178 / 249
王宮編
90の1.助かった!
しおりを挟む
レイニーさんとルディを守るように、二人の前に立って両手を広げて敵を待ち構える。
来るなら来なさい。私の首があればこの二人は助かる。ならば迷うことは無い。誰かのために命を投げ出すなんてカッコイイ最後、やってみたかったもの。
テレビで見たヒーロー物の主役に私はなるっ!
なーんてね。私だって死にたくない……出来るだけ助かる方法、作戦『言いくるめる』でなんとか乗り切ってみよう。
いよいよ壁の向こうに人影が見えた。
自分で考えられる限りの恐い顔で壁を睨みつける。さあ、戦闘開始。
不意に顔を出したのは、見覚えのある服の集団だった。
ん? なんで?
不思議に感じたのも当然。現れたのは大勢の魔術師団員だったからだ。
王宮から指示を受けたという魔術師団員の皆さんだったようで、瀕死のレイニーさんに対してすぐさま応急処置が行われた。
治癒術師が数人がかりで治療をしているのを見かけ、命の危険は回避されたんだろうと想像できる。これでレイニーさんは大丈夫。安心して胸を撫で下ろした。
ふと奥の方を見ると、ビックリする人物がそこにいた。
なんと、コークス先生、あ、違った。今はコークス師団長か、が団員に指示を出していた。その後ろには、街の警備を担当してくれているミラーズ隊長さんもいる。思わず駆け出してコークス先生に声をかけた。
「先生? なんでこんなところに? 魔術師団の方は平気なんですか?」
焦って駆けつけた私に対してニコリと笑いかけて、頭をポンポンと撫でてくれた。
「お久しぶりです、サーラ。あなたにお怪我がなくて本当によかった。実は王宮から緊急連絡が届いたのです。ここら辺でサーラが危険に晒されていると」
「へ? 私が危険な目に遭ってるなんて、なんでわかったんだろ……」
下を向いて考えながら呟くと、コークス先生から詳しく説明があった。
「カシアス殿下から私に直接連絡があったのですよ。サーラに渡していたペンダントの護符が弾けた、と。場所はザックリとしか特定できなかったようでしたが、とにかく救助を頼むと言われました」
「そっか、あのペンダントの光がハルに伝わる合図だったのかしら。でも本当に助かりました。レイニーさんが危ないのに、連絡手段が何もなかったので」
このタイミングで救助に来てくれたことに、心から感謝を込めてお礼を言った。
「あなたが八卦一族から狙われているのは私も知っておりました。レイニーとヒューズが揃っていれば、外部の襲撃にも対応できると考えておりましたが……甘かったですね。これからはもう少し強化する方向で考えておきましょう」
眉間に皺を寄せて喋る様子に、普段のコークス先生にはない厳しい雰囲気を感じ、改めて敵の強さを思い知らされた。
「私に身を守る術を教えてください。私が自分で自分を守る自信がないから、今回も二人に余計な負担がいったと思うんです。せめて剣の扱い方くらい知っておけば、急襲を受けたとしても、多少の時間稼ぎはできますよね?」
「それはそうなんですが……あの方がどう思われるか。あの方はあなたを一秒たりとも危険に晒すことを許さないのですから」
「ラッセルは私が説得します。だからお願いします。魔術師団に行けないなら、王宮で、ルディに鍛えてもらえればいいんです。毎日少しずつ。先生、お願いします」
私の必死のお願いに、渋い顔をしながら考えこんでいる。やがてふうっと大きなため息をつくと、苦笑いをしながら私の肩をポンと叩く。
「しょうがないですね。サーラは自分の決めたことは最後までやり遂げる方ですから。私が止めてもコッソリどこかでやるのでしょう? だったら私がユーグレイ公に進言致します。今日はおとなしくしていなさい。明日の夕方からルディに教わること」
「はいっ」
来るなら来なさい。私の首があればこの二人は助かる。ならば迷うことは無い。誰かのために命を投げ出すなんてカッコイイ最後、やってみたかったもの。
テレビで見たヒーロー物の主役に私はなるっ!
なーんてね。私だって死にたくない……出来るだけ助かる方法、作戦『言いくるめる』でなんとか乗り切ってみよう。
いよいよ壁の向こうに人影が見えた。
自分で考えられる限りの恐い顔で壁を睨みつける。さあ、戦闘開始。
不意に顔を出したのは、見覚えのある服の集団だった。
ん? なんで?
