異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト

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プロローグ

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「康永《こうえい》新太《あらた》……さん、お疲れ様でした。
 貴方の長くて短い人生は終わったの……です。」

「はぁ……?」

 真っ白な部屋には似合わない金色のピカピカと光沢を出し輝いている
 王座に腰を下している小さな少女に人生の終了を告げられ
 余りにも突然な事で情けない声を出してしまった新太。

 その少女の事を一言で表すなら美少女――いや、女神。
 よくテレビや雑誌で美少女やアイドルを紹介しているが、
 目の前にいる少女には、ソレとは全く異なる神々しい美貌。

 純白の部屋がより一層、少女の艶がある美しく長い黒髪を強調させる。
 出るところは確りと出て、引っ込むところは確りと引っ込んでいる完璧な体は、
 髪より少し薄い黒いコートに包まれている。

 その少女は可愛らしい黒い瞳を何度もパチパチさせ、
 何故か膝の上に乗っている茶色の犬のようなぬいぐるみの頭を
 なでなでと無表情で撫でている。

 少女はぬいぐるみの腕を掴み、自分の顔の高さまで持っていき、
 顔を隠す様にしてぬいぐるみの腕を小刻みに動かしながら
 未だに状況が掴めず固まったままの新太に、

「貴方はとてもラッキーな方……です。
 おめでとう……ございます。」

 ぬいぐるみで顔を隠した少女に発言に新太は更に困惑する。
 そんな新太の事をぬいぐるみの横からチラリと覗き、

「状況が分かって居なさそう……ですね。
 説明しましょう……か?」

 再びぬいぐるみの裏に行き、
 少女はそう提案してきた。

「お願いします。」

 新太は何の迷いも無く即答した。
 
「はい……貴方は死んだの……です。」

「はぁ?俺が死んだ……何で?」

 新太は小声でそう呟いたのだが、
 少女にはその声が聞こえていたらしく、

「貴方は崖から落っこちちゃったの……です。」

「はぁ、確かにそう言われればそんな気がする……。」

 新太は、先ほどまでの記憶を思い出そうとするが、
 朝起きてからの記憶が薄っすらとしか無く、
 はっきりと思い出す事が出来ないが、確かに少女が言ったように
 崖から落ちたという記憶も薄っすらとだがあるような気がする。

 ぶらりと歩いていて気が付いたら視線が
 急降下して……それが最後の記憶。

 死んだと言えば死んだ気もするが、確かな確証は持てない。
 此処は夢の中って可能性もあるし、
 本当に死後の世界的な場所と言う可能性もある。

(まぁ、どちらにしろ驚きはしない)

 死んだというのが真実なら新太はそれを簡単に受け入れるだろう。
 未練がない訳ではないが、それ以上に生きる希望も無かった。

 ……新太自身でも不思議に思うくらい落ち着き、
 気になっている事を目の前の少女に尋ねた。

「君は誰なんだい?
 こんな何もない所に居るけど退屈じゃないの?」

 気が付けば目の前にいた
 現実離れした美貌を持った幼い少女。
 一体何者なのか、当然の疑問だ。

「予想外……です。
 もっと慌てたりするかと思ったの。……です。
 私は女神、エミ……です。」

「女神……。
 そっか、俺の名前は――ってもう知ってるか。」

 新太は何の疑いもしなかった。
 これほどの美貌の持ち主だ。
 例え天使と言われても恐らく信じていただろう。

「新太……さんは面白い方……ですね。
 流石は選ばれた方……です。」

「選ばれた方?」

「はい、貴方は異世界に転生する権利を得た……のです
 あっ、先に言っておきますが貴方が特別って訳ではない……です。
 たまたま選ばれただけ……です。運が良かっただけ……です。
 ラッキーな方……です。」

 なにやら物凄く胡散臭い――が、
 別に嘘だとは新太は思わない。
 死んだと言うのならば天国に行ったりして新たな命として転生し……
 その転生先がたまたま異世界だったと言う解釈をした。
 そして新太にはその異世界に転生する権利を得た。

 自分でも驚くほど冷静に
 頭の中で今の状況を簡単に整理した。

「異世界に転生か再び地球に転生、
 どちらが良い?……ですか。」

「異世界転生で。」

 即答。

 当たり前の答えだ。
 新太は17歳というそろそろ大人と呼ばれても良い歳だが、
 大のファンタジー好きだ。

 そんな新太に異世界に転生するチャンスが転がって来たんだ。
 未練?そんな物はどうでも良かった。

「分かった。……です。
 じゃあ次に能力を決めて……ください。」

「能力?」

「はい、例えば強力な魔法が使える、圧倒的な力……とかです。」

「なるほど……ちなみに能力は絶対選ばないと行けない感じかな?」

 異世界がどういったところかは知らないが、
 新太は出来る限り平和な暮らしをしたいと思っている。
 
(力なんて要らない。
 あったらあったらで厄介ごとに巻き込まれるだけだ)

 ファンタジーの世界で平和に暮らす。
 勇者?そんなのはやりたい奴にやらせろ。
 それが新太の考えだった。
 だが、そんな彼の願いとは裏腹に少女の口からは、

「はい、男なら異世界チートハーレムを目指して……ください。」

「うわぁ……」
 
 余りにも少女には似合わない言葉を聞き、
 思わず心の声が漏れてしまった。

(能力か……そんなもの要らないんだけどな。
 何かパッと出てこないし此処は決めてもらうか)

「じゃあ、エミに任せるよ。」

「そう……ですか。」

 エミはそういって黙り込んでしまった。
 ぬいぐるみの腕もすっかりと静かになってしまい。
 何やら気まずい空気が漂い始めた。

「……どしたの?」

「……決めた。」

 少女はぬいぐるみを膝に置き、
 可愛らしい顔を見せ、

「新太にはコールを授ける。」

「コ、こーる?」

 何時の間にかに少女のぎこちない感じの口調は
 タメ口に変わりさっきよりも格段に話しやすくなった。
 話している内に緊張が解れたのだ。

「そう、コール。
 コールを使えば何時でも私を呼び出す事が出来る。」

「は?」

(参ったな、任せるとは言ったけど
 流石にこれは……一体どういう時に使えと言うんだ?
 それよりも、)
 
「どうしてそんな能力を?」

「新太、他の人と違う。
 自分の事だけじゃなくて私の事まで気に掛けてくれた……
 私は何時も暇だから新太に構ってほしい……から。」

 自分の髪の先の枝毛をいじりながら、
 俯き、なぜか泣きそうになりながらそう言うエミ。
 他の人って事は新太以外にも
 異世界に行っている人っているという事を指している。
 
 面倒臭くなりそうなので関わらない様にしようと
 新太は心に誓った。

「そっか、まぁ俺は平和に暮らすだけだから
 それぐらいの能力がピッタリだな。
 うん、ありがとう、それで行くよ。」

「え、……う、うん、じゃあ最後に転生する場所を選んで。」

 今までに見たことも無いくらいの眩しいほどの笑みを浮かべ
 少女はぬいぐるみの背中のチャックを下し、
 中から地図を取り出した。

「おおっ……そんな所に……」

「何処が良い?」
 
 椅子に座ったままバっと地図を広げて見せて来た。
 新太は地図が見える距離まで近づく。

「何処って言われても……一番平和に暮らせる場所って何処?」

「ん……此処。
 魔王城の近くだから生ある物は近付いて来ない。
 比較的安全だと思う」

「んじゃ、そこでよろしく。」

 女神が言う事だ。
 きっとそれは正しい事なのだろう。
 だから、新太は何の迷いもせずに即答した。

「わかった。じゃあ、そこに立って。」

 エミが指さす方向には何やら良く分からない文字が沢山書いてある
 魔法陣が床に描かれていた。
 新太はその魔法陣の上まで移動する。

「立ったよ~。」

「ん、じゃあ早速転移させるね。
 またね、新太。」

「おう、またな。」

 魔法陣から光が放たれ――
 
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