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世界編
99の2.誘拐かよっ!
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姿を確認したくてシンの肩越しにヒョイと覗く。
目に飛び込んできたのは、全身からセクシーさが溢れてくるような美人。両脚を肩幅に開いて軽く腕を組んでいる姿は、ムチを持たせたら最高に似合いそう。
「……お姉さん、赤いハイヒールと黒のボンテージ着用をお勧めします。ちなみにムチは別オプションで付けさせていただきたく……」
「はあ? 何? ワケわかんないこと言わなくていいから。アンタは捕獲された動物と一緒。首斬られるまでの間、助けてくださいってアタシたちに泣いてすがりな。アンタが口を開けること自体、ムダな時間なんだからね」
お姉さんは意地悪な笑みを浮かべて、私が怯えて涙目になるのを待っているようだ。
だがしかーしっ。ここで泣き寝入りするほどか弱くないんだなぁ。
会社でのクレーム対応やネチネチした上司の嫌味にも耐えた私だ。多少の意地悪だと逆に燃えてしまうタイプなんだなぁ。他人の痛みには涙が流れてしまうけど、私自身への嫌がらせだと屁の河童クンですからぁっ。
「私が泣くとでも思ってるの? ハン、甘いわね。こんなんじゃ全然ダメージにならないわ」
「くっ……」
悔しがる女性を尻目に得意げな顔をしていると、シンが愉快そうな声を彼女にかけた。
「あはは。コン、今回は君の負けかな。お嬢さんには直接攻撃は効かないみたいだから。そうだな、この子を落とすなら……周りの誰かを傷つけるのが得策かな。それは誰か、な?」
誰か、と言うシンの目は鋭く、私がどのような反応をするか、状況を窺っている様子。
コイツは私が懐近くに置く人物を探っている。悟られてはいけない。ここでバレてしまったら、コイツは容赦なくその人たちに攻撃を仕掛けに行くだろう。
私が人生に関わったことで、他の誰かが危険な目に遭うことだけは避けたい。私はあえて無表情を装った。
シンには下手な小細工は通用しない。動揺して誤魔化せば、さらに酷い状況になることは火を見るよりも明らかだ。
「ふうん……まぁ、今はいいよ。コン、君はダーの側に付いていてあげて。彼は君の術を欲しているだろう、か……ら……」
「っ、シンっ! でも……」
「そうしなさい。私も今の段階ではダーの元に行って周りの人間を手中に収めるのが望ましいと思う。私も、ね」
「うっ……何で今、あなたが……」
コンと呼ばれた女性ーーおそらく胡蝶使いのコンだろうーーが、一瞬にして全身に緊張を走らせ、かしこまった佇まいで頭を下げる。
「……はい……わかりました」
従わざるをえない、といった風情で返事をするが、表情には不満があり有りと出ている。
シンは笑顔でコンに話しかけているのだが、その丁寧な物腰とは裏腹に、醸し出す雰囲気がゾクリとする寒気を伴っていた。
まるでシンの中に知らないシンがいるような、最後の言葉だけ別の人間が喋っているような感じだった。
あまりの違和感に、座っていたその場所から一刻も早く離れたい一心で腰を浮かす。
しかしながら圧倒的威圧感に体が固まって身じろぎするだけになる。
シンの容姿をした何かは私に顔を向けると、頭からつま先まで物色するようにじっくりと眺めてから、おもむろに口を開いた。
「お嬢さん、あなたの存在は厄介だ。あの子に悪影響を及ぼす。今のうちにあの子から離れてもらうのが最善…… 」
その声は、実際にはシンの口からでているのだが、つい先ほどまで話していた彼とは全く別物の、無機質で聞いている者を震えさせるような響きを放っていた。
何も言い返すことが出来ず、ただ固まっているだけの私に向かって、その声の主はさらに語りかけてくる。
「シンの策に乗るのも良いかと思うたが……今のうちに処分しておくのも悪くない……さて、どうするか……」
徐々に小さくなる声がやがて消えた時、シンの頭がガクンと下がり、同時に張り詰めた空気が少しだけ緩んだ。
「はぁ……」
たまらず、ほんの少しの吐息が口から漏れる。
しかし何故だろう。
脅威は既に去ったというのに、先ほどの声の呪縛から未だに解き放たれることができないでいるかのように、指先ひとつ動かすこともままならない。