不思議に感じたのも当然。現れたのは大勢の魔術師団員だったからだ。
王宮から指示を受けたという魔術師団員の皆さんだったようで、瀕死のレイニーさんに対してすぐさま応急処置が行われた。
治癒術師が数人がかりで治療をしているのを見かけ、命の危険は回避されたんだろうと想像できる。これでレイニーさんは大丈夫。安心して胸を撫で下ろした。
ふと奥の方を見ると、ビックリする人物がそこにいた。
なんと、コークス先生、あ、違った。今はコークス師団長か、が団員に指示を出していた。その後ろには、街の警備を担当してくれているミラーズ隊長さんもいる。思わず駆け出してコークス先生に声をかけた。
「先生? なんでこんなところに? 魔術師団の方は平気なんですか?」
焦って駆けつけた私に対してニコリと笑いかけて、頭をポンポンと撫でてくれた。
「お久しぶりです、サーラ。あなたにお怪我がなくて本当によかった。実は王宮から緊急連絡が届いたのです。ここら辺でサーラが危険に晒されていると」
「へ? 私が危険な目に遭ってるなんて、なんでわかったんだろ……」
下を向いて考えながら呟くと、コークス先生から詳しく説明があった。
「カシアス殿下から私に直接連絡があったのですよ。サーラに渡していたペンダントの護符が弾けた、と。場所はザックリとしか特定できなかったようでしたが、とにかく救助を頼むと言われました」
「そっか、あのペンダントの光がハルに伝わる合図だったのかしら。でも本当に助かりました。レイニーさんが危ないのに、連絡手段が何もなかったので」
このタイミングで救助に来てくれたことに、心から感謝を込めてお礼を言った。
「あなたが八卦一族から狙われているのは私も知っておりました。レイニーとヒューズが揃っていれば、外部の襲撃にも対応できると考えておりましたが……甘かったですね。これからはもう少し強化する方向で考えておきましょう」
眉間に皺を寄せて喋る様子に、普段のコークス先生にはない厳しい雰囲気を感じ、改めて敵の強さを思い知らされた。
「私に身を守る術を教えてください。私が自分で自分を守る自信がないから、今回も二人に余計な負担がいったと思うんです。せめて剣の扱い方くらい知っておけば、急襲を受けたとしても、多少の時間稼ぎはできますよね?」
「それはそうなんですが……あの方がどう思われるか。あの方はあなたを一秒たりとも危険に晒すことを許さないのですから」
「ラッセルは私が説得します。だからお願いします。魔術師団に行けないなら、王宮で、ルディに鍛えてもらえればいいんです。毎日少しずつ。先生、お願いします」
私の必死のお願いに、渋い顔をしながら考えこんでいる。やがてふうっと大きなため息をつくと、苦笑いをしながら私の肩をポンと叩く。
「しょうがないですね。サーラは自分の決めたことは最後までやり遂げる方ですから。私が止めてもコッソリどこかでやるのでしょう? だったら私がユーグレイ公に進言致します。今日はおとなしくしていなさい。明日の夕方からルディに教わること」
「はいっ」
0
あなたにおすすめの小説
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
『辺境伯一家の領地繁栄記』スキル育成記~最強双子、成長中~
鈴白理人
ファンタジー
ラザナキア王国の国民は【スキルツリー】という女神の加護を持つ。
そんな国の北に住むアクアオッジ辺境伯一家も例外ではなく、父は【掴みスキル】母は【育成スキル】の持ち主。
母のスキルのせいか、一家の子供たちは生まれたころから、派生スキルがポコポコ枝分かれし、スキルレベルもぐんぐん上がっていった。
双子で生まれた末っ子、兄のウィルフレッドの【精霊スキル】、妹のメリルの【魔法スキル】も例外なくレベルアップし、十五歳となった今、学園入学の秒読み段階を迎えていた──
前作→『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合
【完結】そして異世界の迷い子は、浄化の聖女となりまして。
和島逆
ファンタジー
七年前、私は異世界に転移した。
黒髪黒眼が忌避されるという、日本人にはなんとも生きにくいこの世界。
私の願いはただひとつ。目立たず、騒がず、ひっそり平和に暮らすこと!
薬師助手として過ごした静かな日々は、ある日突然終わりを告げてしまう。
そうして私は自分の居場所を探すため、ちょっぴり残念なイケメンと旅に出る。
目指すは平和で平凡なハッピーライフ!
連れのイケメンをしばいたり、トラブルに巻き込まれたりと忙しい毎日だけれど。
この異世界で笑って生きるため、今日も私は奮闘します。
*他サイトでの初投稿作品を改稿したものです。
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
異世界に行った、そのあとで。
神宮寺 あおい
恋愛
新海なつめ三十五歳。
ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。
当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。
おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。
いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。
『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』
そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。
そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!
神獣転生のはずが半神半人になれたので世界を歩き回って第二人生を楽しみます~
御峰。
ファンタジー
不遇な職場で働いていた神楽湊はリフレッシュのため山に登ったのだが、石に躓いてしまい転げ落ちて異世界転生を果たす事となった。
異世界転生を果たした神楽湊だったが…………朱雀の卵!? どうやら神獣に生まれ変わったようだ……。
前世で人だった記憶があり、新しい人生も人として行きたいと願った湊は、進化の選択肢から『半神半人(デミゴット)』を選択する。
神獣朱雀エインフェリアの息子として生まれた湊は、名前アルマを与えられ、妹クレアと弟ルークとともに育つ事となる。
朱雀との生活を楽しんでいたアルマだったが、母エインフェリアの死と「世界を見て回ってほしい」という頼みにより、妹弟と共に旅に出る事を決意する。
そうしてアルマは新しい第二の人生を歩き始めたのである。
究極スキル『道しるべ』を使い、地図を埋めつつ、色んな種族の街に行っては美味しいモノを食べたり、時には自然から採れたての素材で料理をしたりと自由を満喫しながらも、色んな事件に巻き込まれていくのであった。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる