改訂版 愛のエキスと聖女さま

にしのみつてる

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第3章

超音速ドラゴン『リューコ』

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 ミサエさんたちが作った『特製・シュラスコ』を食べてヒロシとサブローはお腹が一杯だった。

「モックを参考にワイバーンを超音速ドラゴンに改造しました。名前は『リュドラーコ(試)』です」
「愛称は『リューコ』です」

 ヒロシたちの前に全長5メートル、翼長5メートルの正三角形型の無人機が現れた。機体は龍の目に似せた射撃統制システムが搭載され、戦闘だけに特化したAIクリスタル脳が搭載されていた。機体後部はロケットブースターになっており、魔石は1回使い切りタイプで爆裂魔法を3秒間だけ噴射し、規定のマッハ2に達した後は機体の姿勢を細かくコントロールする専用コントローラー(ギガント・ゴーレムの魔核)が搭載された。
 飛行中の戦闘は出来ないので腹部ハッチは『強化型座標ボール』を2機搭載可能で、通常の座標ボールも50個搭載できた。

「ヒロシさん、かっこいいですね」
「サブロー、ワクワクするな」

「とりあえず、ヨダシステムの最新情報によると、サンパウロ国の中心都市は『シダブルーチ』と呼ばれています」
「市内は3つの区に別れ、フジシタ区(貴族街)、ゴルゴバ区(教会本部)、ペソア区(貧民街)の3つです」

「貧民街の人々は勇者召喚の生贄として、殺さないように一箇所に集められているようです」

「酷い、許せないな」「ぶん殴っていいな」
「アラン、イワン、それを言うなら『助さん角さん、やっておしまい!』でしょ」
「ベッキー古いな」「今のはウケたぞ」

「ヒロシさん、バトルメイドと執事ロボがボケとツッコミをやっていますよ」
「見てると飽きないな」

「『強化型座標ボール』を2機搭載、通常の座標ボールを50個搭載して、三つの区をくまなく調べよう」
「「「「了解」」」」

「エレナ、ベッキ、通常の座標ボールを50個作ってくれ」
「ベッキ、楽勝ね」

「イワン、『強化型座標ボール』を2機作ってくれ」
「了解」

「『リューコ』、カタパルトにセット・オン」

「カタパルト準備完了」
「『リューコ』射出準備完了」
「方位 7度、打ち上げ角、30度」
「3,2,1……」
「発射」グォーン
「射出成功」

「ブースター点火」

 ギュィーン 「3、2、1」ドカーン
「ソニックブーム確認」
「高度4万メートル、『リューコ』成層圏に達しました」
「巡航速度、マッハ2で飛行」

「目的地、シダブルーチ上空まで160分」
 リビングの大型モニターには『リュドラーコ』の打ち出しの様子と、飛行中の画像が送られてきていた。

「「「「やった~成功だ」」」」
 パチパチパチパチ……

「目的地まで160分は長いな」
「ヒロシさん、それは贅沢ですよ。ログハウスだと約10時間の飛行時間ですから」

「『リューコ』、高度4万メートルで飛行中。魔力安定」

「アラン、イワン、『リューコ』はこのまま4万メートルで飛行し続けるのか?」
「はい、今回はスピード重視なので減速する機構などは省いています」
「ヒロシさん、何かありましたか?」

「将来的に人が乗れたらと思ったけど……」
「人が乗れるように大型化は可能ですが、現状でも魔石の燃費が半端なく悪いことが判明しました」
「忘れてた。ロケットブースターが課題だったよ」

「ヒロシさん、ニューヨーキの市立図書館に飛行機の本は無いでしょうか?」
「アラン、イワン、座標ボールでニューヨーキの市立図書館の蔵書目録はデータベース化してた?」
「はい、既に終わっていますが……ありました。『ロイト兄弟の動力飛行実験』です」

