176 / 249
王宮編
89の1.決着!
しおりを挟む
パアン、という破裂音が聞こえると、私を襲ってくるはずのカマキリたちのほとんどが地面に落ちていた。
喉のあたりがふわっと温かくなり、確認するとハルからもらった王族用だというペンダントが光を放っている。たぶん、私の危機に反応して護身用の魔術が発動したのだろう。かなり強力な守りだったためか、かなりのカマキリが戦闘不能状態に陥ったようだ。
とりあえずの危険は去ったのかと考えている間に、グイッと腕を取られてルディに支えられながら大きく後退した。
私の前に立ったルディは、その場で態勢を整えて迎撃を始める。動けないままのカマキリたち目がけて、火の塊を何発も発射して焼き尽くしていく。辺り一面、鼻がバカになるくらいの焦げ臭さで一杯になった。
「くっ……俺の大切な子供たちをいたぶるんじゃないっ。クソ……こうなったらせめてこっちは始末してやるっ!」
カンは身を翻してレイニーさんに向き直ると右手を振り下ろした。それが合図だったのか、動けるカマキリの大半がレイニーさん目がけて飛んだ。
「ぎゃっ……ぐっ……かっ……」
全身がカマキリに覆われ、くぐもった悲鳴しか聞こえてこない。赤黒く立つ人型、まるでミイラのようないでだちにゾクっとした恐怖にとらわれる。
やがてドサリ、と大きな音を立ててレイニーさんが倒れた。彼女の全身から一斉にカマキリたちが去り、代わりに現れたのは全身を滴る血で真っ赤に染め、ヒクヒクとしている姿だった。
「コイツはもう終わり。時間の問題だ。さあ、お嬢ちゃん、アンタも素直に首を出しな。逃げるたびに周りのヤツらが死ぬんだぜ?」
「あ……レ、イニ、さ……」
カンの目がギラギラと凶悪な光を放って、危険度が増していくのがわかった。
血まみれのレイニーさんを目の当たりにしたら、衝撃が大きすぎて言葉が途切れて出てこない。
「こんのおっ! お前、ぜってー許さないっ!」
ルディがカンに食ってかかるように斬りつけていく。
怒りに任せた剣技のためか、大振りになってなかなかカンを追い詰めることができないでいる。対してカンの方は、余裕の笑みさえ浮かべてルディの剣を軽くいなしている。
「ほらほら、脇とかガラ空きになってるよ? こんなんで感情乱すとか、修行不足でしょ」
「うるせえっ! お前を倒せばいいだけだっ」
「そうかな、でも怒りに任せて自分のことだけ考えるなんてなあ……あっちのお嬢ちゃんはどうする? 大事なんじゃないのー?」
言うと同時に腕を振り下ろすカン。一斉に飛び立つカマキリたち。
ハッと顔を上げ、後退して私を守ろうと、ルディが手を伸ばして駆けつけようとするが、間に合わない。カマキリの大群が私の目前まで迫ってくるのを感じ、レイニーさんと同じ姿になることを想像してギュッと目を閉じた。
グッと身構えた割に体に纏わりつく感覚を感じることもなく、不思議に思ってゆっくりと目を開けてみれば、私の前には黒いヒョウとヘビが出現していた。
ラッセルがつけてくれた使い魔たちだ。彼らが素早く動いてカマキリの大群を追い払ってくれている。
ほうっと胸を撫で下ろし、ルディに向かって叫んだ。
「ルディ、こっちはこの子たちが何とかしてくれる。だから早くソイツをやっつけて!」
私の無事を確認すると、ルディはニッコリ笑って頷き返してくれた。
うん、大丈夫。あの笑顔ならきっとやってくれる。
「へへへ……サーラが傷つかないなら、俺は安心してお前と闘えるぜ。さっきはアツくなり過ぎちまったからな。今度は仕留めるっ!」
ルディの宣言で、また斬りつけ合いが始まった。お互いに一歩も引かない状態で、かすり傷は増えていくのに決定打には至らない。
間合いを詰めてはまた距離をとり、それが幾度も繰り返されて時間だけが過ぎていく。
消耗戦になってきているようで、二人とも肩が上下して荒い息をついているのが見えるのだが、時間が経つにつれ、ルディの方が押され気味になってきてるのが第三者から見てもわかるようになってきた。
喉のあたりがふわっと温かくなり、確認するとハルからもらった王族用だというペンダントが光を放っている。たぶん、私の危機に反応して護身用の魔術が発動したのだろう。かなり強力な守りだったためか、かなりのカマキリが戦闘不能状態に陥ったようだ。
とりあえずの危険は去ったのかと考えている間に、グイッと腕を取られてルディに支えられながら大きく後退した。
私の前に立ったルディは、その場で態勢を整えて迎撃を始める。動けないままのカマキリたち目がけて、火の塊を何発も発射して焼き尽くしていく。辺り一面、鼻がバカになるくらいの焦げ臭さで一杯になった。
「くっ……俺の大切な子供たちをいたぶるんじゃないっ。クソ……こうなったらせめてこっちは始末してやるっ!」
カンは身を翻してレイニーさんに向き直ると右手を振り下ろした。それが合図だったのか、動けるカマキリの大半がレイニーさん目がけて飛んだ。
「ぎゃっ……ぐっ……かっ……」
全身がカマキリに覆われ、くぐもった悲鳴しか聞こえてこない。赤黒く立つ人型、まるでミイラのようないでだちにゾクっとした恐怖にとらわれる。
やがてドサリ、と大きな音を立ててレイニーさんが倒れた。彼女の全身から一斉にカマキリたちが去り、代わりに現れたのは全身を滴る血で真っ赤に染め、ヒクヒクとしている姿だった。
「コイツはもう終わり。時間の問題だ。さあ、お嬢ちゃん、アンタも素直に首を出しな。逃げるたびに周りのヤツらが死ぬんだぜ?」
「あ……レ、イニ、さ……」
カンの目がギラギラと凶悪な光を放って、危険度が増していくのがわかった。
血まみれのレイニーさんを目の当たりにしたら、衝撃が大きすぎて言葉が途切れて出てこない。
「こんのおっ! お前、ぜってー許さないっ!」
ルディがカンに食ってかかるように斬りつけていく。
怒りに任せた剣技のためか、大振りになってなかなかカンを追い詰めることができないでいる。対してカンの方は、余裕の笑みさえ浮かべてルディの剣を軽くいなしている。
「ほらほら、脇とかガラ空きになってるよ? こんなんで感情乱すとか、修行不足でしょ」
「うるせえっ! お前を倒せばいいだけだっ」
「そうかな、でも怒りに任せて自分のことだけ考えるなんてなあ……あっちのお嬢ちゃんはどうする? 大事なんじゃないのー?」
言うと同時に腕を振り下ろすカン。一斉に飛び立つカマキリたち。
ハッと顔を上げ、後退して私を守ろうと、ルディが手を伸ばして駆けつけようとするが、間に合わない。カマキリの大群が私の目前まで迫ってくるのを感じ、レイニーさんと同じ姿になることを想像してギュッと目を閉じた。
グッと身構えた割に体に纏わりつく感覚を感じることもなく、不思議に思ってゆっくりと目を開けてみれば、私の前には黒いヒョウとヘビが出現していた。
ラッセルがつけてくれた使い魔たちだ。彼らが素早く動いてカマキリの大群を追い払ってくれている。
ほうっと胸を撫で下ろし、ルディに向かって叫んだ。
「ルディ、こっちはこの子たちが何とかしてくれる。だから早くソイツをやっつけて!」
私の無事を確認すると、ルディはニッコリ笑って頷き返してくれた。
うん、大丈夫。あの笑顔ならきっとやってくれる。
「へへへ……サーラが傷つかないなら、俺は安心してお前と闘えるぜ。さっきはアツくなり過ぎちまったからな。今度は仕留めるっ!」
ルディの宣言で、また斬りつけ合いが始まった。お互いに一歩も引かない状態で、かすり傷は増えていくのに決定打には至らない。
間合いを詰めてはまた距離をとり、それが幾度も繰り返されて時間だけが過ぎていく。
消耗戦になってきているようで、二人とも肩が上下して荒い息をついているのが見えるのだが、時間が経つにつれ、ルディの方が押され気味になってきてるのが第三者から見てもわかるようになってきた。
0
あなたにおすすめの小説
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
異世界に行った、そのあとで。
神宮寺 あおい
恋愛
新海なつめ三十五歳。
ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。
当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。
おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。
いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。
『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』
そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。
そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
『辺境伯一家の領地繁栄記』スキル育成記~最強双子、成長中~
鈴白理人
ファンタジー
ラザナキア王国の国民は【スキルツリー】という女神の加護を持つ。
そんな国の北に住むアクアオッジ辺境伯一家も例外ではなく、父は【掴みスキル】母は【育成スキル】の持ち主。
母のスキルのせいか、一家の子供たちは生まれたころから、派生スキルがポコポコ枝分かれし、スキルレベルもぐんぐん上がっていった。
双子で生まれた末っ子、兄のウィルフレッドの【精霊スキル】、妹のメリルの【魔法スキル】も例外なくレベルアップし、十五歳となった今、学園入学の秒読み段階を迎えていた──
前作→『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合
【完結】そして異世界の迷い子は、浄化の聖女となりまして。
和島逆
ファンタジー
七年前、私は異世界に転移した。
黒髪黒眼が忌避されるという、日本人にはなんとも生きにくいこの世界。
私の願いはただひとつ。目立たず、騒がず、ひっそり平和に暮らすこと!
薬師助手として過ごした静かな日々は、ある日突然終わりを告げてしまう。
そうして私は自分の居場所を探すため、ちょっぴり残念なイケメンと旅に出る。
目指すは平和で平凡なハッピーライフ!
連れのイケメンをしばいたり、トラブルに巻き込まれたりと忙しい毎日だけれど。
この異世界で笑って生きるため、今日も私は奮闘します。
*他サイトでの初投稿作品を改稿したものです。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
【完結】召喚された2人〜大聖女様はどっち?
咲雪
恋愛
日本の大学生、神代清良(かみしろきよら)は異世界に召喚された。同時に後輩と思われる黒髪黒目の美少女の高校生津島花恋(つしまかれん)も召喚された。花恋が大聖女として扱われた。放置された清良を見放せなかった聖騎士クリスフォード・ランディックは、清良を保護することにした。
※番外編(後日談)含め、全23話完結、予約投稿済みです。
※ヒロインとヒーローは純然たる善人ではないです。
※騎士の上位が聖騎士という設定です。
※下品かも知れません。
※甘々(当社比)
※ご都合展開あり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる