赤の魔女と青の魔導師 ~交わる運命と魔法の記憶~

にしのみつてる

文字の大きさ
1 / 43
第1章

魔導士ポールと魔女セシル

しおりを挟む
 この物語は、今からおよそ10年前、西の大陸マケドニアのガリア国コールマ市から始まるのだった……

水野基也みずのもとや清水陽菜乃しみずひなのは共に転生者として生まれてきたが、転生前の記憶は定かではなかった。

 清水陽菜乃はアンギリア国の商家の次女、セシル・ソフィー・ヴァネルとして転生していた。一方で水野基也はローミ国キャロル子爵の三男ポール・ラッセル・キャロルとして転生をした。



 二人が出会ったのはアンギリア国の国立魔法学院で5年間一緒に学ぶ間に相思相愛の仲になり、学年最後の夏休みに、二人はガリア国のコールマ市に卒業旅行と新婚旅行を兼ねて旅立ったが、運悪くズメイが街を襲って来たのだった。

 ガリア国のコールマ市はゲルマニア国とエレベシア国に近い一年中花が咲く美しい街だったが、ズメイが街を襲ったため、人々は混乱し、街中は大騒ぎとなっていた。

 二人はズメイ討伐隊に、魔導士ポール、魔女セシルとして志願し、ポールは爆裂魔法エクスプロージョンを使う魔導士として、セシルは回復魔法ヒール炎魔法フレア・アローが使える魔女としてズメイ討伐隊に正式に参加した。


 ズメイとは、東の大陸プリキアでそう呼ばれる、頭が3つある火を吹く巨大な竜であった。100年前にもズメイが東の大陸から飛来し、コールマ市の半分が壊滅的に破壊された事件があったと伝えられていた。

 そもそも人間が剣と魔法だけで巨大なズメイを倒せる訳が無かった。並の魔導士が束になって火炎魔法を放っても力不足であったのでズメイを倒すことは事実上不可能であった。ズメイから町が少しでも攻撃されないように抵抗するだけだったのだ。

 魔導士ポールはズメイに対して爆裂魔法エクスプロージョンをポーションを飲みながら何度も打ち続けたが、ポールが魔力切れに陥り、セシルの回復魔法も魔力切れを起こしたポールには効果がなかった。

 ズメイは怒り狂い、討伐隊をブレスで全て焼き殺し、魔導士ポールと魔女セシルは討伐隊と共に焼け死んでしまった。ズメイが吐いたブレスは後の被害報告ではコールマ市の半分を灰燼にしてエレベシア国の山へと飛んで行ったと記録された。

 亡くなった二人の魂は49日間霊界をさまよい続けていたが、冥府を司るハーデースとペルセポネーが二人の魂を一時預かっていた。最近になって冥府管理システム・ケルベロスが完成したことをきっかけに二人の魂は勇者、聖女の候補としてケルベロスに正式に登録されたのであった。

 この世界で二度目の転生をすることになった二人の魂は創造神ゼウスと妻神ヘーラが受け持つ事が神界の会議で正式に決まった。転生をする前に新しい肉体が与えられ、二人の年齢は共に22歳の男女の体になっていた。

 モトヤとヒナノは新しい肉体に魂が固定したので冒険者の衣服一式が与えられ、これから転生をするために神と対面する白い部屋に立っていた。

「信心深き者たちよ」
「我らは、このイポニア国を統べる、ゼウスとヘーラである」
 威厳のある低い声が白い部屋に響いてきた。

「汝らは魔導士と魔女としてこれから転生させるが、転生先は東の大陸 プリキアの小さな島国イポニア国のチアフィーロ市に転送するので、自ら工夫をして早期にレベル99まで上げるのじゃ。そうすればジェネオスとアギオスとして栄光と繁栄が約束されるであろう」

「なお、この神託は強制はせぬが、汝らが魔導士と魔女を辞退した場合はどこかの星に飛ばされ、後悔の人生を送るであろう」

「モトヤはこの神託を受け、魔導士となることを誓うか」
「はい、誓います」

「ヒナノはこの神託を受け、魔女となることを誓うか」
「はい、誓います」

「それでは先にこのタブレットを下賜するので賢者にこのイポニア国の事について色々と学び聞くのじゃ」

 白い空間に大きな穴が開いて、二人はイポニア国のチアフィーロ市に転送されたのだった。

 モトヤとヒナノは午後の柔らかい日差しを受けてオラ川の河原で気を失っていた。オラ川とはチアフィーロ市内を流れる川で少し離れて領主の城が見えていた。冒険者ギルドは領主の城のすぐ隣に建っていた。

「ヒナノ、大丈夫か」
「モトヤ、大丈夫よ、ありがとう」

「俺たちは再び生き返ったのか?」
「そうよ、神様のおかげで新しい命をもらったのよ」
二人はようやく立ち上がって辺りを見渡した。

「元の名前と記憶を引き継いで来たようだが、魔法は使えるかな」
「ステータス・オープン」

◇ ◇ ◇ ◇

【名前】モトヤ・ミズノ
【種族】人族
【年齢】22
【称号】魔導士
【スキル】
 ゼウス神の加護
 爆裂魔法 具現化 鑑定 収納 転移 隠蔽 
【LV】35
【MP】55000

