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王宮編
63の2.たーんけんっ!
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よし、決めた。今日から私の息抜き場にする。
そうと決まったなら、一番のお気に入り場所を見つけなくては。
ご機嫌もマックスになり、鼻歌を歌いながら少しずつスキップで移動して眺めを確認していく。
しかし、ある程度散策したところでスキップしていた足がピタリと止まった。
ん? なんでこんなモンがこんな場所に?
この場にはあまりにそぐわないモノがデデーンと鎮座している。
「これ……ベッド? なんでこんなとこにあるん?」
はて、と首を捻っていると、近くで空間がグニャリと歪み、人が現れた。
「え?」「ん?」
まさか人が来るとは思わなかった。思わずびっくりして声をあげる。同時に向こうも一言声を出す。
あちらさんも私がいると思わなかったのか、自分の周りに防御の魔法陣を展開してすぐに攻撃できるような態勢を整えている。
「ま、待って。攻撃しないでっ。ワザとじゃないからっ」
しゃがみ込んで頭を抱えて、必死に叫んで相手を制する。フッと陣が消え、スイッとこちらに近づいてくる気配を感じた。
「なぜここに君がいる? ここは私の場所だ」
……この声……ラッセルじゃん……
咎められているのに、この声を聞けるだけで心臓がトクンと跳ねるのがわかった。
ダメだ、ダメだ、ラッセルに受け入れてもらえなかった時点で私の恋は終わってる。何を未練がましく思ってるんだよ。この間もそうだったけど、嫌われてんのに、少しでも一緒にいたいとか話したいなんて、単なるストーカーだから。
変態って思われる前に気持ちにフタをしよう。
いろんな考えが頭をよぎる中、感情を悟られないように、できるだけ平静を装って会話に努める。
「ア、ンタの場所だなんて、知らないし。たまたま辿りついただけだもん」
「この一帯には結界が張られていたはずだ。どうやって辿りついた?」
私と話してる間も、意識は四方へと向けているのか、目がせわしなく動き、全身が緊張に包まれている。
「えっと、図書館の先に、いつもは気にならない程度なんだけど、違和感があって……よーく見たら獣道みたいなのがあったから、今日は探検しに来ました」
「誰かを連れてきたり、ここに来ることを伝えたか?」
私は首を横に振り、誰にも知らせてないことを伝えた。
それを聞いたラッセルは深く息を吐き、ベッドの端にドサリと腰を下ろす。
「ところでさ、何でこんなとこにベッド? アンタ、自分の部屋あるんでしょ? わざわざこんなとこに移動しなくたって。おかしいよ、異常だよ?」
「異常、か。確かにそうだな。しかし、王宮の中ではどうしても眠れない。これは苦肉の策だ」
ラッセルは深いため息をつきながら、組んだ両手を額に当て、苦しそうに呟く。
「昔から王宮には私の居場所がなかったからな。もう子供ではなくなっているから大丈夫だと自分に言い聞かせて、努力したが無駄だった。仕事をしているうちはまだ忘れられるが、夜が……正直恐い」
注意深く様子をみると、細かくカタカタと震えているラッセルが目の前にいる。
あれだけ自信満々で憎まれ口ばっかりだった人間と、今目の前にいる人が同一人物なのか、と疑ってしまうくらいの頼りなさだ。
「仕事が夜までかかる日は、眠らずに次の日を迎えることが多くなった。自分でもどう改善すればよいか途方に暮れている」
そう言えば、前に泥酔して目覚めた次の朝も、こんな風に弱々しい感じだったっけ。昔のラッセルのことは知らないけど、その時に何かあったかな?
とりあえず、ここでしか眠れないというのだから、寝かせてあげるしかないだろう。
「ねえ、疲れてる時はいい考えなんて浮かばないものよ? 一度眠るといいわ。少し側にいてあげる」
ラッセルに横になるよう促し、肩を優しくトントンと叩きながら、あの時も歌ってあげた子守唄をゆっくりと口ずさむ。一曲終わらないうちに微かな寝息を聞く。
私は極力音を立てないようにしてその場を離れ、もと来た獣道を抜けて自分の部屋まで戻った。
そうと決まったなら、一番のお気に入り場所を見つけなくては。
ご機嫌もマックスになり、鼻歌を歌いながら少しずつスキップで移動して眺めを確認していく。
しかし、ある程度散策したところでスキップしていた足がピタリと止まった。
ん? なんでこんなモンがこんな場所に?
