転生したら亀だった 亀の甲羅を背負った元傭兵のオッサン

にしのみつてる

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1章

渚の傭兵、焼きそばフォーに誓う

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 朝の漁港。潮風が吹き抜け、魚の匂いが鼻をくすぐる。  
 カメ吉は甲羅の上で釣り竿を組み立てながら、意気込んでいた。

「よし……今日は釣って釣って釣りまくる。大物を釣って、一発逆転だ」

 隣でリナが冷めた目を向ける。

「逆転って、何からですか?」

「人生とか借金とか寿命とか……色々だよ」

「寿命は温泉で削ったやつですよね?」

「それは言うな」

 漁師の好意で、二人は釣り船に乗せてもらうことに。  
 沖へ出ると、潮風がさらに強まり、リナの髪がふわりと揺れた。

「大海原……男のロマンだな」

「はしゃぎすぎです」

 カメ吉は突然、リナの背後に回り、船首で映画の真似を始める。

「“ジャックー! 私、飛んでる!”ってやつだよ。バイタニックごっこ!」

「はぁ!?」

 **ガンッ!**  
 リナの肘鉄が鳩尾に炸裂し、カメ吉は海へと沈んだ。

 海面に浮かぶ甲羅。泡がぶくぶくと立ち上る。

「まさか……泳げないんですか!?」

 甲羅AIが冷静に告げる。

 ――《使用者は金槌レベルです。溺水危険度95%》

 甲羅が緊急モードを起動し、魔導ポッドが展開。  
 カメ吉は海面へと弾かれ、息を吹き返した。

「ぶはぁっ! 死ぬかと思った!」

「泳げないなら釣りしないでください!」

「傭兵は泳がねぇんだよ。銃と砂漠で生きてきたんだ!」

 港に戻ると、漁師たちが爆笑で迎えた。

「兄ちゃん、見事な飛び込みだったな!」

「魚より先にお前が釣られてどうすんだよ!」

 甲羅AIが勝手に応答する。

 ――《水上モードでは最高時速80kmで移動可能です》

「お前、そんな機能隠してたのかよ!」

「海では使えないと思って黙ってました」

「正直すぎるだろ!」


 笑い声が響く漁港の沖。  
 ふとリナが海を指差す。

「カメ吉さん……あれ、何ですか?」

 水平線の向こう、海面を割って巨大な影が近づいていた。  
 船よりも大きく、背びれのようなものが波を切っている。

 甲羅AIが即座に警告。

 ――《未確認巨大生物を検知。推定体長50メートル》

 海面を破って現れたのは、鋭い牙、巨大な鱗、そして甲羅を持つ――  
 **海亀型モンスター**だった。

「おい……あれ、俺の親戚じゃねぇよな……?」

「知らないですよ!」

 その後、海からポップコーンのように飛び出したカメ吉は、甲羅の上でぐったりしていた。

 しかし、次の瞬間――

「よし、切り替えていこう」

 甲羅からアロハシャツとサングラスを取り出し、装着。

「渚のおっさん、ここに爆誕!」

 ビーチに降り立ち、美女たちに声をかけるが、全員スルー。

「おかしいな……俺、今めっちゃ南国感あるのに……」

 背後から殺気。

「カメ吉さん……何してるんですか?」

 **ガンッ!**  
 リサの肘鉄が再び炸裂し、カメ吉は砂浜に沈んだ。

「お前、海に落ちても懲りてねぇのか!」

「俺は……渚に散っただけだ……」

 砂浜でしょぼんとしていたカメ吉の鼻に、ふわりと焼きそばの香りが漂ってきた。

「……この匂い……懐かしい……」

 傭兵になる前、ベトナムの市場で出会った究極の麺――焼きそばフォー。  
 彼は甲羅から鉄板を展開し、魔導加熱モードを起動。

 ――《鉄板モード起動。温度調整:戦場レベル》

「戦場レベルって何だよ!」

 手際よく麺を炒め、スパイスを振り、海辺の昆布を刻んで投入。  
 仕上げにオークのラードを加えると、香ばしい香りが浜辺に広がった。

「焼きそばフォー、完成だ」

 海水浴客たちがざわめき、行列ができる。

「なにこれ、うまそう!」

「焼きそばフォー!? 初めて食べるけど、めっちゃうまい!」

 鉄板はフル稼働。カメ吉は汗だくで焼きそばを焼き続ける。

「へへ……俺の人生、焼きそばで逆転するとはな……」

 少し離れた場所で、リサがその様子を見ていた。

「……あの人、バカだけど……ちょっとだけ、すごいかも」

 カメ吉が手を振る。

「リカちゃーん! 焼きそばフォー、試食するかー?」

「リサです!」

「ごめん、暑さでラードになった!」

 こうして、渚のおっさんは町長から焼きそばフォーの開発者として認定され、  
 レシピは屋台ギルドに登録され、この町の名物となった。

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