異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト

文字の大きさ
28 / 98

二十三話 【朝食】

しおりを挟む
「ん……」

 先日の疲れでぐっすりと眠っていたウルエは、
 可愛らしい声を漏らしながら目を覚ました。
 寝起きは目がショボショボし視界がぼやけている為
 何度も瞬きをして目を慣らしていく。

「っ!」

 徐々に慣れ、目の前にはっきりと映ったのは
 寝巻姿で寝ているフェルの双丘だった。
 誰よりも早く寝てしまったウルエは当然、
 フェルが添い寝をする形でウルエを抱き枕にしている事など
 知る由も無く今の状況が良く分からず小さなパニック状態に陥っていた。

(え、これはどういう状況だ?!)

 だが、それは段々と脳が活性化していくことによって
 冷静に判断することが出来て行き、

(……フェルか、お姉ちゃんなら納得だ)

 昔も良く今の状況の様に知らぬ間にベッドに忍び込まれ
 朝目が覚めると今ほどではないが少し膨らんだ胸が
 少し大きめの寝巻の胸元からチラチラと見えていたという事が何度もあり、
 其のたびにウルエはパニックになっていた。

 ウルエは気持ちよさそうに寝ているフェルを起こさない様に
 こっそり腕の中から抜け出し寝室をあとにした。
 
「あらウルエ、フェルとは違って朝早いですわね」

 寝室から出るとリビングで着替え途中のアンアの姿があり、
 下着姿のままウルエに朝の挨拶をした。

「うん、おはよ。昨日は早く寝たから早起き出来ただけだよ」

 アンア自身、今自分が下着姿だという事は
 すっかり忘れており普段通りの口調で話しており、
 その相手のウルエも下着姿のアンアを見て何も反応を示すことなく挨拶を返した。
 ウルエは小さい時からフェルの裸や下着姿を見ていた為
 そういった光景に耐性が付いているのだ。

「もう少しで朝食の準備に取り掛かりますの、
 顔を洗ったりして待っていて欲しいわ」

「うん、わかったよ」

 昨日出会ったばかりなのに朝食を作ってくれるというアンアに
 感謝をしながらまだ眠たい目を擦りながら洗面所へ足を運んだ。
 
「♪~」

(朝から幸せだわ)

 ウルエが洗面所に姿を消してから鼻歌を歌い上機嫌だったアンアだが、
 ふと先程まで自分が着替えていたという事を思いだし、
 恐る恐る自分の姿を見て――

「あー!!」

(やってしまいましたわ!!)

 見る見るうちに顔が真っ赤になっていき、
 思わずその場に蹲って着替えに顔を埋めた。

「何かあったのかな」

 洗面所に居てもアンアの叫びは聞こえ
 ウルエは首を傾げたがあまり気にはせずに顔を洗い始めた。
 冷たい水を顔に浴びて一気に目が覚めるのを感じ、
 今日も一日頑張るぞと意気込む。

 一通り済ませてからリビングに戻ると、
 アンアが鼻歌を歌いながら料理を作っていた。
 
「ウルエ、もう少しで出来るから
 フェルの事起こしてきてくれるかしら」

 アンアは一瞬先ほどの羞恥心を思い出して顔を隠したくなったが、
 ウルエの前でそんな事は出来るはずは無く、
 必死に自分を欺いて未だに眠っているフェルを起こすようにお願いした。

「うん、わかった」

 良い子のウルエは面倒臭がらずに確りと返事をして
 テクテクと寝室に向かいくぅ、くぅと気持ちよさそうに寝ているフェルに近付き
 起こそうとしたのだが余りにも気持ちよさそうに寝ているので少し意地悪をしたくなり、
 柔らかそうな頬を人差し指でプニプニと押してみた。

「ん、んん……」

 可愛らしい声を上げるフェルに
 もっと悪戯をしてやりたいと言う気持ちが沸き
 更に柔らかい頬をプニプニする。

(お姉ちゃんも何時もこんな気持ちだったのかな)

