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第二章 秘伝の当主
066 会合とか面倒ですが
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2018. 8. 1
**********
瑶迦の所へ家族で行ってから、父母が仕事のない週末には必ず遊びに行くようになった。
「ヨウカねえ。みてみて」
「まあ、とっても可愛い色ね。腕輪かしら?」
「うん。これゴムでつくるんだよ。ヨウカねえにはこれね」
「ありがとうっ。もしかして優希ちゃんが作ったの?」
「そうだよ!」
こうして優希も瑶迦を本当の姉のように慕っており、最近はお揃いリボンやキーホルダーを贈り合うのが常だ。
瑶迦も子ども好きであり、何より世話焼きな性格だ。まるで休みの度に遊びに来る孫を迎えるように、生き生きと楽しんでいる。
一方、父母はといえば、藤や菫達と料理や山菜採りなど、都会では中々知り得ないことを教えてもらっていた。
「藤さん。この前教えてもらった草木染めなんだけどね」
「菫さん。これって食べられたわよね?」
憧れの田舎暮らしを週末だけ体験できるのだから贅沢なものだと喜んでいるらしい。
その間、高耶はこの屋敷に集められている膨大な書物を読み解く時間にあてていた。
瑶迦は長く生きているだけあり、古い文献に事欠かない。その上、ここには優秀で力の強い式神達が揃っており、外からの情報も問題なく手に入る。
閉鎖的な空間ではあるが、最新の情報は常に集められているのだ。
式神達の働きにより、密かに絶えてしまった陰陽師の家にある書物を回収していたりする。悪用されたり、時折ある封印されたものなど、危険なものを回収しているのだ。
お陰で高耶は暇をせずに済んでいる。ただ時折、高耶だけ仕事があるという時に、優希や父母達はこちらに送り届けるだけしてくれればいいと言ってあっさり『行ってらっしゃい』と見送られる。
家族としての時間をここに求めているのではなく、ここでの時間を楽しんでいるらしい。そこは、なんだか寂しいようにも思う。
それだけ高耶の能力を認めているということだろうか。異質と思われるのでもなく、嫌悪されるでもないので、良い事だと思っておくべきかもしれない。
今回も高耶だけその日の内に帰ることになっていた。
「高耶さん。今日は会合?」
「ええ。明日の朝までには戻ります。それまでよろしくお願いします」
「分かっているわ。優希ちゃん達のことは任せて。本家の人間がまた難癖を付けてきたら、遠慮してはだめよ? 何と言われようと、当主はあなたなのだから」
「はい……では、行って参ります」
瑶迦に見送られ、高耶は陰陽師連盟の会合へと出かけた。
◆◆◆◆◆
会合場所に着いた高耶は、多くの者達が暗い顔をしているのが気になった。
高耶は若く、実力がある上に首領の一人でもある。決して少なくない者が妬む才能であり、立場を持っているのだ。そのため、この場では気配を消し、素早く素通りすることに努めた。
繋げられる扉は限られているので、首領達の集まる特別室へ向かうにはここを通らないわけにはいかないのだ。
会合とはいっても、顔を付き合わせて会議というわけではない。陰陽師という立場の者達が、定期的に情報を共有するための集まりであり、会場は立食パーティのような様相になっている。
ただし、アルコールはない。宴会場にするつもりはなく、素面での確実な情報交換をするための場である。
「ふぅ……」
目の端に本家の者達を捉えながら、高耶はなんとかその会場を通り抜けた。
高耶達数人の首領が集まる部屋へ向かうと、そこには既に半数の者達が来ていた。
「お、高耶。今日は絡まれずに来られたか」
「……はい……」
手を上げてにこやかに挨拶をするのは、壮年の男性だ。体つきはとてもがっちりとしており、普段から体を鍛えていると分かる。性格もさっぱりしていて、変に気負わなくても良いと思える気持ちのいい相手だ。
「いやぁ、いつかお前がキレてあやつらをノすところを見られないかと期待しているんだがなぁ」
「タツキさん。正直に言わないでください」
彼、達喜は、高耶を当主と認めない本家の者達が許せないらしい。とはいえ、他家の問題に勝手に首を突っ込むのはよくない。口惜しく思いながら、こうして冗談を言って気を紛らわせているのだ。
「しゃぁねぇだろ。ってかお前は我慢しすぎだ。お前ん所は仮にも武で売ってんだから、拳で黙らせりゃいいだろうに」
「数代前まではそれでも良かったんでしょうが、今の秘伝家はそこまで脳筋じゃないです」
「はははっ。まぁ、お前もそんなごっつい体してねぇもんなぁ」
「……体つきは関係ないかと……」
確かに高耶の体つきよりも、きっと逹喜の方が秘伝家のイメージに合うだろうとは思ってしまった。
「いややわぁ。高耶さんがあんさんみたいにマッチョになったら困るぇ?」
そこに、首領統括である彼女がコロコロと笑いながらやってきた。
**********
次回、一週お休みさせていただきます。
