BUG(バグ)~蟲の国ではすでに人間様は強者ではない~

こんぶおにぎり

文字の大きさ
15 / 18

プレゼント②

しおりを挟む
「ちょっと待ってよ!あたしまだ説明終わってないから」
のどかが口を開く。
すっかり目も元通りになっている。

「それと、彩香さんごめんなさい」
「いいよ。気にしなくていいから」

のどかは彩香の返答を聞き、説明を始める。

「マウスピースがあたしの武器なんだけど、これはもう一つの武器があって初めて役に立つの。その武器っていうのが、この洗濯ばさみみたいなやつなんだ。これを対象に投げると自動で口が開いてくっつく。その状態で、このマウスピースを噛むと、くっついたやつが閉じるの。」

挟むところがギザギザになっていて、なおかつ鋭く研がれている。

「それって、口で挟まなくても機械とかでやる方がすごい威力になると思うんだけど?それに、そんな小さいのじゃ役に立たないんじゃないのか?」
「それがね、おにーちゃん。これは、適合者にしかできない使い方なの。ナイロは適合者の能力がそのまま伝わる性質を持っていて、その力も適合者の力に依存するんだよ。」

説明するときの、のどかの顔はいつも自慢げである。

「どうにかならないのか?その顔」
「そうにもできないのである。ふふん」

改善する気は全くないようである。
そもそも治らないと考えないといけない。

「なんでその洗濯ばさみの武器だけに力が伝わるんだ?他のナイロの武器だってあるはずだろ?周りを囲っているのもナイロだし」
「そんなの分からないよ!おにーちゃんのバカ!!」
「いや、知らないで使ってたのかよ」

行き詰まると、南が説明をしてくれた。

「いいかい?この絶牙とマウスピースの一部のナイロには、所有者の情報が入っている。のどか、以前飴玉サイズのナイロを一日中舐め続けたことがあっただろう?」
「あったあった。あれ大変だったんだよ。ご飯とか食べられないし」
「そのナイロを混ぜて作られている。だから、他のナイロには力が伝わらない。それに単純な動きは誰にだってできるが、動かすことはかなり器用な奴じゃないと不可能だ。」

智尋は面白いことを考えた。銃弾をそれで作ると最強なのではないかと。
智尋は結構器用な奴である。
粘土でアニメキャラだって作れるし、時計の修理バイトだってしたこともある。
そんなことを考えている智尋にかまわず、比津見が説明を始めた。

「私の使っている武器は刀だ。日本刀のように硬くて丈夫なんだ」

見せられた日本刀は、ナイロの瑠璃色が非常に良く合っており、波紋はうねりの出てきた波のように見える。
濤乱刃と呼ばれるものらしい。

「この刀は凄いんだ!何体でもバッサリ斬れるんだぞ!!」

目がキマッており、息も荒くなっている。
早く斬りたいといった気持ちがひしひしと感じられた。
今ここで振り回してもおかしくないほどだ。

「とりあえず武器も渡したし、説明もしたから帰ってもいいぞ。というか帰れ」
南は冷たく言ってきた。

修司はまだ眠ったままなので、研究所内の看護師さんのような人に見てくれるよう頼んだ。
「じゃあな、修司。ゆっくり休めよ」
「あんた死んだらあーしのペアがいなくなるんだから死んじゃだめだからね」

外に出ると夕日が出てきており、辺りを赤く染めていた。
彩香とはすぐに別れて、智尋たち家族での帰宅となった。

「いや~それにしても、ひつみんめっちゃ怖かったね」
「ああ、けどそのあとの比津見さん可愛かったけどな」
「智尋くん、ちゃんとファッションに興味持たないといけなくなっちゃったわね。」

秋姉とのどかは智尋の方を見てニヤニヤと笑っている。
すると後ろから

ガタンッ!!!!!

と大きな音がした。
振り返るとそこには比津見がいた。
さっきの音は刀を落とした音だったようだ。
夕日のせいなのかさっきよりも顔が赤く見える。

「あ、いや、その~~~~」

そのまま反対に向いて走り出した。
適合者なので、足が非常に速く、すぐ見えなくなってしまった。

思わず笑みがこぼれてしまった。
怖いときと可愛い時のギャップが凄い。

「おにーちゃん完全に好きになってるじゃん」
「そうね、のどかの言うとおりだわ」

智尋は落ち着かせてから答える。

「ああ、完全に好きになってるな。けど、ちょっと気になることがある」
「「どうゆうこと?」」

「可愛いって言われるだけであの反応……もしかしてチョロインというものではないか?」
急に眼鏡をクイッと上げる仕草をし始める。

「「チョロインって?」」

また、クイクイッと上げる。

「惚れやすい人ってことであります。これは非常にまずいでことでありますぞ。誰にでもすぐに惚れてしまうので早めに行動せねば……しかし、彼女なんて必要ないと公言してしまっているため、私には行動を起こす気がない。というか、行動を起こせる自信がないのです。なんだかこの恋は実らない気がしますね~」

ものすごい早口で話しており、話している間もずっとカチャカチャしている。
周りの人達からも、危ない奴を見る目で見られている。

「ちょっと、おにーちゃん。急にどうしたの?」
「はっ!すまない。少し変になっていたようだ」

のどかが智尋の腕をつかんで軽くゆすると元に戻った。
秋も心配そうに見つめている。

「まあ、帰るか。それじゃあな」

智尋は逃げるようにまっすぐ家に帰った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います

こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!=== ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。 でも別に最強なんて目指さない。 それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。 フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。 これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

処理中です...