111 / 463
第三章 秘伝の弟子
111 理解ある依頼人は助かります
しおりを挟む
高耶は完全に異界化も解け、場の調律も有効になっていることを確認しながら校内を見回っていた。
先ほど合流した綺翔は先に校長室へ行ってもらったので、傍にいるのは常盤だけだ。
常盤は騎士のように高耶の後ろを付き従う。
「珀豪達が出て行ったな……統二と俊哉もか。俊哉には明日また質問攻めにされそうだ」
カナちゃん達の母親への説明も珀豪ならばちゃんとしてくれるだろう。アフターケアもできる優秀過ぎる式神だ。
そして、統二と同じ制服を着ていた少年を送るのにわざわざ俊哉も一緒に行ったということは、そういうことかと納得する。
俊哉はあれで案外、人を見る目もあるし、気遣い屋だ。統二が少しあの少年に身構えていたことを考えると、いい関係ではないのだろうとわかった。その間を取り持ってくれる気なのだ。
「あの二葉という少年とよく似ている子がいたな。あの感じだと兄弟というか……親戚ってとこか」
高耶はただ似ているからそうだと言っているわけではない。これは陰陽術の一つ。血を見分ける力による見解だ。
それが兄弟の関係や親子関係ならば、DNA検査よりも早く確実だ。骨相でも判別できたりする。血が近いかどうかも一目瞭然だった。
《はい。二人いた年少の少年の内の一人の生家が仙葉家。二葉という少年の本家に当たるようです》
「そういう関係か……もしかして、統二のこと気に入らない感じなのはそれが関係してるか?」
《そのようです。仙葉家にはあの二葉の少年より一つ年上の男子がいるのですが、本家だという矜持が高いようです》
仙葉家は代々酒屋をしているらしい。大きな酒蔵もある酒造で、本家だ分家だと色々小さい頃から言われたようだ。
統二が秘伝という本家の人間だとどこかで知り、一方的に毛嫌いしていたのだろう。
《鬼渡にそこに付け込まれたようです。降霊術が危ないと教えられた上であの年少の少年に教えたのだとか。今日はその成果の確認だったようです》
学校で流行らせる危険性も理解した上で鬼渡は彼に広めるように言ったのだ。
《上手くいけば仙葉家の少年は呪われ、本家自体にも厄災が及ぶと言われたと》
「なるほど……その本家、ここの土地神の守護範内か」
《はい。あの少年の憎悪が酷く、仙葉家にも数体、落ち武者の霊が出ておりました。ご指示なく処理しましたが、よろしかったでしょうか》
常盤は光の式神。光の精霊だ。異界の中に閉じ込められていても、ほんの一瞬光さえ通れば出入りできる。そうして、常盤は土地神の守護範囲内の土地を見回ってくれていたのだ。
因みに、二葉という少年の情報は黒艶から送られていた。情報を引き出すのは黒艶。それを精査し報告するのが常盤だ。これは光と闇、両方を扱える高耶でしか実現しない関係だった。
「ああ。ありがとう。そちらまで手は回らなかったからな。助かった。他に被害は?」
《ありません。後は落ち武者達を連れてきた場所の特定をいたしました》
「北の河川敷か」
《はい。確認して参りましたが、全て丸ごと転移させたようです。水神が戸惑っておりました》
「後日、伺うと伝えてくれ」
《承知しました》
他の所にまで、もれなく迷惑をかけているとはやってくれる。ちょっと苛ついていた。
校舎内をくまなく見て回った高耶は、校長室へ戻ってきた。職員室では、しきりに首を傾げながら仕事をする湯木の姿があった。他の教師達も少し呆っとしながらも机に向かっていた。
そちらに目を向けないように気をつけながら、高耶は校長室へ真っ直ぐに進む。一瞬、こちらに湯木の目が向いたようだが、気にせず向かった。
きっちりとした白系のシャツでまとめた常盤を伴って迷わず進む高耶は、若い社長が訪問してきたようにも見えるだろう。高耶も今回は一応仕事仕様なのだから。
ドアをノックする前に源龍がドアを開けてくれた。
「高耶くんお疲れ様」
労われながら中に入ると、校長が駆け寄ってきた。高耶の手を取ってお礼を言う。
