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シャッターチャンス
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陽菜は大翔からのLINEを受け、2年3組の教室に入った。入るとそこには、教卓の前で仰向けに眠る大翔の姿があった。
「何してんの?」
「彼女に浮気疑われて往復ビンタされたから鼻血出たの。だから止まるまで待ってる」
「ふーん」
陽菜は屈んで興味なさげな顔をして大翔を見つめていたが、突然アッと声を上げた。
「どうしたの? 急に?」
「私、あのシーン再現したい!」
「あのシーン?」
「チェンソーマンのマキマさんが意識不明になってるデンジくんを鼻血で復活させるシーン。ほら、ピエタ像みたいな構図のやつ」
「それ今やること?」
「虹が出たら写真撮るでしょ? それと一緒だよ。それに、わざわざ準備してまで撮りたいとは思わないし。人生はタイミングが大事なの」
「待って? 俺がマキマさん役?」
「決まってんじゃん。私、生まれて一度も鼻血なんて出したことないんだから」
陽菜はスマホをドアに立て掛けると、動画を回し始めた。大翔は中腰になり、陽菜を抱き抱える。しかし、何回もダメ出しが入った。
「違う違う! 私を抱き抱えるとは言ったけど、本格的に抱きしめる感じじゃなくて、後ろから顎をくいっと掴む感じ。顔はもっと近づけて。キスするぐらい近く。で、血は私の口元に垂らして」
陽菜は大翔の血で自分の白いシャツが血まみれになっても気にせず、ダメ出しを続けていた。すると突然、教室にオーボエを持った1年生の女子が入ってきた。多分、吹奏楽部でパート練習をするためにこの教室にやって来たのだろう。
「きゃー」
少女は甲高い悲鳴を上げ、一目散に逃げ出した。それもそのはずだ。彼女の目には血まみれのシャツを纏い倒れている女とそれを抱き抱える男というアニメではよく見るが、現実では全く見ないような光景が広がっていたのだから。
「どうすんの? 警察に通報されたら?」
「え~、私たち別に悪いことしてなくない?」
陽菜はそう言うと立ち上がり、倒れたスマホを直しにドアに向かって歩いて行った。
「何してんの?」
「彼女に浮気疑われて往復ビンタされたから鼻血出たの。だから止まるまで待ってる」
「ふーん」
陽菜は屈んで興味なさげな顔をして大翔を見つめていたが、突然アッと声を上げた。
「どうしたの? 急に?」
「私、あのシーン再現したい!」
「あのシーン?」
「チェンソーマンのマキマさんが意識不明になってるデンジくんを鼻血で復活させるシーン。ほら、ピエタ像みたいな構図のやつ」
「それ今やること?」
「虹が出たら写真撮るでしょ? それと一緒だよ。それに、わざわざ準備してまで撮りたいとは思わないし。人生はタイミングが大事なの」
「待って? 俺がマキマさん役?」
「決まってんじゃん。私、生まれて一度も鼻血なんて出したことないんだから」
陽菜はスマホをドアに立て掛けると、動画を回し始めた。大翔は中腰になり、陽菜を抱き抱える。しかし、何回もダメ出しが入った。
「違う違う! 私を抱き抱えるとは言ったけど、本格的に抱きしめる感じじゃなくて、後ろから顎をくいっと掴む感じ。顔はもっと近づけて。キスするぐらい近く。で、血は私の口元に垂らして」
陽菜は大翔の血で自分の白いシャツが血まみれになっても気にせず、ダメ出しを続けていた。すると突然、教室にオーボエを持った1年生の女子が入ってきた。多分、吹奏楽部でパート練習をするためにこの教室にやって来たのだろう。
「きゃー」
少女は甲高い悲鳴を上げ、一目散に逃げ出した。それもそのはずだ。彼女の目には血まみれのシャツを纏い倒れている女とそれを抱き抱える男というアニメではよく見るが、現実では全く見ないような光景が広がっていたのだから。
「どうすんの? 警察に通報されたら?」
「え~、私たち別に悪いことしてなくない?」
陽菜はそう言うと立ち上がり、倒れたスマホを直しにドアに向かって歩いて行った。
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