び自分のテントのある闇の中へと消えていきました。
「セウ。手紙を1通届けてもらってもいいかしら?」
「ん…。いいよ…。」
「ありがとう。さ、私達もそろそろ帰りましょうか。」
***
私ね、今とってもうきうきしているの。だってね、今日は旅行に行く日だから!
今回は少し遠い所に行くんだけど、セウに乗って行くから一瞬よ。
ピンポーン
「はーい。どうぞー。」
「おは‥よう…。」
「おはよう。いい天気ね。旅行日和だわ。」
「うん…晴れてよかった…。」
リリーが背中に乗った事を確認すると、セウは空に向かって軽々と飛び立ちました。
「やっぱり空を飛ぶのって楽しいわねー。」
「もう…なれちゃった‥から分から…ない。」
「そっか。セウにとっては私達が地面を歩くのと同じ事だもんね。」
「うん…。リリー…。」
「なあに?」
「今日は…穏便に‥ね?」
「…わからないわ。私はいつも穏便よ。でも相手がそうじゃないときは私も対抗しなきゃいけないじゃない?」
「…まあ、後処理…はきちんとして…ね。」
「はーい。」
その後も、楽しくおしゃべりをしたり、のんびり景色を楽しみながら、空の旅は3日続いた。
「とうちゃーく!お疲れ様、セウ。」
「ん‥リリ―も…お疲れ様。」
「私はセウに乗ってただけよ。それにしても、ここは人間が多いわね。」
今回リリーたちが訪れたのは「アスル」という人間が中心となっている国だ。
他の種族もいるにはいるが、やはりヴァリエッタ王国と比べると人間の数が圧倒的に多い。
「よし。さっさと用事を済ませて遊びに行きましょう。」
「うん。」
今回リリーたちがアスルに来たのは、ただ旅行をするだけが目的ではない。フリックさんに会いに来たのだ。
はあ、面倒ね。それに、旅人さんの言ってたことは本当だったのね。私の事が書いてある張り紙をもう何枚も見たわ。両親が亡くなって4年も経つっていうのに。手紙も出したのに。…ああ、面倒くさい。
そして、周りの人に聞きながら、なんとかフリック家にたどり着く事ができました。
ピンポーン
呼び鈴を鳴らすと、すぐに扉が開き、中からフリックと思しき人間が出てきました。
「リリー!リリーだね!ようやく会えた…」
***
私はフリック。人間だ。
今日もいつものように手紙をチェックしていると、切手のない封筒がひとつあった。
それに小さい。きっと小人族の物が書いたのだろう。
おそるおそる開けてみると、そこには子供の字でこう書かれていた。
『 フリックさんへ
お母さんとお父さんは死にました。
お父さんの手紙にお父さんが死んだらフリックさんを頼りなさいと書いてありました。
でも私へっちゃらです。
たくさんお友達もいます。
大好きなお家もあります。
なので、心配しないでください。
リリーより 』
心配しかできないよ。まって、リリーは確か、今年で3歳だったよな。そんな幼い小人族の女の子が一人暮らしはやばいだろ。
でもあいつ、私にも家の場所を教えてくれなかったからなぁ。どこにいるのやら。
いや、まてよ。なんかおかしくないか?
そんな小さな女お子がこんな手紙書くか?
