孤塁の縁  第一章 ~出会い編~

上野たすく

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 縁をベッドに誘った夜に、初めて聞いた音は、今や昼夜を問わず、鳴り響いていた。
 ガラス越しに聞こえる音を、爆撃音だと確信するのに、時間はかからなかった。
 けれど、浮島はいたって平和だ。
 縁も、何も言ってこない。
 あの、誰かを憎むような音は、孤だけに聞こえる幻聴なのだろうか。
 強請らなくとも、縁が毎夜、添い寝をしてくれるおかげで、睡眠はとれている。悪夢に足を突っ込むこともない。  
 食事も三食ありつけ、牛の世話などの仕事も、自分でやりたくてやっている。
 不満はなく、むしろ、満ち足りた生活だ。
 幸せな毎日が、また霧散してしまうのか? 人間だと疑わずに生きてきた日々が、突然、消えてしまったように。
 独りは嫌だ。
 道具に戻るのは嫌だ。
 愛を無くすのは、もう嫌だ
 今ある幸せを失いたくなくて、孤は何も聞こえないように振る舞った。そうしていれば、本当に、幻聴が消えてくれるかもしれないとい、わずかな期待もあった。
 しかし、現実は儚く、期待が実る前に、孤の精神は、よりいっそう追い詰められた。
 爆撃音があるたびに、顔も名前も知らない誰かに、死ねと指をさされている気持ちに襲われた。
 エニシのために作られた、予備。
 エニシを守るための、予備。
 エニシが助かったなら不必要な、予備。
 ドウシテ、マダ 生キテイル?
 朝、縁の腕の中で目が覚めた。
「おはよう」と微笑みかけてくれた縁に笑いかけようとし、背後で死の音が破裂した。
 孤は崩れるように、倒れた。
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