~地球に追放された第三皇女はこのまま終わるつもりはない~覇帝姫、宇宙宮 瑠詩羽の逆襲!

尾山塩之進

文字の大きさ
16 / 29

第16話 モーニングコーヒー、そして知略国家を攻撃する。

しおりを挟む
「ふう、やはりこのコーヒーというものは良いものですね、
あっ生クリームは要らないですよ、このままで結構ですわ」

 街の中心に巨大な壁が引かれて東西に分けられていたという歴史を持つ
 ビスマルク国の地方都市ハイデルベルク。
 わたし、宇宙宮 瑠詩羽うつのみや るしはと空也、
 ハクリュウの3人はこの街の喫茶店で『モーニングコーヒー』というものを嗜んでいた。
 この地球産の飲み物、『コーヒー』というものをわたしは結構気に入っている。
 パミロンメイド三姉妹の入れてくれるコーヒーももちろん良いのだが、
 今日は気分を変えてこの星の人間が入れたコーヒーを飲みに来たという訳なのである。

 わたしは足まで伸びた黒髪に豪華絢爛ごうかけんらんな装束にマント姿、
 空也はニホンの学校の制服姿、
 ハクリュウは白髪で全身鎧姿、地球人からすればこれは珍しい組み合わせなのだろう。
 何人かの人が遠巻きでわたしたちを見ながら何か言っている様だ。
 喫茶店から見える景色には、
 周囲とは一線を介する頑丈な姿をした要塞塔がそびえ立っている。
 これはかつてこの国に侵攻してくる敵国の爆撃機を撃ち落とす為に造り上げた
 『高射塔』というものらしい。
 戦闘に特化した無骨な施設を見ながら飲むコーヒーもまた格別である。

「姫様。この星を支配する常任理事国と呼ばれる5つの大国の残り2つの国が、
このエウロッパ州に存在するエイ国とブツ国になります。
二か国とも先の三国に比べると国力の差は如何ともしがたく、
実質のところ三国に追従する形だったようですが情報戦と知略に優れており、
この星の勢力図をかき回して自国の利益に繋げている様です」

 ハクリュウは手元の空中に浮かんだモニターを指さしながら言葉を述べる。

「力は無いけど頭だけは回る小賢しい国ということでしょうか、
ハクリュウの言い回しだと戦力的には一切期待できないのですね。
そういえばこの国はどうなのでしょうか?
このエウロッパ州の全ての経済を牛耳って実質支配しているのが、
このビスマルク国というデータがあるみたいですけれど」

「姫様、このビスマルク国には
かつて『ナトー』と呼ばれる
この星全体の戦力の半分とも言える程の強大な戦力が在った様ですが、
今は経済政策に全てを絞り、持っていた全ての戦力は手放してしまった様です」

「なるほど戦力を全て放棄して
金儲けのみに固執した経済国家に変化したということですか?
しかし戦力無くて星の支配国家などはありえませんから、
この国は無視して良いでしょう。
かつての戦力に満ち溢れていた頃のこの国と戦ってみたかったですね」

 ハクリュウとひとしきり話し、
コーヒーを飲み終えてカップを皿に置いたその時、
突然複数の男たちが現れてわたしたちを取り囲んだ。
 その全員が完全武装の兵士の様であり、
その手に構えた銃をわたしと空也、ハクリュウに向けている。

「貴様等全員、手を上げて、降伏しろ、抵抗しなければ命は保証する」

 彼らのリーダーと思われる人物がわたしに銃を向けながら言葉を述べる。
 なるほど、その物言いならわたしたちが何者か知っているということか。
 わたしはこの惑星上で自分たちの存在を隠す対策を何一つしていない。
 地球に来てから既に5日経つ、
 この星の国々も流石にわたしたちの存在は把握したということだろう。
 わたしは部隊のリーダーの言葉を意に介すること無く席を立とうとしたところ、
 男の一人が空也に銃を突き付けた。

「この少年を殺されたくなかったら大人しくしろ」

 ふふ、一番弱そうな空也を狙ったか。
 しかしそれでこの覇帝姫、宇宙宮 瑠詩羽を止められると思ったか。
 わたしは構うことなく席を立った。

「撃て!」

 男たちはわたし、空也、ハクリュウに一斉に射撃した。
 狙いは正確、腕の良さは褒めてやろう。
 しかし、その弾はわたしたちの頭に見事命中した瞬間に
 粉々に弾けて鉄の粒子と化して地面に落ちた。
 この中で一番弱い空也でさえも、
 昨日のルーシー国の核弾頭ミサイルの火力でも傷一つ付かなかったのだ。
 今更その程度の火力でわたしたちをどうにか出来る道理は無い。

「ば、化け物!? 一斉射!」

 男たちは銃を連射して来た。
 わたしは撃ってくる全ての男たちを”視た”。
 そして瞳に破壊の意思を込めて事象化させた。
 男たちは弾け飛んでその肉片も残さず消滅した。