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瑶迦の所へ家族で行ってから、父母が仕事のない週末には必ず遊びに行くようになった。
「ヨウカねえ。みてみて」
「まあ、とっても可愛い色ね。腕輪かしら?」
「うん。これゴムでつくるんだよ。ヨウカねえにはこれね」
「ありがとうっ。もしかして優希ちゃんが作ったの?」
「そうだよ!」
こうして優希も瑶迦を本当の姉のように慕っており、最近はお揃いリボンやキーホルダーを贈り合うのが常だ。
瑶迦も子ども好きであり、何より世話焼きな性格だ。まるで休みの度に遊びに来る孫を迎えるように、生き生きと楽しんでいる。
一方、父母はといえば、藤や菫達と料理や山菜採りなど、都会では中々知り得ないことを教えてもらっていた。
「藤さん。この前教えてもらった草木染めなんだけどね」
「菫さん。これって食べられたわよね?」
憧れの田舎暮らしを週末だけ体験できるのだから贅沢なものだと喜んでいるらしい。
その間、高耶はこの屋敷に集められている膨大な書物を読み解く時間にあてていた。
瑶迦は長く生きているだけあり、古い文献に事欠かない。その上、ここには優秀で力の強い式神達が揃っており、外からの情報も問題なく手に入る。
閉鎖的な空間ではあるが、最新の情報は常に集められているのだ。
式神達の働きにより、密かに絶えてしまった陰陽師の家にある書物を回収していたりする。悪用されたり、時折ある封印されたものなど、危険なものを回収しているのだ。
お陰で高耶は暇をせずに済んでいる。ただ時折、高耶だけ仕事があるという時に、優希や父母達はこちらに送り届けるだけしてくれればいいと言ってあっさり『行ってらっしゃい』と見送られる。
家族としての時間をここに求めているのではなく、ここでの時間を楽しんでいるらしい。そこは、なんだか寂しいようにも思う。
それだけ高耶の能力を認めているということだろうか。異質と思われるのでもなく、嫌悪されるでもないので、良い事だと思っておくべきかもしれない。
今回も高耶だけその日の内に帰ることになっていた。
「高耶さん。今日は会合?」
「ええ。明日の朝までには戻ります。それまでよろしくお願いします」
「分かっているわ。優希ちゃん達のことは任せて。本家の人間がまた難癖を付けてきたら、遠慮してはだめよ? 何と言われようと、当主はあなたなのだから」
「はい……では、行って参ります」
瑶迦に見送られ、高耶は陰陽師連盟の会合へと出かけた。
◆◆◆◆◆
会合場所に着いた高耶は、多くの者達が暗い顔をしているのが気になった。
高耶は若く、実力がある上に首領の一人でもある。決して少なくない者が妬む才能であり、立場を持っているのだ。そのため、この場では気配を消し、素早く素通りすることに努めた。
繋げられる扉は限られているので、首領達の集まる特別室へ向かうにはここを通らないわけにはいかないのだ。
会合とはいっても、顔を付き合わせて会議というわけではない。陰陽師という立場の者達が、定期的に情報を共有するための集まりであり、会場は立食パーティのような様相になっている。
ただし、アルコールはない。宴会場にするつもりはなく、素面での確実な情報交換をするための場である。
「ふぅ……」
目の端に本家の者達を捉えながら、高耶はなんとかその会場を通り抜けた。
高耶達数人の首領が集まる部屋へ向かうと、そこには既に半数の者達が来ていた。
「お、高耶。今日は絡まれずに来られたか」
「……はい……」
手を上げてにこやかに挨拶をするのは、壮年の男性だ。体つきはとてもがっちりとしており、普段から体を鍛えていると分かる。性格もさっぱりしていて、変に気負わなくても良いと思える気持ちのいい相手だ。
「いやぁ、いつかお前がキレてあやつらをノすところを見られないかと期待しているんだがなぁ」
「タツキさん。正直に言わないでください」
彼、達喜は、高耶を当主と認めない本家の者達が許せないらしい。とはいえ、他家の問題に勝手に首を突っ込むのはよくない。口惜しく思いながら、こうして冗談を言って気を紛らわせているのだ。
「しゃぁねぇだろ。ってかお前は我慢しすぎだ。お前ん所は仮にも武で売ってんだから、拳で黙らせりゃいいだろうに」
「数代前まではそれでも良かったんでしょうが、今の秘伝家はそこまで脳筋じゃないです」
「はははっ。まぁ、お前もそんなごっつい体してねぇもんなぁ」
「……体つきは関係ないかと……」
確かに高耶の体つきよりも、きっと逹喜の方が秘伝家のイメージに合うだろうとは思ってしまった。
「いややわぁ。高耶さんがあんさんみたいにマッチョになったら困るぇ?」
そこに、首領統括である彼女がコロコロと笑いながらやってきた。
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次回、一週お休みさせていただきます。
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