異世界唯我独尊!〜人は1人では生きられないが1人で生きてみたい生き物です〜

クマクマ

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初めての交渉、初めての冒険者稼業

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 9.金策と初仕事
「よし、とりあえずこんなもんかな。」

 翌朝、起きて早々俺は水晶を欠片にし、それに魔力を注ぐ作業を行っていた。宿の店主から皮袋を買い取りそこに魔水晶の欠片-計30個ほど-を入れ魔道具店に出発した。

「ここが魔道具店であってる?」

 《はい、ここがこの街で1番大きい魔道具店かと。》

 ナズナの案内で着いたのは街1番の魔道具店【黒猫の足跡】だ、因みに異世界の文字は読めなかったのでナズナの補助魔法で翻訳している。

「いらっしゃいませ、【黒猫の足跡】へ。お客様はここは初めてでいらっしゃいますか?」

 中に入ると礼儀正しい執事の方-40歳位?-が出迎えてくれた、高級店みたいだ。

「えっと、魔水晶の買い取りをお願いしたいんですけど。」

「了解しました、担当の者を呼びますので暫くお待ちください。」

 そう言って執事さん-仮称-を下がるのを見て俺は周りの魔道具を観察した。

「へぇ~色々売ってるんだなぁ、水魔法の込められた魔水晶を取り付けた水瓶に火魔法の込められた魔水晶を取り付けたフライパン、魔道具だけじゃなくて魔水晶の付いた杖もあるし、あれって風魔法の付いたブーツ?」

 雑貨屋に来たみたいでワクワクする気持ちが抑えられず色々物色する。

「何か気に入るものでもありましたかな?」

 声をかけられ振り向くと執事さんより歳のとったお爺さん-大体60歳位だろうか-がいた。

「私が魔水晶の鑑定を行うエルド・ドミニアムです。」

「あっマサルです、よろしくお願いします。」

 丁寧な対応に少し気後れながらも挨拶を交わした俺は鑑定を行う為別室に案内された。

「これなんですけど。」

「ほう小粒ながらも良い光を放つ魔水晶ですな、魔力マジック測量スーヴェイング。おぉ!この大きさに対してこれだけの魔力量、これは純度が高く傷も少ない。マサル様は良い腕をお持ちでいらっしゃる。」

「ほんとですか!あっ、ありがうございます。」

 いけないいけない相手を持ち上げて良い気分にさせた所を買い叩かれる的な戦法だろうか、褒めなれてないから危うく飲まれそうになる。まぁただの考えすぎだろうけど

「これ程の魔晶石ですと、そうですね…銀貨70枚でどうでしょうか?」

 想定より少ないな、足元を見てるのか分からないが少し鎌をかけるか

「自分の予想では金貨2枚はいくと思ってたんですが、うーん他の店舗にも顔を出して検討してみてもいいですか?」

 鎌をかけてみるとエルドさんの顔つきが変わった

「マサル様は交渉も上手いですな、銀貨80枚で。」

「金貨1枚と銀貨50枚」

「ふむ…お互いに落とし所は同じみたいですな、金貨1枚でいかがでしょう?」

 やっぱり金貨1枚が適正なのか、ナズナさん様々だ。

「分かりました金貨1枚でお願いします、あとそれが30個ほどあるんですけど全部買い取り出来ますか?」

「さ、30個!?い、いえ全ての品質をチェックしないといけませんので暫くお待ちください!」

 そうか、普通は魔力量もバラバラだし全部チェックしないといけないのか。まぁでもこの様子だと需要はあるから纏めて売っても価値が下がる事は無さそうかな?どうだろうナズナ。