その状態から解放されたのは、シンが再び自分の意思で動きはじめた時だった。
目に飛び込んできたのは、全身からセクシーさが溢れてくるような美人。両脚を肩幅に開いて軽く腕を組んでいる姿は、ムチを持たせたら最高に似合いそう。
「……お姉さん、赤いハイヒールと黒のボンテージ着用をお勧めします。ちなみにムチは別オプションで付けさせていただきたく……」
「はあ? 何? ワケわかんないこと言わなくていいから。アンタは捕獲された動物と一緒。首斬られるまでの間、助けてくださいってアタシたちに泣いてすがりな。アンタが口を開けること自体、ムダな時間なんだからね」
お姉さんは意地悪な笑みを浮かべて、私が怯えて涙目になるのを待っているようだ。
だがしかーしっ。ここで泣き寝入りするほどか弱くないんだなぁ。
会社でのクレーム対応やネチネチした上司の嫌味にも耐えた私だ。多少の意地悪だと逆に燃えてしまうタイプなんだなぁ。他人の痛みには涙が流れてしまうけど、私自身への嫌がらせだと屁の河童クンですからぁっ。
「私が泣くとでも思ってるの? ハン、甘いわね。こんなんじゃ全然ダメージにならないわ」
「くっ……」
悔しがる女性を尻目に得意げな顔をしていると、シンが愉快そうな声を彼女にかけた。
「あはは。コン、今回は君の負けかな。お嬢さんには直接攻撃は効かないみたいだから。そうだな、この子を落とすなら……周りの誰かを傷つけるのが得策かな。それは誰か、な?」
誰か、と言うシンの目は鋭く、私がどのような反応をするか、状況を窺っている様子。
コイツは私が懐近くに置く人物を探っている。悟られてはいけない。ここでバレてしまったら、コイツは容赦なくその人たちに攻撃を仕掛けに行くだろう。
私が人生に関わったことで、他の誰かが危険な目に遭うことだけは避けたい。私はあえて無表情を装った。
シンには下手な小細工は通用しない。動揺して誤魔化せば、さらに酷い状況になることは火を見るよりも明らかだ。
「ふうん……まぁ、今はいいよ。コン、君はダーの側に付いていてあげて。彼は君の術を欲しているだろう、か……ら……」
「っ、シンっ! でも……」
「そうしなさい。私も今の段階ではダーの元に行って周りの人間を手中に収めるのが望ましいと思う。私も、ね」
「うっ……何で今、あなたが……」
コンと呼ばれた女性ーーおそらく胡蝶使いのコンだろうーーが、一瞬にして全身に緊張を走らせ、かしこまった佇まいで頭を下げる。
「……はい……わかりました」
従わざるをえない、といった風情で返事をするが、表情には不満があり有りと出ている。
シンは笑顔でコンに話しかけているのだが、その丁寧な物腰とは裏腹に、醸し出す雰囲気がゾクリとする寒気を伴っていた。
まるでシンの中に知らないシンがいるような、最後の言葉だけ別の人間が喋っているような感じだった。
あまりの違和感に、座っていたその場所から一刻も早く離れたい一心で腰を浮かす。
しかしながら圧倒的威圧感に体が固まって身じろぎするだけになる。
シンの容姿をした何かは私に顔を向けると、頭からつま先まで物色するようにじっくりと眺めてから、おもむろに口を開いた。
「お嬢さん、あなたの存在は厄介だ。あの子に悪影響を及ぼす。今のうちにあの子から離れてもらうのが最善…… 」
その声は、実際にはシンの口からでているのだが、つい先ほどまで話していた彼とは全く別物の、無機質で聞いている者を震えさせるような響きを放っていた。
何も言い返すことが出来ず、ただ固まっているだけの私に向かって、その声の主はさらに語りかけてくる。
「シンの策に乗るのも良いかと思うたが……今のうちに処分しておくのも悪くない……さて、どうするか……」
徐々に小さくなる声がやがて消えた時、シンの頭がガクンと下がり、同時に張り詰めた空気が少しだけ緩んだ。
「はぁ……」
たまらず、ほんの少しの吐息が口から漏れる。
しかし何故だろう。
脅威は既に去ったというのに、先ほどの声の呪縛から未だに解き放たれることができないでいるかのように、指先ひとつ動かすこともままならない。
その状態から解放されたのは、シンが再び自分の意思で動きはじめた時だった。
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