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第一部『地上に舞い降りた天使は護り手など必要としない。』
天使の鞭は痛くて甘い④
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痛い。
この上なく痛い。
生きてきた中で、この脚の痛みは最上級だと言っても過言ではない。
あまりに痛いと呻き声すら出ないのだということを、ブライアンは初めて知った。
とにかく、激烈に痛い。
溺れる者が板切れにすがるように、ブライアンは腕の中のアンジェリカをきつく抱き締める。力を抜こうとしても、できなかった。
(ああ、くそ)
痛みのあまり、意識が赤い霞の中に引き込まれそうになる。
それを引き留めたのは、愛しい人の声だった。
「ブライアン……ブライアン!」
彼の名を呼ぶ悲鳴じみた声に、意識と、わずかばかりの理性も戻ってくる。それに伴い多少なりとも拘束が緩んだのか、アンジェリカは彼女を包み込んでいるブライアンの腕を振り払った。身を転がして起き上がり、ブライアンの隣に両手を突いて彼の顔を覗き込む。
「どこが痛む!?」
注がれる、彼女らしくない、切羽詰まった声と眼差し。
その焦燥は自分を案じるあまりだろうかと、ブライアンは痛みにかすむ頭の片隅で思った。常にまとっていた冷静な仮面を落としてしまうほどに心配してくれているのだろうかと、場違いな喜びを微かに感じつつ、答える。
「脚……左、脚が……」
ブライアンの返事と共に、アンジェリカの目がサッと走った。それが彼の脚に向いた瞬間、菫色の眼差しが鋭くなる。
「アンジェリカ?」
痛むのは、左の脛だ。そこはいったい、どうなっているのだろう。
「アンジェリカ、いったい――」
「動かないで」
訊ねようとしたブライアンを手で制し、彼女は辺りを見回す。
小さな舌打ちが聞こえた。
と思ったら、彼女は痛みがない方のブライアンの脚を掴み、力任せにブーツを引っ張った。堅くて長いそれは脱がしにくく、引っ張られるたびに小さな振動が左脚にも伝わって、彼は顔をしかめる。
「何を――ッ!!」
ブライアンはつい身体を起こそうとしてしまったが、そのわずかな動きでまた脚に激痛が走り、あえなく床に突っ伏した。
「ジッとしていて」
一瞥と共に鋭い声で言うと、アンジェリカはドレスの裾をくわえて力任せに引き裂いた。それで数本の紐を作ると、脱がせたブライアンのブーツを、痛みを訴え続けている方の脚にあてがう。そうして、そこに小さな手を添えた。
「少し、痛むから」
「え、――ぐ、ぅ!」
痛む、何ていうものではなかった。
思わず脚を引きそうになったが、それより先に、アンジェリカは膝のすぐ下に手にした紐をクルリと巻き付ける。きつくはないが緩みなくそれを締め付けると、もう一か所、今度は足首に近いところで同じことを繰り返した。
「これで、少しは動けるはず」
「え……」
「早く行こう。もう時間がない」
そう言ってすっくと立ったアンジェリカは、促すような眼差しでブライアンを見下ろして、片手を差し伸べてくる。その手を取り、ほとんど反射のようにその誘いに応じて、彼は立ち上がろうとした。
が。
「ッ、た!」
ほんの少し力を入れただけで、激しい痛みに襲われる。
「立てそうにないよ」
「痛いだけだ、死にはしない。私が支えになるから、早く!」
容赦なく迫るアンジェリカに応えようと再び脚を踏ん張ろうとしたが、やはり、立てそうにない。こんな調子では、たとえ歩けたとしても、身を潜めながら動くのはもちろん、走ることもとうてい不可能だ。恐らく甲板にはウォーレスの手下たちがウジャウジャいることだろう。彼らに追われたら、今のブライアンを連れていては絶対に逃げきれない。
ブライアンは、自分のせいで彼女がウォーレスの手に落ちるのも、ましてや命を失うのも嫌だった。
だから、握られた手を彼の方から放す。
「僕は置いていってくれ」
