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22 〈現在・縁視点〉
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「通過した……」
画面を見上げ、エニシが呟く。
金属製の水筒から血液を供給しようとしていた手が、動きを止める。
壁面につけられた多くの画面には、静まりかえった防御壁が映し出されていた。
縁は呆然とするエニシを見つめた。
数分前、突然、動き出した人型の機体が防御壁にぶち当たった。浮島の監視カメラにより、そこに孤とオーガストが乗っていることを知り、エニシは進めていた作業を中断して、孤達の行く手を阻む防御壁を消そうと奮闘し始めた。
防御壁は、危険が迫っている場合、手動操作で、勝手に防御壁が解かれないようプログラムされている。その機能が働いたのだ。
エニシはいざと言うときのために、自ら組んだプログラミングを破壊するため、キーボードを叩き続けた。
「無理です。セキュリティは僕達を守ろうとしている」
縁は意を決して口を開いた。
エニシが睨みつけてくる。
「危険などない。何から俺達を守ろうとしている? 守るどころか、孤の命を危険にさらしている!」
特異体質者のエニシであっても、血の補給を怠っている今、身体的能力も下がるのだろう。縁が見ているものが、エニシには見えていない。光る巨大な鳥は、それほどまでに動きが速いのだ。
機体と連絡をとることができれば、解決の糸口が現れるかもしれないが、エニシがその手段をとらないのは、機体側と連絡をとることが不可能だからだ。
「僕が行きます。行って、機体の動力源を壊してきます」
エニシが縁に視線を一瞬だけ向ける。
「あれを作ったのは俺だ。俺が行く」
彼はそう言って、血を得ようとした。
しかし、エニシが金属製の水筒に口をつけようとした時、機体が防御壁を抜けた。
今、血液は必須ではない。それよりも、エニシはきっと、落ちていく機体を気にするはずだ。
思ったとおり、彼は金属でできた水筒を手から離し、キーボードを打ち込みだした。床に転がった物から液体は零れていない。縁はそれを拾い、蓋をきっちり閉めた。
防御壁の外にいた糸トンボ型ロボットの目が、落ちていく機体の映像をこちらの画面へと送る。
「孤……」
エニシが駆け出そうとする。縁は彼の腕を掴んだ。
「大丈夫です」
「何がだ?」
「速度が落ちています」
エニシは画面を目にすると眉根を寄せ、
「ダメだ。助けないと」
呟き、縁から水筒をとって蓋を開けた。
「光る巨大な鳥がいるんです。その鳥が機体を守ろうとしています」
縁が根拠を述べると、エニシは目を見開けた。
画面に映る機体が仄かな光りに包まれる。光りが強いためか、エニシにも見えたようだった。彼は唇を震わせた。
機体が地面へと着地する。
「よかった」
声を漏らした縁の横で、エニシは俯き加減に歩き出した。水筒を元に戻し、コンピューターに向き直る。画面が機体内の様子に切り替わる。孤も、オーガストも、無事だ。エニシが肩の力を抜く。
「頼んでいた作業はいいから、孤達のサポートをしてくれ」
「エニシの負担が重すぎます」
「お前が孤達を見ていてくれることで、俺は安心して、やるべきことをやれる」
納得はしていなかった。
ただ、エニシが口にした、安心の言葉を受けとめたいがために、縁は頷いた。
エニシは微笑んだようだった。
「頼む」
彼は言うなり席をたち、部屋の隅のデスクでノート型パソコンを操作しだした。パソコンは浮島のコンピューターにケーブルで接続されている。エニシは浮島自体を使用しようとしているのだ。
縁はエニシが安心して集中できるよう、キーボードを打ち込み、機械の糸トンボを操った。
画面を見上げ、エニシが呟く。
金属製の水筒から血液を供給しようとしていた手が、動きを止める。
壁面につけられた多くの画面には、静まりかえった防御壁が映し出されていた。
縁は呆然とするエニシを見つめた。
数分前、突然、動き出した人型の機体が防御壁にぶち当たった。浮島の監視カメラにより、そこに孤とオーガストが乗っていることを知り、エニシは進めていた作業を中断して、孤達の行く手を阻む防御壁を消そうと奮闘し始めた。
防御壁は、危険が迫っている場合、手動操作で、勝手に防御壁が解かれないようプログラムされている。その機能が働いたのだ。
エニシはいざと言うときのために、自ら組んだプログラミングを破壊するため、キーボードを叩き続けた。
「無理です。セキュリティは僕達を守ろうとしている」
縁は意を決して口を開いた。
エニシが睨みつけてくる。
「危険などない。何から俺達を守ろうとしている? 守るどころか、孤の命を危険にさらしている!」
特異体質者のエニシであっても、血の補給を怠っている今、身体的能力も下がるのだろう。縁が見ているものが、エニシには見えていない。光る巨大な鳥は、それほどまでに動きが速いのだ。
機体と連絡をとることができれば、解決の糸口が現れるかもしれないが、エニシがその手段をとらないのは、機体側と連絡をとることが不可能だからだ。
「僕が行きます。行って、機体の動力源を壊してきます」
エニシが縁に視線を一瞬だけ向ける。
「あれを作ったのは俺だ。俺が行く」
彼はそう言って、血を得ようとした。
しかし、エニシが金属製の水筒に口をつけようとした時、機体が防御壁を抜けた。
今、血液は必須ではない。それよりも、エニシはきっと、落ちていく機体を気にするはずだ。
思ったとおり、彼は金属でできた水筒を手から離し、キーボードを打ち込みだした。床に転がった物から液体は零れていない。縁はそれを拾い、蓋をきっちり閉めた。
防御壁の外にいた糸トンボ型ロボットの目が、落ちていく機体の映像をこちらの画面へと送る。
「孤……」
エニシが駆け出そうとする。縁は彼の腕を掴んだ。
「大丈夫です」
「何がだ?」
「速度が落ちています」
エニシは画面を目にすると眉根を寄せ、
「ダメだ。助けないと」
呟き、縁から水筒をとって蓋を開けた。
「光る巨大な鳥がいるんです。その鳥が機体を守ろうとしています」
縁が根拠を述べると、エニシは目を見開けた。
画面に映る機体が仄かな光りに包まれる。光りが強いためか、エニシにも見えたようだった。彼は唇を震わせた。
機体が地面へと着地する。
「よかった」
声を漏らした縁の横で、エニシは俯き加減に歩き出した。水筒を元に戻し、コンピューターに向き直る。画面が機体内の様子に切り替わる。孤も、オーガストも、無事だ。エニシが肩の力を抜く。
「頼んでいた作業はいいから、孤達のサポートをしてくれ」
「エニシの負担が重すぎます」
「お前が孤達を見ていてくれることで、俺は安心して、やるべきことをやれる」
納得はしていなかった。
ただ、エニシが口にした、安心の言葉を受けとめたいがために、縁は頷いた。
エニシは微笑んだようだった。
「頼む」
彼は言うなり席をたち、部屋の隅のデスクでノート型パソコンを操作しだした。パソコンは浮島のコンピューターにケーブルで接続されている。エニシは浮島自体を使用しようとしているのだ。
縁はエニシが安心して集中できるよう、キーボードを打ち込み、機械の糸トンボを操った。
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