BUG(バグ)~蟲の国ではすでに人間様は強者ではない~

こんぶおにぎり

文字の大きさ
14 / 18

プレゼント①

しおりを挟む
「君たちに武器を支給しよう!」

南はテンションが高く、大きな声をあげた。
部屋の中で反響する。

「先生、何でそんなに楽しそうなんですか」

「ナイロの武器ってさ、深い瑠璃色でさ、めちゃくちゃ格好いいんだよ。もう少しすると届くと思うから待っていろ!」

鼻息をフンフン鳴らしながら、ウロウロと歩き回っている。
落ち着きがないので、今は本当に子どものように見える。

コンコンッと研究室のドアがノックされる。
「すぐ行く!」
南は駆け足でドアに向かった。

ドアを開けると、何故か銀色のアタッシュケースに入れられている。
「もっと段ボールの箱とかに入っているのかなと思ってましたよ」
南はスタスタと黙って智尋の前に来て、数秒間黙ってしまった。

大きく息を吸っているのを確認した瞬間、ものすごい剣幕で怒鳴ってきた。
「このナイロの武器は純度100%のものだぞ。東京都の周りを囲っているナイロの純度でさえ60~80%だ。段ボールに入れるなど、そんなぞんざいな扱いはするものか!」

智尋に秋、のどかに彩香に比津見の全員が、そんな南を見て引いてしまっていた。

アタッシュケースを開けると、そこには拳銃が入っていた。

「すげ~。綺麗ですね」
「そうだろう、そうだろう。しかしこれは表面に薄く張っているだけだ。」

南は銃弾を手に取って見せた。

「これは、ナイロで作られた銃弾だ。何故表面に薄くなのか分かったか?」
「いや、分かんないです」
「君は馬鹿か。拳銃本体をナイロにしてどうする。君は拳銃で蟲を叩くのか?銃なんて弾が命だ。本体をナイロにしたって意味がない。だから、見た目はナイロ専用武器だって一目で分かるようにはしている。」

南は名残惜しそうな顔をしている。

「これは君のだ」

渡す手がプルプルと震える。

「あ、ありがとうございます」

智尋は拳銃を受け取り、一緒に入っていたホルスターを腰につけ、そこに収納した。

「よし、次は彩香の武器だな」

それからもう一つのアタッシュケースを開けた。
中には短剣が入っていた。
サバイバルナイフのようである。

「あーしの能力って爪だからそんなのいらないんじゃないの?」
「ふむ、確かに必要ではないが適合者だと証明するためにも持っていた方がいいだろう」

今度は手が震えていない。
しっかりと受け取った彩香は鞘に入れた。

「よし、では君たちの武器も紹介してもらおうか」

秋姉とのどか、比津見がそれぞれの武器を出す。
武器は机の上に置かれ、順番に説明してくれた。

「私の使っている武器は、智尋くんと同じ銃よ」

机には全く同じ銃が置かれていた。
次にのどか。

「あたしの武器はね……これの名前なんだっけ?」
「マウスピースでしょ?」
彩香が答える。

「そう!それです!よく知ってましたね。」

のどかは彩香に指をさしながら、ピョンピョン跳ねている。
智尋と秋が注意しようとすると、先に比津見が注意をした。
比津見は上を組みながら言った。

「人に指をさすな。常識だろう」

大声で怒鳴ったわけではないが、迫力は凄まじいものだった。
顔には一切の表情が見られない。
逆にこれがさらなる恐怖をのどかに植え付けることとなった。

のどかの顔は引きつり、涙目で智尋に助けを求めようと必死に目で訴えかける。
智尋は「はぁ」と小さなため息をついて助けに入る。

「比津見さん。このくらいで勘弁してもらえませんか?のどかも縮こまっていますし……」
比津見は気が付いたのか、あわてて謝ってきた。

「こういうのは家族や先生がするものだよな。すまない。気を付けるよ。のどかも悪かったな……」

焦って、早口になる。
比津見は反省の顔で下を向いている。
目はのどかと同様に涙目だ。

智尋はそれを見て驚き、必死に言葉をかける。
「いや、指摘は友達とか知らない人がすると結構効果あるんですよ。のどかも俺たちがいくら言ってもやめないので。むしろこちらがお礼言いたいくらいですよ。それに、それに……」

言葉に詰まった智尋だったが、比津見の顔には明るさが戻り、智尋の両手をつかんで胸の前に持ってきてギュッと握った。
智尋の手が軽く胸に当たっているが、そんなことはお構いなしである。

「ありがとう村上。すごくうれしいよ」

まっすぐな瞳で智尋を見て、天使のような笑顔を見せる。
思わず智尋の口から声が漏れた。

「可愛い……」

「え?」
比津見も驚いた顔を見せるが、それは智尋も同じことであった。

「声にでちゃってました?」
「あ、ああ」
比津見の顔はありえないほどに赤く染まっていた。

「そういうのはここではしないでくれ。未だ独身の私に対しての当てつけか?誠志郎。早く説明をしてやれ」
南の現在の状況を知ることになったが、智尋たちにはどうすることも出来ない。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います

こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!=== ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。 でも別に最強なんて目指さない。 それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。 フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。 これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。

国を追放された魔導士の俺。他国の王女から軍師になってくれと頼まれたから、伝説級の女暗殺者と女騎士を仲間にして国を救います。

グミ食べたい
ファンタジー
 かつて「緑の公国」で英雄と称された若き魔導士キッド。しかし、権謀術数渦巻く宮廷の陰謀により、彼はすべてを奪われ、国を追放されることとなる。それから二年――彼は山奥に身を潜め、己の才を封じて静かに生きていた。  だが、その平穏は、一人の少女の訪れによって破られる。 「キッド様、どうかそのお力で我が国を救ってください!」  現れたのは、「紺の王国」の若き王女ルルー。迫りくる滅亡の危機に抗うため、彼女は最後の希望としてキッドを頼り、軍師としての助力を求めてきたのだった。  かつて忠誠を誓った国に裏切られ、すべてを失ったキッドは、王族や貴族の争いに関わることを拒む。しかし、何度断られても諦めず、必死に懇願するルルーの純粋な信念と覚悟が、彼の凍りついた時間を再び動かしていく。  ――俺にはまだ、戦う理由があるのかもしれない。  やがてキッドは決意する。軍師として戦場に舞い戻り、知略と魔法を尽くして、この小さな王女を救うことを。  だが、「紺の王国」は周囲を強大な国家に囲まれた小国。隣国「紫の王国」は侵略の機をうかがい、かつてキッドを追放した「緑の公国」は彼を取り戻そうと画策する。そして、最大の脅威は、圧倒的な軍事力を誇る「黒の帝国」。その影はすでに、紺の王国の目前に迫っていた。  絶望的な状況の中、キッドはかつて敵として刃を交えた伝説の女暗殺者、共に戦った誇り高き女騎士、そして王女ルルーの力を借りて、立ち向かう。  兵力差は歴然、それでも彼は諦めない。知力と魔法を武器に、わずかな希望を手繰り寄せていく。  これは、戦場を駆ける軍師と、彼を支える三人の女性たちが織りなす壮絶な戦記。  覇権を争う群雄割拠の世界で、仲間と共に生き抜く物語。  命を賭けた戦いの果てに、キッドが選ぶ未来とは――?

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

処理中です...