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第五章 秘伝と天使と悪魔
199 次から次に
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蓮次郎はテーブルに両肘を突き、そこに顎を乗せる。
「さてと。では、まずお狐様について説明しようか。その間に、高耶くんは……」
「場所の特定をしておきます」
「ふふ。頼むよ」
「はい」
高耶は部屋の隅にある別のテーブルに向かう。
鞄に入れてきたタブレットを取り出し、地図を表示する。
蓮次郎達が気にならないように、そちらには背を向け、集中しながらその場所を特定していく。
これが実は地味に面倒くさい。
力を辿れても距離感は分かりにくいし、それを地図上で特定するのは困難を極める。
そこで役に立つのが鳥型の式だ。
「【常盤】」
《はい》
「場所の特定だ。頼む」
《承知しました》
常盤は丁寧に頭を下げると、姿を鳥に変える。光の属性を持つ常盤の本来の姿は、神獣の鳳。美しく輝く巨鳥だ。だが、ドラゴンである闇の黒艶と同じで、本来の姿にはまずならない。
淡く光小鳥となった常盤は、窓から飛び出していく。
それを見送り、意識を繋げる。
「東へ」
『《はい》』
常盤の目を借りながら、瀬良誠に繋がっている力を辿る。
地図で場所を確認しながら進み、二十分ほど経っただろうか。そこに辿り着いた。
「間違いないな」
『《……》』
「どうした?」
常盤が応えを返さないのは珍しい。
しばらく待っていると、常盤が答えた。
『《……おかしな気配があります》』
「おかしな気配……」
これも珍しい。明確ではない回答というのを、常盤はあまりしない。恐らく、何とかしてその気配が何なのか探ろうとしていたのだろう。それでも答えが出なかったということだ。
「鬼ではないんだな?」
『《はい。それと、近くに小さいですが、霊穴が開いているようです。怨霊が多くなっています》』
「霊穴が? 分かった。浄化は無しだ。戻って良い」
『《っ、そちらへ戻ります》』
そのまま送還が嫌らしい。
「なら、召喚し直す」
『《はい!》』
大変嬉しそうな返事だった。地図にチェックを入れてから、常盤を再び召喚した。
「【常盤】報告に付き合ってもらうぞ」
《承知しました》
蓮次郎の方の話は大方終わっていたようだ。立ち上がった高耶に気付いて声をかけてきた。
「もしかして、もう特定できたの?」
「はい。常盤は、地図をもらって来てくれ。霊穴の場所を記したものを」
《はい》
常盤は人化しており、素早く身を翻すと部屋を出て行く。
「霊穴が関係あったの?」
「近くにあるようでしたので、確認を」
「うわあ……やっぱりやめる?」
「……放っておいたらもっと面倒なことになりますよ……」
「それはありそう……やだな~」
高耶も、出来れば関わりたくないのだ。一度でも人と関わりを持ったお狐様の相手など、百害あって一利なしなのだから。
《お待たせいたしました》
常盤が地図を抱えて戻ってきた。大きな一枚の地図だ。それを、蓮次郎の前のテーブルに広げた。
「御神体があるのはここです」
高耶は山の中の一点を指差した。
「すっごい山奥なんだけど」
「……お狐様系はだいたい山奥でしょう……」
「そうだけどっ。周りに人家がないのは有り難いけどっ」
どうしても文句が言いたいらしい。これはもう放っておく。
「それで、常盤。霊穴の位置はどこだ?」
「あ、あれ? そういえば近くに霊穴があるって……もしかして、記録にない新しい所……?」
そのようだ。常盤に持って来てもらったのは、この夏最新版の『霊穴情報地図』なのだから。
《この辺りになります。怨霊の数から推測すると、半年は経っているかと》
「えぇ~、完全に漏れてるし……前の件でも、記録から漏れてたんだよね……他にも小さいのがあったみたいだし、これは、調査のやり直しの検討もしないとダメかな……」
ここひと月。いくつかの除霊依頼の折に、近くに霊穴を発見するということがあった。またかと思って流していたが、いよいよもって怪しくなってきた。
「やるなら、早めにやりましょう。冬になる前に、儀式まで終わらせなくてはいけませんし」
「そうだね……」
霊穴は山奥に多い。そうなると、冬は雪の問題があり、近くに扉も用意できないため、移動も問題が出るのだ。
「それで、こちらの話を進めますが、常盤がお狐様以外にも、おかしな気配があると」
「おかしな気配?」
「常盤。説明できるか?」
《はい》
瀬良達は常盤に見惚れている。だが、気にせず常盤は報告を始めた。
《霊穴が開いていることから、残念ながら特定は難しく、特殊な怨霊の気配かとも考えましたが、今思えば質が明らかに違いました》
常盤は答えに困っていた時とは違う確信を持っているようだった。その予想は外れていない。
《そちらの指輪……それから、そちらの少年が付けているピアスから感じるものと似ています》
いづきの着けている指輪と、誠の着けている黒いピアスを指定され、高耶は目を細める。
そして、感じたものから推測した。
「なるほど……天使か悪魔か」
《はい。それと、霊穴からも微かに感じました》
「霊穴から? まさか……」
《……霊穴で異変が起きているかもしれません》