 《(この程度ならば問題無いと思いますが、これ以上となると店側や大金を得たと知った荒くれ者達に目を付けられると思いますので程々にした方が良いかと。)》

 そっかぁ、そうだよなぁ。いくらナズナがいるといっても怖いお兄さんと戦うにはメンタルが豆腐すぎる。

「マサル様、測量が終わりました。全て高純度で傷も少なく高品質でありますので、合計金貨31枚で買い取らせて頂いてもよろしいですか?」

 金貨31枚!日本円で310万円!宝くじ当たった気分だな、思わず顔が綻んでしまう…フヒッ

「んっんん、はいそれでお願いします。」

 綻んだ顔を直しつつ俺は何とか魔晶石の買い取りを成功させる事が出来た。

「ガリウスー!丁度良かった渡したい物があるんですけど。」

【黒猫の足跡】のオーナーから金貨を受け取ると数枚だけ手持ちに入れ後は宿に置いてきた、部屋にはナズナが多重に魔法やら結界やら障壁をかけていたので盗まれる事はないだろう。時間もまだ昼前で折角なので依頼を受けようと冒険者組合に顔を出すと丁度ガリウス達が依頼を受けていた。

「おっマサルも依頼受けるのか?昨日はよく眠れたか?冒険者にとって体は資本だからなよく食ってよく寝てよく働くんだぞ。」

 アニキ…マジどこまでも付いて行きたいっす。

「ありがと、おかげで昨日はぐっすり眠れました。そしてこれ出世払いじゃないけど、恩を返すね。」

 そう言って金貨1枚を手渡す。

「おいおい俺が貸したのは銀貨5枚と銅貨20枚だぞ?これは多すぎる、というよりどうやって稼いだんだ?ちゃんと正規で手に入れたんだろうな…?」

 明らかに怪しんでる、無一文だった奴が急に金持ちになると普通疑うよな。

「安心してください、ちゃんと正規で手に入れたお金なので、少しナズナに手伝ってもらったんですよ。ほらこれ」

 そういって新たに作って小袋に入れていた魔水晶をガリウスに投げ渡した。

「こりゃあ、魔水晶か?どうやっ…まぁナズナさんの力なら不可能じゃないか。」

 納得なのか思考放棄なのか分からないがガリウスは話を信じてくれた。

「魔水晶!マサル、魔水晶見せて見せて!」

 魔法使いのミレーヌが魔晶石に食いついた、まぁ魔法使い御用達だしな。ていうかナズナ見せた時よりテンション高くない?

「おー!この魔晶石小さいけど純度が高くて魔力許容量ギリギリまで魔力が詰まってる!凄い、自然界では中々お目にかかれない1級品。」

「良かったらそれいりますか?まだ在庫はあるからお礼としてあげm」

「ほんと!?良いの!?やった!マサル良い人!!何でも力になるよ!」

「やっぱりミレーヌさんテンション高くないですか?ナズナ見せた時よりテンション高いのちょっとショックなんですけど…」

「あっ…えっえと、魔水晶は身近にある高級品だし、魔法使いにとっては緊急用の魔力供給源になるし魔道具も作れるから…あ、あとナズナ様は凄すぎて実感湧かないっていうか…」

 急にしどろもどろになって表情がコロコロ変わる可愛い人だな、あとナズナ様って完全に崇められてるな。

「冗談ですよ、それで皆さん何の依頼を受けに行くんですか?」

「護衛の依頼だよ、まぁご贔屓にさせてもらってる所からの依頼だな。顔を覚えてもらうと指名で定期的に護衛の依頼が入るんだ。」

 流石ベテランって感じだ。さすベだ

「マサルは何受けるんだ?ナズナさんがいるからって余り調子に乗ると痛い目に合うぞ。」

「俺は薬草とかの採取にしようかなと思います。」

「以外だなナズナさんが付いてるからてっきりモンスターを狩りに行くんだと思ってたよ。」

「初めは薬草とか覚えないと怪我した時とか大変かなって思いまして。」

「意外と慎重なんだな、いや森で出会った時から慎重だったか。ガハハ」

 ガリウス達に激励されながら薬草-アオバミ草-を採取する依頼を受理した、薬草1枚に付き銅貨1枚というほんとにお小遣い程度だが今はお金に困ってないし、こういうのをやってみたかったんだよな。ガリウス達と別れると俺は森へ向かった。

