改訂版 愛のエキスと聖女さま

にしのみつてる

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第2章

ラファエル国境の町に着陸してくれ

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 ラファエルの提案でタイバン国にカステラとパピア焼きを食べに行く事になったヒロシとミサエさん、ダリナとサブローの4人は書き置きをしてキャンピングカーに乗り込んだのだった。

「絶対防御3重展開」
「魔導ジェットエンジン異常なし」
「与圧システム異常なし」
「計器類オールグリーン」
「フライトチェック、完了」

 サブローは青い離陸ボタンを押した。4人を乗せたキャンピングカーは静かに上昇を開始した。ミサエさんとダリナは昼食の準備を始めた。

「テイクオフ」


「ヒロシさん、サブロー、今日のお昼はお好み焼きよ」
「ミサエさん、出来ました」

「ダリナ、上手に焼けたわね」
「ダリナさん、串焼き肉は無いのですか?」

「サブローだめよ、ちゃんと前を見て操縦して」
「ヒロシさんも、注意してよ」
「ミサエさん、ダリナ、自動運転だから大丈夫だよ」

「ラファエル、コース上に串焼き肉を売っている町を通過しないのか?」
「飛行コースから少し外れてしまいますが、ここから160キロ先のモンゴリア国と国境の町キャフテに着陸しましょう。多分、ショルラッグを売っている店があるはずです」

「ラファエル、国境の町キャフテに着陸してくれ」
「了解しました。立ち寄り地をキャフテの町外れに着陸します」

 ゼニト村を離陸して20分後にキャンピングカーは国境の町キャフテの町外れに着陸した。キャフテの町は中心部よりも国境検問所に続く道路両側が屋台村になっていて入出国の人々で賑わっていた。

「ミサエさん、随分にぎやかな町だね」
「そうね、国境の町って、もっと寂れていると思っていたわ」
「俺もそう思っていた」

 検問所近くの屋台村が賑わっているのは訳があって互いの領主は国境の通行税を無税にしていた。屋台の出店も商業ギルドで屋台を借りれば誰でも出店が可能だったので自然と食べ物を扱う屋台が多かったが、他にも石鹸、中古衣料品、食料品等あらゆる物が集まっていた。


「ダリナさん、串焼き肉の店がありますよ」
「サブロー、良かったね」
 二人は屋台に向かって走って行った。

(ダリナ、サブロー、はぐれないようにな)
((は~い))

「おじさん、ショルラッグ20本ください」
「あいよ、銀貨1枚だ。焼けるまでちょっと待ってくれ」
 サブローは店員に銀貨1枚を払った。店主と店員が焼いてくれたショルラッグ20本はサブローが収納にしまった。ヒロシとミサエさんは走って追いかけてきた。

「兄貴、女が二人ですぜ」
「よし、スキを見てかっさらおうぜ」
 物陰から二人組の男がヒロシたち4人を物色していた。彼らは弱そうな旅人を見つけては金品や女子供を盗む悪事を重ねていたのだった。

(ミサエさん、ダリナさん、まもなく二人組の強盗が襲ってきます、防御魔法が発動しますので身構えて下さい)
(ダリナ、気をつけて)

   二人組の強盗の手が伸びた途端に、バチン、バチン、バチン、バチン、ミサエさんとダリナを攫おうとした二人組の強盗はペンダントの絶対防御魔法で弾かれて口から泡を吹いて気絶してしまった。ヒロシとサブローは拘束魔法で二人組の強盗を縛ったのだった。

「強盗が倒れたぞ、誰か騎士を呼んでくれ」
「通行人の誰かが大声をあげた」

 まもなくして街道巡回中の騎士団一行が二人組の強盗を詰め所に連れていった。ヒロシたちは事情聴取のために詰め所に同行したのだった。

「ゼニト村から来たヒロシとミサエ、サブローとダリナだな」
「「「「はい」」」」

(ミサエさん、ダリナ、サブロー、ややこしくなるからステータスは99で固定しておこう)

「ところでお前たちは剣も何も持っていないのに、どうして二人組の強盗を気絶させたのだ?」

「はい、それはイポニアを出るときに魔道具店で身を守ってくれる絶対防御魔法の魔導ペンダントを買ったからです。家内とダリナの魔導ペンダントが反応して強盗が弾かれたのだと思います」

 嘘発見器は光らなかった。

「お前たちは、どうやって強盗をつかまえたのだ?」

「それはイポニアの魔道士に拘束魔法バインドを習ったからです」

「そうか」

「お前たち、何か身分を証明する物を持っているかね」

 ヒロシたちは各々の冒険者カードを出した。

「はぁ~、お前たちゴールドカードAランク冒険者だったのか?」

「ええ一応、イルクスカの冒険者ギルドで冒険者カードは書き換えてもらいました」

 この時、ヒロシたちは全く忘れていたが、4人は村人の服装だったのだ。騎士団長は行商をしている村人と勘違いをしていたのだった。

「それにしては、お前たちは、冒険者らしくない格好だな」
「冒険者カードを見なかったら、お前たちが村人だと騙されていたぞ」

「はい、すみませんでした」
「出発する直前までゼニト村で色々と仕事をしていたので村人の格好で旅をしてしまいました」


「騎士団長、イルクスカの冒険者ギルドに問い合わせたところ、彼ら4人はAランク冒険者で間違いありません」
「1ヶ月前にオラニオ町でレッサードラゴンを倒したそうです」

「お前たちレッサードラゴンを倒してきたのか?」
「はい、そうです」

「では、二人組の強盗は知らずにAランク冒険者4人にちょっかいを出して気絶した事にしておこう」

「手間をとらせたな。では気をつけて出国してくれ」
 騎士団長は笑顔で送り出してくれた。

(ラファエル、国境を超えたら人気のない場所でキャンピングカーを出してくれ)
(了解しました)

「ミサエさん、ダリナ、サブロー、行こうか」
「「「はい」」」

「おい、あの農民夫婦はAランク冒険者だってよ」
「あの獣耳少女かわいいな」

「ばか、声が大きいぞ、さっき、強盗が泡を吹いて気絶したのを見ただろう」

「彼奴等、農民の格好しているけど、本当に魔法使いか何かか?」

「そうだと思う、ヤバイから絶対に絡むなよ」

 他の冒険者たちはひそひそ話をしながらヒロシたち4人を遠巻きに見ていた。

「ヒロシさん、また目立っているわよ」
「農民の服を着ているのに何で目立つのだろうね」

(皆さん、これ見よがしにわざと体を金色に光らせて町の外まで飛びましょう)
(ラファエル、その手があったか)
(ミサエさん、ダリナ、サブロー、飛び上がるよ)

((((フライ))))

 4人は手を繋いで体を金色に光らせて空中に浮かび上がった。そしてそのまま町外れに停車してあったキャンピングカーに乗り込んだのだった。

 キャフテの多くの旅人が体を金色に光らせて空を飛ぶ4人を見たので騎士団の詰め所と冒険者ギルドには問い合わせが殺到したが、最終的に『ゼニト村の御使い様が農民に化けて二人組の強盗を捕まえた』と公式記録に記載されたのだった。

(話終わり)
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