BUG(バグ)~蟲の国ではすでに人間様は強者ではない~

こんぶおにぎり

文字の大きさ
3 / 18

入学式

しおりを挟む
ピピピピッ ピピピピッ ピピピピッ

目覚ましの音で重い体を起こす。
朝日が窓から差し込み男の顔を照らす。
部屋はとてつもなく汚く、いたるところに脱ぎ捨てられた服や、お菓子のゴミ、マンガとライトノベルが散漫している。

「うるさいな~」
昨日は新学期が始まることに緊張し、なかなか寝付くことができなかった。
頭を掻きながら、汚い床の上を歩きだす。

「痛い!!」

鋭い激痛が走る。

足に何か刺さったようだ。
「何が刺さったんだ?」
足を見てみると固まった米粒が画鋲のようになっていた。

幸いにも血は出なかったが幸先が悪いな。これから入学式だというのに。
「そろそろ片付けないとだめだな……」
痛がっている間にも目覚ましは鳴り響いている。


ドンッッ!!!!


隣の住人がさすがに切れたようだ。
何を言っているかはっきりとは聞こえないがとてつもなく怒っているのは誰にでもわかる。
体がだるいが頑張って目覚ましを止める。

朝ご飯は自分で用意した。
俺は朝に弱いので、簡単なものしかできない。
ご飯をよそって昨日の味噌汁入れる。目玉焼きも作り、急いで食べる。
目玉焼きは失敗して下が真っ黒こげになっていた。

食べながら溜まっているアニメを見て、元気をチャージする。
歯を入念に磨き、制服を着た。制服は素晴らしい!いちいち選ぶ必要がないので朝に弱い俺にはピッタリの制度だ。

別に?ファッションセンスがないとか言われたから、制服信者になったわけでは断じてない。
「ふぁぁ。今日は全然寝れなかった…寝付けなくて筋トレしたのは逆効果だったな。学校でちゃんと起きていられるか心配だ。」
体を疲れさせた方がよく寝られると思い、夜の公園で軽く腕立て伏せ100回、スクワット100回をしてからベッドに入った。

しかしながら、交感神経が副交感神経よりも優位になると血管が収縮して興奮状態に陥ってしまうので寝つきが悪くなるようだ。

俺は東京に住んでおり、家から学校までは非常に近い。
おかげでギリギリまで眠っていられるのがとてもありがたい。

今日は東帝高校の入学式なので早く家を出て8時頃学校に到着した。
結構多くの学生を見ることができた。

校門のところに新入生の行くべきところが記してある。
「えーと、右側の体育館に行けばいいんだな。」

俺は事前に配られていた番号のカードと同じ番号の席に座る。
「ここだな」


…入学式は順調に進み、各自の番号に対応した教室に案内された。(俺は当然のごとく式の間寝てしまっていた。)
「みなさん、入学式お疲れ様です。1-1の担任となった九条萌香です。みなさんよろしくお願いします。」
女性の人だ。身長は160cm程で、髪はショートで桃色。可愛らしい感じの先生だった。

「では、早速ですが自己紹介をしてもらいます。自分の名前と趣味を紹介しましょう。」
来てしまった自己紹介……この時間は自分の順番が回ってくるまでずっと心臓がドクドクと鳴り響き苦しくなってくるんだ。
(早く来てくれ頼む)俺は心の中でそう願った。


「次の人~、村上くん。おーい聞いてる?」
俺は先生の声に気づく。さらに緊張に拍車がかかったのが自分でもわかった。
「村上智尋です。」声が裏返り。恥ずかしさが一気に込み上げてきた。
「趣味はマンガとアニメです。」

自己紹介が終わてもまだ顔がすごく熱い。絶対耳まで真っ赤なんだろうな…
そんなこんなで全員の自己紹介が終わった。

「では自己紹介も終わったので、早速授業に入っていきまーす。」
先生はとても張り切っている様子だったが、生徒の方は真逆のようだ。
ギャーギャー騒ぎながらも先生の言うことに従った。

教室を移動し、広い大講義室のようなところに連れてこられた。
講義室は300人ほど入れそうなほどだ。
「今から、この方に授業してもらいます。」
先生に紹介された人が一歩前に出る。

