異世界行って黒ネコに変身してしまった私の話。

しろっくま

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転移編

15の2.今度こそ絶対的ピンチなの!

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 次の日の夕方。そろそろ日が傾いてき始める時間。
 私はハルに「行ってくるよ」と宣言して今日の戦場へと向かった。

 王都ルシールの西側、学校とは反対側に位置する魔術師団は、先日足を運んだ街とはまた違った雰囲気を醸し出している。

 閉ざされた空間、というか、よそ者を受け付けない、『関係者以外お断り』の空気感が建物全体を覆っているような、そんな感じがする。

 ネコの姿のまま一度その建物を見上げ、ゴクリと息を飲んでから、今来た道を少しだけ引き返した。

 怖じ気付いたわけではない。水鏡を利用して、人間の姿に戻るためだ。

「ここなら誰も気がつかないわよね」

 キョロキョロとあたりを見回してから小さく呟いて、前もって見つけておいた水たまりにネコの自分を映して変身した。

「あのー、ちょっとお尋ねしますが……師団長様はいらっしゃいますか?」
「ぅお?   姉ちゃん、師団長は女にゃ興味ないぜ。媚び売りに来ても無駄無駄。それより俺なんかどうだい?   あと少しで交代時間だからなぁ、ウヒヒ……」
「いや、コイツより俺の方が何倍も満足させてやれるぞ?   一緒に愉しもうぜぇ」

 下卑た嗤いをする門番たちの喋り方に、身震いするが、ここで引いたら女がすたる。

 両手を胸の前で組んで、上目遣いに二人を見遣る。

「お二人の魅力は申し分ないと思うんです……だけど、今日はどうしても師団長様にお会いしたいんです。もし会えるようにてもらったら……お礼はたっぷりと……」

 門番同士で何やら目配せしたと思ったら、 入り口からちょっと入った奥の部屋へ通された。少し待つように言われたので、ソファに座り、これからどう話しを持っていくかを考えた。

 とりあえず潜入は成功した。あとはハルの時と同じように、私の今の状況を説明して協力してもらうしかない。最強の魔術師なら、異世界へ私を飛ばすことだってできるはずだ。

 魔術師はエリートだって言うからには、出来ないことがあると、逆にプライドを刺激して、意地でもやってやろうという気になるかもしれないじゃない。
 おだてて持ち上げて、最強の魔術師をその気にさせれば、たぶんやってくれるはず。

 私は両手を強く握って、必ず交渉を成功させる、と心に誓い、自分を奮い立たせた。

 すぐに先ほどの門番の一人が「お茶でも飲んで待っててくれ」と済まなそうな顔をして気遣ってくれたので、ありがたくそのお茶をいただいて時間を潰すことにした。

 ふう、と大きく深呼吸をしたと思ったら、急に視界がグニャリと歪む。
 咄嗟のことなので、ソファの縁に体を倒れこませ、このめまいから逃れるように体を伸ばす。

 なんだろう、緊張しすぎて疲れたのかな。

 おでこと目元を手で覆って頭を休めようとしたら、いつの間に来たのだろう、目の前には門番二人がニヤニヤしながら私を覗いている。

「すみません、ちょっと疲れがでたようで、
 少し休めば治ると……」
「やっぱりすぐ効くねえ、この薬。最初はお前に譲るから早く済ませろ」
「わかった、そう焦るなよ。全く女なら誰でもいいんだな、お前」
「そんなこと言って、お前だって最初は譲らねえとか、どんだけだよ」

 私を無視した会話を続けながら、ギラギラした視線だけは私を捉えて離さない。

 ヤバい、命の危険はまだないが、貞操の危険が迫ってるぞ、私。
 どうする、月宮沙羅。初めての男がこれじゃ、日本帰っても未練しか残らない。てか、ここで死んだ方がマシかも……

 最初だ、と宣言した男が私に覆い被さってくる。抵抗したいのだが痺れたように重くなった体がいうことをきいてくれない。マズい、絶対的ピンチだ。

 ……誰か……助けて……
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