現実に飽きていたら異世界に召喚されたので、何故か持ってた刀と共に異世界生活しようと思います。

フルコンボ

文字の大きさ
7 / 13

6話 月下の癒し

しおりを挟む
「もっと強くなりなさい、そしてその力で――」



 見慣れた天井だ。ここは俺の部屋か? 確かナーゼル教の奴らと、戦って……

「あ! 目覚めた!」

「ナツ!よかった……」
 ルーイとノアの声がする。二人がここまで運んできてくれたのだろうか。

「小僧起きたか」

 あとガルフ。それにしてもなんだろうこの違和感。別におかしいことは何もない。そう何もおかしくないのだ。

「腕が付いてる……」

 あの戦いで切断されたはずの左腕が再生している。鎖により切断されたせいで、かなりグロテスクなことになっていた気がするのだが。

「驚いた顔してるわね、坊や」

 金色の髪を頭の上にまとめて留めて、青色の目した女性、一言で言うなればそうシスター。
 アニメやマンガ、海外の映画なんかで見たことがある聖女。そんなシスターと言ったらこんな感じ! という女性が俺を見て微笑んでいる。

「本当にルーナ様がいなかったらどうなってたか」

 どうやら俺の怪我を治してくれたのはこのルーナ様という方らしい。でも治せるとかそんなレベルだったけ?
 おそらくその疑問が顔に出ていたのか、ルーナ様が丁寧に教えてくれた。

「私の恩恵はね、月の光の下ならどんな怪我でも治せるというものなの。それでね、ルーイちゃんが泣きそうな顔しながら、知り合いが瀕死だから急いで来てくださいって。あんな顔されたら断るわけにもいかないじゃない? 坊やどうやら王都には入れないようだしね」

「余計なことは言わないでください!」

 是非ともあのルーイの泣きそうな顔というのを拝んでみたいものだが、触れたら殺すという顔でこちらを睨んでいるので、スルーすることにしよう。

「小僧にしては今回は頑張ったんじゃないか。ルーナも悪いな、こんな夜に王位第三位様は色々忙しいだろうに」

「あら、嫌味かしら?」

「王位第三位!?てかガルフ知り合いなの!?」

 どうやらこの聖女様はとてつもなく偉い人らしい。しかしそんな人とガルフが知り合い?どういうこと?

「まぁ腐れ縁だな」

「おい、何でもそれで済まそうとしてるだろ」

  異様なまでの強さなど普通の人じゃないとは思っていたが、どうやらガルフとかいう男、いよいよ只者じゃないらしい。

「とりあえず元気になってよかったわ、それじゃあ私は帰って寝るわね。夜更かしは美容の天敵なんだから」

「それじゃあ俺も色々後片付けやらがあるから行くぞ」

 そういうとルーナ様とガルフは部屋を出て行った。そういえばあいつ、一度も俺の怪我について心配しなかったな。
 


 気付けば夜もだいぶ深くなっていた。しかし、ルーイとノアはまだ心配なのか、部屋を出て行かない。やれやれ、モテる男は辛いな。

「その……今回はありがとう。あなたのおかげで助かったわ」

「お、どうした頭打ったのか?」

あのルーイが謝罪なんて、やはりナーゼル教の奴らに?

「茶化さないでもう! 私だって感謝ぐらいします! 全くもう」

「ナツとルーイ、なかよし」





 翌日、俺は特に後遺症もなく生活をできていた。あの時が夜で月明かりがあったのが不幸中の幸いか。それにあの戦闘での成果も確かにあった。
 まず一つ目が、恩恵の進化だ。あれから恩恵を使った訳ではないがこれには確信の近いものがある。何ができるようになったかは確かめないとわからないが、あれだけの血を扱ったのだ、それなりに成長してくれてないと困る。
 そしてもう一つ、俺の怪我への耐性だ。腕が吹っ飛んだ時に、多少の痛みはあったが、痛くてのたうち回るみたいなことはなかった。今まで気づくことがなかったってことは、大きい怪我などは痛みを感じにくいものとかなのか?
これが恩恵による物なのか、元からの体質かは分からないが、できればあんな怪我はもうしたくないものだ。

「いやー儲けた儲けた!」

「ナツ、ケガ大丈夫?いたいとこない?」

 どうやら元の賞金首にプラスで、第五位信徒だかを捕まえたからかそれなりの金額が払われたらしく今はドーゴンさんの酒場でガルフとノアと打ち上げをしている。

「呑気だなぁ、こっちは腕がなくなったっていうのに」

「治ったんだからいいだろうが。それより騎士団の団長様があんたにこれをって」

 何やら手紙のような物を渡されだが……これは……

「招待状?」

 ――拝啓 カンザキナツ殿

 貴殿のこの度の事件解決の活躍を称し、第60回ロイセ
 ル王国剣技大会に招待する。

   騎士団団長 バルクルド ルイーザ

「何だ剣技大会って?」

「剣技大会ってのは、この国の剣に自信がある奴らが、募って、戦い合うっていう大会だよ。どうやら、今回のお前の話を聞いてだな、団長様が是非ってな。ちなみに勝てば賞金が出るぞ、だから出ろ」

「って言ったってどうせ王都でやるんだろこういうの。俺
入れねーし」

「そこは団長様とルーナが説得したみたいでな、よかったな」

「ナツ強くなった。大丈夫」

 正直あまり気が乗らないが、賞金が出るらしいし、何より今回のナーゼル教。俺の恩恵といいナーゼルとは縁があるらしい。これから先もああいう奴らが出てきてもおかしくない。そのために強くなっておく必要がある。

「成長しなきゃだな……」

 それにはいい機会だ。実践経験を積み、ついでに賞金ゲットといこう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

第2の人生は、『男』が希少種の世界で

赤金武蔵
ファンタジー
 日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。  あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。  ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。  しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

修学旅行のはずが突然異世界に!?

中澤 亮
ファンタジー
高校2年生の才偽琉海(さいぎ るい)は修学旅行のため、学友たちと飛行機に乗っていた。 しかし、その飛行機は不運にも機体を損傷するほどの事故に巻き込まれてしまう。 修学旅行中の高校生たちを乗せた飛行機がとある海域で行方不明に!? 乗客たちはどこへ行ったのか? 主人公は森の中で一人の精霊と出会う。 主人公と精霊のエアリスが織りなす異世界譚。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

処理中です...