もしかして誘拐とか…。
フリックは誘拐の可能性を思いつくと顔を
真っ青にして手紙を落としてしまいました。
たしかリリーがもっと小さい頃にも誘拐されていたよな。それからあいつめっちゃ過保護になって…。
やばい。どうしよう。とりあえず警察だ。
そうして、私のリリー探しが始まった。
張り紙をしたり、たびびとにきいたりもした。しかし、リリーは見つからなかった。
4年後。私は今日もいつも通り手紙を見ていた。
すると、その中に切ってのない封筒がひとつまじっていた。
正直てがふるえたよ。
4年前と同じだ。
震える手で何とか手紙を開けると、以前より少し上手になった字でこう書いてあった。
『×月○日に会いに行きます。』
そして今日、リリーが訪れる日。私はずっと扉の前でそわそわとしていた。
呼び鈴が鳴って、とりあえずリリーを家の中にいれると、すぐに応接間に案内した。
とにかく早く話を聞きたかった。
話を聞くと、どうやらリリーは本当に楽しく生活していただけのようだ。
「ごめんなさい、ずっと連絡しないで。こんな大ごとになっているとは思ってなくて。」
「大丈夫私が勝手に誤解しただけだから。それよりも、これからは私達と一緒に暮らそう。やはり子供だけで暮らしていくのは危険だ。」
「…フリックさんは夜のお散歩ってどう思います?」
「ん?まあ、たまにはいいよな。でも、子供だけではだめだよ。」
「そうですよね。‥フリックさん、私今の生活が楽しいの。お友達と沢山遊んで騒いで。私、フリックさんとは暮らさないわ。」
「…いや、だめだよ。やっぱり危険だ。供の子をこれ以上危険にさらす気にはわたしはなれない。」
私はもう決めたのだ、この子が大人になるまで守ると。
「そういえば、二人はどうして亡くなったんだい?」
「‥病で突然…。」
リリーがそう言うと、部屋の中に「ピ――」という音が鳴り響いた。
「なにこれ?」
リリーが首をかしげていると、フリックが真剣な顔をしてもう一度聞いてきた。
「どうして死んだのか?」と。
「ですから、突然の病だとさっき‥。」
音はまだ鳴り続けている。
「本当に?」
「こんな事で嘘をつく理由はないとおもうけれど。」
リリーが訪れる少し前、仕事関係の客人が訪れていた。
仕事の関係上、応接室には嘘発見器が置いてある。これは魔道具で、この世界に一握りしかいないという魔法使いが作った物だ。
いつもは客人が帰ったらすぐにスイッチを切っておくのだが、今日はあさからそわそわしすぎて消すのを忘れてしまっていた。
そして、今、その魔道具が反応しているということは、リリーがうそをついているということだ。
「…リリー。これはうそ発見器なんだ。さっき仕事で使っていたんだが切るのを忘れていたよ。‥もう一度聞くよ。二人はどうして死んだんだい?」
***
リリーたちはフリックさんとの話し合いを終えて、数日間旅行を満喫しました。
どうやらリリーたちがフリックの家を出たあと、殺人事件があったみたいで、警察が沢山あつまっていたので、フリックの家をもう一度訪ねることはありませんでした。
被害者はフリック・シャーリー(32)
警察が捜査した結果、その事件は自殺として処理されたそうだ。
そして、また3日かけてリリーの大好きな家に帰ると、ベアとディアが出迎えてくれました。
そして、4人でご飯を食べて、おしゃべりして、夜は皆できれいな星空を見ながら眠りに着きました。
え?私のお母さんとお父さんはどうして死んだのか?
ああ、私が殺したの。
私ね、自由が大好きなの。
自分の好きな事をして暮らしたいの
私が2歳の時に誘拐された事があるらしいんだけど、それで両親はすっごく過保護になっちゃってね。
お友達とも好きに遊べない。夜のお散歩なんて絶対無理。
私、この子が大人になるまで守る!とか言われても困るの。
だって、それって私から自由を奪うってことでしょう?私から自由を奪うなんて絶対だめだよね。
大丈夫、苦しまないように殺してあげたもの。とっても愛していたからね。
あ、これは誰にも言っちゃだめだよ。
ヴァリエッタ王国のとある森に、リリーという小人の女の子がいました。彼女は沢山の友達にかこまれながら、毎日楽しく暮らしています。とっても元気で可愛い女の子ですが、そんな彼女も薄暗いものを内に秘めているのかもしれません。
純粋な子ほど恐ろしいものですよね。
さあ、彼女のゆるゆるライフをお楽しみください。
私はリリー。7歳の女の子。お父さんとお母さんは私が3つの時に死んじゃったけど、私へっちゃらだよ。だって、私にはたくさんのお友達がいるもの!