静かに告げると、アンジェリカはポカンと見返してきた。
「え?」
「僕を置いて、先に逃げて」
「それは、できない」
間髪を容れず、硬く低い声でアンジェリカが答えた。
もちろん、彼女ならそう言うだろう。意外でも何でもない。
ブライアンは更に言葉を尽くして説得を図る。
「僕は足手まといだよ。あなただけなら絶対に逃げられる。でも、僕がいたら絶対に無理だ。きっとデッカーたちがすぐ近くまできているから、彼らを連れて助けに来てよ」
気楽な口調でそう言ったものの、多分間に合わないだろうということはブライアンにも判っていた。
デッカーたちが来る前に、出航するか、沈没するか。
そのいずれかになるはずだ。
ここで別れたら、きっと、もうアンジェリカには逢えない。けれど、彼女を守り切ることができるのなら、たとえ船と共に海に沈もうとも本望だ。
アンジェリカを安心させるために、ブライアンは痛みをこらえてヘラッと笑って見せた。
彼女は、立ちすくんだまま、ブライアンを見下ろしている。
と思ったら、突然その場に膝を突き、ブライアンの胸倉をグイと掴み上げた。
「アン、ジェリカ?」
乱暴な所作に面食らうブライアンに、アンジェリカが顔を寄せる。
「あなたは、私を置いていくのか」
「違う、置いていかれるのは、僕の方で――僕は、あなたに無事でいて欲しいんだ」
頼むから、この望みを聞き入れて欲しい。
ブライアンは目にその思いを込めて彼女を見つめ返した。
アンジェリカが、きつく唇を噛み締める。柔らかなそれに歯が食い込むのを見て、ブライアンの胸が締め付けられた。けれど、これは譲れない。
「アンジェリカ」
懇願と共に、彼女の名前を呼んだ。
アンジェリカが、息を吸い込む。
そして、その息を吐き出すとともに。
「あなたは、ずっと私の傍に居ると言った」
「……え?」
困惑と共に見返したブライアンの胸倉を掴むアンジェリカの手に、力がこもった。
「あなたは、あの時、孤児院で、ずっと私の傍に居ると言った。あれを違《たが》えるつもりか」
アンジェリカの言葉で、あの穏やかなひと時のことがブライアンの脳裏によみがえる。
確かに、言った。
衝動に駆られて、深く考えもせず。
その何気ない一言が彼女の中に刻まれていたのだということを知って、ブライアンは嬉しく思った。
けれど、今は、その喜びに呑まれている場合ではない。
「事情が違うよ。今は、とにかく――」
ブライアンが舌に乗せかけた説得の言葉は、鋭い声で切り伏せられる。
「私は、あの言葉を信じた。だから、あなたを置いていくつもりは微塵もない。私を死なせたくなければ、死ぬ気で歩け」
アンジェリカの菫色の瞳に宿る輝きは、わずかな譲歩も彼に許してくれそうになかった。眼も心も奪うその眼差しに射抜かれて、ブライアンは完敗する。
彼女の叱咤の鞭は、拒否するにはあまりに甘過ぎた。
(ああ、僕は、まだまだ彼女のことを解っていないんだ)
そう、アンジェリカがブライアンの――彼だけでなく、誰かのことを、諦めるはずがない。彼女は、諦めるという言葉を知らないのだ。いや、知っていたとしても、彼女の辞書には刻まれていない。
ブライアンの口から、はは、と小さな笑いが漏れた。
と、アンジェリカがムッと唇を曲げる。
「何故、笑う」
いかにも不服そうな声でそう言った彼女の手を、ブライアンは取った。そうして、軽く頭を下げてその繊細な指の背にそっと口付ける。
「ブライアン?」
「僕はあなたがどうしようもなく好きだ」
顔を伏せ、唇を彼女の手に触れさせたまま、ブライアンは囁いた。
くぐもったその声は、アンジェリカの耳には届かなかったらしい。
「え?」
眉をひそめたアンジェリカに、ブライアンはかぶりを振る。
「何でもない。行こう。死ぬ気で頑張るから」
「……? ああ」
アンジェリカはいぶかしげな顔で頷くと、すぐにその表情を改めて、ブライアンの手を取ったまま立ち上がった。彼は自分のものよりもはるかに小さな彼女の手を握り締め、左脚以外の全てに力を籠める。
