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第四章 秘伝と導く音色
151 新しい仲間
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優希達小学生の夏休みが始まった。
「「おはようございます!」」
「「お邪魔します」」
初日の朝十時頃。可奈、美由、美奈深、由香理の親娘四人が小さな旅行鞄をそれぞれ持ってやってきた。
「おはよー。カナちゃん、ミユちゃんいこ!」
「「うん!」」
もう通い慣れたもので、子ども達はすぐにそのまま向こうに行くドアをくぐって行った。場所は把握できるので、最初の頃ほど珀豪も付き添ったりしない。三人だけの行動も尊重してやるべきだと考えてもいるようだ。すっかり父親だというのが、高耶たちの最近の認識だ。
美奈深と由香理はのんびりと娘達の後を追うようにドアをくぐった。高耶も一緒にだ。あちらに用事がある。
あれから智紀や浩司とは中々会えずにいるが、美奈深や由香理からは話を聞いている。どうやら、あの日の高耶について自慢げに語っていたようだ。そんな話を歩きながらしてくれた。
「めちゃくちゃ自慢するんだもの。ちょっとイラッとしちゃったわ」
「けど、未だに常盤さんしか見てないっていうのがね~。え~、知らないの~? って言ってやったら面白かったわ~」
「あっ、確かに! 悔しそうだったわっ」
「美由にもあの人、悔しそうだったのよ? 高耶君にピアノ教えてもらってるって聞いてさ~」
「わかるぅ。可奈がいいでしょ~って言うのを聞いて詰まってたわ」
分かったのは、自慢する旦那達に自慢返しておいたということだ。それもこの前はたまたま合っただけで、シフトの関係上、土日が出勤日になっているため、来たくてもこちらに来られないらしい。
とはいえ、今日から夏休み。可奈と美由はほとんどこちらに泊まる予定らしく、美奈深と由香理もパート仕事の休みの時はこちらに入り浸る気満々だ。仕事もここから通いそうだった。もう泊まるのにも遠慮していない。もちろん、高耶も一緒にと毎回言われるが。
「近所の人に変に思われるかなって思ってたんだけど、今までも何にもないのよね」
毎日とは言わないが、一日、二日毎に高耶の家に来る美奈深や由香理達親娘。どんな付き合いかと勘ぐられるだろうと思っていた。だが、そういう噂は今のところ出てこない。
「この辺は共働きの人が多いですし、昔より近所づき合いも少なくなってますからね。他人に関心がないんでしょう」
「なるほどね~。それはあるかも。あまり昼間も人にも会わないものね。小さいお子さんがいる人とか少ないのかしら」
「そうですね。隣も確か、成人してました」
「そっかあ。でも、なら安心よねっ」
これで入り浸れると二人は素直に喜んでいた。
瑶迦に挨拶をしてから、美奈深達とホテルの前で別れた高耶は、一人海へ出て小島へ渡った。この海、未だに優希さえ来たことはない。カートでも一時間ほどかかるのだ。何より、この辺りはまだ整備しておらず、海の家を建設中だった。
そんな所に、高耶はドラゴンの姿になった黒艶に乗せてもらって辿り着く。
《少しこの辺りを飛んでくる。帰る時に呼んでくれ》
「わかった」
この世界でならば、黒艶はドラゴンの姿で飛び回ることができる。文字通り羽を伸ばすにはいい世界だ。
高耶が降り立った小島は特別な場所だ。ここには樹精達の本体が集められている。小島と言っても、ぐるりと島を一周するのに二、三時間はかかるだろう。樹精達の楽園なのだ。
ここへ来た目的は、雛柏教授から任された仙桃の木だ。そこここから、樹精達の視線を感じる。奥へ進むと滝があり、その側にそれはポツンと植わっていた。
普通の木ではないため、他の樹精達が畏れ多いと距離を取っているらしい。少し寂しそうにしか見えない。
高耶はゆっくりと静かな足取りでその木の前まで歩み寄った。そして、小さなその木に合わせるようにその場で片膝をついた。すると、根元からゆらりと光が立ち昇りはじめる。
「っ……」
高耶は樹精の式を持つのは初めてだ。なので、内心この状況に戸惑った。だが、悪い気はしないのだ。ならば大丈夫だと落ち着く。
虹色の光に包まれた木。その光がキュッと中心に集まり、虹色に光る真珠のような玉ができた。それに思わずというように高耶が手を差し伸べる。
不思議な暖かさを感じていれば、それがヒラリと花の蕾が開くように中身をあらわにしていく。
光が溢れた。目を反射的に閉じ、光が弱まるのを待ってゆっくりと開けた。
手のひらには何もなく、その先、木の前に優希よりも小さな子どもが立っていた。差し出したままになっていた手に小さな手を乗せて微笑んだ幼子に戸惑いながら、見つめてくるその目が何を求めているのかを察する。
「カセン……君の名は【果泉】だ。枯れることなく湧き出る泉のように、誰もを癒す実りを育む者であれ」
《……かせん……うん。あたし、果泉!》
「わっ」
瞳が輝くと、果泉はそのまま抱き着いてきた。それを受け止め、高耶はクスリと笑った。
「よろしくな。果泉」
《うん!》
そんな高耶と果泉を、樹精達が優しく見守っていた。
************
読んでくださりありがとうございます◎
今年もよろしくお願いします!
「「おはようございます!」」
「「お邪魔します」」
初日の朝十時頃。可奈、美由、美奈深、由香理の親娘四人が小さな旅行鞄をそれぞれ持ってやってきた。
「おはよー。カナちゃん、ミユちゃんいこ!」
「「うん!」」
もう通い慣れたもので、子ども達はすぐにそのまま向こうに行くドアをくぐって行った。場所は把握できるので、最初の頃ほど珀豪も付き添ったりしない。三人だけの行動も尊重してやるべきだと考えてもいるようだ。すっかり父親だというのが、高耶たちの最近の認識だ。
美奈深と由香理はのんびりと娘達の後を追うようにドアをくぐった。高耶も一緒にだ。あちらに用事がある。
あれから智紀や浩司とは中々会えずにいるが、美奈深や由香理からは話を聞いている。どうやら、あの日の高耶について自慢げに語っていたようだ。そんな話を歩きながらしてくれた。
「めちゃくちゃ自慢するんだもの。ちょっとイラッとしちゃったわ」
「けど、未だに常盤さんしか見てないっていうのがね~。え~、知らないの~? って言ってやったら面白かったわ~」
「あっ、確かに! 悔しそうだったわっ」
「美由にもあの人、悔しそうだったのよ? 高耶君にピアノ教えてもらってるって聞いてさ~」
「わかるぅ。可奈がいいでしょ~って言うのを聞いて詰まってたわ」
分かったのは、自慢する旦那達に自慢返しておいたということだ。それもこの前はたまたま合っただけで、シフトの関係上、土日が出勤日になっているため、来たくてもこちらに来られないらしい。
とはいえ、今日から夏休み。可奈と美由はほとんどこちらに泊まる予定らしく、美奈深と由香理もパート仕事の休みの時はこちらに入り浸る気満々だ。仕事もここから通いそうだった。もう泊まるのにも遠慮していない。もちろん、高耶も一緒にと毎回言われるが。
「近所の人に変に思われるかなって思ってたんだけど、今までも何にもないのよね」
毎日とは言わないが、一日、二日毎に高耶の家に来る美奈深や由香理達親娘。どんな付き合いかと勘ぐられるだろうと思っていた。だが、そういう噂は今のところ出てこない。
「この辺は共働きの人が多いですし、昔より近所づき合いも少なくなってますからね。他人に関心がないんでしょう」
「なるほどね~。それはあるかも。あまり昼間も人にも会わないものね。小さいお子さんがいる人とか少ないのかしら」
「そうですね。隣も確か、成人してました」
「そっかあ。でも、なら安心よねっ」
これで入り浸れると二人は素直に喜んでいた。
瑶迦に挨拶をしてから、美奈深達とホテルの前で別れた高耶は、一人海へ出て小島へ渡った。この海、未だに優希さえ来たことはない。カートでも一時間ほどかかるのだ。何より、この辺りはまだ整備しておらず、海の家を建設中だった。
そんな所に、高耶はドラゴンの姿になった黒艶に乗せてもらって辿り着く。
《少しこの辺りを飛んでくる。帰る時に呼んでくれ》
「わかった」
この世界でならば、黒艶はドラゴンの姿で飛び回ることができる。文字通り羽を伸ばすにはいい世界だ。
高耶が降り立った小島は特別な場所だ。ここには樹精達の本体が集められている。小島と言っても、ぐるりと島を一周するのに二、三時間はかかるだろう。樹精達の楽園なのだ。
ここへ来た目的は、雛柏教授から任された仙桃の木だ。そこここから、樹精達の視線を感じる。奥へ進むと滝があり、その側にそれはポツンと植わっていた。
普通の木ではないため、他の樹精達が畏れ多いと距離を取っているらしい。少し寂しそうにしか見えない。
高耶はゆっくりと静かな足取りでその木の前まで歩み寄った。そして、小さなその木に合わせるようにその場で片膝をついた。すると、根元からゆらりと光が立ち昇りはじめる。
「っ……」
高耶は樹精の式を持つのは初めてだ。なので、内心この状況に戸惑った。だが、悪い気はしないのだ。ならば大丈夫だと落ち着く。
虹色の光に包まれた木。その光がキュッと中心に集まり、虹色に光る真珠のような玉ができた。それに思わずというように高耶が手を差し伸べる。
不思議な暖かさを感じていれば、それがヒラリと花の蕾が開くように中身をあらわにしていく。
光が溢れた。目を反射的に閉じ、光が弱まるのを待ってゆっくりと開けた。
手のひらには何もなく、その先、木の前に優希よりも小さな子どもが立っていた。差し出したままになっていた手に小さな手を乗せて微笑んだ幼子に戸惑いながら、見つめてくるその目が何を求めているのかを察する。
「カセン……君の名は【果泉】だ。枯れることなく湧き出る泉のように、誰もを癒す実りを育む者であれ」
《……かせん……うん。あたし、果泉!》
「わっ」
瞳が輝くと、果泉はそのまま抱き着いてきた。それを受け止め、高耶はクスリと笑った。
「よろしくな。果泉」
《うん!》
そんな高耶と果泉を、樹精達が優しく見守っていた。
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