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転移編
11の2.性格悪っ!
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「私は頼られることはあっても頼ることはない、それよりも自分の心配ではないか?」
「人が心配してあげようって気持ちは素直に受け取りなさいよ。ホンッとイライラするんだから」
私の言葉を受けて、ヤツの冷たそうな顔がちょっとだけ緩んだように感じた。が、よくよくみると、そんな気配さえ微塵も感じさせないような顔つきのままだ。うん、気のせいだったよ。
くっそ……前言撤回、仏心だした私が甘かったわ。こんなヤツ、ネコに踏まれて反省すりゃいいさ!
ちょっとムカついていたから、私の物言いに、ヤツが何を思って次の行動を起こしたかなんて、この時点では気づきもしなかった。
「いいのか? 私より力のある魔術師などこの世におらん。最終的には私を頼ることになるだろうな。まあ探すだけ探してみろ。あとは……」
ひょいと杖を翳すとまたネコに戻ってしまった。げ、何すんだい、せっかく戻ったのに。
「変身は元に戻しておいた。最強の魔術師が見つからない場合は、私に泣きついて許しを乞うためにこれを鳴らせ」
私に向けていた杖を自分の左手に向いて、軽く一振りすると、その手には小さなベルが乗っていた。
ニヤリとしたいやらしい笑顔をこちらに向けると、その左手を突き出し、小さなベルを渡してきた。
イヤな男の割に可愛いものを準備するのね。
軽く振ってみると、カランとも、チリンとも鳴らない。
鳴らし方が甘かったのか、ともう一度、今度は大きく振ってみるが、やはり鳴らない。
不思議に思って、その鳴らないベルをみる。
「それはお前が本当に困った時にしか音が鳴らない。私に頭を下げる覚悟ができたら、これを鳴らすが良い」
「はん、こんなの使うこともないまま、この地を去ってやるわよ。アンタに頭を下げるよりも屈辱なことはないだろうからねっ」
魔術師は豪快に笑い、私に話しかける。
「お前のその心意気、嫌いではないな。屈辱に歪んだ顔をみるのを楽しみにしていよう。そのベルは私を苛立たせたお礼だ」
「嬉しくない褒め言葉なんてもの、この世にあったのね、初めて知ったわ。アンタ本当に偏屈だし」
口元だけでフッと笑うと、そのまま魔術師の周りに軽く風が起こり、それが鎮まった時にはヤツの姿は消えていた。
「なるほど、魔術師ってそうやって居なくなるワケですねぇ。ホンッと人騒がせよね、まるで台風みたい」
もらったベルはいつのまにか、首輪にうまく引っかかっていた。
大きさも音を確かめて触った時より小さくなってて、邪魔にならない仕様になっている。
たぶんアイツなりの気遣いかな、と思いながらニヤッと笑ってしまった。
「ホントよくわからん人だわ。まあ首絞められたお詫びとして受け取っておくわよ。あとさあ、ごめんなさいの一言くらい言えないモンかしらね、今度会ったら絶対言わせてやるわよ」
周りを見回すと、いつもと変わらない学校付近の景色と静まりかえった音。
つい今まで、ここに男が二人やってきて、私と話しをしていたってことが夢だったかもしれない、と思わせるほどの静けさだ。
だいぶ馴染んできたこの様子と雰囲気を再び肌身に感じ、やっと自分も普段通りの気持ちに戻ってきた、と実感する。
ふうっとひと息つくと、急に眠気が襲ってきた。
ハルのベッドに潜り込み、その中の暖かさに一層の安心感を覚え、一瞬のうちに深い眠りに身を委ねた。
「人が心配してあげようって気持ちは素直に受け取りなさいよ。ホンッとイライラするんだから」
私の言葉を受けて、ヤツの冷たそうな顔がちょっとだけ緩んだように感じた。が、よくよくみると、そんな気配さえ微塵も感じさせないような顔つきのままだ。うん、気のせいだったよ。
くっそ……前言撤回、仏心だした私が甘かったわ。こんなヤツ、ネコに踏まれて反省すりゃいいさ!
ちょっとムカついていたから、私の物言いに、ヤツが何を思って次の行動を起こしたかなんて、この時点では気づきもしなかった。
「いいのか? 私より力のある魔術師などこの世におらん。最終的には私を頼ることになるだろうな。まあ探すだけ探してみろ。あとは……」
ひょいと杖を翳すとまたネコに戻ってしまった。げ、何すんだい、せっかく戻ったのに。
「変身は元に戻しておいた。最強の魔術師が見つからない場合は、私に泣きついて許しを乞うためにこれを鳴らせ」
私に向けていた杖を自分の左手に向いて、軽く一振りすると、その手には小さなベルが乗っていた。
ニヤリとしたいやらしい笑顔をこちらに向けると、その左手を突き出し、小さなベルを渡してきた。
イヤな男の割に可愛いものを準備するのね。
軽く振ってみると、カランとも、チリンとも鳴らない。
鳴らし方が甘かったのか、ともう一度、今度は大きく振ってみるが、やはり鳴らない。
不思議に思って、その鳴らないベルをみる。
「それはお前が本当に困った時にしか音が鳴らない。私に頭を下げる覚悟ができたら、これを鳴らすが良い」
「はん、こんなの使うこともないまま、この地を去ってやるわよ。アンタに頭を下げるよりも屈辱なことはないだろうからねっ」
魔術師は豪快に笑い、私に話しかける。
「お前のその心意気、嫌いではないな。屈辱に歪んだ顔をみるのを楽しみにしていよう。そのベルは私を苛立たせたお礼だ」
「嬉しくない褒め言葉なんてもの、この世にあったのね、初めて知ったわ。アンタ本当に偏屈だし」
口元だけでフッと笑うと、そのまま魔術師の周りに軽く風が起こり、それが鎮まった時にはヤツの姿は消えていた。
「なるほど、魔術師ってそうやって居なくなるワケですねぇ。ホンッと人騒がせよね、まるで台風みたい」
もらったベルはいつのまにか、首輪にうまく引っかかっていた。
大きさも音を確かめて触った時より小さくなってて、邪魔にならない仕様になっている。
たぶんアイツなりの気遣いかな、と思いながらニヤッと笑ってしまった。
「ホントよくわからん人だわ。まあ首絞められたお詫びとして受け取っておくわよ。あとさあ、ごめんなさいの一言くらい言えないモンかしらね、今度会ったら絶対言わせてやるわよ」
周りを見回すと、いつもと変わらない学校付近の景色と静まりかえった音。
つい今まで、ここに男が二人やってきて、私と話しをしていたってことが夢だったかもしれない、と思わせるほどの静けさだ。
だいぶ馴染んできたこの様子と雰囲気を再び肌身に感じ、やっと自分も普段通りの気持ちに戻ってきた、と実感する。
ふうっとひと息つくと、急に眠気が襲ってきた。
ハルのベッドに潜り込み、その中の暖かさに一層の安心感を覚え、一瞬のうちに深い眠りに身を委ねた。
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