✂ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー✂

 10.本格的な戦闘と今後の目標
「ナズナ、身近のアオバミ草1枚だけ探してくれないか、それを見本にして後は自分で探したいんだ。」

 《了解しました。それでは正面5m先、右3mまでお進み下さい。》

 ナズナに案内されながら俺は見本となるアオバミ草を採取し、それと見比べながら自力で他のアオバミ草を探す事にした。

「これはアオバミ草、これは違う、これはアオバミ草…」

 《優様、周囲に敵意を出したゴブリンが潜んでいます。半径10m以内、数は5体です、討伐しますか?》

「討伐するする!なるべく自力で戦うけどヤバくなったら助けて。」

 《承知しました、では最低限の防御系魔法をかけさせて頂きます。物理フィジックス防御ディフェンス(Ⅲ)・魔法マジック防御ディフェンス(Ⅲ)・飛び道具プロジェクティル軽減ミティゲイション(Ⅲ)》

「これくらいバフかけてもらってゴブリン達と互角って事?」

 《その通りです。》

 マジか、いやでもまぁ現代人のニートがいきなり戦闘民族と戦うってなれば妥当か。

「よし、とりあえず敵の位置を確認して、出来るなら奇襲を仕掛けたいな。」

【 周辺探査】

 棍棒的な物を持ってるのが4体、弓持ちが1体か。全員にバレてる気がするから奇襲は無理かな、とりあえず完全包囲される前に近接武器持ちのゴブリン1体に向かって走る。

「ギッ!?バレテル!」

「まずは1体!」

 自分に向かってきたのに驚いているゴブリンの首に向かってナズナを振りかぶる、向こうも首を狙われてると気付いた様子で首を守るように棍棒を構える。

「せーのっ!えっ…」

 ガィン!と鈍い音と手に衝撃が来るだろうと覚悟していたが、ナズナは棍棒とゴブリンの首を豆腐を切るかの様にスっ…と優しく切り落とした。

「ナズナさんヤベェ…全然切った感触無かったぞ、流石秘宝。」

 《恐縮です、尚今の切れ味は周りに被害が起きないよう全力の10分の1に設定致しました。》

 今ので10分の1かよ、全力でやると戦車とか切れそうだな…

「何はともあれ残り4体!油断せず行くか!」

 それから約1時間かけてゴブリンの群れを倒すことが出来た。

「いってて…ゴブリン1体ずつなら何とかなるけど2体以上になると翻弄されるな、やっぱ数は力だなぁ。矢もガッツリ刺さったしナズナの回復が無かったら死んでたな、ありがとナズナ。」

 あれからゴブリン1体を更に倒し、もう1体をナズナの切れ味を鉄剣に落としながらほぼ互角の戦いをしていたら残りの近接ゴブリンと弓を持ったゴブリンが合流し、追い込まれたがナズナの補助もあり、何とか倒すことが出来た。

 《優様のサポートが私の役目ですので。》

 なんかナズナさんから誇らしげな表情が見える…顔なんて無いけど。

「にしても武器の扱い方は独学じゃ限界あるよなぁ、でもチーム組むほどコミュ力も実力も無いし…ん~人手が欲しいな、人手人手…あっ!奴隷だ!!異世界と言えば奴隷じゃん!」

 俺はウキウキで奴隷を連呼した。異世界物でよく奴隷が出てくるが人の印象は様々だ、奴隷文化は悪って考えの人もいるし、しっかりとした勤務内容且つ人徳的な対応なら奴隷はありなんじゃないかって考え方の人もいる。

 因みに俺は主人が害されないようしっかり束縛されていれば何でもOK派だ、自分がされて嫌な事は極力しない様にしてるが自分より下の人間を見ると安心するタイプのクズと自覚している。

「ナズナ、あの街に奴隷商みたいなのはあったか?」

 《ございます、奴隷を購入されるのですか?》

「そうそう!お金も多分足りると思うし、とりあえず見に行って良い人が入れば買うって感じかな。」

 《了解しました。今から向かうので?》

「そうだね、ゴブリンの耳と後何枚かアオバミ草採取したら戻ろっか。」

 俺は次の目標を決めると高まる気持ちを抑えつつ鼻歌交じりに採取に勤しみ、街へと戻って行った。
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