「コーヒー、美味しかったわ、お釣りはとっておいて下さいね」

 わたしは喫茶店の店員にお代を渡し店をあとにした。
 旨いコーヒーのお礼として
 惑星ガリュマリンで取れた希少石も一緒に付けておいたが、
 この星ではその価値はわからないかも知れない。
 だがこれはわたしの純粋な気持ちなのである、
 例えそのまま捨てられても文句は無い。


 覇帝姫宮殿要塞はていききゅうでんようさいヴァーンニクスから
 瞬間移動光線テレポートビームが照射され
 ヴァーンニクスの船内に戻って来たわたしたち。
 わたしはヴァーンニクスをエイ国とブツ国の国境のある海峡の上空に亜光速航行させ、
 全長数キロに及ぶその巨大な姿を空中に停めた。

「この二国は情報を操って
 この星のパワーバランスを崩して利益を得る国々でしたね。
なるほど、驕りと傲慢さはなかなかのもでしょう。
わたし、宇宙宮 瑠詩羽うつのみや るしはの持つ意識感応力は、
この大宇宙に生きとし生ける、
文明を持つレベルの生物の大まかな思考
そして意思を感じることが出来るのですよ。
『この星の愚かな者共を意のままに操って
我等の利益にしてやろう』その様な意思を感じます。
ですが先の三国と比べるとこの星全てを
自分達でどうにかしてやろうとする強い心意気がまるで感じられません。
所詮は頭だけで戦力が供わない知略国家ではこの程度ですか。
わたしが出るまでも無いですね。ハクリュウ、
覇帝姫宮殿要塞ヴァーンニクスの惑星級破壊砲プラネットカノン
最小パワーに絞って発射なさい!」

「姫様、御意。
ヴァーンニクスの惑星級破壊砲プラネットカノンを最小威力で発射!
それぞれの首都ロッドン、バリィに命中。共に消滅を確認しました」

 両国の首都が消えて幾ばくの間隔を置いて、
 それぞれの国から弾道ミサイル群が発射されヴァーンニクスに迫る。
 しかしそのミサイル群はヴァーンニクスを素通りして
 そのまま対岸状に向かい合った隣国へと突き刺さった。
 凄まじい爆発が次々と巻き起こり、超巨大なキノコ雲が立て続けに吹き上がって、
 エイ国とブツ国の領土を削り荒野に変えていく。

「ハクリュウ、これはどういうことでしょうか?」

「姫様。これはおそらくですが
互いに隣国を『核弾道ミサイル』を標的として前々から設置しており、
攻撃を受けた瞬間に反撃をする手はずになっていたのではないかと。
…む、エイ国の機動兵器、『タイフーン』、『ライトニングⅡ』。
ブツ国の機動兵器、『ラファール』、『ミラージュ』が互いに上がって来ました。
ヴァーンニクスの前哨空域で互いに接敵、戦闘を開始します」

 エイ国とブツ国の戦闘機は互いに攻撃を開始する。
 機体と機体が音速飛行で交差して互いに武器を射撃する。
 バルカン砲と空対空ミサイルが飛び交って
 命中した機体が次々と爆散して落ちていく。

「幾ら何でもおかしいですね、
それぞれの首都を消したのはわたしということは当然認識されている筈。
それを無視して互いに戦いを始めるなど…」

 訝しむわたしの前に、突如巨大な力の波動が生まれ、
 ヴァーンニクスの2倍以上の全幅の巨大な城が空間跳躍してきた。
 煌びやかで絵本に出てくる
 おとぎの国の城の様な形をした宮殿が2つ左右に連なっていて、
 その城壁にはメルヘンな城には不釣り合いな巨大な砲が無数に並んでいる。

「あれは…
双子宮要撃城ふたごみやようげきじょうシンクロナイズ』ですか!」

「あははー、瑠詩羽ー、それはねー、
私達が告げ口したからだよねー、ねえ慈留亜じるあー」

「うんー、私達がエイ国とブツ国の
一番えらいひとに告げ口したからだよねー、紅留亜べるあー」

「この星の自分たちより強い国は全て消えたからー」

「あとは隣の国さえ消せばこの星の一番は自分たちものだよってねー」

 シンクロナイズから甘ったるい少女の声が周囲に響いた。
 第十皇女、紅留亜べるあ、第十一皇女、慈留亜じるあ
宇宙宮皇家末妹である双子姉妹の声である。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~

いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。 地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。 「――もう、草とだけ暮らせればいい」 絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。 やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる―― 「あなたの薬に、国を救ってほしい」 導かれるように再び王都へと向かうレイナ。 医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。 薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える―― これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記

ノン・タロー
ファンタジー
 ごく普通の女子高生である「武久 佳奈」は、通学途中に突然異世界へと飛ばされてしまう。  これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、ただごく普通の女子高生が、自力で会得した魔法やスキルを駆使し、元の世界へと帰る方法を探すべく見ず知らずの異世界で様々な人々や、様々な仲間たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していく記録である……。 設定 この世界は人間、エルフ、妖怪、獣人、ドワーフ、魔物等が共存する世界となっています。 その為か男性だけでなく、女性も性に対する抵抗がわりと低くなっております。

皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜

百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。 「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」 ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!? ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……? サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います! ※他サイト様にも掲載

処理中です...