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転移編
4の1.それを私に頼むんかいっ!
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この世界に来てから数日たった……と思う。
思うんだけど……いつも寝てるんでよくわからなくなってんのよね。
何せネコのままだと眠る眠る。
私ってば、細かく刻んだ食べ物とミルクでお腹が膨れたら、気づくと丸まって寝てるんだもの。
マズいぞ私、こんな怠惰な生活送ってたら人間に戻った時、どう転んでもクズになってそうな予感しかない。挙句デブでした、なんてことになったら目も当てられない。
『人間に戻ったら彼氏を作る』という目標ができたんだ、今気を抜いたら、男性との出会いがまた遠くなってしまう。
気合いを入れ直すために、両頬をパンっと叩……けなかった。
プニッとした肉球に阻まれて、自分がネコになってる現実を思い出させる。
「ついついネコだってこと忘れちゃうんだよねぇ。むかーしのテレビで見かけたことあるんだけどさ『早く人間になってみたいー』とかだっけ? アレと一緒の気分だよ……」
でもさ、だんだんネコに馴染んできてる自分もいたりして、複雑な気分になってるのも事実だ。向こうに戻ったとしても、職もなければ住む場所もなし。いっそ人間辞めてネコ生活満喫するのも手かな……いやいや、そりゃマズいだろ。
「あのー、サランディアさん? そろそろ魔法、いけますか? いつもの清潔にするとかじゃなくて、人間に戻るってヤツっすけどー?」
「まだ、というか、もう全部の解除は無理だな。一部は解除できると思うが……ふむ、どうしたものかねぇ」
「できるんだったら早く解除してくださいよー。責任とるって言ったのサランディアさんですよー?」
ブチブチと文句を垂れ流してたら、魔女、ことサランディアさんは衝撃的な言葉を口にした。
「残念ながら、アタシに魔術を全部解除する力はもう残ってない。元の世界とやらに戻してやる力もな。もうじき死ぬと思うからねえ」
ん? なんだって? 聞き間違いじゃないよね? 戻れない? もうじき死ぬって私のこと?
途端に不安な気持ちに全身が支配される。
体の血が冷えるような感覚に、軽くめまいが起きてくるようだ。
「ああ、アンタが死ぬわけじゃないから、安心しな。それに方法が無いわけじゃない。アタシよりも魔力の強い人間に頼んで魔術の仕組みを解除してもらえば人間には戻れるだろうね」
ふうっ、と疲れたようなため息を吐きながら、さらに話しは続いた。
「元の世界ってのがどういう場所なのか、アタシにはわからないから戻してやることはできない。まあ、あのクズ野郎だったら、アンタの世界に興味を持つかもね。うまく渡りをつけてアイツに取り入ったら、方法を探してくれる可能性はあるな」
「え、そうなんだ。よかった……その人を紹介してくれますか?」
今さっき感じた不安感が薄れ、今度は幸せな気持ちが全身を包んだ。本当によかった、まだ死ねないもの。
嬉しさマックスで尻尾をフリフリしながらサランディアさんに聞いたんだけど、私の問いかけなんかまるで耳に入ってないようにひたすら話しを続ける。
「さっきも言ったように、少しだけならこの体でも解ける。水鏡に月と自分を映して、その月が隠れるまでなら元の姿に戻れるようにしてやろう」
「やった、ラッキー。ちょっとだけでも人間に戻る時間ができるんなら、できることは増えるもんねー」
私の返事を聞くか聞かないかのうちに、サランディアさんが、私の方にスッと顔を向けて真剣な表情になる。
おもむろにゴニョゴニョと何か呟いたと思ったら、彼女からパアッと光が飛び出して、私の全身を淡く包んだ。
ほんのりと温かく感じて軽く目を閉じていたら、また元の体温に戻り、同時に光も消えていた。
思うんだけど……いつも寝てるんでよくわからなくなってんのよね。
何せネコのままだと眠る眠る。
私ってば、細かく刻んだ食べ物とミルクでお腹が膨れたら、気づくと丸まって寝てるんだもの。
マズいぞ私、こんな怠惰な生活送ってたら人間に戻った時、どう転んでもクズになってそうな予感しかない。挙句デブでした、なんてことになったら目も当てられない。
『人間に戻ったら彼氏を作る』という目標ができたんだ、今気を抜いたら、男性との出会いがまた遠くなってしまう。
気合いを入れ直すために、両頬をパンっと叩……けなかった。
プニッとした肉球に阻まれて、自分がネコになってる現実を思い出させる。
「ついついネコだってこと忘れちゃうんだよねぇ。むかーしのテレビで見かけたことあるんだけどさ『早く人間になってみたいー』とかだっけ? アレと一緒の気分だよ……」
でもさ、だんだんネコに馴染んできてる自分もいたりして、複雑な気分になってるのも事実だ。向こうに戻ったとしても、職もなければ住む場所もなし。いっそ人間辞めてネコ生活満喫するのも手かな……いやいや、そりゃマズいだろ。
「あのー、サランディアさん? そろそろ魔法、いけますか? いつもの清潔にするとかじゃなくて、人間に戻るってヤツっすけどー?」
「まだ、というか、もう全部の解除は無理だな。一部は解除できると思うが……ふむ、どうしたものかねぇ」
「できるんだったら早く解除してくださいよー。責任とるって言ったのサランディアさんですよー?」
ブチブチと文句を垂れ流してたら、魔女、ことサランディアさんは衝撃的な言葉を口にした。
「残念ながら、アタシに魔術を全部解除する力はもう残ってない。元の世界とやらに戻してやる力もな。もうじき死ぬと思うからねえ」
ん? なんだって? 聞き間違いじゃないよね? 戻れない? もうじき死ぬって私のこと?
途端に不安な気持ちに全身が支配される。
体の血が冷えるような感覚に、軽くめまいが起きてくるようだ。
「ああ、アンタが死ぬわけじゃないから、安心しな。それに方法が無いわけじゃない。アタシよりも魔力の強い人間に頼んで魔術の仕組みを解除してもらえば人間には戻れるだろうね」
ふうっ、と疲れたようなため息を吐きながら、さらに話しは続いた。
「元の世界ってのがどういう場所なのか、アタシにはわからないから戻してやることはできない。まあ、あのクズ野郎だったら、アンタの世界に興味を持つかもね。うまく渡りをつけてアイツに取り入ったら、方法を探してくれる可能性はあるな」
「え、そうなんだ。よかった……その人を紹介してくれますか?」
今さっき感じた不安感が薄れ、今度は幸せな気持ちが全身を包んだ。本当によかった、まだ死ねないもの。
嬉しさマックスで尻尾をフリフリしながらサランディアさんに聞いたんだけど、私の問いかけなんかまるで耳に入ってないようにひたすら話しを続ける。
「さっきも言ったように、少しだけならこの体でも解ける。水鏡に月と自分を映して、その月が隠れるまでなら元の姿に戻れるようにしてやろう」
「やった、ラッキー。ちょっとだけでも人間に戻る時間ができるんなら、できることは増えるもんねー」
私の返事を聞くか聞かないかのうちに、サランディアさんが、私の方にスッと顔を向けて真剣な表情になる。
おもむろにゴニョゴニョと何か呟いたと思ったら、彼女からパアッと光が飛び出して、私の全身を淡く包んだ。
ほんのりと温かく感じて軽く目を閉じていたら、また元の体温に戻り、同時に光も消えていた。
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