やっぱり、耐えがたいほど痛い。
しかし、そんな痛みを凌駕する想いが、ブライアンを動かした。
この上なく痛い。
生きてきた中で、この脚の痛みは最上級だと言っても過言ではない。
あまりに痛いと呻き声すら出ないのだということを、ブライアンは初めて知った。
とにかく、激烈に痛い。
溺れる者が板切れにすがるように、ブライアンは腕の中のアンジェリカをきつく抱き締める。力を抜こうとしても、できなかった。
(ああ、くそ)
痛みのあまり、意識が赤い霞の中に引き込まれそうになる。
それを引き留めたのは、愛しい人の声だった。
「ブライアン……ブライアン!」
彼の名を呼ぶ悲鳴じみた声に、意識と、わずかばかりの理性も戻ってくる。それに伴い多少なりとも拘束が緩んだのか、アンジェリカは彼女を包み込んでいるブライアンの腕を振り払った。身を転がして起き上がり、ブライアンの隣に両手を突いて彼の顔を覗き込む。
「どこが痛む!?」
注がれる、彼女らしくない、切羽詰まった声と眼差し。
その焦燥は自分を案じるあまりだろうかと、ブライアンは痛みにかすむ頭の片隅で思った。常にまとっていた冷静な仮面を落としてしまうほどに心配してくれているのだろうかと、場違いな喜びを微かに感じつつ、答える。
「脚……左、脚が……」
ブライアンの返事と共に、アンジェリカの目がサッと走った。それが彼の脚に向いた瞬間、菫色の眼差しが鋭くなる。
「アンジェリカ?」
痛むのは、左の脛だ。そこはいったい、どうなっているのだろう。
「アンジェリカ、いったい――」
「動かないで」
訊ねようとしたブライアンを手で制し、彼女は辺りを見回す。
小さな舌打ちが聞こえた。
と思ったら、彼女は痛みがない方のブライアンの脚を掴み、力任せにブーツを引っ張った。堅くて長いそれは脱がしにくく、引っ張られるたびに小さな振動が左脚にも伝わって、彼は顔をしかめる。
「何を――ッ!!」
ブライアンはつい身体を起こそうとしてしまったが、そのわずかな動きでまた脚に激痛が走り、あえなく床に突っ伏した。
「ジッとしていて」
一瞥と共に鋭い声で言うと、アンジェリカはドレスの裾をくわえて力任せに引き裂いた。それで数本の紐を作ると、脱がせたブライアンのブーツを、痛みを訴え続けている方の脚にあてがう。そうして、そこに小さな手を添えた。
「少し、痛むから」
「え、――ぐ、ぅ!」
痛む、何ていうものではなかった。
思わず脚を引きそうになったが、それより先に、アンジェリカは膝のすぐ下に手にした紐をクルリと巻き付ける。きつくはないが緩みなくそれを締め付けると、もう一か所、今度は足首に近いところで同じことを繰り返した。
「これで、少しは動けるはず」
「え……」
「早く行こう。もう時間がない」
そう言ってすっくと立ったアンジェリカは、促すような眼差しでブライアンを見下ろして、片手を差し伸べてくる。その手を取り、ほとんど反射のようにその誘いに応じて、彼は立ち上がろうとした。
が。
「ッ、た!」
ほんの少し力を入れただけで、激しい痛みに襲われる。
「立てそうにないよ」
「痛いだけだ、死にはしない。私が支えになるから、早く!」
容赦なく迫るアンジェリカに応えようと再び脚を踏ん張ろうとしたが、やはり、立てそうにない。こんな調子では、たとえ歩けたとしても、身を潜めながら動くのはもちろん、走ることもとうてい不可能だ。恐らく甲板にはウォーレスの手下たちがウジャウジャいることだろう。彼らに追われたら、今のブライアンを連れていては絶対に逃げきれない。
ブライアンは、自分のせいで彼女がウォーレスの手に落ちるのも、ましてや命を失うのも嫌だった。
だから、握られた手を彼の方から放す。
「僕は置いていってくれ」
静かに告げると、アンジェリカはポカンと見返してきた。
「え?」
「僕を置いて、先に逃げて」
「それは、できない」
間髪を容れず、硬く低い声でアンジェリカが答えた。
もちろん、彼女ならそう言うだろう。意外でも何でもない。