まずは、空を自由に飛ぶことが出来る鳥族のセウ。水色でとっても綺麗なのよ。よく私を乗っけて飛んでくれるの。
お次は大きな体で力持ちの熊族のベア。毛がふっかふかで気持ちいいのよ。いっつもおしゃれさんで、たまに私のお洋服も作ってくれるわ。
あとあと、すっごく足が早い鹿族のディア。ディアは美容師さんだから、髪を切るのがとっても上手なの。
まだまだいるけど、一度に言ったら覚えきれないわよね。また今度教えてあげる。
え?小人族の大人はいないのか?大丈夫よ。こんなにたくさんのお友達がいるんだから。本当はお父さんのお手紙に、お父さんのお友達のフリックさんっていう人を頼りなさいって書いてあったんだけど、心配しないでっていう内容の手紙をその人に送っといたの。
そんなことより、今日はみんなで夜のお散歩に行く日なの。だからお弁当を準備しなくっちゃ。
今日はローストビーフのサンドイッチを作るの。みんなで食べたらきっと美味しいわ。
まずはソース。砂糖、醤油、酢、オリーブオイル、ニンニクをすりおろしたもの、そして玉ねぎをすりおろしたものをまぜる。…玉ねぎをすりおろすのは苦手よ。だって涙が出てきちゃうんだもの。前が見えないわ。あ、あまった玉ねぎの端っこはみじん切りにして使うわ。そしたら10分間煮込む!
煮込んでいる間にパンに挟む具材たちを切ってしまいましょ。
玉ねぎは薄く切って水にさらす。これも10分くらいかしら。あとは、レタスとトマトをカットして、・・・あ!
メインのローストビーフも切らなくっちゃ。ローストビーフは朝作っておいたの。我ながらとっても美味しくできたわ。・・・よし!
あとはバゲットに切込みを入れて、バターをぬる!
それにしても、やっぱりセウたちの分も作ると大変ね。体が私の何倍もあるんだもの。バゲットに切込みを入れるだけで疲れちゃうわ。
さて、10分たったわ。そしたら、ローストビーフにソースをよくからめて、全部はさんだら・・・完成!!
ピンポーン
あら、もう時間かしら。
「はーい。だあれ?」
扉を開けると、茶色いもふもふが目の前にあったので、リリーは思わず抱きつきました。
「ベアね?いらっしゃい。まだ集合時間じゃないわよね?」
「ああ、でも渡したい物があってね。今日の散歩用にと思って作ってきたんだ。きっと似合うよ。」
そう言ってベアが取り出したのは白いワンピースでした。裾に綺麗な花柄の刺繍が施してあり、後ろの首元にはリボンがついているもので、リリーは一目で気に入りました。
「とっても素敵ね。ちょうど何を着ていこうか迷っていたの。ありがとう。」
「ふふ、喜んで貰えて嬉しいよ」
「それに、ベアの服も素敵ね。そのパッチワークのベスト、とっても可愛いわ。あら、その腕につけている青いリボン素敵ね。どこの生地?」
「ああ、綺麗だろう。街にあるタハトっていう店だよ。あそこは品揃えが素晴らしいよ。店主のペコラさんもとてもいい方だしね。」
「あら、あの赤色の屋根の可愛らしいお店ね。見かけた事はあったけれど、入った事はなかったわ。明日行ってこようかしら。ちょうど食材を買いに行かなくちゃいけなかったのよ。」
「それなら私も一緒に行ってもいいかい?仕事用の布を買いたくてね。」
「もちろんよ、有名デザイナーさん。」
リリーがからかうようにそう言うと、ベアははにかむように笑いながら礼を言った。
それから、リリーはベアにお茶とお菓子を出してまた準備をしに家の中に戻りました。
さて、このワンピースにはどの靴が合うかしら。
んーー、この赤いサンダルか、茶色のブーツか…。
