秘伝賜ります

紫南

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第五章 秘伝と天使と悪魔

240 無茶振りです

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急ぐことではあるが、きちんと場が整わなくては危ない。よってまずは作戦会議だ。といっても、ほとんどお任せになるのは既に決定していた。

それでも一応はと、結界のギリギリまで蓮次郎とレスターを呼ぶ。テーブルを半分結界から出し、同じテーブルについた。

結界の外に高耶、クティ、それと天使だ。結界の内側に蓮次郎とレスターがついた。二人はかなり緊張しているようだ。何より、上級悪魔と天使と同じテーブルにつくなんてことは、夢でも見たことがないことだ。

高耶がここは進行をすべきだろうと、口を開いた。

「あ~、その、では、私の方から確認させていただきます」

蓮次郎とレスターから送られて来る視線には、『全部任せるから!』というメッセージが込められているので問題ないだろう。

「まず、あの六つの鎧は、怨念を祓うことも、破壊することも不可能な状態にあります。恐らくそれぞれ、天使と悪魔の領域に紐付けされていると考えられます」

レスターと蓮次郎にも、これは理解できていないようだった。二人で顔を見合わせている。だが、声に出すことは躊躇ためらわれたようだ。だから、それを口にしたのは、二人の後ろに控えていた統二だった。

「領域……別の次元ということですか?」

統二は瑶迦と高耶による直接指導により、精神面がかなり鍛えられてきている。その成果が今出てきているのだ。

「そうだ。彼らが本来居る次元と俺たちが居る世界は違う。膜数枚隔てた向こう側にある。怨霊や霊が存在する次元の更に向こうだ。だから、俺たちは干渉することができない。そこに……アレの核がある」
「……僕たちでは手が出せない場所に……核ってことは……そっか……だから、仮に壊したとしても、大元はそのまま?」
「そういうことだ」

その核の力が強いため、実際に破壊することは不可能だろう。だが、仮に壊せたとしても、心臓部が別の所にあるのだ。恐らく、元通りになってしまうのではないかと思う。

「俺たちの力では手が届かない。そこで……」
《私たちの出番というわけだ》

クティがよくできましたと褒めるように目を細めて統二を見ていた。同じように目を細めて、天使も頷いて見せる。

《こちらとしても、怨念を持って繋がるものが側にあるというのは気持ちが悪いのです……》
《それも、私たちからしても、膜一枚隔てた向こう側にある。それが分かってはいても、はっきりと、どこにあるか分からない感じがねえ……それはもう、とても気持ちが悪い》

まるで、どこかに覗き穴があるかのように、それも、気持ちの悪い恨みのこもった視線が感じられるのだ。どうにかしたいと思うのは当然だろう。

《何より、恐らく繋がり、核となっているは、下級の、はぐれ者たちでしょうからね……》
《そう。どこの世界でもはぐれ者は出るものだ。上級の者になれば、それも認められる……というか……独りに慣れる。だから問題はないのだがな……》
「……はぐれ者……」

統二は、ゆっくりと高耶へ目を向けた。察したのだろうその答えを感じて頷いて見せる。

「ああ……玻璃もそうだ。今は、俺と誓約したことで、上級の存在になったが……元は中級の悪魔だった。だから、異質な存在として認識されていたんだ」

上級の悪魔なら、こうして天使とも対等に話し合うことが出来る。特に嫌悪することなく、存在を認め合える。しかし、中級以下はダメだ。存在のあり方が違うことに、嫌悪感を抱く。そんな中に玻璃が居たのだ。悪魔でありながら、存在は天使に近かった。それが他の悪魔達には受け入れられなかったのだ。

《悪魔も天使も、上級の存在は、初めから上級なのだよ》
「え……」
《ふふふ。あまりこれは知られていないようでしたわね。中級と上級の間には、大きな壁があるのですわ。もし、その壁を自力で越えようとするならば、生まれ直す必要があります》
「生まれ直す……?」

レスターも蓮次郎も、目を丸くしながら、これに聞き入った。

《存在を作り直すのですわ。上級の者として》
《これは容易ではない。だから、はぐれ者が出る。存在を作り直すことの出来ない、中級の出来損ないとレッテルを貼られる。そして、存在を認められないことに不満は募り、存在が不安定になって、いずれ崩壊する》
《この崩壊の手前の状態は、人の呼びかけに応えやすいのです。ですが、人がそんな存在を御せるものではありませんから、共に滅びます》
「それは……天使でも……」
《天使の方が恐ろしいかもしれませんわね》
《悪魔は共に眠ることを願うが、天使は……》
《共に崩壊することを望みますのよ》
「……」

崩壊手前の天使は自身の存在にすら嫌悪するようになるらしい。よって、いわゆる『承認欲求』が満たされたなら、その相手と共に滅びようとするのだ。

一方、悪魔は引きずっては行くが、そのまま存在を取り込んで、穏やかな眠りにつく。そのまま静かに消滅してくのだ。

どちらも巻き込まれて死ぬことには変わりないが、間違いなく天使の方が恐怖を感じるだろう。

「そんな少々危ない思考を持って、この次元に存在しているのが、アレだ。与えられた使命が、彼らの生きがいであり、存在理由なんだ」
「……人が関わるべきじゃない……ってこと?」
《正解だ》
《正解ですわ》
「……理解しました。ありがとうございます……」

これこそ、百害あって一利なしだ。

《だから、あれの処分はこちらでするよ》
《お任せいただけますわね?》
「「お願いします!!」」

蓮次郎とレスターが頭を下げると、後ろにいる統二だけでなく、聞いていた勇一や他の連盟の者たちも頭を下げた。それはもう、地面に額を擦り付ける勢いでされた。

《それじゃあ、結界を頼むよ》
《頼みますわね》

早くやろうと、少しソワソワした様子で、二人は再び高耶へ期待のこもる目を向けた。それぞれのお付きの者たちも一緒だ。

「……こちらに影響のないようにということですね……」
《それはもちろんだよ。我々が思いっきり動いても問題ないように》
「……」
《できましたら、あちら側の核になっている者を引っ張り出しやすくしていただきたいですわね?》
「……」

おねだりするように、少し首を傾げて見せる天使に、高耶以外はトキメいたらしい。撃ち抜かれたとも言う。高耶がなんともないのは、おねだりされた要件が酷かったからだ。

「……さすがに俺もそこまでやったら倒れますけど……」
《きちんと介抱しよう!》
《介抱しますわよ!》
「……」

そのまま攫われそうという感想は、恐らく現実になる。

「……遠慮します」

結界より先に護衛の確保に頭を悩ませることになった高耶だった。

**********
読んでくださりありがとうございます◎
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