「私は高木だ。早速だが授業を始める。お前たちは今この世がどうなっているか知っているか?」
高木はプロジェクターを使い授業を始めた。
「昆虫のおかげで我々人類は食糧危機から逃れる可能性を持っていたが、一つの隕石により全てが破壊されることになった。隕石には未知のウイルス、そして蟲が付着していた。それらは人間にはそれほど影響はないと考えられている。しかし、虫は別だ。体の構造が変化し、我々人類を破壊しに来ている。」

すると次々と生徒から質問が投げかけられる。

「どこからその隕石は来たんですかー」
「詳しいことはわかってはいない。」

「変化するって具体的にはどうなるんですか」
「体の大きさが普通より大きくなったり、もともとの形が変化してしまっている個体もある。個体によって様々なので完全には解明されてはいない。」

「何で人間を襲うんですか」
「逆襲なのかもな。人間への」

みんな意欲がすごい。俺はただ聞いているだけだった。

――――授業も終わり帰宅した。

TVをつけると蟲撃退用の特殊部隊を設置することが放送されていた。
俺が入学した学校に来る奴らは蟲と戦うことを目的とされ集められていた。どのような基準で選ばれているのかは定かではない。蟲を実際に見たこともない人間が、使い物になるのだろうか。学校の全校生徒は300人。一つの学年で100人だ。入学式には上の学年がいなかったので実感がわかなかったが、それにしてはえらく校舎が小さいと思えた。今度秋姉に聞いてみるとするか。夕飯はミートスパゲッティをつくった。麺を茹でる時間が足りなかったのか、少し硬い印象だった。

明日は休みだ。好きなだけ夜更かしできるので、溜めたアニメを消化する。
結局寝たのは5時だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います

こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!=== ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。 でも別に最強なんて目指さない。 それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。 フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。 これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。

国を追放された魔導士の俺。他国の王女から軍師になってくれと頼まれたから、伝説級の女暗殺者と女騎士を仲間にして国を救います。

グミ食べたい
ファンタジー
 かつて「緑の公国」で英雄と称された若き魔導士キッド。しかし、権謀術数渦巻く宮廷の陰謀により、彼はすべてを奪われ、国を追放されることとなる。それから二年――彼は山奥に身を潜め、己の才を封じて静かに生きていた。  だが、その平穏は、一人の少女の訪れによって破られる。 「キッド様、どうかそのお力で我が国を救ってください!」  現れたのは、「紺の王国」の若き王女ルルー。迫りくる滅亡の危機に抗うため、彼女は最後の希望としてキッドを頼り、軍師としての助力を求めてきたのだった。  かつて忠誠を誓った国に裏切られ、すべてを失ったキッドは、王族や貴族の争いに関わることを拒む。しかし、何度断られても諦めず、必死に懇願するルルーの純粋な信念と覚悟が、彼の凍りついた時間を再び動かしていく。  ――俺にはまだ、戦う理由があるのかもしれない。  やがてキッドは決意する。軍師として戦場に舞い戻り、知略と魔法を尽くして、この小さな王女を救うことを。  だが、「紺の王国」は周囲を強大な国家に囲まれた小国。隣国「紫の王国」は侵略の機をうかがい、かつてキッドを追放した「緑の公国」は彼を取り戻そうと画策する。そして、最大の脅威は、圧倒的な軍事力を誇る「黒の帝国」。その影はすでに、紺の王国の目前に迫っていた。  絶望的な状況の中、キッドはかつて敵として刃を交えた伝説の女暗殺者、共に戦った誇り高き女騎士、そして王女ルルーの力を借りて、立ち向かう。  兵力差は歴然、それでも彼は諦めない。知力と魔法を武器に、わずかな希望を手繰り寄せていく。  これは、戦場を駆ける軍師と、彼を支える三人の女性たちが織りなす壮絶な戦記。  覇権を争う群雄割拠の世界で、仲間と共に生き抜く物語。  命を賭けた戦いの果てに、キッドが選ぶ未来とは――?

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

処理中です...