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世界編
117の2.激ヤバじゃん!
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あと少しで触れる、と思った瞬間、ラッセルはハッとして彼女の手を払いのけた。
「貴様の魂胆はわかっている。負の感情は貴様の力の源なはず。それを取り込んで今度は私を乗っ取り、また利用する気なのだろう? そのような申し出など遠慮する。この思いは歴代のケンに課せられた責務。それを抱えて生きるのが世界の管理者たる私の務めだ」
そう宣言すると、ラッセルは改めてシャドウに向けて剣を構え直した。
「チッ……なんとまあ、頭の固い。それならばっ」
刃を向けられたシャドウは憎々しげにラッセルを睨み、床に捨て置いていた私を再び盾にして、ラッセルの目の前にグイッと押し出した。
「ふん……おい、もう一人の女、お前の負の感情を貰ってやる。ありがたく思え」
「へっ? 私? ヤだ、私のは全然美味しくないから」
地の底を這うような、低く怒りを含んだシャドウの言葉に、私には関わってくれるなとばかりに全力で拒否してみた。
シャドウの怒りの矛先が私に変わったと感じたラッセルは、スッと身を乗り出し、隙があれば斬りかからんとする勢いだ。
その殺気を直接肌に感じ、思わず腰が抜けそうになってきて足に力が入らない。
「おおっと、私を切り刻むのはやめておいた方がいいぞ? その刃が私に届く前にこちらの女が死んでしまうかもしれないからなぁ」
「んひっ……な、んでアンタがソレを持ってるのよ……」
ラッセルを牽制するシャドウの手元には、いつの間にか短剣が握られている。万が一、自分自身に危険が迫った時用にとリーから念押しされ、ドレスの内側に隠し持っていた短剣が、なぜかシャドウの手の中に収まっている。
「なんでと言われてもなぁ、自分を守る為ならそのくらいの知恵はつくだろうが。そういう危機感のない者が一番始めに淘汰されていくものなんだよ。大丈夫だ、存分に悔しがっておくれ。その無念が大きければ大きいほど私の力となるのだよ」
くっ……思いっきり油断した。
悔しいけれど悔しがれない。ラッセルに迷惑かけているのを自覚したところで、こういう風に後悔することがさらに迷惑をかけると思ったら、あまりの不甲斐なさに全身をかきむしりたくなってくる。
「いいねぇ、その憤り。もっと怒れ。もっと嘆け。ゾクゾクするような力が湧いてくる……そしてお前の恐怖と無念の気持ちが最高点に達したところで、少しずつ切り刻んであげよう。嘆き苦しむ様は、私に活力を与えてくれるはず……私のためにもっと恐怖しておくれ」
シャドウは私を小脇に抱えると、うっとりとした目で私を見つめ、愛おしむように頬を撫でてくる。
ラッセルにされている時は気持ちよかった頬の感触が、違う者に触られているかと思っただけで、おぞましさしか感じられない。
これ以上ラッセルの迷惑になりたくない……
今が決断の時なのかもね……
いいわ、今まで充分人生を楽しませてもらったし。私ごときの命ひとつで世界が救われる?
ハン、カッコいいじゃん。
ホントは百歳超える婆ちゃんまで長生きして、ひ孫に囲まれて惜しまれつつ人生を終えるってのが私の未来予想図だったんだけど。
まぁ、ネコになったり、ファンタジー世界にやってきたり、とあり得ない人生送ったモンね。普通の百歳以上の経験でしょ、これ。
おひとり様の寂しさを埋めてくれた人もできたし、私の人生、上出来だったんじゃないかな?
もういいよ、満足、満足……
そう、名残惜しい……なんて思わない。思わないようにしなきゃ。未練を残すことこそがシャドウの思うつぼだから。
さあ、月宮沙羅! 大好きなあの人に最後のワガママを聞いてもらいな!
