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第三章 秘伝の弟子
106 落ち着いて待っていてください
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2019. 4. 17
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高耶が来たことで、張り詰めていた空気が緩んだようだ。
「高耶くんっ」
「お兄さんっ」
カナちゃんとミユちゃんの母親達が思わずというように声を上げた。
「えっ、高耶くん。外に骸骨いたでしょう?」
「大丈夫ですよ。今はもうこの部屋の前には居ません」
「そうなの? なら帰れる……?」
これに高耶は申し訳ないと眉を寄せる。
「少なくとも、この状況を作った者を捕まえない限りは、外には出られません。この部屋はこの二人のお陰で大丈夫ですが、部屋の外は有害な空気があります。危険なので、処理が終わるまで待っていてください」
「そ、そう……」
さすがに骸骨の落ち武者を実際に見てしまっては、これらを受け入れざるを得ないだろう。それぞれ娘を抱き寄せて椅子に深く座り直していた。
「なあ、高耶。隣、先生達は大丈夫なのか? 倒れてるみたいだし、その有害な空気? のせいじゃねえの?」
俊哉は取り乱すことなく、落ち着いた様子で尋ねてきた。こういう態度は助かる。俊哉のような者がパニックを起こせば、この場は大変なことになっていただろう。
お陰で子ども達がこの状況でも大人しくしていてくれている。
「職員室の方は対処した。多少は影響があるかもしれないが、問題ない。今は眠っているだけだ」
「そっか。なら安心だなっ。隣で人死にが出てたらどうしようかと思った」
「縁起でもない……」
そんな俊哉の隣で、時島がほっと胸を撫で下ろしていた。
どんな状況かを納得してもらえた所で、清晶が近付いてきた。
《主様。上に鬼渡がいる》
「……そうか。珀豪はそっちか?」
《うん。生徒もいるらしいから》
中に入ったことで、高耶はかつて対峙した鬼渡がいるというのには気付いていた。
この地に鬼が封じられている感じはないので、そこは安心しているが、何が目的なのかと考える。
「……わかった。清晶と統二はこのままここを頼めるか?」
《……ぬ、主様と一緒がいいけど……そうしろって言うなら……》
「頼むよ」
《ん……》
ちょっと納得できないという顔をしながらも頷く清晶の頭を撫でる。
それから統二を見た。
「清晶の力を少し解放する。それで結界が強化されるはずだ。そんなに時間はかけるつもりはない。もう少しだけここで頑張ってくれ」
「はいっ」
素直な子だ。目は潤んだままだが、大丈夫だろう。
「優希、カナちゃん達とここでもう少しだけ待っててくれるか?」
「うんっ。でも、もうちょっとだけだよ?」
「ああ。ちょっとだけだ」
笑ってポンポンと頭を優しく叩くと校長を見る。
校長は立ち上がってこちらを真剣な目で見ていた。なんとなく言いたい事はわかっていた。
「私も連れていってくれないかしら」
「……本気ですか?」
「もちろんよ。そこでご相談なのだけれど、薙刀はあります?」
とってもお茶目な表情で校長は首を傾げて見せた。
それを見て顔をしかめる高耶の肩に源龍が手を置いた。
「高耶君。何かを決意した女性というのは、強いものだよ。それに、彼女はかなりの使い手のようだ」
「はぁ……強いことは知っているのですが……仕方ないですね。残っているという生徒を頼むとします」
「任せてちょうだいっ」
高耶は前に手をかざす。すると、高耶の足下から光を纏った棒が生えてくる。それは、棒ではなく薙刀だった。藍色と銀の細工が美しい薙刀だ。
「……きれい……っ」
「すてき……」
「すごいわ……」
校長だけでなく、母親達も見惚れていた。
「『十六夜』です」
「こんな立派なもの、お借りして良いの?」
「たまに使わないと怒るんで、寧ろ使ってください」
神刀レベルのもので、高耶が保管しているのだ。この関係の物は扱いが難しい。人と同じで、機嫌が悪くなるのだ。それを調整するのも預かっている高耶の仕事だった。
「っ、ありがとう。それでは時島先生。ここはお任せします」
「わかりました。蔦枝……気をつけてな」
「はい」
頭を下げて高耶と源龍、校長を入れた三人で上階へ向かった。
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読んでくださりありがとうございます◎
今週、もう一話上げます。
よろしくお願いします◎
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高耶が来たことで、張り詰めていた空気が緩んだようだ。
「高耶くんっ」
「お兄さんっ」
カナちゃんとミユちゃんの母親達が思わずというように声を上げた。
「えっ、高耶くん。外に骸骨いたでしょう?」
「大丈夫ですよ。今はもうこの部屋の前には居ません」
「そうなの? なら帰れる……?」
これに高耶は申し訳ないと眉を寄せる。
「少なくとも、この状況を作った者を捕まえない限りは、外には出られません。この部屋はこの二人のお陰で大丈夫ですが、部屋の外は有害な空気があります。危険なので、処理が終わるまで待っていてください」
「そ、そう……」
さすがに骸骨の落ち武者を実際に見てしまっては、これらを受け入れざるを得ないだろう。それぞれ娘を抱き寄せて椅子に深く座り直していた。
「なあ、高耶。隣、先生達は大丈夫なのか? 倒れてるみたいだし、その有害な空気? のせいじゃねえの?」
俊哉は取り乱すことなく、落ち着いた様子で尋ねてきた。こういう態度は助かる。俊哉のような者がパニックを起こせば、この場は大変なことになっていただろう。
お陰で子ども達がこの状況でも大人しくしていてくれている。
「職員室の方は対処した。多少は影響があるかもしれないが、問題ない。今は眠っているだけだ」
「そっか。なら安心だなっ。隣で人死にが出てたらどうしようかと思った」
「縁起でもない……」
そんな俊哉の隣で、時島がほっと胸を撫で下ろしていた。
どんな状況かを納得してもらえた所で、清晶が近付いてきた。
《主様。上に鬼渡がいる》
「……そうか。珀豪はそっちか?」
《うん。生徒もいるらしいから》
中に入ったことで、高耶はかつて対峙した鬼渡がいるというのには気付いていた。
この地に鬼が封じられている感じはないので、そこは安心しているが、何が目的なのかと考える。
「……わかった。清晶と統二はこのままここを頼めるか?」
《……ぬ、主様と一緒がいいけど……そうしろって言うなら……》
「頼むよ」
《ん……》
ちょっと納得できないという顔をしながらも頷く清晶の頭を撫でる。
それから統二を見た。
「清晶の力を少し解放する。それで結界が強化されるはずだ。そんなに時間はかけるつもりはない。もう少しだけここで頑張ってくれ」
「はいっ」
素直な子だ。目は潤んだままだが、大丈夫だろう。
「優希、カナちゃん達とここでもう少しだけ待っててくれるか?」
「うんっ。でも、もうちょっとだけだよ?」
「ああ。ちょっとだけだ」
笑ってポンポンと頭を優しく叩くと校長を見る。
校長は立ち上がってこちらを真剣な目で見ていた。なんとなく言いたい事はわかっていた。
「私も連れていってくれないかしら」
「……本気ですか?」
「もちろんよ。そこでご相談なのだけれど、薙刀はあります?」
とってもお茶目な表情で校長は首を傾げて見せた。
それを見て顔をしかめる高耶の肩に源龍が手を置いた。
「高耶君。何かを決意した女性というのは、強いものだよ。それに、彼女はかなりの使い手のようだ」
「はぁ……強いことは知っているのですが……仕方ないですね。残っているという生徒を頼むとします」
「任せてちょうだいっ」
高耶は前に手をかざす。すると、高耶の足下から光を纏った棒が生えてくる。それは、棒ではなく薙刀だった。藍色と銀の細工が美しい薙刀だ。
「……きれい……っ」
「すてき……」
「すごいわ……」
校長だけでなく、母親達も見惚れていた。
「『十六夜』です」
「こんな立派なもの、お借りして良いの?」
「たまに使わないと怒るんで、寧ろ使ってください」
神刀レベルのもので、高耶が保管しているのだ。この関係の物は扱いが難しい。人と同じで、機嫌が悪くなるのだ。それを調整するのも預かっている高耶の仕事だった。
「っ、ありがとう。それでは時島先生。ここはお任せします」
「わかりました。蔦枝……気をつけてな」
「はい」
頭を下げて高耶と源龍、校長を入れた三人で上階へ向かった。
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今週、もう一話上げます。
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