「……」
問題が山積みされたのが分かった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
「さてと。では、まずお狐様について説明しようか。その間に、高耶くんは……」
「場所の特定をしておきます」
「ふふ。頼むよ」
「はい」
高耶は部屋の隅にある別のテーブルに向かう。
鞄に入れてきたタブレットを取り出し、地図を表示する。
蓮次郎達が気にならないように、そちらには背を向け、集中しながらその場所を特定していく。
これが実は地味に面倒くさい。
力を辿れても距離感は分かりにくいし、それを地図上で特定するのは困難を極める。
そこで役に立つのが鳥型の式だ。
「【常盤】」
《はい》
「場所の特定だ。頼む」
《承知しました》
常盤は丁寧に頭を下げると、姿を鳥に変える。光の属性を持つ常盤の本来の姿は、神獣の鳳。美しく輝く巨鳥だ。だが、ドラゴンである闇の黒艶と同じで、本来の姿にはまずならない。
淡く光小鳥となった常盤は、窓から飛び出していく。
それを見送り、意識を繋げる。
「東へ」
『《はい》』
常盤の目を借りながら、瀬良誠に繋がっている力を辿る。
地図で場所を確認しながら進み、二十分ほど経っただろうか。そこに辿り着いた。
「間違いないな」
『《……》』
「どうした?」
常盤が応えを返さないのは珍しい。
しばらく待っていると、常盤が答えた。
『《……おかしな気配があります》』
「おかしな気配……」
これも珍しい。明確ではない回答というのを、常盤はあまりしない。恐らく、何とかしてその気配が何なのか探ろうとしていたのだろう。それでも答えが出なかったということだ。
「鬼ではないんだな?」
『《はい。それと、近くに小さいですが、霊穴が開いているようです。怨霊が多くなっています》』
「霊穴が? 分かった。浄化は無しだ。戻って良い」
『《っ、そちらへ戻ります》』
そのまま送還が嫌らしい。
「なら、召喚し直す」
『《はい!》』
大変嬉しそうな返事だった。地図にチェックを入れてから、常盤を再び召喚した。
「【常盤】報告に付き合ってもらうぞ」
《承知しました》
蓮次郎の方の話は大方終わっていたようだ。立ち上がった高耶に気付いて声をかけてきた。
「もしかして、もう特定できたの?」
「はい。常盤は、地図をもらって来てくれ。霊穴の場所を記したものを」
《はい》
常盤は人化しており、素早く身を翻すと部屋を出て行く。
「霊穴が関係あったの?」
「近くにあるようでしたので、確認を」
「うわあ……やっぱりやめる?」
「……放っておいたらもっと面倒なことになりますよ……」
「それはありそう……やだな~」
高耶も、出来れば関わりたくないのだ。一度でも人と関わりを持ったお狐様の相手など、百害あって一利なしなのだから。
《お待たせいたしました》
常盤が地図を抱えて戻ってきた。大きな一枚の地図だ。それを、蓮次郎の前のテーブルに広げた。
「御神体があるのはここです」
高耶は山の中の一点を指差した。
「すっごい山奥なんだけど」
「……お狐様系はだいたい山奥でしょう……」
「そうだけどっ。周りに人家がないのは有り難いけどっ」
どうしても文句が言いたいらしい。これはもう放っておく。
「それで、常盤。霊穴の位置はどこだ?」
「あ、あれ? そういえば近くに霊穴があるって……もしかして、記録にない新しい所……?」
そのようだ。常盤に持って来てもらったのは、この夏最新版の『霊穴情報地図』なのだから。
《この辺りになります。怨霊の数から推測すると、半年は経っているかと》
「えぇ~、完全に漏れてるし……前の件でも、記録から漏れてたんだよね……他にも小さいのがあったみたいだし、これは、調査のやり直しの検討もしないとダメかな……」
ここひと月。いくつかの除霊依頼の折に、近くに霊穴を発見するということがあった。またかと思って流していたが、いよいよもって怪しくなってきた。
「やるなら、早めにやりましょう。冬になる前に、儀式まで終わらせなくてはいけませんし」
「そうだね……」
霊穴は山奥に多い。そうなると、冬は雪の問題があり、近くに扉も用意できないため、移動も問題が出るのだ。
「それで、こちらの話を進めますが、常盤がお狐様以外にも、おかしな気配があると」
「おかしな気配?」
「常盤。説明できるか?」
《はい》
瀬良達は常盤に見惚れている。だが、気にせず常盤は報告を始めた。
《霊穴が開いていることから、残念ながら特定は難しく、特殊な怨霊の気配かとも考えましたが、今思えば質が明らかに違いました》
常盤は答えに困っていた時とは違う確信を持っているようだった。その予想は外れていない。
《そちらの指輪……それから、そちらの少年が付けているピアスから感じるものと似ています》
いづきの着けている指輪と、誠の着けている黒いピアスを指定され、高耶は目を細める。
そして、感じたものから推測した。
「なるほど……天使か悪魔か」
《はい。それと、霊穴からも微かに感じました》
「霊穴から? まさか……」
《……霊穴で異変が起きているかもしれません》
「……」
問題が山積みされたのが分かった。
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