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本編
034 見てる?
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アルティナ達は、海からこそこそと上陸した怪しげな者達の捕縛に成功していた。
翌日、朝食の席で父であるレイノートにアルセルが報告する。この場にはオリエルも当然いた。
「なるほど……情報は引き出せそうか?」
「可能な限りやってみます。ティナが持ち帰った証拠書類もありますので」
「そうだな……ティナ」
「ん~?」
「……こちらを向いて返事をしなさい」
アルティナは今、まさに、素手で焼き魚の骨を抜き取るところ。真剣に皿の上の魚と向き合っていた。
この家では、貴族なのに手を平気で使う料理が出たりする。誰も文句は言わない。美味しいものは正義らしい。
「待って。今大事なとこ。骨綺麗に……取れた!!」
「ティナ……」
これに呆れるのはレイノートだけだ。やはり育ちの問題だろうか。
「すごい……」
初めてで戸惑うオリエルは普通に心から感心していた。
「あら。とても綺麗に抜けたわね」
「すごく上手だねっ」
ビオラとアルセルは、妹を微笑ましげに見て褒める。そして、母親であるリスティアは快活に笑いながら何度も頷く。少し感動気味だ。
「ティナ、素晴らしい腕だ。もうここまで出来るようになったかっ」
「えへへっ。はい! オリー。これあげる。そっちもらうね」
「いいのか?」
「うん! 見ててね! この魚は、焼くと骨が取りやすいの。やり方覚えておくといいよ」
「ああ。今度はしっかり見ておく」
「じゃあ、いくよ!」
周りがとても微笑ましげにオリエルとアルティナのやり取りを見ていた。メイドも料理長もだ。泣いている者もいる。
「ううっ。お嬢様がっ、ティナお嬢様が、婚約者の方の前であんな無邪気にっ……っ、よおございましたっ」
「なんてっ。なんて素晴らしい光景なんでしょうっ。お嬢様が、お可愛らしいっ」
「うわぁんっ。本当のお嬢様を愛してくださる方がいらっしゃるなんてっ。ううっ。よかったよぉぉぉぉっ」
一部、廊下でドアの隙間から見ていた使用人達が感情を爆発させているが、それもアルティナが愛されている証拠だろう。オリエルは照れながらも、任せてくださいと頷いている。
「オリーっ、見てる?」
「見てるよ。そうやって先に身をほぐすんだな」
「そう。この力加減が難しいの」
「その魚はよく釣れるのか?」
「うん。川の方にも行くから王都の手前までの川で見つけられることもあると思うよ」
「なら、今度釣り方を教えてくれ。あまり釣りは得意じゃないんだ」
「いいよ! 一年もすれば何でも釣れるようにしてあげる! 色んな所で釣りをしよう」
「ああ。一緒にな」
「うん!」
アルティナの笑顔は輝いていた。オリエルも幸せそうだ。
これにより、レイノートの声掛けはすっかり忘れ去られている。家族の誰もフォローもしない。末っ子の幸せは邪魔できないものだった。
レイノートも諦め、自分も魚を食べようと皿に手を伸ばす。しかし、そこでアルティナと同じように魚の骨を綺麗に外してくれた皿ごと何も言わずリスティアが交換した。
その皿を受け取り、目だけで会話してふっと笑って照れるレイノート。リスティアもにっと笑って嬉しそうだ。
これを見てしまったビオラはアルセルに問いかける。
「あら。これは私がアルのをやるべきなのかしら」
「冗談やめてください。姉上はいつもメイドにやってもらうでしょう」
「できなくはないわよ?」
「いや、やめて? 姉上の見た目で焼き魚を素手で掴むの見たくない」
ビオラは見た目女王様というのは、家族も思っていること。メイドや使用人に視線を向けるだけでやってもらうのが似合う。
「あら。ティナはいいの?」
「ティナは性格がアレだから。中身は野生児だって銀の女王が言っていたよ」
「まあっ。ふふふっ」
そんな話をしている内に、アルセルが骨を取り終え、ビオラのと取り替える。
「どうぞ。姉上」
「いただくわ」
この時には、もうアルティナとオリエルは、美味しいねと言いながら楽しそうに食べている。そして、今日早速釣りに行こうと約束もしていた。
「お父様。この婚約は大正解ですわね。若干、ティナの方は恋心というものをまだ理解できていないように思いますけれど、その分、オリエルさんが寄り添っているので良いのでしょう。あんな態度のティナにも不満はなさそうですし」
「ああ。ティナに付いて行くことも出来ているようだしな」
これに答えたのは、アルセルだ。
「はい。戸惑ってはいましたけど、崖に飛び移るとか、木から飛び降りるとか、やったことがないから一拍遅くなるだけで、経験をいくつかすれば、問題なさそうです」
「騎士団でもしませんわよね」
「彼の馬も賢く、強い個体です。恐らく、特殊個体でしょう。ここに来るまでに崖下りもやったようです。難なく銀の女王について来たとか」
「ほお。それは大したものだ」
レイノートもこれには驚いたようだ。しかし、これに一番目を輝かせたのはビオラだった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
翌日、朝食の席で父であるレイノートにアルセルが報告する。この場にはオリエルも当然いた。
「なるほど……情報は引き出せそうか?」
「可能な限りやってみます。ティナが持ち帰った証拠書類もありますので」
「そうだな……ティナ」
「ん~?」
「……こちらを向いて返事をしなさい」
アルティナは今、まさに、素手で焼き魚の骨を抜き取るところ。真剣に皿の上の魚と向き合っていた。
この家では、貴族なのに手を平気で使う料理が出たりする。誰も文句は言わない。美味しいものは正義らしい。
「待って。今大事なとこ。骨綺麗に……取れた!!」
「ティナ……」
これに呆れるのはレイノートだけだ。やはり育ちの問題だろうか。
「すごい……」
初めてで戸惑うオリエルは普通に心から感心していた。
「あら。とても綺麗に抜けたわね」
「すごく上手だねっ」
ビオラとアルセルは、妹を微笑ましげに見て褒める。そして、母親であるリスティアは快活に笑いながら何度も頷く。少し感動気味だ。
「ティナ、素晴らしい腕だ。もうここまで出来るようになったかっ」
「えへへっ。はい! オリー。これあげる。そっちもらうね」
「いいのか?」
「うん! 見ててね! この魚は、焼くと骨が取りやすいの。やり方覚えておくといいよ」
「ああ。今度はしっかり見ておく」
「じゃあ、いくよ!」
周りがとても微笑ましげにオリエルとアルティナのやり取りを見ていた。メイドも料理長もだ。泣いている者もいる。
「ううっ。お嬢様がっ、ティナお嬢様が、婚約者の方の前であんな無邪気にっ……っ、よおございましたっ」
「なんてっ。なんて素晴らしい光景なんでしょうっ。お嬢様が、お可愛らしいっ」
「うわぁんっ。本当のお嬢様を愛してくださる方がいらっしゃるなんてっ。ううっ。よかったよぉぉぉぉっ」
一部、廊下でドアの隙間から見ていた使用人達が感情を爆発させているが、それもアルティナが愛されている証拠だろう。オリエルは照れながらも、任せてくださいと頷いている。
「オリーっ、見てる?」
「見てるよ。そうやって先に身をほぐすんだな」
「そう。この力加減が難しいの」
「その魚はよく釣れるのか?」
「うん。川の方にも行くから王都の手前までの川で見つけられることもあると思うよ」
「なら、今度釣り方を教えてくれ。あまり釣りは得意じゃないんだ」
「いいよ! 一年もすれば何でも釣れるようにしてあげる! 色んな所で釣りをしよう」
「ああ。一緒にな」
「うん!」
アルティナの笑顔は輝いていた。オリエルも幸せそうだ。
これにより、レイノートの声掛けはすっかり忘れ去られている。家族の誰もフォローもしない。末っ子の幸せは邪魔できないものだった。
レイノートも諦め、自分も魚を食べようと皿に手を伸ばす。しかし、そこでアルティナと同じように魚の骨を綺麗に外してくれた皿ごと何も言わずリスティアが交換した。
その皿を受け取り、目だけで会話してふっと笑って照れるレイノート。リスティアもにっと笑って嬉しそうだ。
これを見てしまったビオラはアルセルに問いかける。
「あら。これは私がアルのをやるべきなのかしら」
「冗談やめてください。姉上はいつもメイドにやってもらうでしょう」
「できなくはないわよ?」
「いや、やめて? 姉上の見た目で焼き魚を素手で掴むの見たくない」
ビオラは見た目女王様というのは、家族も思っていること。メイドや使用人に視線を向けるだけでやってもらうのが似合う。
「あら。ティナはいいの?」
「ティナは性格がアレだから。中身は野生児だって銀の女王が言っていたよ」
「まあっ。ふふふっ」
そんな話をしている内に、アルセルが骨を取り終え、ビオラのと取り替える。
「どうぞ。姉上」
「いただくわ」
この時には、もうアルティナとオリエルは、美味しいねと言いながら楽しそうに食べている。そして、今日早速釣りに行こうと約束もしていた。
「お父様。この婚約は大正解ですわね。若干、ティナの方は恋心というものをまだ理解できていないように思いますけれど、その分、オリエルさんが寄り添っているので良いのでしょう。あんな態度のティナにも不満はなさそうですし」
「ああ。ティナに付いて行くことも出来ているようだしな」
これに答えたのは、アルセルだ。
「はい。戸惑ってはいましたけど、崖に飛び移るとか、木から飛び降りるとか、やったことがないから一拍遅くなるだけで、経験をいくつかすれば、問題なさそうです」
「騎士団でもしませんわよね」
「彼の馬も賢く、強い個体です。恐らく、特殊個体でしょう。ここに来るまでに崖下りもやったようです。難なく銀の女王について来たとか」
「ほお。それは大したものだ」
レイノートもこれには驚いたようだ。しかし、これに一番目を輝かせたのはビオラだった。
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