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朔は年下の少年の言葉を咀嚼し、涙を堪えた。
瞼を閉じ、思い出せる限りの記憶を辿る。
クローバー病になる前、一心と歩いた早朝の町と道端のクローバーが鮮明に浮かび上がる。
あの日、朝波朔は、自分はまるで四つ葉だと、一心に伝えたかった。
そして、自分を特別視しない一心に救われていると、伝えたかった。
伝えたかったなら、ちゃんと伝えろよ、と苦笑してしまう。
わかっている。
朝波朔は自分がこうなるとは思ってもみなかったのだ。
今日は昨日の続きで、明日は当たり前のように来ると信じていた。
いつか、言おう。
まだ、その時ではない。
タイミングを見計らう余裕が、朝波朔にはあった。
結果、伝えられないまま、体を再構築されてしまった。
嗚咽混じりの熱い息を吐き出す。
朔は赤星が壊した場所から、繋いでくれた場所へと歩いた。
宛がわれた部屋の前に、神薙渉がいた。
彼は朔を見て、ほっとした表情になった。
朔は部屋の鍵を開けず、男に対し、唇を引き結んだ。
「まず、指令班の判断を聞かせてください。内容によっては、一心に会わせるわけにはいきません」
神薙はしばらくしてから、口を開いた。
「月見里君には班員志願校へ転入してもらう」
朔は目を細めた。
「甦禰看さんの意向を聞き入れた形だ。今回の被害で戦闘員の補充が不可欠になった。体勢が整いしだい、志願者を募集し、試験をする。月見里君にはその試験に参加してもらう」
神薙は視線を逸らさず、落ち着いた口調で続けた。
「もちろん、月見里君に拒否権はある。決めるのは、誰でもない月見里君自身だ」
男は朔の拒否権をあからさまに奪ってきた。
「一心が承諾すれば、あんた達の悲願成就に一歩近づけられるって訳ですか?」
片方の口角を上げてやる。
「新月は月見里君にしか、扱えない」
「俺が使えている」
「君が使っている新月は、完全な姿じゃない」
怒りと悲しみと悔しさで、息が詰まった。
怒鳴り、泣き叫び、罵倒したかったのに、実際、出たのは、弱々しい声だった。
「俺に、消えろって、そう言いたいんですか?」
一心が与えてくれた朝波朔としての自信。
野岸が守ろうとしてくれた人としての未来。
赤星が壊してくれた固定観念。
すべてがなかったことにされてしまいそうだった。
「そうじゃない。戦闘行為は他の人間に委ねるべきだと言っているんだ」
「俺は」
粒子になったら、戻ってこれる保証はどこにもない。
いつも必死に、朝波朔を構成しているのだ。
「俺は!」
拳を握りしめた。
「月見里君なら、君を扱える」
それは人間に言う言葉ではない。
何かが砕けた。
大切な、何かだ。
涙が流れるのに、笑いが込み上げてきた。
その時だった。
部屋のドアが大きな音と共に、内側からへこんだ。
呆然と見つめていると、へこみはひどくなり、ついにはドアに穴が空いた。
一心はこちらを見て、持っていたスツールを放り出し、抱きしめてきた。
ぬくもりに、大粒の涙が零れ落ちた。
「朔」
一心は力強く名前を呼んだ。
瞼を閉じ、思い出せる限りの記憶を辿る。
クローバー病になる前、一心と歩いた早朝の町と道端のクローバーが鮮明に浮かび上がる。
あの日、朝波朔は、自分はまるで四つ葉だと、一心に伝えたかった。
そして、自分を特別視しない一心に救われていると、伝えたかった。
伝えたかったなら、ちゃんと伝えろよ、と苦笑してしまう。
わかっている。
朝波朔は自分がこうなるとは思ってもみなかったのだ。
今日は昨日の続きで、明日は当たり前のように来ると信じていた。
いつか、言おう。
まだ、その時ではない。
タイミングを見計らう余裕が、朝波朔にはあった。
結果、伝えられないまま、体を再構築されてしまった。
嗚咽混じりの熱い息を吐き出す。
朔は赤星が壊した場所から、繋いでくれた場所へと歩いた。
宛がわれた部屋の前に、神薙渉がいた。
彼は朔を見て、ほっとした表情になった。
朔は部屋の鍵を開けず、男に対し、唇を引き結んだ。
「まず、指令班の判断を聞かせてください。内容によっては、一心に会わせるわけにはいきません」
神薙はしばらくしてから、口を開いた。
「月見里君には班員志願校へ転入してもらう」
朔は目を細めた。
「甦禰看さんの意向を聞き入れた形だ。今回の被害で戦闘員の補充が不可欠になった。体勢が整いしだい、志願者を募集し、試験をする。月見里君にはその試験に参加してもらう」
神薙は視線を逸らさず、落ち着いた口調で続けた。
「もちろん、月見里君に拒否権はある。決めるのは、誰でもない月見里君自身だ」
男は朔の拒否権をあからさまに奪ってきた。
「一心が承諾すれば、あんた達の悲願成就に一歩近づけられるって訳ですか?」
片方の口角を上げてやる。
「新月は月見里君にしか、扱えない」
「俺が使えている」
「君が使っている新月は、完全な姿じゃない」
怒りと悲しみと悔しさで、息が詰まった。
怒鳴り、泣き叫び、罵倒したかったのに、実際、出たのは、弱々しい声だった。
「俺に、消えろって、そう言いたいんですか?」
一心が与えてくれた朝波朔としての自信。
野岸が守ろうとしてくれた人としての未来。
赤星が壊してくれた固定観念。
すべてがなかったことにされてしまいそうだった。
「そうじゃない。戦闘行為は他の人間に委ねるべきだと言っているんだ」
「俺は」
粒子になったら、戻ってこれる保証はどこにもない。
いつも必死に、朝波朔を構成しているのだ。
「俺は!」
拳を握りしめた。
「月見里君なら、君を扱える」
それは人間に言う言葉ではない。
何かが砕けた。
大切な、何かだ。
涙が流れるのに、笑いが込み上げてきた。
その時だった。
部屋のドアが大きな音と共に、内側からへこんだ。
呆然と見つめていると、へこみはひどくなり、ついにはドアに穴が空いた。
一心はこちらを見て、持っていたスツールを放り出し、抱きしめてきた。
ぬくもりに、大粒の涙が零れ落ちた。
「朔」
一心は力強く名前を呼んだ。
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