秘伝賜ります

紫南

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第八章 秘伝と隠されたもの

465 賑やかな顔合わせ

部屋を出てすぐに隣の部屋から侑芽も出て来た。同じようにこの旅館で用意されていた浴衣を着ている。

「あ、大木さんっ、顔色が……」
「侑芽さん?」
「っ、ああっ! 化粧を落としたから……っ」
「ふふふっ。いつもはキリっとされていますけど、可愛らしいわ」
「ああ……女性は本当に化粧で違うな……これは、失礼」
「いえ……どうしてももう化粧する気にならなくて……すみません……」
「大丈夫ですわ。私も化粧落としてしまいましたから」
「……ふふっ」
「ふふふっ」

すっぴんですがいいよねと二人は笑い合った。せっかくお風呂に入ってプルプルになったのに、塗り込むなんて出来ない。

そうして笑い合っている所に、反対側の部屋から迅が出て来た。こちらもばっちり浴衣姿だ。

「おおっ! ユメちゃん! 大木さんも! 若返ったね!」
「……三先さん……」
「やだなあ。迅って呼んでよ~」
「呼びません!」
「え~。そろそろいけるでしょ」
「何がそろそろなんですかっ! わけわかりませんよ!」
「ユメちゃん……せっかくなくなったシワが出来ちゃうよ?」
「っ! 誰のせいですか!」
「あはは~」
「「……」」

大木父娘は目を丸くしながらも、クスリと笑っていた。

そこに、談話室の方から顔を覗かせた者がいた。

「おいおい。賑やかだと思えば、迅か」
「ゲンさん!」
「お前はいつも元気だなあ。ここの温泉の効能も効いて、余計に煩くなってないか?」
「え? 迅だって? ああ、本当だ……お前はマジで煩えなあ」
「タケさん! タケさんも来たの?」

げんもタケと呼ばれたたけるも、どちらも連盟関係者の刑事。そして、どちらも見た目硬派なおじ様だ。

「っ……かっこいい……」
「え? ユメちゃん?」
「担当の子か? 悪いなあ、迅は良く喋るから煩えだろ。マジでウザくなったら、部屋に閉じ込めてやるから言えよ?」
「えっ、あ、はい!! ウザくなったら言います!」
「ユメちゃん!?」
「「っ、ふふっ」」

大木父娘は、吹き出していた。

それを見て、元が声をかける。

「ああ、ほら、廊下は少し温度低いんで、こっちにどうぞ。確か……大木さんでしたか」
「っ、え、ええ……」
「ご存知で……」
「まあ、今日集まる人たちの名は覚えてますよ。さあ、どうぞ」
「あ、はい……」
「失礼します……」

そろそろと扉の開け放たれた部屋に入る。

そこには、十二人の年齢も様々な人がいた。

「そうだ。そっちの担当の子と迅はコレ付けろよ」
「腕章ですか?」
「久しぶりに見た! 連盟のマーク!」
「マーク……扇に……五芒星と六芒星……と十二芒星?」
「おっ、上に字が書いてあるのに、よく違いが分かったなあ」

扇に三つの文字『幻幽会』と書かれているその一文字ずつの後ろに、五芒星、六芒星、十二芒星が描かれている。

マジマジと見て、それを指摘した侑芽は、恥ずかしそうに告げる。

「あ、その……実は、こういうの好きなんで……陰陽師とか……ファンタジー系の……」
「ほおっ。そりゃあ、人選が良かったなあ。その陰陽師の安部家の当主にも運が良ければ会えるかもなあ。ここは、そういう陰陽師とか霊能者の保養地だから」
「っ、安部家って、あの……有名な陰陽師の?」
「そうだぜ。なんだ。迅、言わなかったのか?」
「え~? あそこの御当主怖いし~。高耶君をすぐ取るじゃん。あんま名前出さないようにしてるんですよ。なんか呼んだら来そうだし」
「わっはっはっ。確かにっ」
「噂話も聞いてそうで怖いよなあっ」

分かると元も剛も大きく頷いた。

「さてと。少し紹介だけでもしましょうや。あっちにいるのが、俺の担当の駒山さんだ。夫婦と、その父親だ」

元の担当の夫婦は、恐らく温泉効果で若返っていることを加味して見れば、四十代後半頃に見えた。父親は、妻の方の血縁だった。

「俺んとこは、あそこだ。木場さんな。母親と娘、それと母親の両親だ」

剛の担当は、母親が五十頃で、娘が三十頃だろう。母親の両親は七十を過ぎている頃だ。

「こちらは、大木さんです。母親と、その父親です」

それぞれ、よろしくと頭を下げる。そんな中、残っている家族に目が行った。それに応えて、一番若い青年が立ち上がる。見た目はヤンチャそうだ。

「白木といいます。それと両親です。私たちには、担当はいませんが、みなさんと同じ境遇の者です。ただし、既にこちらの業界の方との話し合いも進めている段階にいるという違いがあります」
「「「「「っ!!」」」」」
「詳しいことは、正式な顔合わせの時に。よろしくお願いします」
「「「「「……っ」」」」」

少し緊張が走ったが、すぐに元達がフォローに入る。

「まあ、今はほら、温泉の効能とか、妖精達について話しましょうや」
《呼んだ?》
《お~、ちゃんと温泉効いたねえ》
「っ、あ、よ、妖精さん……?」

唐突に現れたというか、小さなサイズからキラリと光って人のサイズになった妖精達が声をかける。

《あ、このサイズ嫌?》
「い、いいえっ」
《いやあ、結構飛ぶのとか小さいとやっぱねえ》
「ねえとか言われても分かんないっスよ?」
《あははっ。まあ、そうだよねっ。でもほら、小さなタイヤの折り畳み自転車と普通サイズのママチャリの違いって言うのかな。進み具合が違う上に、使う力って違うじゃない?》
「やばい。分かりやすいっ。分かっちゃった!」

迅が興奮気味に同意すれば、妖精達も嬉しそうに笑う。

《分かってくれる? それだよ。だから、やっぱ移動したりするには大きい方がいいよね!》
《お喋りするのも、やっぱり目線が合わないとね~》
「なるほど!!」
《君、面白いねえ。鍛えてそうだし、どう? 僕らの道場に通わない? 秘伝家公認の忍術道場なんだけど。ここの裏山に作ってるんだ》
「っ、なにそれ! 通います!!」
「おいおい。そりゃあ、興味深いな。俺も頼むわ」
「週一でもいいか? 入会金と月謝について聞こうか」
《チラシあるよ。これどうぞ》
「「「おおっ!」」」

ヒラリと手を振れば、そこにチラシが三枚現れ、それを迅達は受け取った。

ここにいる家族の中にも、ソワソワとして興味を引かれている者がいたようだ。そんな彼らにも、他の妖精達がチラシを配っている。

そこに、残りの二組の家族と俊哉がやって来たのだ。





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読んでくださりありがとうございます◎





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