‥よし!ブーツにしましょ。髪は三つ編みにして、あ!青いリボンで結ぼう!ベアとお揃いね!ディアとセウの分も用意しときましょう。
夜20時過ぎ、青いリボンを揺らしながら楽しそうに森の中を歩いている四人組がいました。明かりは彼らが持っているランプと月明かりだけ。夜の森は恐ろしく暗い為、ランプと月明かりでは足元を少し照らす事しかできません。
しかし彼らは、そんな事お構いなしに楽しく話をしながらずんずんと歩いていました。
「やっぱり夜のお散歩は最高ね。とってもドキドキするわ。」
「空からだと‥町の夜景がきれい…だよ。」
「えー、僕も見たーい!僕もサンタさんのトナカイみたいにとべたらなぁー。」
ディアがそう言いながらぴょんぴょんとジャンプすると、頭の上に乗っていたリリーは振り回されてしまいました。
「あはは、ディアやめてー」
リリーは振り回されながらも、とっても楽しそうです。
「ディア、リリーは私の上に乗せてもいいんだよ?」
「セウの…上でも‥いい。」
「ごめんてー。リリー大丈夫?」
「ええ。ちょっと楽しかったわ。」
それから少し歩くと、本日の折り返し地点である湖が見えてきました。湖の周りには、月明かりとは別の明かりが灯っています。どうやら先客がいるようです。
「こんばんは、蛍さん達。あなた達もお散歩へ来たの?」
「こんばんは」
「そうだよ」
「もちろんお酒を持ってね」
「君も飲むかい?」
「ダメだよ、子供だもん。」
「小人族でしょう?」
「大人かもよ」
「じゃあ一緒に飲もう」
辺りを美しく照らしながら、片手にお酒を持って騒いでいた蛍たちがわらわらとリリーたちの周りに集まってきます。
「ごめんなさい。私まだ7歳なのよ。」
「えー」
「残念」
「なんだー」
「大丈夫!僕特製ドリンクを持って来たからそれで乾杯しよう。」
ディアはがさごそとかばんの中を漁ると、ジュースの入った瓶をじゃじゃーんと言いながら取り出しました。
「私のサンドウィッチもあるわ。」
「じゃあ乾杯しよう」
「祭りだ」
「夜はこれからだね」
「ん?小人のリリー?聞いたことある気がする」
「僕知らなーい」
「私も―」
「早く飲もー」
「楽しいねー」
蛍たちの会話はなかなか途切れません。まわりに大量の空の酒瓶が転がっているので、すでに結構な量を飲んでいるみたいです。
「よぉーし。みんな―準備できたー?」
「「「おーー」」」
こうして、夜の長い長い宴が始まりました。
「リリー、このサンドウィッチすごく美味しいよ。」
「うん!めっちゃ美味しい!」
「ん・・・美味しい・・」
「喜んでもらえてよかったわ。」
彼らのもふもふもちもちしたほっぺがもぐもぐと動く様子を、リリーはにまにまとしながら眺めていました。
「よし歌うか」
「歌おう」
「いいね」
「何歌う?」
「やっぱあれだよ」
「あれだね」
『お月様が照らします。お酒を飲む僕らを照らします。美味しい魚と美味しいお酒を食べて飲んで食べて飲んで。僕らは毎日騒ぎます。この世にお酒がある限り。僕らは飲み続けます。お月さまの元で。・・・』
「すっごい歌だなー。」
「ええ、なんとも独特な歌詞ね。」
『飲むぞー』
『歌えー』
『騒げー』
みんなが楽しく騒いでいる中、がさりと音を立てながら近づいて来る人影があった。
僕は旅人。名前は秘密さ。
今日は町を少し離れて森の方を歩いていたんだけど、気付いたらもう日が落ち始めていてね。今から町に向かうのは無理だから森で野宿をすることにしたんだ。それで、もう疲れて寝る所だったんだけど、近くで騒いでいる人達が居るみたいでね。うるさくて眠れないし、楽しそうだから行ってみることにしたんだ。