【名前】ヒナノ・ミズノ
【種族】人族
【年齢】22
【称号】魔女
【スキル】
 ヘーラ神の加護 
 回復魔法 製薬 鑑定 収納 隠蔽
【LV】35
【MP】55000

◇ ◇ ◇ ◇

「ヒナノ、元のレベルは引き継いで来たようだな」

「ええ、そうだけど、神様の加護をもらっているのと、スキルがかなり増えているわよ」
「そういえばスキルが色々と増えているな」

「ヒナノ、他人に見せる時はスキルを全て隠匿しておこう」
「そうね」

「モトヤ、神様はタブレットを下賜すると言ってなかったかしら?」
「ああ、そういえばもらったな」

 モトヤはタブレットのスイッチを入れた。

「ようこそ、モトヤさん、ヒナノさん、私は賢者と申します」
「これからお二人のお手伝いをしますのでご質問は何なりとお聞き下さい」

「賢者、神様は具体的に俺たちに何を望んでおられるのだ」
「はい、難しい質問になりますが、現在、イポニア国には20組の勇者と聖女がいます」
「将来的にはイポニア国に47組の勇者と聖女が全国に配置される予定なのです」

「普通は地球からこの世界に転生して間もない勇者と聖女はレベル5からのスタートになりますが、今回、お二人はこの星での二度目の転生になりますのでかなり特殊なケースだったと思われます」

「俺たちの魔力量が多いのもそのためなのか?」

「はい、モトヤさんとヒナノさんの称号は今は魔導士と魔女になっていますが、神界では、勇者と聖女と同じ扱いになっています」

「ですから、魔力量も一般の魔導士・魔女の10倍以上もらえたのだと思います」

「そうだったのか、それで納得したよ」


「それと、ゼウス様とヘーラ様はモトヤさんとヒナノさんが、早期にレベル99まで上がる事を望んでおられ、ジェネオスとアギオスとして、これから転生してくる勇者と聖女を育てていく教育係になる事を望んでおられます」

「賢者、ジェネオスとアギオスとは何の事だ?」

「はい、一般の人々は勇者・聖女と気軽に呼んでいますが、この世界の神様が正式に認めた勇者と聖女の名称はジェネオスとアギオスになります」

「ヒナノ、魔導士モトヤと魔女ヒナノで後進を指導していくのが俺たちの目標のようだな」
「そうね、私も頑張るわ」

 こうして、新しい体をもらって転生してきたモトヤとヒナノはゼウスとヘーラーが勇者と聖女の育成を願っていることをタブレットの賢者から聞いて知ったのだった。



「では、決意も決まったところで、お二人には今からキャンピングカーを作っていただきます」
 タブレットの画面にはキャンピングカーが表示されていた。

「ヒナノ、どうする」
「私は賛成よ、だって馬車の揺れはお尻への負担が大きすぎるもの」
「そうだな」

「賢者、どうやって作るのだ」
「画面を見ながら、頭の中で強く念じて下さい、具現化魔法が発動してキャンピングカーが出来上がります」

 モトヤはしばらく目をつむってキャンピングカーを頭の中で強くイメージした。モトヤの体から魔力が少し持っていかれたが、しばらくするとドドーンと太鼓の音が鳴って目の前にキャンピングカーが現れた。

「ヒナノ、本当にキャンピングカーが出来たな」
「モトヤ、良かったね」

 二人はキャブコンと呼ばれるキャンピングカーに乗り込んで内装の良さに驚いたのだった。

(話終わり)
----------------------------------
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

キズモノ令嬢絶賛発情中♡~乙女ゲームのモブ、ヒロイン・悪役令嬢を押しのけ主役になりあがる

青の雀
恋愛
侯爵令嬢ミッシェル・アインシュタインには、れっきとした婚約者がいるにもかかわらず、ある日、突然、婚約破棄されてしまう そのショックで、発熱の上、寝込んでしまったのだが、その間に夢の中でこの世界は前世遊んでいた乙女ゲームの世界だときづいてしまう ただ、残念ながら、乙女ゲームのヒロインでもなく、悪役令嬢でもないセリフもなければ、端役でもない記憶の片隅にもとどめ置かれない完全なるモブとして転生したことに気づいてしまう 婚約者だった相手は、ヒロインに恋をし、それも攻略対象者でもないのに、勝手にヒロインに恋をして、そのためにミッシェルが邪魔になり、捨てたのだ 悲しみのあまり、ミッシェルは神に祈る「どうか、神様、モブでも女の幸せを下さい」 ミッシェルのカラダが一瞬、光に包まれ、以来、いつでもどこでも発情しっぱなしになり攻略対象者はミッシェルのフェロモンにイチコロになるという話になる予定 番外編は、前世記憶持ちの悪役令嬢とコラボしました

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...