秘伝賜ります

紫南

文字の大きさ
170 / 463
第四章 秘伝と導く音色

170 情緒不安定な妹さん

しおりを挟む
優希は昨晩からずっと不機嫌だった。

《ユウキ……》

手の施しようがないと珀豪は昼ごろからもう諦めモードだ。いつもならば半日もしないで優希は自分の中で折り合いをつける。それが出来ないほどショックで、不安定になっていた。

理由は簡単。高耶が数日帰ってこないためだ。高耶が聞けば、きっとすぐにでも都合をつけて戻ってきただろう。

それは昨日のことだ。

昨晩遅く、綺翔が伝言を持って現れた。

《主から伝言……『数日帰れない。厄介事のため、珀豪達もいつでも喚び出されてもいいように頼む』……以上》

珍しく喋った綺翔。とっても満足気にふうと息を吐いて腕で額を拭っていた。そして、戻ると行って消えたのだ。

珀豪や天柳も呆然とした。高耶が厄介事と言うほどのこと。それは相当だ。

《鬼でも出たか……》
《それだけでは数日とは言わないわよ……》
《向こうに居るのは……黒か。なら、常盤に聞くか》
《そうね。聞いて来……優希ちゃん?》

そこで気付いた。ポロポロと涙を零す優希が後ろに居たことに。最近いつも抱いて寝ているウサギのぬいぐるみを抱きしめていた。

《ユウキ? 怖い夢でも見たか?》
「ふぅっ……お、お兄ちゃんっ……かえってこないの……っ」
《あ、ああ……難しい仕事のようだ》
《ほら、一緒にお部屋に行くわ。寝ましょう》
「っ、いやっ、イヤぁぁぁっ、お兄ちゃぁぁんっっ」
《ユウキっ》

大泣きした。びっくりして美咲と樹が起きてきて、しゃっくり上げながら泣き疲れて眠るまで大人四人(?)はオロオロした。

優希の部屋に連れて行ってベッドに寝かせると、部屋の入り口辺りで全員でへたり込んだ。

「はあ……優希がこんなに泣くなんて……」
「高耶ったら、こんなに好かれてるなんて知らなかったわ……」
《さすがに驚いたぞ……》
《どうしちゃったのかしら……》

咄嗟に珀豪が風の結界で外に聞こえないようにしたから良かったが、夜中に大泣きされるいうのは非常に心臓に悪かった。

そこに、清晶と果泉を背中にくっ付けた常盤がやって来た。彼らは瑶迦の所に居たのだ。

《何してんの? 優希が大変って聞いたんだけど》

清晶の言葉に、珀豪達は顔を上げてからため息をついた。瑶迦がこちらの異変を感じたようだ。

《めちゃくちゃ疲れてんじゃん……》
《まあな……あれほど泣くのは、はじめて見た》
《え? なに? 夜泣き?》
《主様が恋しいと泣いたのよ》
《……へえ……》

ちょっと想像できないと首を傾げる清晶。そこで、果泉が常盤から飛び降りると、そっと優希の様子をドアの所から覗き込んだ。

《ん~、イヤなヨカンがするとかかも》

優希を見つめながらそう果泉が呟く。

《どういうことだ?》

珀豪が尋ねれば、果泉は振り向いて説明した。手を後ろに組んでゆらゆら揺れる様はとっても可愛らしくて癒される。これは必要な癒しだ。

《なんかね~。おねえちゃん、ミコさまのソシツがあるんだって》
《……それは、予知ができるとか、そういうことか?》
《うん。ジュジュちゃんがいってた。そのうち『予知夢』とか見えるようになるよ~って。だから、お兄ちゃんがちかくにいないと、ふあんになったり、えっと……じょちょ……『情緒不安定』になったりするんだって》
《……ジュジュ?》
「……予知夢……」

楽しそうに、面白そうに喋る果泉にも大混乱だ。可愛いくて癒される中での重大発言に戸惑うしかない。

「えっと、とりあえず、ジュジュってのは誰かな?」
《ジュ……【寿園】っておなまえっ》
《っ、なるほど……寿園殿か……瑶姫の屋敷精霊だ》

瑶迦の屋敷にいる座敷童達の親玉だった。

《寿園が言ったなら間違いないでしょうね……はあ……そういえば、優希ちゃんに何か憑いてるって主様言ってたわね……》
「憑いてる!? それっ、大丈夫なの!?」
「樹さん。静かに」
「はい……」