森の中は真っ暗で、一人だと少し心細いね。でも、愉快な歌声と暖かい光が少し先に見えてきたから気分は最高だよ。それに、微かにお酒の匂いもする。森の中なのにここまで香りが飛んでくるなんて、相当飲んでるね。旅にお酒は必須だよ。この先に入る人達とは仲良くなれそうだ。
『飲めー』
『歌えー』
『僕もまぜてー』
『騒げー』
蛍たちが陽気に歌っている途中に、今日初めて聞く歌声がまざった。しかし、気付いたはリリーだけのようだ。
「あら?だれかしら?今の。」
「こんばんは、小人のお嬢さん。いい夜だね。」
リリーが首をかしげていると、背後からいきなり声が聞こえてきた。振り向くと、ベアと同じくらいの身長の人間の男が立っていた。
「こんばんは。あなたも夜のお散歩に来たの?」
「いや、僕はこの陽気な歌声につられてね。旅の途中で、今日はこの森に野宿をする予定だったんだよ。君はこの森に住んでるのかい?」
「あら、旅人さんだったのね。そうよ。そこにいる彼らは友達のベア、ディア、セウ。そしてさっき出会ったばかりの蛍さん達。」
「あれ?リリー、その人は?」
「ん?なんだ?この辺じゃ見ない顔だな。」
「だれー?」
「ようこそー」
「お酒飲むー?」
「歌うー?」
「つまみがきれそうだよー」
「ねー名まえはー?」
「今追加分取りに行ってるー。」
「ねむーい」
ベアが旅人に気付いて声を掛けると、続いて他の者たちも一気に集まり出した。新しい客人の登場に皆興味津々です。
「僕は旅人。きみらの陽気な歌声とお酒の香りにつられてやって来たんだ。」
旅人が良く通る声でそう告げると、蛍たちが一斉に「お酒!」と叫んだ。
それからは旅人も加わり、再びどんちゃん騒ぎが始まった。旅人は、蛍たちに囲まれてひたすらお酒を飲んでいるようだ。
しばらくして、その辺で寝始めてしまう者たちが出てきて、森にいつもの静けさが戻って来た頃。旅人が旅の話をきかせてくれると言うので、みんなが彼の周りに集りました。
そして、みんなが座ったのを確認すると、旅人はお酒を片手に、足を組んで優雅に話し始めました。
「あれはたしか2年くらい前の春だったかな。僕はキレイなお花畑を歩いてたんだ。辺り一面、どこを見てもお花しかない所でね。でも、その中にぽつんとひとつだけ井戸があったんだ。そこの花畑は誰かが管理しているものではなくてね。その辺にはあまり人も住んでいなかったし、不思議だと思わないかい?まあ、旅人や行商人の為のものかな、とも考えたんだけど。少し異質な空気をまとっているような気がしたんだ。旅人の勘ってやつだよ。とりあえずそばに行って中を覗いてみた。そしたら、井戸についていた手を滑らせてしまって、井戸の中に落ちてしまったんだ。でも、落ちた割には何の痛みもなくて、恐るおそる目を開けてみたら、目の前には井戸の中とは思えない程普通の景色が広がっていた。普通に明るくて太陽があって、草木もあり、そして国もあった。そして、なんとその国は…。あ、ごめん。これはなしちゃだめなやつだった。えーっと、これじゃなくてー。」
「え?」
「ひどい」
「すごい気になるんだけど。」
「旅人さん。それはひどいわ。とっても気になるじゃない。」
「そうだそうだー」
「うん…。ぼくも…、きになる…。」
みんなが文句を言うなか、旅人はさらっとした笑顔で「ごめんごめん」と言うと、また語り始めた。
「去年の夏。僕はある島に行ったんだ。そこは地震が多かったり、時々謎の声がするという噂があった。心霊好きな人の間では有名なスポットらしいよ。
とりあえず、島に向かった僕は島の住人に話を聞いてみたんだ。
「こんにちは。この島に住んでいる方かい?」
