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王宮編
67の1.行かせて!
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「お嬢様ってば、最近図書館行く日が楽しそうですよねぇ」
「ええ? 何でそう思う? そんな風に見える?」
自分でも意識してなかった。マズいところを指摘されたためなのか、心臓がドキドキして手が震えた。
「はい、週末になるとそわそわしてますよ? 勉強とか読書なんて、何が楽しいんだか私には全くわかりませんよ」
呆れたように私に向かって喋るハムスターちゃんには、今のところ私の動揺は悟られていないようだ。
「そうかしら? 難しい本ばかりじゃないから、探せば面白い本もあるわよ?」
バレないように、とワザと明るく答えてその場をやり過ごし、ハムスターちゃんには見えないように安堵のため息をついた。
別にやましいことをしているワケではないんだけど、非公式の場で男性と二人ってシチュエーションが、なんだかイケナイ雰囲気じゃない?
だから今のところはナイショにしておこうって思ってる。
「サーラ、今日の図書館までの道のりは私が一緒にいこう。私も向こう側の棟には、なかなか同行してあげられなかったからな」
レイニーさんからの申し出に、体がギクリと反応して動揺がさらにひどくなる。私が隠し事をしてるってバレたら、絶対に追求されて洗いざらい喋らされるに決まってる。
ここはなんとしてでもレイニーさんには辞退してもらわないと。
「ええ? そんな、いいですよ。遠慮しておきますって。レイニーさんはいつも忙しいから、たまにはゆっくりしてて。私はこのハムスター、じゃなかった、侍女さんとお出かけするから」
営業スマイルを顔に貼り付けて、必死の抵抗を試みるが……
無念……結局断れなかった。
図書館棟側の警備体制の打ち合わせがあるらしく、私の護衛を含めて移動するということだったのだ。お仕事の範囲ならば、無碍に断るワケにもいかず、不本意ながらお願いするに至った。
かたや、久しぶりに近況を報告したりして会話を楽しむ上機嫌なレイニーさん。かたや、ドナドナされる牛の切なさを実感している私、という妙な構図のまま、図書館への移動が始まった。
普段の何倍も時間がかかったような感じがしたが、とりあえず図書館に到着。手を振ってレイニーさんとお別れすれば私の自由時間だ。一刻も早く、この冷や汗ものの状況から解放されたくて、早速彼女を送り出す。
「ああそうそう。これをサーラに」
そう言って渡されたのは、バラの花の装飾がついた小さなピンだった。
やだ、可愛いじゃん。私も女子の端くれだもの、このくらいのお洒落なものは大好きだし。
「あなたに似合ってると思ってね。ぜひ付けておいてくださいね」
ニッコリ笑う彼女の目には、絶対に外すなと言わんばかりの力がある。その迫力に気圧されてコクコクと頷いていると、満足したのか、あっという間に私の元を去っていってしまった。
「ふうっ、別に悪いことしてるんじゃないんだけどさぁ。道端でパトカーとかお巡りさんみたら背筋が伸びる感覚なのよね。さてと、行きますか」
気をとりなおして、例の茂みに向かった。
スッと手を伸ばして葉っぱをより分けようとした時だった。
バチンッと指先で光が弾け、目の前に魔法陣が広がる。ビックリして二、三歩後ずさりし、改めてその魔法陣を確認する。
どうやら守りの魔法陣らしく、攻撃されるわけではないとわかって安心した。安心はしたのだが、その先の茂みの中に入ろうと手を伸ばすと、そこで光が弾けて、それ以上進むことができないでいる。
「ええ? そんなぁ。あっちに行きたいのに……何なの、これ」
もう一度チャレンジしても、やはり魔法陣に阻まれてその先へは進めない。ショックを受けてその場にペタンと座り込み、呆然と目の前を見つめていると、後ろからカサッと誰かが近づく音が聞こえた。
「ここか。サーラの様子が変だったから確認のためにピンを渡したが……ん? この魔力……」
ノロノロと首を動かすと、レイニーさんが腰に手を当てて仁王立ちしてるのが見えた。
「ええ? 何でそう思う? そんな風に見える?」
自分でも意識してなかった。マズいところを指摘されたためなのか、心臓がドキドキして手が震えた。
「はい、週末になるとそわそわしてますよ? 勉強とか読書なんて、何が楽しいんだか私には全くわかりませんよ」
呆れたように私に向かって喋るハムスターちゃんには、今のところ私の動揺は悟られていないようだ。
「そうかしら? 難しい本ばかりじゃないから、探せば面白い本もあるわよ?」
バレないように、とワザと明るく答えてその場をやり過ごし、ハムスターちゃんには見えないように安堵のため息をついた。
別にやましいことをしているワケではないんだけど、非公式の場で男性と二人ってシチュエーションが、なんだかイケナイ雰囲気じゃない?
