インドア派高校二年生、卓球始めました……?

天道 一真

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第三章 再挑戦

除霊その2

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 確かいつかの昼休みに近藤から聞いたことがある。
 近藤は確か中学生の頃にも卓球部に入っていて、そこで活動しながら卓球教室にも通っていたらしい。
 「最近気持ち悪い卓球してるやついてさ、本当にうざかった!なんなんだよマジで!」とかなんとか言ってた。
 そして今、俺の目の前で例の”気持ち悪い卓球をしてるやつ”の正体が明かされたわけだ。
 「なるほど。あの時の奴か」
 ゴーストは納得した様子でうなずく。
 「しかし、だから何だというんだ。相手の弱点を暴いて自分から名乗り上げるとか臭い真似しやがって。どのみちお前の勝ちはない。俺は今、お前のことならなんでも知っている。チキータ一を出してきたところでお前の戦型が大幅に変わることは無い。大人しくそのまま俺に喰われろ」
 冷たい目を向け、ゴーストは近藤に指図した。もちろん近藤はこんなことを言われて引くやつではない。
 「バカかお前は。俺はこの試合に勝って仲間に最後のバトンを繋ぐんだ。絶対に負けられないんだよ」
 挑戦的な笑みを浮かべた近藤は決意を示し、ゴーストの命令を拒んだ。
 「ふん。いいだろう。お前のその戦意をとことんまで削いでやるよ」
 ゴーストは不敵な笑みを浮かべながらサーブの構をとる。
 近藤は何も言わず、レシーブの体制をとった。
 そしてゴーストはトスを上げ、右横下回転のサーブをフォア側に短く出す。
 近藤は回り込んでチキータを打とうとする。が、チキータを打たずにバック側に深いツッツキを入れた。
 チキータがやってくると思っていたのだろうゴーストは判断が遅れたせいか、後ろにのけぞりながらバックドライブをしようとする。ゴーストに振られたラケットが下回転の球を擦り上げるが、もともとの回転に負けてしまいボールはネットを超えることなく自陣コートで2バウンドしてしまった。
 「ツーエイト!」
 宮崎の声が段々と明るくなる。清水も、西村先輩も、木村も、強張っていた顔が徐々に緩んでいっているのが分かった。もちろん俺も一安心していた。これならいけるかも……!
 近藤はチキータ以外にも今までに見たことのないプレーをし続け、時間が経つとともに近藤は点数を取り続けた。近藤は笑顔で球を打ち、ゴーストは焦ってさっきまでの正確な卓球が出来なくなっていた。
 「ほら、どうした?さっきまでの威勢はなんだったんだ?俺を喰うんじゃなかったのか?」
 「………チッ!」
 そして近藤の優勢が続いたまま試合は進み、………遂に点数は8-8になった。点数が並んだ事実を確認したゴーストは顔を苦痛に歪め、対照的に近藤はいつものように自信に満ちた表情をするようになった。
 俺たちはもちろん大歓喜。点数を取るたびに声を上げて近藤を応援していた。宮崎も最後まで審判を全うしようと真剣に仕事にあたっている。
 「………クソどもが」
 「試合中に人の悪口なんていうものじゃないぞ」
 「ほざけ」
 ゴーストは荒っぽくサーブを出す。それはYGサーブで俺には回転が分からない。
 近藤はフォアに長めに来たそのサーブをいつもの試合みたいにフリックを対角線上に強打。ゴーストはそれをバックにフォアカウンターをした。
 そのボールを近藤はブロック。ボールは相手のバック側に返った。ゴーストはバックに回り込み、フォアドライブで決めようとしたのが分かるほど全力で打っていた。
 が、近藤はそれをあっさりとフォアでカウンター。相手のバック側に一直線に貫いた。
 「……………」
 ゴーストは打ち終わった体制からそのまま右に一回転するように後ろに落ちた球を確認した。後ろを向いている彼の顔は見えていないが呆然としていると俺はゴーストの後姿をみてそう思った。
 「ナインエイト」
 「――――――!」
 宮崎が点数を宣言する。ゴーストはその直後に肩をビクッと震わせ、そのままボールを取りに行った。
 そして台に戻っりサーブを打とうと準備する時のゴーストの顔は、試合が始まった時とは違う虚ろな表情になっていた。
 近藤はそんなゴーストを見て黙って前傾姿勢になり、レシーブの形になる。
 ゴーストはトスを上げ、サーブを放つ。が、そのボールは相手のコートにワンバウントした後、ネットを超えてツーバウンドすることなく左に曲がって落ちていった。
 「テンエイト」
 宮崎が点数をつける。ゴーストはこの試合で初めてサーブミスをしたが、その表情は揺らぐことは無かった。
 「もしかして――――――」
 「わざとだね」
 俺が言う前に、西村先輩がそう結論付けた。木村と清水はそれを聞いてうなずく。どうやら考えは同じらしい。
 意識を再び卓球台に戻す。そこではもうすでに近藤がサーブをしようとしていた。ゴーストもレシーブをしようとしてる……のだが、構えている腰は若干浮いており、「点数をあげる」と言っているような構えだった。
 そして近藤はバックに速いナックルサーブを出した。このままいけば勝てる、と俺は思っていたのだが。 
 「…………ふん!」
 ゴーストは突然腰を落とし、鋭いバックドライブをバックミドルに打ち放った。
 そこには最初に感じた威圧感もあり、突然何かが憑依したかのようにゴーストは復活した。
 (近藤……!)
 さすがの近藤もこれは予測できていなかっただろう。そう思い、俺は近藤に視線を向けた。
 「………は?」
 俺が近藤を捉えた時にはすでにカウンターで球は相手のフォア側の端に返っていた。
 「はぁ。さっきと同じパターン。ゴーストの名が聞いて呆れるな」
 近藤はそう言い――――――第四試合は近藤が勝利し、ゴーストの目論見は完全に破綻したのだった。
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