衝撃の事実があり過ぎて樹も美咲も眠れそうにない。

《だいじょうぶだよ? まだでてこれるほどカイフクしてないし》
《……》
「……」

珀豪達は、果泉が何を知っていて、何を言いたいのかが分からない。果泉の前に常盤が膝をつく。目線を合わせた。

《果泉。説明できるか》
《できるよ~♪》

果泉は嬉しそうに常盤の膝の上に座って皆の方を向いた。兄と妹にしか見えない。果泉はプラプラと足を揺らして話し出した。

《あのね~。おねえちゃんが、あぶなかったときに、たすけたせいで、チカラがもどってないの~。なんびゃく? なんぜん? ねんぶりの『獣神』さまがきにいったの~。むか~しの、たすけてもらったおんがえしなんだよ♪》
《それは優希がか?》
《ううん。『血筋』だって》
《先祖が助けて、それを恩に思い、今代の優希が気に入られたということだな》
《そうなの!》

常盤が珍しく喋った。それも通訳的な役目をしたのに珀豪達は驚く。優希の血筋云々よりも重要だ。なので、問題の解決は諦めた。頭が回らない。

《これは……主に報告だな……》
《今回の件が終わってからにしましょう》
《厄介事?》
《そうだ。常盤。黒からの情報をくれ》
《承知した》

ようやく平常心を取り戻した珀豪達。だが、優希の様子は朝から低下する一方だった。

不安で眠れない優希の様子にお手上げとなった珀豪達が、夜中に高耶に報告しようと決めたのも仕方がないだろう。

************
読んでくださりありがとうございます◎
しおりを挟む
感想 675

あなたにおすすめの小説

母は何処? 父はだぁれ?

穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。 産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。 妹も、実妹なのか不明だ。 そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。 父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。 母は、どこへ行ってしまったんだろう! というところからスタートする、 さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。 変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、 家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。 意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。 前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。 もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。 単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。 また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。 「小説家になろう」で連載していたものです。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

【完結】男爵令嬢は冒険者生活を満喫する

影清
ファンタジー
英雄の両親を持つ男爵令嬢のサラは、十歳の頃から冒険者として活動している。優秀な両親、優秀な兄に恥じない娘であろうと努力するサラの前に、たくさんのメイドや護衛に囲まれた侯爵令嬢が現れた。「卒業イベントまでに、立派な冒険者になっておきたいの」。一人でも生きていけるようにだとか、追放なんてごめんだわなど、意味の分からぬことを言う令嬢と関わりたくないサラだが、同じ学園に入学することになって――。 ※残酷な描写は予告なく出てきます。 ※小説家になろう、アルファポリス、カクヨムに掲載中です。 ※106話完結。

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。 *この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。 **週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

救世の結界師マールちゃん~無能だと廃棄されましたが、敵国で傭兵のおっさん達に餌付けされてるので、今さら必要と言われても戻りません~

ぽんぽこ@3/28新作発売!!
ファンタジー
「ウチの子、可愛いうえに最強すぎるんだが――!?」 魔の森の隣、辺境伯家。 そこで八歳のメイド・マールは、食事も与えられず“要らない人間”として扱われていた。 ――そしてある日ついに、毒と魔獣の禁忌領域《魔の森》へ捨てられてしまう。 「ここ……どこ?」 現れた魔獣に襲われかけたその瞬間。 救いに現れたのは――敵国の”イケオジ”傭兵隊だった。 「ほら、食え」 「……いいの?」 焚き火のそばで差し出された“温かいお粥”は、マールに初めての「安心」と「ごはん」を教えてくれた。 行き場を失った幼女は、強面のおじさん傭兵たちに餌付けされ、守られ、少しずつ笑えるようになる―― そんなシナリオだったはずなのに。 旅の途中、マールは無意識に結界を張り、猛毒の果実を「安全な食べ物」に変えてしまう。 「これもおいしいよ、おじさん!食べて食べて!」 「ウチの子は天才か!?」 ただ食べたいだけ。 だけどその力は、国境も常識もくつがえす。 これは、捨てられた欠食幼女が、敵国でお腹いっぱい幸せになりながら、秘められた力で世界を巻き込んでいく物語。 ※若干の百合風味を含みます。

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

義務ですもの。

あんど もあ
ファンタジー
貴族令嬢の義務として親の決めた相手に嫁いだが、夫には愛する人がいた。夫にないがしろにされても、妻として母として嫁としての義務を果たして誠実に生きたヒロインの掴んだ、ちょっと歪んだ幸せとは。

処理中です...