だから今のところはナイショにしておこうって思ってる。
「サーラ、今日の図書館までの道のりは私が一緒にいこう。私も向こう側の棟には、なかなか同行してあげられなかったからな」
レイニーさんからの申し出に、体がギクリと反応して動揺がさらにひどくなる。私が隠し事をしてるってバレたら、絶対に追求されて洗いざらい喋らされるに決まってる。
ここはなんとしてでもレイニーさんには辞退してもらわないと。
「ええ? そんな、いいですよ。遠慮しておきますって。レイニーさんはいつも忙しいから、たまにはゆっくりしてて。私はこのハムスター、じゃなかった、侍女さんとお出かけするから」
営業スマイルを顔に貼り付けて、必死の抵抗を試みるが……
無念……結局断れなかった。
図書館棟側の警備体制の打ち合わせがあるらしく、私の護衛を含めて移動するということだったのだ。お仕事の範囲ならば、無碍に断るワケにもいかず、不本意ながらお願いするに至った。
かたや、久しぶりに近況を報告したりして会話を楽しむ上機嫌なレイニーさん。かたや、ドナドナされる牛の切なさを実感している私、という妙な構図のまま、図書館への移動が始まった。
普段の何倍も時間がかかったような感じがしたが、とりあえず図書館に到着。手を振ってレイニーさんとお別れすれば私の自由時間だ。一刻も早く、この冷や汗ものの状況から解放されたくて、早速彼女を送り出す。
「ああそうそう。これをサーラに」
そう言って渡されたのは、バラの花の装飾がついた小さなピンだった。
やだ、可愛いじゃん。私も女子の端くれだもの、このくらいのお洒落なものは大好きだし。
「あなたに似合ってると思ってね。ぜひ付けておいてくださいね」
ニッコリ笑う彼女の目には、絶対に外すなと言わんばかりの力がある。その迫力に気圧されてコクコクと頷いていると、満足したのか、あっという間に私の元を去っていってしまった。
「ふうっ、別に悪いことしてるんじゃないんだけどさぁ。道端でパトカーとかお巡りさんみたら背筋が伸びる感覚なのよね。さてと、行きますか」
気をとりなおして、例の茂みに向かった。
スッと手を伸ばして葉っぱをより分けようとした時だった。
バチンッと指先で光が弾け、目の前に魔法陣が広がる。ビックリして二、三歩後ずさりし、改めてその魔法陣を確認する。
どうやら守りの魔法陣らしく、攻撃されるわけではないとわかって安心した。安心はしたのだが、その先の茂みの中に入ろうと手を伸ばすと、そこで光が弾けて、それ以上進むことができないでいる。
「ええ? そんなぁ。あっちに行きたいのに……何なの、これ」
もう一度チャレンジしても、やはり魔法陣に阻まれてその先へは進めない。ショックを受けてその場にペタンと座り込み、呆然と目の前を見つめていると、後ろからカサッと誰かが近づく音が聞こえた。
「ここか。サーラの様子が変だったから確認のためにピンを渡したが……ん? この魔力……」
ノロノロと首を動かすと、レイニーさんが腰に手を当てて仁王立ちしてるのが見えた。
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