第三王子のお守り騎士団

しろっくま

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第1章

5話

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「ニコーーーールっ!」

 今朝はお父様の絶叫から始まった。
 眠い目を擦り、夜着のままで部屋から顔だけだしてみた。何やら夫婦の部屋で一悶着あったようで、上に一枚羽織ってそちらに向かった。

「朝っぱらから何騒いでるんですか、絶叫するにも時間と名前が違うでしょ」
「な、何を言っとるかっ。それよりお前、ニコラスの代わりに騎士団に行くだと?   よくもまあ、テイラード家を危機に晒すようなことを考えおって!」
「なぁに言っちゃってるんですか、考えたのはお母様ですよ?   私は渋ったんです」
「え?   そうなの?」

 衝撃事実を知ったお父様は、最初の怒りが急速にしぼんで、首をギギギとお母様の方に巡らす。
 お父様、それでは油の切れた人形ですって。
 そしてその視線の先には、天使のような微笑みの中、目だけが笑っていないという修羅の顔をしたお母様がいる。なんとも素敵な舞台の始まりだ。

 私はこの後の展開に巻き込まれないように静かにその部屋を後にした。

「す、すまん、全然危機だなんて思っても……ぎょえーーーー……」

 扉の向こうから言い訳するお父様の悲鳴を背中に聞き「愛されてるねぇ」と呟いた。

 さて、と身支度を済ませてから今日一日でやることを頭で整理する。

 私は明日からニコラスになる訳だから、ニコルの日常とはしばらくお別れ。
 二日に一度は顔を出している街の道場には一週間いけないことを伝えに行かないと。


******


 威勢のいい挨拶が路地まで響いてきた。
 朝の稽古はもうすぐ終わりかな?   

 この道場は剣術と勉強を子供たちに教える場所として、パンドリーさんという方が開放してくれている。朝と夕方の剣術稽古は仕事合間の大人たちが運動しにくることもある。

 これから仕事に行く若い人たちに手を振って見送ったら、子供たちにお勉強を教える時間だ。
 ここで私はボランティアでお勉強を教えつつ、夕方の子供相手の剣術稽古をつけている。

 なぜか貴族の方々のパーティーやお茶会には滅多に呼ばれない私にとって、この道場は趣味と暇つぶしを兼ねて、自分を解放できる憩いの場所なのだ。

「パンドリーさん、申し訳ありませんが明日から少しおやすみさせてください」
「ん? 何かあった?」
「一週間ほどですが、別のボランティアに顔を出すことになりまして」
「そう、こっちは平気だよ。ただし若い男性諸君がガッカリするだろうねぇ、もちろん若くないけれど、私もね?」

 パンドリーさんがパチリとウィンクしてくれた。
 ん?   男性がガッカリ?   私にゃ関係ないじゃん?

 小首を傾げてパンドリーさんに尋ねれば、私が来る日は若い男性の利用率が異常に多いらしい。朝の見送りと夕方の稽古姿が人気なんですよ、とニコニコスマイルで説明されちゃった。

 へ?   気づかなかったよ、私ってモテる要素はあったんだ。こんなとこにも出会いの場があったなんて。
 ちょっとは男性との色恋の一つもお試ししてみたいと思うのは世間の女子の統一見解だからねっ!
 最終的には貴族の誰かに嫁ぐとしても、淡い初恋ってヤツは早いうちに体験しないと人生もったいない。

 くーっ、もっと早く気付けよ私!
 しかーもー、もっとグイグイ来いよ男たち、ヘタレばっかじゃないか……
 こうなったら、一週間後からは毎日道場に通おう。カッコいい男性見つけるんだっ。
 自分の幸せは自分でゲットしにいかないとね。出会いが少ないなら作ればいいのよっ!
 そう心に誓って道場を後にした。

 陽の傾きが夕方を示すようになった頃、ふと、花屋さんに寄って帰ろうか、と考えた。
 道場にしばらく顔を出さない代わりに、小さな花束を飾ると癒しになるだろうと思って。この花を私だと思ってね、何てどーよ。

 んー、グッジョブ私。ここで女子力の高さをアピールしておけば、次に顔出した時に話しのネタにもなるだろーて。
『ニコルさんって剣術とかしてる割に可愛いとこもあるんですね』とか言われちゃった日にゃ、アカーン、ソッコー惚れるやろってー。

 妄想で頭がパンパンになった頃、花屋に到着、朝の見送りするくらいの時間に花束を届けてもらうように手配して屋敷に戻ろうとした。
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