私はここぞとばかりに、思いっきり叫んだ。
「お願い、ラッセル! 私を突き刺して!」
自分の意図とは逆に涙を流して叫ぶ私を、ラッセルはやりきれない様な表情で見つめ、苦しげに呟いた。
「沙羅、ダメだ……君だけは失いたくない……私に君は殺せない……」
私の言葉に動揺したラッセルから一瞬で覇気が感じられなくなる。それは構えた剣の切っ尖が下に向けられたのでよくわかった。
「ハッ、ハハハッ。なるほど、思った以上の効果があったな。いいねぇ、この絶望感。もっと苦しめ、嘆け!」
勝利を宣言するように高らかに叫ぶシャドウに、何か言ってやらなければ気がすまず、横目で睨みながら悪態をつく。
「このままアンタのいいようにはさせないっ、今に見てなさいっ!」
「何をどうするというのだ? この世界はもう私の手中にあるも同然の今の状況に。虫ケラのような貴様らに、偉大なる私をどうこうしようなどと、片腹痛いわっ」
戦意を喪失しかけているラッセルと、身動きが取れない私を交互に見据え、シャドウは愉快そうにカラカラと笑っている。
悔しい……でも打開策も思いつかない……
「貴様の魂胆はわかっている。負の感情は貴様の力の源なはず。それを取り込んで今度は私を乗っ取り、また利用する気なのだろう? そのような申し出など遠慮する。この思いは歴代のケンに課せられた責務。それを抱えて生きるのが世界の管理者たる私の務めだ」
そう宣言すると、ラッセルは改めてシャドウに向けて剣を構え直した。
「チッ……なんとまあ、頭の固い。それならばっ」
刃を向けられたシャドウは憎々しげにラッセルを睨み、床に捨て置いていた私を再び盾にして、ラッセルの目の前にグイッと押し出した。
「ふん……おい、もう一人の女、お前の負の感情を貰ってやる。ありがたく思え」
「へっ? 私? ヤだ、私のは全然美味しくないから」
地の底を這うような、低く怒りを含んだシャドウの言葉に、私には関わってくれるなとばかりに全力で拒否してみた。
シャドウの怒りの矛先が私に変わったと感じたラッセルは、スッと身を乗り出し、隙があれば斬りかからんとする勢いだ。
その殺気を直接肌に感じ、思わず腰が抜けそうになってきて足に力が入らない。
「おおっと、私を切り刻むのはやめておいた方がいいぞ? その刃が私に届く前にこちらの女が死んでしまうかもしれないからなぁ」
「んひっ……な、んでアンタがソレを持ってるのよ……」
ラッセルを牽制するシャドウの手元には、いつの間にか短剣が握られている。万が一、自分自身に危険が迫った時用にとリーから念押しされ、ドレスの内側に隠し持っていた短剣が、なぜかシャドウの手の中に収まっている。
「なんでと言われてもなぁ、自分を守る為ならそのくらいの知恵はつくだろうが。そういう危機感のない者が一番始めに淘汰されていくものなんだよ。大丈夫だ、存分に悔しがっておくれ。その無念が大きければ大きいほど私の力となるのだよ」
くっ……思いっきり油断した。
悔しいけれど悔しがれない。ラッセルに迷惑かけているのを自覚したところで、こういう風に後悔することがさらに迷惑をかけると思ったら、あまりの不甲斐なさに全身をかきむしりたくなってくる。
「いいねぇ、その憤り。もっと怒れ。もっと嘆け。ゾクゾクするような力が湧いてくる……そしてお前の恐怖と無念の気持ちが最高点に達したところで、少しずつ切り刻んであげよう。嘆き苦しむ様は、私に活力を与えてくれるはず……私のためにもっと恐怖しておくれ」
シャドウは私を小脇に抱えると、うっとりとした目で私を見つめ、愛おしむように頬を撫でてくる。
ラッセルにされている時は気持ちよかった頬の感触が、違う者に触られているかと思っただけで、おぞましさしか感じられない。
これ以上ラッセルの迷惑になりたくない……
今が決断の時なのかもね……
いいわ、今まで充分人生を楽しませてもらったし。私ごときの命ひとつで世界が救われる?
ハン、カッコいいじゃん。
ホントは百歳超える婆ちゃんまで長生きして、ひ孫に囲まれて惜しまれつつ人生を終えるってのが私の未来予想図だったんだけど。
まぁ、ネコになったり、ファンタジー世界にやってきたり、とあり得ない人生送ったモンね。普通の百歳以上の経験でしょ、これ。
おひとり様の寂しさを埋めてくれた人もできたし、私の人生、上出来だったんじゃないかな?
もういいよ、満足、満足……
そう、名残惜しい……なんて思わない。思わないようにしなきゃ。未練を残すことこそがシャドウの思うつぼだから。
さあ、月宮沙羅! 大好きなあの人に最後のワガママを聞いてもらいな!
私はここぞとばかりに、思いっきり叫んだ。
「お願い、ラッセル! 私を突き刺して!」
自分の意図とは逆に涙を流して叫ぶ私を、ラッセルはやりきれない様な表情で見つめ、苦しげに呟いた。
「沙羅、ダメだ……君だけは失いたくない……私に君は殺せない……」
私の言葉に動揺したラッセルから一瞬で覇気が感じられなくなる。それは構えた剣の切っ尖が下に向けられたのでよくわかった。
「ハッ、ハハハッ。なるほど、思った以上の効果があったな。いいねぇ、この絶望感。もっと苦しめ、嘆け!」
勝利を宣言するように高らかに叫ぶシャドウに、何か言ってやらなければ気がすまず、横目で睨みながら悪態をつく。
「このままアンタのいいようにはさせないっ、今に見てなさいっ!」
「何をどうするというのだ? この世界はもう私の手中にあるも同然の今の状況に。虫ケラのような貴様らに、偉大なる私をどうこうしようなどと、片腹痛いわっ」
戦意を喪失しかけているラッセルと、身動きが取れない私を交互に見据え、シャドウは愉快そうにカラカラと笑っている。
悔しい……でも打開策も思いつかない……
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