孤塁の縁 第二章 ~死装束の少年~

上野たすく

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21-2 〈現在・オーガスト視点〉

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 孤が機体の操作に戻る。ボタンを押す彼の指が赤みを帯びていく。
 オーガストは身を起こし、孤と目を合わせた。
「俺がボタンを押す。指示をくれ」
 孤は口を微かに開閉させた。言葉にはしなかったが、断ろうとしたのだろう。彼は唇を噛んでから、決心したように頷いた。
 人が傷つくことを、この青年はひどく嫌うのだ。だが、彼はオーガストの申し出を受け入れてくれた。胸の内で、オーガストは感謝した。
 孤は機体に書かれた文字を吟味しながら、オーガストに指示をくれる。
 指先が熱によって痛む。操作をしても結果は改善されない。汗が噴き出てくる。機体が溶ける匂いに、呼吸も浅くなる。
 この透明な壁さえなくなれば、機体の損傷も止められるのに。
 孤が汗を拭い、足下のスイッチを切り替えるよう言う。銀色の金属棒を三つ、上へとあげる。
 急に熱さが和らぎ、火花も散らなくなった。ゼリー状の何かに守られた機体は、見えない壁を通過し、地面へと落ちていく。
 孤がレバーを握りしめ、引き上げようとした。オーガストはその行為が命綱だと悟り、彼と手が重ならない部分を握った。
 雲を突っ切り、真っ逆さまに落ちていく。
 機体は制御できないままだ。
 守らないと。孤を。ルイを。守らないと!
 甲高く、澄んだ鳴き声がし、オーガストは頭を上げた。孤には聞こえていないようだ。
 だが、確かにその声は存在し、オーガストの頭蓋骨を振動させている。
 オーガストは見た。
 機体が黄金色の光りに包まれる様を。
 レバーは動かないのに、機体の落下速度は、明らかに緩やかになっている。孤は未だ、レバーと格闘している。オーガストは異変に気づかせようと、孤に話しかけようとした。
 が、声を出すことすらできない。なぜだ、と思った途端、黄金の光りが、オーガストと孤を抱擁するように強くなり、眩しさに目を閉じた。
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