「実験では『260メートル飛行した』となっています」
「アラン、イワン、サブロー、たぶん、数年先には飛行機が実用化されるかも知れないよ」

「ラファエル、『ロイト兄弟の動力飛行実験』は神界に内容を送信してくれ」
「了解しました。既にヨダシステムに蓄積され、解析に入っています」

「『リューコ』、目的地到着5分前、座標ボール、投下準備」
「目的地到着3分前、ハッチオープン」
「『強化型座標ボール』投下」
「座標ボールを50個投下」

「『リューコ』任務完了、回収作業に入ります」

「『強化型座標ボール』2万メートルの位置で固定完了」
「座標ボール、高度1000メートルで貴族街に20個、教会本部に20個、貧民街に10個、配置完了」

「映像転送開始」
「『ルミナスの矢』✕100 発射」
「『強化型座標ボール』オートマティック ディシジョン・起動」
「対象者を悪意レベル5以上に固定」
「スキャン完了」

「貴族街の無力化完了、教会本部の無力化完了」

「『ルミナスの矢』✕100 発射」
「『強化型座標ボール』オートマティック ディシジョン・起動」
「対象者を悪意レベル5以上に固定」
「スキャン完了」
「メガサンダーボルト・ディレイド発動」


「貧民街の監視員、無力化完了」

 ____フジシタ区side____

 フジシタ区とは転生者フジシタ・タケシ・アントニオが50年前に大統領になってシダブルーチの街を強引に区割りを行なった。日系ブラジル人の彼は転生先が元の世界と似ていることに気付き、直ぐに仲間を募って成り上がり貴族になった。彼の行動は名前からも察しがつくが『ジャイアニズム』に長けていた。

「申し上げます、何者から……アガーラハーラペロペーロ……」  
「セルジャン、どうした……アガーラハーラペロペーロ……お花畑ぐーるぐる」

 金満貴族たちはナイトメアが見せている幻影でお花畑全開で裸踊りを踊っていたが、凝視していたのは貴族たちの屋敷で働いていたメイドたち使用人だった。執事たちは金満貴族のお金をちゃっかり着服していたので『強化型座標ボール』の自動判定で無力化されていた。

 そのとき、区の中心にある「フジシタ・タワー」から奇妙な音が鳴り響いた。  
 ゴォォォォ……という低音とともに、空に巨大な顔が浮かび上がる。それはフジシタ・タケシ・アントニオの若かりし頃の顔だった。  

「我が名を讃えよ!……ゴォォォォ…………ゴロンゴロン、「フジシタ・タワー」は根本から崩れ去った。 

 幻影の中で裸踊りを踊っていた貴族たちは一斉に「フジシタ様ーーー!!」「タケシサマー!!」と叫び、さらに深く幻影の中に沈んでいった。
   
 一方、メイドたちは冷静だった。貴族たちが幻影中で踊っているので貴族の宝石と金貨を退職金代わりに回収してメイドたちと使用人たちは密かに屋敷を去っていった。

 こうして貴族街の建物は完全崩壊し、後は瓦礫の山だけが残った。



 ____ゴルゴバ区side____

 ぺぺペン、ぺぺペン ポンポン ポンポン ぺぺペン、ぺぺペン ズンチャ ぺぺペン、 ズンチャ 

 カンジーザイ ボサツ ギョージン ハンニャーハラミッター ジンギョー
 ショウケン ゴウン カイクー ドイッサイ クーヤク

 チュドーン、ガラガラピシャーン

「申し上げます、何者から…… ハラミッター……お花畑ぐーるぐる」……


 司教と召喚術士たちが落雷の影響で突然裸になって裸踊りを踊りだした。実際は『ルミナスの矢』に当たり悪意を持った者だけが対象なのだか、生贄として集められた奴隷はペソア区に向かって急いで走っていった。

 教会施設は全ての建物に亀裂が入り、いつ崩れてもおかしくなかった。地上100メートルの救世主像が頭が崩れ落ちていた。
「……お花畑ぐーるぐる」……

「早く逃げろ」「ペソア区に走れ」使用人たちは口々に叫びながら、ペソア区に走って逃げた。

 チュドーン、ガラガラ、ガラガラ、ゴォォォォ…………ゴロンゴロン……教会施設は完全に崩れさり瓦礫の山だけが残っていた。

「作戦終了」


続く──
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