「本当にありがとうっ。ご当主がいなかったらと思うと怖くなってしまうわ」
「いえ。こちらこそ手伝っていただきました。大きな被害もなくほっとしております」
教師達も後遺症もないようだし、ついでに湯木に憑いていたものも祓えた。被害はない。だが、もう少し遅かったらはっきり言って危なかったと思うのだ。
「あと数日、何度か様子を見させていただかないといけませんので、お邪魔することの許可をもらってもよろしいですか?」
「もちろんよ! お願いします!」
校長が事情も全部理解してくれる人で助かった。
「ありがとうございます。では、今日はこの辺で失礼します。また明日伺いますので」
「待ってるわっ」
寧ろ大歓迎してくれているようだ。
残っていた清晶、黒艶、綺翔は時島となにやら話しているのを少しばかり気にしながら頭を下げた。
一歩校長から距離を取ると時島と目が合った。
「蔦枝……また来るんだよな?」
「はい。また明日伺います」
「そうか。いや、仕事が終わったらゆっくり話をしよう。お茶をしながらな。煩いが和泉も一緒に」
「はい」
今後の約束をして高耶達は源龍と共に学校を後にするのだった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
今週はもう一話投稿できたらします!
2019. 5. 15
先ほど合流した綺翔は先に校長室へ行ってもらったので、傍にいるのは常盤だけだ。
常盤は騎士のように高耶の後ろを付き従う。
「珀豪達が出て行ったな……統二と俊哉もか。俊哉には明日また質問攻めにされそうだ」
カナちゃん達の母親への説明も珀豪ならばちゃんとしてくれるだろう。アフターケアもできる優秀過ぎる式神だ。
そして、統二と同じ制服を着ていた少年を送るのにわざわざ俊哉も一緒に行ったということは、そういうことかと納得する。
俊哉はあれで案外、人を見る目もあるし、気遣い屋だ。統二が少しあの少年に身構えていたことを考えると、いい関係ではないのだろうとわかった。その間を取り持ってくれる気なのだ。
「あの二葉という少年とよく似ている子がいたな。あの感じだと兄弟というか……親戚ってとこか」
高耶はただ似ているからそうだと言っているわけではない。これは陰陽術の一つ。血を見分ける力による見解だ。
それが兄弟の関係や親子関係ならば、DNA検査よりも早く確実だ。骨相でも判別できたりする。血が近いかどうかも一目瞭然だった。
《はい。二人いた年少の少年の内の一人の生家が仙葉家。二葉という少年の本家に当たるようです》
「そういう関係か……もしかして、統二のこと気に入らない感じなのはそれが関係してるか?」
《そのようです。仙葉家にはあの二葉の少年より一つ年上の男子がいるのですが、本家だという矜持が高いようです》
仙葉家は代々酒屋をしているらしい。大きな酒蔵もある酒造で、本家だ分家だと色々小さい頃から言われたようだ。
統二が秘伝という本家の人間だとどこかで知り、一方的に毛嫌いしていたのだろう。
《鬼渡にそこに付け込まれたようです。降霊術が危ないと教えられた上であの年少の少年に教えたのだとか。今日はその成果の確認だったようです》
学校で流行らせる危険性も理解した上で鬼渡は彼に広めるように言ったのだ。
《上手くいけば仙葉家の少年は呪われ、本家自体にも厄災が及ぶと言われたと》
「なるほど……その本家、ここの土地神の守護範内か」
《はい。あの少年の憎悪が酷く、仙葉家にも数体、落ち武者の霊が出ておりました。ご指示なく処理しましたが、よろしかったでしょうか》
常盤は光の式神。光の精霊だ。異界の中に閉じ込められていても、ほんの一瞬光さえ通れば出入りできる。そうして、常盤は土地神の守護範囲内の土地を見回ってくれていたのだ。
因みに、二葉という少年の情報は黒艶から送られていた。情報を引き出すのは黒艶。それを精査し報告するのが常盤だ。これは光と闇、両方を扱える高耶でしか実現しない関係だった。