 確かに相手の反応が可愛ければもっと悪戯をしたい
 そんな気持ちが沸いてくる事がわかり
 少しフェルの気持ちが理解できたウルエだった。

「う、んんん……ウルエ?」

 少々調子に乗りすぎたらしく、
 最悪な事にフェルが目を覚ましてしまった。
 ウルエの全身から冷や汗が垂れ始める。

「あ、……お姉ちゃんおはよう」

「ふふふ、ウルエ何してたのかなぁ?」

 目が覚めたばかりだと言うのにフェルの脳は
 完全に目覚めていて目を細め意味深な笑みを浮かべて
 ウルエの腕を掴み微笑みかけた。

「いや、何でもないよ、
 あ、アンアお姉ちゃんが朝ご飯出来るって言ってたよ、行こ?」

「……」

「お姉ちゃん?どうかした?」

 突然無言になったフェルの事を不思議に思い
 少し心配そうな表情を浮かべて声を掛けた。

「いや、何でもないよ行こうか」

(アンアお姉ちゃん?なんだそれは……あの尼余計な事を!
 だけど、ウルエはそんなに嫌そうではないし、
 くそ、これ位は許すべきなのか……)

 フェルは複雑な気持ちを抱きながらもウルエと一緒にリビングへ向かった。
 
「おはようですわ、フェル」

「……おはよう、顔洗ってくる」

 テーブルに料理を並べていながらフェルに挨拶するアンアに
 物凄く嫌悪を抱いたのだが昨日の事もあり、
 それにウルエの目の前に居る為大きな態度を取ることが出来ずに
 不満を隠しきれていないが感情を押し殺し洗面所に向かった。

「不機嫌ですわね……」

「そうだね、寝起きだから仕方が無いよ」

 ウルエはフェルが何故不機嫌なのか理解できていない為
 寝起きは機嫌が悪い人は多くいるのでフェルもきっとそうだろうと思ったのだ。
 それからフェルが洗面所から戻って来てから
 皆で椅子に座りアンアが作ってくれた朝食を美味しく頂いた。

 何の卵なのかは分からないが目玉焼きが皿に乗っており、
 更には魚の塩焼き白米……久しぶりに食べる懐かしい味に
 ウルエは感動しつつもこの世界にもこの料理がある事に驚きつつ
 美味しく綺麗に食べた。

「さて、そろそろ行きますわよ」

「うん」

「もうそんな時間」

 朝食を終え片付けも済ませると丁度良い時間帯になり
 学園へ行く支度を整え、三人で仲良く部屋を出た。
 他の寮の人の目線が少し気になるウルエだったが、
 アンアとフェルはそれに気が付き庇うようにしてウルエの事を隠し歩いた。

 アンアとフェルはそこまで仲が良い関係とは言えないが
 こういう時は意気投合するあたり実際は仲が良いのかもしれない。
しおりを挟む
感想 54

あなたにおすすめの小説

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

主人公に殺されるゲームの中ボスに転生した僕は主人公とは関わらず、自身の闇落ちフラグは叩き折って平穏に勝ち組貴族ライフを満喫したいと思います

リヒト
ファンタジー
 不幸な事故の結果、死んでしまった少年、秋谷和人が転生したのは闇落ちし、ゲームの中ボスとして主人公の前に立ちふさがる貴族の子であるアレス・フォーエンス!?   「いや、本来あるべき未来のために死ぬとかごめんだから」  ゲームの中ボスであり、最終的には主人公によって殺されてしまうキャラに生まれ変わった彼であるが、ゲームのストーリーにおける闇落ちの運命を受け入れず、たとえ本来あるべき未来を捻じ曲げてても自身の未来を変えることを決意する。    何の対策もしなければ闇落ちし、主人公に殺されるという未来が待ち受けているようなキャラではあるが、それさえなければ生まれながらの勝ち組たる権力者にして金持ちたる貴族の子である。  生まれながらにして自分の人生が苦労なく楽しく暮らせることが確定している転生先である。なんとしてでも自身の闇落ちをフラグを折るしかないだろう。  果たしてアレスは自身の闇落ちフラグを折り、自身の未来を変えることが出来るのか!? 「欲張らず、謙虚に……だが、平穏で楽しい最高の暮らしを!」  そして、アレスは自身の望む平穏ライフを手にすることが出来るのか!?    自身の未来を変えようと奮起する少年の異世界転生譚が今始まる!

処理中です...