ブライアンは更に言葉を尽くして説得を図る。
「僕は足手まといだよ。あなただけなら絶対に逃げられる。でも、僕がいたら絶対に無理だ。きっとデッカーたちがすぐ近くまできているから、彼らを連れて助けに来てよ」
気楽な口調でそう言ったものの、多分間に合わないだろうということはブライアンにも判っていた。
デッカーたちが来る前に、出航するか、沈没するか。
そのいずれかになるはずだ。
ここで別れたら、きっと、もうアンジェリカには逢えない。けれど、彼女を守り切ることができるのなら、たとえ船と共に海に沈もうとも本望だ。
アンジェリカを安心させるために、ブライアンは痛みをこらえてヘラッと笑って見せた。
彼女は、立ちすくんだまま、ブライアンを見下ろしている。
と思ったら、突然その場に膝を突き、ブライアンの胸倉をグイと掴み上げた。
「アン、ジェリカ?」
乱暴な所作に面食らうブライアンに、アンジェリカが顔を寄せる。
「あなたは、私を置いていくのか」
「違う、置いていかれるのは、僕の方で――僕は、あなたに無事でいて欲しいんだ」
頼むから、この望みを聞き入れて欲しい。
ブライアンは目にその思いを込めて彼女を見つめ返した。
アンジェリカが、きつく唇を噛み締める。柔らかなそれに歯が食い込むのを見て、ブライアンの胸が締め付けられた。けれど、これは譲れない。
「アンジェリカ」
懇願と共に、彼女の名前を呼んだ。
アンジェリカが、息を吸い込む。
そして、その息を吐き出すとともに。
「あなたは、ずっと私の傍に居ると言った」
「……え?」
困惑と共に見返したブライアンの胸倉を掴むアンジェリカの手に、力がこもった。
「あなたは、あの時、孤児院で、ずっと私の傍に居ると言った。あれを違《たが》えるつもりか」
アンジェリカの言葉で、あの穏やかなひと時のことがブライアンの脳裏によみがえる。
確かに、言った。
衝動に駆られて、深く考えもせず。
その何気ない一言が彼女の中に刻まれていたのだということを知って、ブライアンは嬉しく思った。
けれど、今は、その喜びに呑まれている場合ではない。
「事情が違うよ。今は、とにかく――」
ブライアンが舌に乗せかけた説得の言葉は、鋭い声で切り伏せられる。
「私は、あの言葉を信じた。だから、あなたを置いていくつもりは微塵もない。私を死なせたくなければ、死ぬ気で歩け」
アンジェリカの菫色の瞳に宿る輝きは、わずかな譲歩も彼に許してくれそうになかった。眼も心も奪うその眼差しに射抜かれて、ブライアンは完敗する。
彼女の叱咤の鞭は、拒否するにはあまりに甘過ぎた。
(ああ、僕は、まだまだ彼女のことを解っていないんだ)
そう、アンジェリカがブライアンの――彼だけでなく、誰かのことを、諦めるはずがない。彼女は、諦めるという言葉を知らないのだ。いや、知っていたとしても、彼女の辞書には刻まれていない。
ブライアンの口から、はは、と小さな笑いが漏れた。
と、アンジェリカがムッと唇を曲げる。
「何故、笑う」
いかにも不服そうな声でそう言った彼女の手を、ブライアンは取った。そうして、軽く頭を下げてその繊細な指の背にそっと口付ける。
「ブライアン?」
「僕はあなたがどうしようもなく好きだ」
顔を伏せ、唇を彼女の手に触れさせたまま、ブライアンは囁いた。
くぐもったその声は、アンジェリカの耳には届かなかったらしい。
「え?」
眉をひそめたアンジェリカに、ブライアンはかぶりを振る。
「何でもない。行こう。死ぬ気で頑張るから」
「……? ああ」
アンジェリカはいぶかしげな顔で頷くと、すぐにその表情を改めて、ブライアンの手を取ったまま立ち上がった。彼は自分のものよりもはるかに小さな彼女の手を握り締め、左脚以外の全てに力を籠める。
やっぱり、耐えがたいほど痛い。
しかし、そんな痛みを凌駕する想いが、ブライアンを動かした。
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