「ああ。ありがとう。そちらまで手は回らなかったからな。助かった。他に被害は?」
《ありません。後は落ち武者達を連れてきた場所の特定をいたしました》
「北の河川敷か」
《はい。確認して参りましたが、全て丸ごと転移させたようです。水神が戸惑っておりました》
「後日、伺うと伝えてくれ」
《承知しました》
他の所にまで、もれなく迷惑をかけているとはやってくれる。ちょっと苛ついていた。
校舎内をくまなく見て回った高耶は、校長室へ戻ってきた。職員室では、しきりに首を傾げながら仕事をする湯木の姿があった。他の教師達も少し呆っとしながらも机に向かっていた。
そちらに目を向けないように気をつけながら、高耶は校長室へ真っ直ぐに進む。一瞬、こちらに湯木の目が向いたようだが、気にせず向かった。
きっちりとした白系のシャツでまとめた常盤を伴って迷わず進む高耶は、若い社長が訪問してきたようにも見えるだろう。高耶も今回は一応仕事仕様なのだから。
ドアをノックする前に源龍がドアを開けてくれた。
「高耶くんお疲れ様」
労われながら中に入ると、校長が駆け寄ってきた。高耶の手を取ってお礼を言う。
「本当にありがとうっ。ご当主がいなかったらと思うと怖くなってしまうわ」
「いえ。こちらこそ手伝っていただきました。大きな被害もなくほっとしております」
教師達も後遺症もないようだし、ついでに湯木に憑いていたものも祓えた。被害はない。だが、もう少し遅かったらはっきり言って危なかったと思うのだ。
「あと数日、何度か様子を見させていただかないといけませんので、お邪魔することの許可をもらってもよろしいですか?」
「もちろんよ! お願いします!」
校長が事情も全部理解してくれる人で助かった。
「ありがとうございます。では、今日はこの辺で失礼します。また明日伺いますので」
「待ってるわっ」
寧ろ大歓迎してくれているようだ。
残っていた清晶、黒艶、綺翔は時島となにやら話しているのを少しばかり気にしながら頭を下げた。
一歩校長から距離を取ると時島と目が合った。
「蔦枝……また来るんだよな?」
「はい。また明日伺います」
「そうか。いや、仕事が終わったらゆっくり話をしよう。お茶をしながらな。煩いが和泉も一緒に」
「はい」
今後の約束をして高耶達は源龍と共に学校を後にするのだった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
今週はもう一話投稿できたらします!
2019. 5. 15
234
あなたにおすすめの小説
レベル1のフリはやめた。貸した力を全回収
ソラ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ち、ソラ。
彼はレベル1の無能として蔑まれ、魔王討伐を目前に「お前のようなゴミはいらない」と追放を言い渡される。
だが、傲慢な勇者たちは知らなかった。
自分たちが人間最高峰の力を維持できていたのは、すべてソラの規格外のステータスを『借りていた』からだということを。
「……わかった。貸していた力、すべて返してもらうよ」
契約解除。返還されたレベルは9999。
一瞬にして力を失い、ただの凡人へと転落しパニックに陥る勇者たち。
対するソラは、星を砕くほどの万能感を取り戻しながらも、淡々と宿を去る。
静かな隠居を望むソラだったが、路地裏で「才能なし」と虐げられていた少女ミィナを助けたことで、運命が変わり始める。
「借金の利息として、君を最強にしてあげよう」
これは、世界そのものにステータスを貸し付けていた最強の『貸与者』が、不条理な世界を再定義していく物語。
(本作品はAIを活用して構成・執筆しています)
【完結】期間限定聖女ですから、婚約なんて致しません
との
恋愛
第17回恋愛大賞、12位ありがとうございました。そして、奨励賞まで⋯⋯応援してくださった方々皆様に心からの感謝を🤗
「貴様とは婚約破棄だ!」⋯⋯な〜んて、聞き飽きたぁぁ!
あちこちでよく見かける『使い古された感のある婚約破棄』騒動が、目の前ではじまったけど、勘違いも甚だしい王子に笑いが止まらない。
断罪劇? いや、珍喜劇だね。
魔力持ちが産まれなくて危機感を募らせた王国から、多くの魔法士が産まれ続ける聖王国にお願いレターが届いて⋯⋯。
留学生として王国にやって来た『婚約者候補』チームのリーダーをしているのは、私ロクサーナ・バーラム。
私はただの引率者で、本当の任務は別だからね。婚約者でも候補でもないのに、珍喜劇の中心人物になってるのは何で?
治癒魔法の使える女性を婚約者にしたい? 隣にいるレベッカはささくれを治せればラッキーな治癒魔法しか使えないけど良いのかな?
聖女に聖女見習い、魔法士に魔法士見習い。私達は国内だけでなく、魔法で外貨も稼いでいる⋯⋯国でも稼ぎ頭の集団です。
我が国で言う聖女って職種だからね、清廉潔白、献身⋯⋯いやいや、ないわ〜。だって魔物の討伐とか行くし? 殺るし?
面倒事はお断りして、さっさと帰るぞぉぉ。
訳あって、『期間限定銭ゲバ聖女⋯⋯ちょくちょく戦闘狂』やってます。いつもそばにいる子達をモフモフ出来るまで頑張りま〜す。
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
完結まで予約投稿済み
R15は念の為・・
異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!
メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
わたしにしか懐かない龍神の子供(?)を拾いました~可愛いんで育てたいと思います
あきた
ファンタジー
明治大正風味のファンタジー恋愛もの。
化物みたいな能力を持ったせいでいじめられていたキイロは、強引に知らない家へ嫁入りすることに。
所が嫁入り先は火事だし、なんか子供を拾ってしまうしで、友人宅へ一旦避難。
親もいなさそうだし子供は私が育てようかな、どうせすぐに離縁されるだろうし。
そう呑気に考えていたキイロ、ところが嫁ぎ先の夫はキイロが行方不明で発狂寸前。
実は夫になる『薄氷の君』と呼ばれる銀髪の軍人、やんごとなき御家柄のしかも軍でも出世頭。
おまけに超美形。その彼はキイロに夢中。どうやら過去になにかあったようなのだが。
そしてその彼は、怒ったらとんでもない存在になってしまって。
※タイトルはそのうち変更するかもしれません※
※お気に入り登録お願いします!※
【完結】男爵令嬢は冒険者生活を満喫する
影清
ファンタジー
英雄の両親を持つ男爵令嬢のサラは、十歳の頃から冒険者として活動している。優秀な両親、優秀な兄に恥じない娘であろうと努力するサラの前に、たくさんのメイドや護衛に囲まれた侯爵令嬢が現れた。「卒業イベントまでに、立派な冒険者になっておきたいの」。一人でも生きていけるようにだとか、追放なんてごめんだわなど、意味の分からぬことを言う令嬢と関わりたくないサラだが、同じ学園に入学することになって――。
※残酷な描写は予告なく出てきます。
※小説家になろう、アルファポリス、カクヨムに掲載中です。
※106話完結。
異世界に落ちたら若返りました。
アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。
夫との2人暮らし。
何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。
そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー
気がついたら知らない場所!?
しかもなんかやたらと若返ってない!?
なんで!?
そんなおばあちゃんのお話です。
更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。
オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~
鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。
そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。
そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。
「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」
オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く!
ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。
いざ……はじまり、はじまり……。
※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる