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第四章 秘伝と導く音色
160 神よりも?
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社の前に高耶と源龍が辿り着くと、間を置かずして山神が姿を現した。
《久しいな》
「覚えていてくださったとは光栄です。お邪魔しております」
高耶が頭を下げると、山神はふふふと笑った。
《お主を忘れはせんよ》
「ありがとうございます」
神にとって、人とは人という括りで見るもの。個人の特定はしないことの方が多い。あっても血による繋がりによって区別するものだ。
個人として認識されることは、とても光栄なことだった。
《顔を出した……だけではないのであろう?》
「はい……」
クスクスと笑う山神。狛犬が傍にいたため、筒抜けだったようだ。以前よりも山神もかなり力が戻ったのだろう。
「私の式が以前、鬼の炎で傷つけてしまった木を癒せるかもしれないと」
《うむ……頼めるか》
「はい。では、少々失礼いたします」
《いや、我も行こう》
高耶は頷くと、そちらへ向けて歩きだす。その隣には山神だ。そして、その後ろ。間隔を空けて源龍が続く。
源龍は緊張しているらしい。やはり慣れないのだろう。だが、そんな源龍に山神が話しかけた。
《主も術者か》
「っ、はい」
《そう畏ることはない。信頼されているのはわかるのでな》
高耶にということだ。それがわかるから、側に寄ることも許すと言っているのだ。
《だが、少々お主の血に覚えがある。鬼を呼び覚ました者と繋がりがあるか》
「あれは、彼の双子の妹だとわかりました。ただし、生まれた日に生き別れになっており、存在すら知らなかったのです」
高耶の説明に、山神が考え込むようにして視線を上に向ける。
《ふむ……今思うと奇妙だ。血は確かに同じ……しかし、異質な気配であった……アレは人か?》
「……どういうことでしょう」
《人と定義できる存在の気配ではなかったのだ。人であれば、私はアレをあの場に近付けることはなかった》
長い間、鬼の封印を保たせ、監視してくれていた山神。人を近付けないようにしていたらしい。だが、鬼渡はその人の気配ではなかったことで、油断したのだ。
《一番近いのは、霊だろう。全く同じではないが、霊界の気配を感じた……》
「鬼渡……鬼の里が霊界にあるという話は聞いているのですが……」
《なるほどな。そこで変異したことはあり得ることだ。あそこは、人として存在し続けることはできぬ場所……行ってはらなんぞ》
調べるためにいくことはやめておけと忠告された。
《お主くらいの術者となれば、多少は耐えられるだろうが……うむ。万が一のために我の加護を与えておこう》
「っ……」
驚いていれば、山神がまたクスクスと笑った。
《そのように驚くものではあるまい。我にはお主に大きな恩がある。加護を与えるくらいなんてことはないだろう》
「過分なお心遣い……恐れ入ります」
《ふっ、お主は多くの神に既に加護をもらっておる。それだけの人物だと分かればこそ……我らはその恩に報いるため、力を貸そう》
「っ、ありがとうございます」
気に入られているというのは分かっていた。だが、ここまで目をかけてくれるとは思わない。神はたった一人にこれほど恩を感じることは、本来あり得ないのだから。
その間に、そこに辿り着いた。
「ここです」
黒い焔によって焼かれた場所の地面は、土さえも炭化して黒く染められており、周りに辛うじて立っている木は半分以上炭化したように黒くなっていた。
「っ、これは酷い……」
源龍が思わず声を上げるほどだ。
「浄化は出来ているのですが……」
木は戻らない。そう思っていた。
「【果泉】」
《はぁい!》
現れた果泉は、トテトテと更地になっている部分の中心に立つと、ふわりとその身を浮き上がらせながら柔らかい光を放ちはじめた。
《イタいのイタいの、とんでいけ~♪》
「ん……?」
大変可愛らしいが、それはないだろうと高耶は目を瞬かせた。源龍もキョトンとしている。だが、山神は違った。驚愕したように目を見開いたのだ。
《……このようなことが……本当に……》
炭化していた木はその色を元の色へ戻していく。まるで時を戻すように急激に。それと同時に土の黒が軽い塵のように浮き上がり、キラキラと光ると消滅する。
「地面が……っ」
源龍が次に見たのは、ボコボコと波打つ地面。そこからニョキニョキと木が生えたのだ。
「えっ!?」
《っ、なんと……》
神さえも驚くその光景。数秒後にはそこは至って自然に、森ができていた。
《ふぅ……わぁいっ。みんな元気になったぁっ!》
「本当だな。よくやった」
《んっ》
抱きついてくる果泉を抱き上げる高耶。そんな様子を、山神と源龍は呆れたように見つめた。
《我らよりも力を持つ配下を持っておるのだ。我の加護などそれほど大したことではなさそうだ》
「……?」
《ふっ、分かって居らんな? まあ良い。知らぬ方が良いことはあるものだ》
なにやら呆れられたが、高耶にはわからなかった。
《感謝しよう。山を元に戻してくれた。礼に……情報をやろう。お主が後日向かう場所があろう。その側にある山……そこに霊穴が空いているようだ》
「っ……霊穴が?」
《うむ。気をつけよ。あの山は神が消滅して久しい……守りの力はまだ残っておるが、霊穴が空いては保たん。周辺の土地にも影響が出よう》
「っ……ありがとうございます。ご忠告、感謝いたします」
源龍と目を合わせ、頷き合う。
《また来ると良い。歓迎しよう》
「はいっ。失礼いたします」
こうして、山神と別れると、週末に向かうことになる場所について考え、気を引きしめるのだった。
************
読んでくださりありがとうございます。
《久しいな》
「覚えていてくださったとは光栄です。お邪魔しております」
高耶が頭を下げると、山神はふふふと笑った。
《お主を忘れはせんよ》
「ありがとうございます」
神にとって、人とは人という括りで見るもの。個人の特定はしないことの方が多い。あっても血による繋がりによって区別するものだ。
個人として認識されることは、とても光栄なことだった。
《顔を出した……だけではないのであろう?》
「はい……」
クスクスと笑う山神。狛犬が傍にいたため、筒抜けだったようだ。以前よりも山神もかなり力が戻ったのだろう。
「私の式が以前、鬼の炎で傷つけてしまった木を癒せるかもしれないと」
《うむ……頼めるか》
「はい。では、少々失礼いたします」
《いや、我も行こう》
高耶は頷くと、そちらへ向けて歩きだす。その隣には山神だ。そして、その後ろ。間隔を空けて源龍が続く。
源龍は緊張しているらしい。やはり慣れないのだろう。だが、そんな源龍に山神が話しかけた。
《主も術者か》
「っ、はい」
《そう畏ることはない。信頼されているのはわかるのでな》
高耶にということだ。それがわかるから、側に寄ることも許すと言っているのだ。
《だが、少々お主の血に覚えがある。鬼を呼び覚ました者と繋がりがあるか》
「あれは、彼の双子の妹だとわかりました。ただし、生まれた日に生き別れになっており、存在すら知らなかったのです」
高耶の説明に、山神が考え込むようにして視線を上に向ける。
《ふむ……今思うと奇妙だ。血は確かに同じ……しかし、異質な気配であった……アレは人か?》
「……どういうことでしょう」
《人と定義できる存在の気配ではなかったのだ。人であれば、私はアレをあの場に近付けることはなかった》
長い間、鬼の封印を保たせ、監視してくれていた山神。人を近付けないようにしていたらしい。だが、鬼渡はその人の気配ではなかったことで、油断したのだ。
《一番近いのは、霊だろう。全く同じではないが、霊界の気配を感じた……》
「鬼渡……鬼の里が霊界にあるという話は聞いているのですが……」
《なるほどな。そこで変異したことはあり得ることだ。あそこは、人として存在し続けることはできぬ場所……行ってはらなんぞ》
調べるためにいくことはやめておけと忠告された。
《お主くらいの術者となれば、多少は耐えられるだろうが……うむ。万が一のために我の加護を与えておこう》
「っ……」
驚いていれば、山神がまたクスクスと笑った。
《そのように驚くものではあるまい。我にはお主に大きな恩がある。加護を与えるくらいなんてことはないだろう》
「過分なお心遣い……恐れ入ります」
《ふっ、お主は多くの神に既に加護をもらっておる。それだけの人物だと分かればこそ……我らはその恩に報いるため、力を貸そう》
「っ、ありがとうございます」
気に入られているというのは分かっていた。だが、ここまで目をかけてくれるとは思わない。神はたった一人にこれほど恩を感じることは、本来あり得ないのだから。
その間に、そこに辿り着いた。
「ここです」
黒い焔によって焼かれた場所の地面は、土さえも炭化して黒く染められており、周りに辛うじて立っている木は半分以上炭化したように黒くなっていた。
「っ、これは酷い……」
源龍が思わず声を上げるほどだ。
「浄化は出来ているのですが……」
木は戻らない。そう思っていた。
「【果泉】」
《はぁい!》
現れた果泉は、トテトテと更地になっている部分の中心に立つと、ふわりとその身を浮き上がらせながら柔らかい光を放ちはじめた。
《イタいのイタいの、とんでいけ~♪》
「ん……?」
大変可愛らしいが、それはないだろうと高耶は目を瞬かせた。源龍もキョトンとしている。だが、山神は違った。驚愕したように目を見開いたのだ。
《……このようなことが……本当に……》
炭化していた木はその色を元の色へ戻していく。まるで時を戻すように急激に。それと同時に土の黒が軽い塵のように浮き上がり、キラキラと光ると消滅する。
「地面が……っ」
源龍が次に見たのは、ボコボコと波打つ地面。そこからニョキニョキと木が生えたのだ。
「えっ!?」
《っ、なんと……》
神さえも驚くその光景。数秒後にはそこは至って自然に、森ができていた。
《ふぅ……わぁいっ。みんな元気になったぁっ!》
「本当だな。よくやった」
《んっ》
抱きついてくる果泉を抱き上げる高耶。そんな様子を、山神と源龍は呆れたように見つめた。
《我らよりも力を持つ配下を持っておるのだ。我の加護などそれほど大したことではなさそうだ》
「……?」
《ふっ、分かって居らんな? まあ良い。知らぬ方が良いことはあるものだ》
なにやら呆れられたが、高耶にはわからなかった。
《感謝しよう。山を元に戻してくれた。礼に……情報をやろう。お主が後日向かう場所があろう。その側にある山……そこに霊穴が空いているようだ》
「っ……霊穴が?」
《うむ。気をつけよ。あの山は神が消滅して久しい……守りの力はまだ残っておるが、霊穴が空いては保たん。周辺の土地にも影響が出よう》
「っ……ありがとうございます。ご忠告、感謝いたします」
源龍と目を合わせ、頷き合う。
《また来ると良い。歓迎しよう》
「はいっ。失礼いたします」
こうして、山神と別れると、週末に向かうことになる場所について考え、気を引きしめるのだった。
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読んでくださりありがとうございます。
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