「ええ、そうよ。」
「謎の声って本当に聞こえるの?」
「ああ、なるほど。」
その女性はにまにまと笑いながらこう続けたました。
「とりあえず、この島を楽しんで!運が良ければ真相を知ることができると思うわ。」
「えぇ。…わかったよ。ありがとう。」
そうして、とりあえず島を見て回ることにしたんだ。
まずは腹ごしらえをしに、その島で一番人気のハ―ヴというお店に行ってみた。そこの魚料理はほんっとうにおいしかったなぁ。塩をまぶして火であぶった丸焼きだったり、ハーブのいい香りがする焼き魚、アクアパッツァ、刺身もおいしかったなぁ。どれもお酒に合うしね。…今思ったんだけど、僕食べ過ぎだね。
…それから、海の風にあたりにいこうと海岸沿いに散歩に行ったんだ。その日はとてもいい天気でね、空は真っ青で、海は透き通った水色。きらきらしていてまぶしいほどだったよ。
でもその時僕はだいぶ酔っていたからね、ごつごつとした岩場をふらふらとした足取りで歩いていたら、足を滑らして落ちてしまった。幸い、そこは浅い場所だったから溺れる事はなかったよ。
その後、水面から顔を出して、岩に手をついて呼吸を落ち着けていたら、近くから声が聞こえてきてさ。「大丈夫?」って。辺りを見渡してみても、近くには誰もいなかった。気のせいかな?って思ったんだけど、やっぱり「怪我はない?」って聞こえてきた。
そして、ふと手をついている岩を見たんだ。少し動いた気がしてね。じっと見ていると、ゆっくりと扉が開くように動いていたんだ。動きが止まると、僕は現れたそれを見て思わず叫んでしまったよ。だって目の前に自分の体と同じくらいの大きさの目があったんだから。
この世界には色々な生き物がいるから、普段なら大きい目を見ただけでは驚かないんだけど、岩だと思っていたものにいきなり目が現れたからね。正直少し怖かったよ。でも、とりあえず生き物だと分かったからには話かけてみようと思ってね。
「ありがとう。大丈夫だよ。僕は旅人。きみは?」
「私はトルト。亀だよ。」
少し話しをしてみると、僕はこの島の正体がわかってきた。みんなももうわかったよね。
そう、この島は彼女の甲羅だったんだよ。面白いよね。でも、地震と謎の声の理由が分かってすっきりしたよ。
そういえば、最初に話した彼女は何故このことを教えてくれなかったんだろう?って思うよね。トルトに聞いて見たら、島の人間はみんなそうだよって言ってたよ。「よその人達が、私の事を知らずに、いろいろ考察をしてるのが面白いんだとさ。」って。
さて、これで亀の島『シュトライヒ島』の話は終わりだ。
子の話は君たちにしたのが初めてなんだけど、あまり広めないでほしいな。
その方が面白いだろう?」
こうして、彼の悪戯をたくらむ子供のような表情で放ったその言葉で彼の物語は幕を閉じた。
「亀さん!?」
「そんなとこあるんだー」
「最後悪い顔してたー」
「ねー」
「行ってみたーい」
「海の幸‥じゅるり」
「僕も旅したーい」
それぞれ楽しく感想を言いあいながら、蛍
たちはまた騒ぎ出した。
リリーがその様子をベアたちと一緒に楽しそうに眺めていると、旅人が近くに来て、「隣に座っても?」と尋ねた。リリーが首を縦に振って了承すると、お礼を言って静かに隣に腰掛けた。
「少し聞いてもいいかな?」
「ええ、いいわよ。」
「君のご両親は?」
「私が3つの時に亡くなったわ。」
「そうか・・・。ねえリリー。フリックさんがとても心配していたよ。一度連絡してみたらどうかな?誘拐されたんじゃないかって、警察に届けて町中に捜索ポスターを貼っていたよ。」
「…フリックさんと知り合いなの?
「ああ、旅の途中で出会ってね。」
「なぜ私がフリックさんの捜している子だと分かったの?」
「両親を3つの時に亡くした小人族の7歳でリリーという名の女の子なんてめったにいないだろう?まあ、とりあえず心配してたって事だけ伝えておくよ。」
(「手紙を読んで変に誤解したのね。とっても迷惑だわ。」)
「わかったわ。教えてくれてありがとう。今度きちんと挨拶をしに行ってくるわ。」
「うん、それがいいよ。それじゃあ僕はそろそろ寝るとするかな。おやすみ。再会を楽しみにしているよ。」
「おやすみなさい。良い夢を。」
「じゃあねー。さっきの話、おもしろかったよ!」
「おやすみなさい」
「ばい‥ばい…。」
こうして旅人は、再び自分のテントのある闇の中へと消えていきました。
「セウ。手紙を1通届けてもらってもいいかしら?」
「ん…。いいよ…。」
「ありがとう。さ、私達もそろそろ帰りましょうか。」
***
私ね、今とってもうきうきしているの。だってね、今日は旅行に行く日だから!
今回は少し遠い所に行くんだけど、セウに乗って行くから一瞬よ。
ピンポーン
「はーい。どうぞー。」
「おは‥よう…。」
「おはよう。いい天気ね。旅行日和だわ。」
「うん…晴れてよかった…。」
リリーが背中に乗った事を確認すると、セウは空に向かって軽々と飛び立ちました。
「やっぱり空を飛ぶのって楽しいわねー。」
「もう…なれちゃった‥から分から…ない。」
「そっか。セウにとっては私達が地面を歩くのと同じ事だもんね。」
「うん…。リリー…。」
「なあに?」
「今日は…穏便に‥ね?」
「…わからないわ。私はいつも穏便よ。でも相手がそうじゃないときは私も対抗しなきゃいけないじゃない?」
「…まあ、後処理…はきちんとして…ね。」
「はーい。」
その後も、楽しくおしゃべりをしたり、のんびり景色を楽しみながら、空の旅は3日続いた。
「とうちゃーく!お疲れ様、セウ。」
「ん‥リリ―も…お疲れ様。」
「私はセウに乗ってただけよ。それにしても、ここは人間が多いわね。」
今回リリーたちが訪れたのは「アスル」という人間が中心となっている国だ。
他の種族もいるにはいるが、やはりヴァリエッタ王国と比べると人間の数が圧倒的に多い。
「よし。さっさと用事を済ませて遊びに行きましょう。」
「うん。」
今回リリーたちがアスルに来たのは、ただ旅行をするだけが目的ではない。フリックさんに会いに来たのだ。
はあ、面倒ね。それに、旅人さんの言ってたことは本当だったのね。私の事が書いてある張り紙をもう何枚も見たわ。両親が亡くなって4年も経つっていうのに。手紙も出したのに。…ああ、面倒くさい。
そして、周りの人に聞きながら、なんとかフリック家にたどり着く事ができました。
ピンポーン
呼び鈴を鳴らすと、すぐに扉が開き、中からフリックと思しき人間が出てきました。
「リリー!リリーだね!ようやく会えた…」
***
私はフリック。人間だ。
今日もいつものように手紙をチェックしていると、切手のない封筒がひとつあった。
それに小さい。きっと小人族の物が書いたのだろう。
おそるおそる開けてみると、そこには子供の字でこう書かれていた。
『 フリックさんへ
お母さんとお父さんは死にました。
お父さんの手紙にお父さんが死んだらフリックさんを頼りなさいと書いてありました。
でも私へっちゃらです。
たくさんお友達もいます。
大好きなお家もあります。
なので、心配しないでください。
リリーより 』
心配しかできないよ。まって、リリーは確か、今年で3歳だったよな。そんな幼い小人族の女の子が一人暮らしはやばいだろ。
でもあいつ、私にも家の場所を教えてくれなかったからなぁ。どこにいるのやら。
いや、まてよ。なんかおかしくないか?
そんな小さな女お子がこんな手紙書くか?
もしかして誘拐とか…。
フリックは誘拐の可能性を思いつくと顔を
真っ青にして手紙を落としてしまいました。
たしかリリーがもっと小さい頃にも誘拐されていたよな。それからあいつめっちゃ過保護になって…。
やばい。どうしよう。とりあえず警察だ。
そうして、私のリリー探しが始まった。
張り紙をしたり、たびびとにきいたりもした。しかし、リリーは見つからなかった。
4年後。私は今日もいつも通り手紙を見ていた。
すると、その中に切ってのない封筒がひとつまじっていた。
正直てがふるえたよ。
4年前と同じだ。
震える手で何とか手紙を開けると、以前より少し上手になった字でこう書いてあった。
『×月○日に会いに行きます。』
そして今日、リリーが訪れる日。私はずっと扉の前でそわそわとしていた。
呼び鈴が鳴って、とりあえずリリーを家の中にいれると、すぐに応接間に案内した。
とにかく早く話を聞きたかった。
話を聞くと、どうやらリリーは本当に楽しく生活していただけのようだ。
「ごめんなさい、ずっと連絡しないで。こんな大ごとになっているとは思ってなくて。」
「大丈夫私が勝手に誤解しただけだから。それよりも、これからは私達と一緒に暮らそう。やはり子供だけで暮らしていくのは危険だ。」
「…フリックさんは夜のお散歩ってどう思います?」
「ん?まあ、たまにはいいよな。でも、子供だけではだめだよ。」
「そうですよね。‥フリックさん、私今の生活が楽しいの。お友達と沢山遊んで騒いで。私、フリックさんとは暮らさないわ。」
「…いや、だめだよ。やっぱり危険だ。供の子をこれ以上危険にさらす気にはわたしはなれない。」
私はもう決めたのだ、この子が大人になるまで守ると。
「そういえば、二人はどうして亡くなったんだい?」
「‥病で突然…。」
リリーがそう言うと、部屋の中に「ピ――」という音が鳴り響いた。
「なにこれ?」
リリーが首をかしげていると、フリックが真剣な顔をしてもう一度聞いてきた。
「どうして死んだのか?」と。
「ですから、突然の病だとさっき‥。」
音はまだ鳴り続けている。
「本当に?」
「こんな事で嘘をつく理由はないとおもうけれど。」
リリーが訪れる少し前、仕事関係の客人が訪れていた。
仕事の関係上、応接室には嘘発見器が置いてある。これは魔道具で、この世界に一握りしかいないという魔法使いが作った物だ。
いつもは客人が帰ったらすぐにスイッチを切っておくのだが、今日はあさからそわそわしすぎて消すのを忘れてしまっていた。
そして、今、その魔道具が反応しているということは、リリーがうそをついているということだ。
「…リリー。これはうそ発見器なんだ。さっき仕事で使っていたんだが切るのを忘れていたよ。‥もう一度聞くよ。二人はどうして死んだんだい?」
***
リリーたちはフリックさんとの話し合いを終えて、数日間旅行を満喫しました。
どうやらリリーたちがフリックの家を出たあと、殺人事件があったみたいで、警察が沢山あつまっていたので、フリックの家をもう一度訪ねることはありませんでした。
被害者はフリック・シャーリー(32)
警察が捜査した結果、その事件は自殺として処理されたそうだ。
そして、また3日かけてリリーの大好きな家に帰ると、ベアとディアが出迎えてくれました。
そして、4人でご飯を食べて、おしゃべりして、夜は皆できれいな星空を見ながら眠りに着きました。
え?私のお母さんとお父さんはどうして死んだのか?
ああ、私が殺したの。
私ね、自由が大好きなの。
自分の好きな事をして暮らしたいの
私が2歳の時に誘拐された事があるらしいんだけど、それで両親はすっごく過保護になっちゃってね。
お友達とも好きに遊べない。夜のお散歩なんて絶対無理。
私、この子が大人になるまで守る!とか言われても困るの。
だって、それって私から自由を奪うってことでしょう?私から自由を奪うなんて絶対だめだよね。
大丈夫、苦しまないように殺してあげたもの。とっても愛していたからね。
あ、これは誰にも言っちゃだめだよ。
ヴァリエッタ王国のとある森に、リリーという小人の女の子がいました。彼女は沢山の友達にかこまれながら、毎日楽しく暮らしています。とっても元気で可愛い女の子ですが、そんな彼女も薄暗いものを内に秘めているのかもしれません。
純粋な子ほど恐ろしいものですよね。
さあ、彼女のゆるゆるライフをお楽しみください。
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