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第一章 開幕
俺、卓球始めるってよ(後編)
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そして俺と近藤は放課後近くの卓球ショップで用具類を揃えることになった。
「なあ近藤。部活はいいのか?」
「ああ、それなら今日はメンバーと顧問に休むって言ってある。新入部員に用具をプレゼントしに行くって言ったら、そりゃもう喜んでたよ」
「そ、そうなのか」
過度な期待されてないといいけど。と、そんな心配をしているうちに、
「よし、着いたぞ。ここが俺の行きつけの卓球ショップだ」
どうやら着いたらしい。そんなに目立った外観ではなくいたって普通の建物だ。
俺は近藤に付いていき店に入った。
「………すげー」
店に入れば、そこら一面に卓球の道具がたくさん並んでいた。ラケットに球に、色々なものが陳列されている。スペースは決して広いわけではないが、限られた広さの棚にたくさんの用具がぎっしりある。
「結構な数だろう?ここ狭いくせに店主がすごい仕入れてくるんだよ。おかげで見るのも一苦労だ」
「これは確かに大変そうだ……」
初心者がきたら絶対迷いそうだな。まあ俺がそうなんだけど。
とそこに、
「ちょっとあんたたち?来ていきなり店の愚痴吐かないでくれるかい!」
カウンターのほうからすごい怖そうなおばちゃんの声が聞こえた。
「なんだよ実際そうだろ?始めたばかりの子が来てみろ。絶対分からなくなって出ていくぞ」
「これでも結構配慮してるつもりだよ」
「ほんとか~?」
……すごい置いてかれてる感がある。そう感じながらどうすればいいか分からないまま呆然としている。
「って、すまんな原。この人が店の店主。たいていみんなばあちゃんって気軽に呼んでる」
「よろしくね坊や」
「よ、よろしくお願い、します……」
俺は思わず緊張して何回もぺこぺこしておばあちゃんと挨拶をした。これは決しておばあちゃんが怖いとかではなく……若干あるけど、俺は昔からコミュニケーションが苦手で初対面の人に対しては特にすごく緊張してしまうのだ。
「で、何をお探しかい?ラバー?それともラケット?」
「悪いな用具一式全部だ。この子始めたばかりなんだよ」
「へえ~そうかい。……これは選びがいがありそうだね」
おばあちゃんは不敵な笑みを浮かべながらそう言った。なんかすごい怖くなってきた……。
「おいおばあちゃん。あんまり高いやつとかやめといてくれよ。普通の初心者セットとかでいいから」
近藤は心配そうにおばあちゃんに注意した。
はいよ~、とそう言って三人で俺の用具選びが始まった。……といってもほとんどおばちゃんと近藤が選んでて、俺はほとんど何もしなかったんだけど。
そして購入後。
「また来なよ~」
おばあちゃんにそう言われてから店を出た俺たち帰路についた。時刻は午後五時半。真っ赤な夕焼け色が空一面を染めている。
「ありがとな近藤。用具まで金出してくれて」
「気にしないでくれ。これも部活のためだ」
そうして会話しながら歩いていると俺はふと頭に疑問がよぎった。
「なあ、近藤はなんでそんなに部活の大会にこだわるんだ?おまえ近くの卓球クラブ通ってたよな?そこから出場すればよくないか?」
近藤は小さいころから卓球教室に通っていると本人から聞いたことがある。本当に勝ちたいのならそちらに行くべきではないか?
「……ああ、そういえばまだ詳しくは話してなかったな」
俺の考えが分かったのであろう近藤は今も赤い夕焼け空を見上げ静かに語りだす。
「今までうちの卓球部大会で実績を残したことないんだよ。特に団体戦。毎年夏に総体……総合体育大会ってのがあって、毎年一回戦とかよくて三回戦でいつも負けてるんだ。そのせいで部員の士気も下がりに下がっててな。でも去年あともうちょっとで準々決勝に行けそうってところで負けたんだ」
「…………」
きっと今の近藤の気持ちは決して俺には測れないだろう。俺は今まであまり他人と関わらなかった。だから何をするにもほとんど一人でやってきた。
しかし近藤は違う。俺は近藤と知り合ってから今まで近藤が何を見て何をしたかということをよく聞いている。近藤は今まで様々な人と関わり、様々な経験を得ている。卓球もそのうちの一つだ。悩み苦しみそれを乗り越えてきた近藤はとても強い人間なのだ。
そして……だからこそ色々抱えやすい性格だということも知っている。
「その時俺の出番はラストで、互いに互角の戦いだったんだ。だけどフォースの時に決着がついてね。見ているだけしかできずに悔しく思ってるときにさ、部長が言ったんだよ。『来年、たのんだ』ってな。やるしかないと思ったんだよ。そして頑張った。部員もついてきてくれたよ。けど中にはやめていった人もいてね。結果的に人数が足りなくなって、何としても大会には出たかった。だから人を探した。そして……今に至るって感じだ」
これで話は終わりっというように近藤は俺のほうを向いて微笑んだ。
なるほど、実に近藤らしい。と俺も思わず微笑んでしまった。
「ってごめん。余計なところまでしゃべっちゃったな」
「いいよ。気にすんな」
いつの間にか夕日が沈み空が暗い夜空に包まれていた。点々と光る星を眺めながら歩いていると気が付けば自分の家についていた。
「じゃあな原。明日からよろしく」
「ああ、お手柔らかにな」
お互い別れの言葉交わし、俺は家に帰った。自室に戻り、ディスクトップPCを立ち上げ早速卓球について調べ始める。
近藤の希望のために頑張らないとな。……あとゲームのためにも。
俺は決意を固めのめり込むように勉強に取り組んだ。
「なあ近藤。部活はいいのか?」
「ああ、それなら今日はメンバーと顧問に休むって言ってある。新入部員に用具をプレゼントしに行くって言ったら、そりゃもう喜んでたよ」
「そ、そうなのか」
過度な期待されてないといいけど。と、そんな心配をしているうちに、
「よし、着いたぞ。ここが俺の行きつけの卓球ショップだ」
どうやら着いたらしい。そんなに目立った外観ではなくいたって普通の建物だ。
俺は近藤に付いていき店に入った。
「………すげー」
店に入れば、そこら一面に卓球の道具がたくさん並んでいた。ラケットに球に、色々なものが陳列されている。スペースは決して広いわけではないが、限られた広さの棚にたくさんの用具がぎっしりある。
「結構な数だろう?ここ狭いくせに店主がすごい仕入れてくるんだよ。おかげで見るのも一苦労だ」
「これは確かに大変そうだ……」
初心者がきたら絶対迷いそうだな。まあ俺がそうなんだけど。
とそこに、
「ちょっとあんたたち?来ていきなり店の愚痴吐かないでくれるかい!」
カウンターのほうからすごい怖そうなおばちゃんの声が聞こえた。
「なんだよ実際そうだろ?始めたばかりの子が来てみろ。絶対分からなくなって出ていくぞ」
「これでも結構配慮してるつもりだよ」
「ほんとか~?」
……すごい置いてかれてる感がある。そう感じながらどうすればいいか分からないまま呆然としている。
「って、すまんな原。この人が店の店主。たいていみんなばあちゃんって気軽に呼んでる」
「よろしくね坊や」
「よ、よろしくお願い、します……」
俺は思わず緊張して何回もぺこぺこしておばあちゃんと挨拶をした。これは決しておばあちゃんが怖いとかではなく……若干あるけど、俺は昔からコミュニケーションが苦手で初対面の人に対しては特にすごく緊張してしまうのだ。
「で、何をお探しかい?ラバー?それともラケット?」
「悪いな用具一式全部だ。この子始めたばかりなんだよ」
「へえ~そうかい。……これは選びがいがありそうだね」
おばあちゃんは不敵な笑みを浮かべながらそう言った。なんかすごい怖くなってきた……。
「おいおばあちゃん。あんまり高いやつとかやめといてくれよ。普通の初心者セットとかでいいから」
近藤は心配そうにおばあちゃんに注意した。
はいよ~、とそう言って三人で俺の用具選びが始まった。……といってもほとんどおばちゃんと近藤が選んでて、俺はほとんど何もしなかったんだけど。
そして購入後。
「また来なよ~」
おばあちゃんにそう言われてから店を出た俺たち帰路についた。時刻は午後五時半。真っ赤な夕焼け色が空一面を染めている。
「ありがとな近藤。用具まで金出してくれて」
「気にしないでくれ。これも部活のためだ」
そうして会話しながら歩いていると俺はふと頭に疑問がよぎった。
「なあ、近藤はなんでそんなに部活の大会にこだわるんだ?おまえ近くの卓球クラブ通ってたよな?そこから出場すればよくないか?」
近藤は小さいころから卓球教室に通っていると本人から聞いたことがある。本当に勝ちたいのならそちらに行くべきではないか?
「……ああ、そういえばまだ詳しくは話してなかったな」
俺の考えが分かったのであろう近藤は今も赤い夕焼け空を見上げ静かに語りだす。
「今までうちの卓球部大会で実績を残したことないんだよ。特に団体戦。毎年夏に総体……総合体育大会ってのがあって、毎年一回戦とかよくて三回戦でいつも負けてるんだ。そのせいで部員の士気も下がりに下がっててな。でも去年あともうちょっとで準々決勝に行けそうってところで負けたんだ」
「…………」
きっと今の近藤の気持ちは決して俺には測れないだろう。俺は今まであまり他人と関わらなかった。だから何をするにもほとんど一人でやってきた。
しかし近藤は違う。俺は近藤と知り合ってから今まで近藤が何を見て何をしたかということをよく聞いている。近藤は今まで様々な人と関わり、様々な経験を得ている。卓球もそのうちの一つだ。悩み苦しみそれを乗り越えてきた近藤はとても強い人間なのだ。
そして……だからこそ色々抱えやすい性格だということも知っている。
「その時俺の出番はラストで、互いに互角の戦いだったんだ。だけどフォースの時に決着がついてね。見ているだけしかできずに悔しく思ってるときにさ、部長が言ったんだよ。『来年、たのんだ』ってな。やるしかないと思ったんだよ。そして頑張った。部員もついてきてくれたよ。けど中にはやめていった人もいてね。結果的に人数が足りなくなって、何としても大会には出たかった。だから人を探した。そして……今に至るって感じだ」
これで話は終わりっというように近藤は俺のほうを向いて微笑んだ。
なるほど、実に近藤らしい。と俺も思わず微笑んでしまった。
「ってごめん。余計なところまでしゃべっちゃったな」
「いいよ。気にすんな」
いつの間にか夕日が沈み空が暗い夜空に包まれていた。点々と光る星を眺めながら歩いていると気が付けば自分の家についていた。
「じゃあな原。明日からよろしく」
「ああ、お手柔らかにな」
お互い別れの言葉交わし、俺は家に帰った。自室に戻り、ディスクトップPCを立ち上げ早速卓球について調べ始める。
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