この場にはあまりにそぐわないモノがデデーンと鎮座している。
「これ……ベッド? なんでこんなとこにあるん?」
はて、と首を捻っていると、近くで空間がグニャリと歪み、人が現れた。
「え?」「ん?」
まさか人が来るとは思わなかった。思わずびっくりして声をあげる。同時に向こうも一言声を出す。
あちらさんも私がいると思わなかったのか、自分の周りに防御の魔法陣を展開してすぐに攻撃できるような態勢を整えている。
「ま、待って。攻撃しないでっ。ワザとじゃないからっ」
しゃがみ込んで頭を抱えて、必死に叫んで相手を制する。フッと陣が消え、スイッとこちらに近づいてくる気配を感じた。
「なぜここに君がいる? ここは私の場所だ」
……この声……ラッセルじゃん……
咎められているのに、この声を聞けるだけで心臓がトクンと跳ねるのがわかった。
ダメだ、ダメだ、ラッセルに受け入れてもらえなかった時点で私の恋は終わってる。何を未練がましく思ってるんだよ。この間もそうだったけど、嫌われてんのに、少しでも一緒にいたいとか話したいなんて、単なるストーカーだから。
変態って思われる前に気持ちにフタをしよう。
いろんな考えが頭をよぎる中、感情を悟られないように、できるだけ平静を装って会話に努める。
「ア、ンタの場所だなんて、知らないし。たまたま辿りついただけだもん」
「この一帯には結界が張られていたはずだ。どうやって辿りついた?」
私と話してる間も、意識は四方へと向けているのか、目がせわしなく動き、全身が緊張に包まれている。
「えっと、図書館の先に、いつもは気にならない程度なんだけど、違和感があって……よーく見たら獣道みたいなのがあったから、今日は探検しに来ました」
「誰かを連れてきたり、ここに来ることを伝えたか?」
私は首を横に振り、誰にも知らせてないことを伝えた。
それを聞いたラッセルは深く息を吐き、ベッドの端にドサリと腰を下ろす。
「ところでさ、何でこんなとこにベッド? アンタ、自分の部屋あるんでしょ? わざわざこんなとこに移動しなくたって。おかしいよ、異常だよ?」
「異常、か。確かにそうだな。しかし、王宮の中ではどうしても眠れない。これは苦肉の策だ」
ラッセルは深いため息をつきながら、組んだ両手を額に当て、苦しそうに呟く。
「昔から王宮には私の居場所がなかったからな。もう子供ではなくなっているから大丈夫だと自分に言い聞かせて、努力したが無駄だった。仕事をしているうちはまだ忘れられるが、夜が……正直恐い」
注意深く様子をみると、細かくカタカタと震えているラッセルが目の前にいる。
あれだけ自信満々で憎まれ口ばっかりだった人間と、今目の前にいる人が同一人物なのか、と疑ってしまうくらいの頼りなさだ。
「仕事が夜までかかる日は、眠らずに次の日を迎えることが多くなった。自分でもどう改善すればよいか途方に暮れている」
そう言えば、前に泥酔して目覚めた次の朝も、こんな風に弱々しい感じだったっけ。昔のラッセルのことは知らないけど、その時に何かあったかな?
とりあえず、ここでしか眠れないというのだから、寝かせてあげるしかないだろう。
「ねえ、疲れてる時はいい考えなんて浮かばないものよ? 一度眠るといいわ。少し側にいてあげる」
ラッセルに横になるよう促し、肩を優しくトントンと叩きながら、あの時も歌ってあげた子守唄をゆっくりと口ずさむ。一曲終わらないうちに微かな寝息を聞く。
私は極力音を立てないようにしてその場を離れ、もと来た獣道を抜けて自分の部屋まで戻った。
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