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第六章 秘伝と知己の集い
254 宣言?
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俊哉と優希のやり取りを見て笑うお迎えの保護者達。お陰で、門の辺りでは穏やかな空気が流れる。
そこに、優希の友達であり、高耶がピアノを教えている宮島可奈と来海美由が駆け寄って来た。
「タカヤ先生、こんにちは」
「こんにちは~」
優希と毎日のように習い事を一緒にする二人は、高耶を先生と呼ぶようになっていた。優希も、普段は瑶迦を『ヨウカ姉』と呼ぶが、習い事の時は『ヨウカ先生』と呼び、高耶も先生と呼ぶ。
この歳からきちんと使い分けている優希は、ひいき目に見てもすごいと感心する。
そこに、可奈の母親である美奈深がやって来た。
「遅くなってごめ~ん。あら、高耶くんっ。今日もご指名?」
「ええ」
「ふふふっ。ん? 俊哉くん? 優希ちゃんに叱られてるの?」
未だに優希の前で膝を突いたままでいた俊哉を見て、美奈深が笑顔で冗談を言う。
「聞いてよ、美奈深ちゃんっ。優希ちゃんにまで、落ち着きないって言われた~」
「あははっ。大丈夫よ。うちの旦那もつい最近まで落ち着きなかったからっ」
「それ、安心していいところ!? はっ! 俺……っ、慰められてる!」
なぜか喜ぶ俊哉は放っておいて、高耶は美奈深に話しかける。優希に『ほら、シュンヤお兄ちゃん、そういうところ~』なんて言われているが気にしない。うんうんと可奈と美由が俊哉を囲んで頷いているが、無視だ。
「そういえば、また習い事が増えましたけど、良かったんですか?」
優希が以前、やりたいと言っていたダンスを、先週から瑠璃を教師にして始めたのだ。
「いいのよ。それに、習い事が全部高耶くんの所でしょ? あっちへこっちへと送っていって、迎えに行くなんてこともないし、こうやって仕事が無い時は、珀さん達とお夕飯を兼ねたお料理教室が出来るのよ? こんな楽で楽しくていいのかしらって思ってるくらいよ」
他のお母さん達に申し訳ないわと小さな声で囁いて笑った。
確かに、何時に送って行って、一時間もしない内にまた迎えに行くなんてこと、とても大変だ。
だが、可奈達は高耶の家から繋がる瑶迦の屋敷での習い事のため、学校帰りに直接向かうことも出来る。子ども達は一人になることもなく安全に習い事が終わった後も母親の迎えを待っていられる。
「由香理もダメな時でも、宿題もちゃんと終わらせて待っててくれるしね。この前なんて、可奈達でお夕飯のおかず作って待っててくれたのよっ。ほんと助かるっ」
可奈と美由も、面倒くさがらずに楽しそうに習い事に向かっているようだ。お互いが頑張っているのを支えにしているらしく、厳しく指導されても、挫けることなく続けていた。
「あっ、そうだ。学芸会でピアノやるって可奈が言ってたけど」
「優希と美由ちゃんと、もう一人で数曲をと聞いてます」
「そうなのね。嬉しいわ~。ほら、中学とか合唱コンクールとかあるじゃない? そこで伴奏するとか、憧れたな~」
「可奈ちゃんなら出来ますよ」
「ふふふ。今からドキドキよ。けど、その時は、同じクラスになったらライバルね。大変な戦いだわ」
優希や美由ちゃんが同じクラスになった場合は、オーディションがあるはずだ。なるべく多くの子にチャンスをと学校も思っているので、本番で演奏する子の他に、授業の時に弾く子も選ぶそうだが、やはり母親としては、見ることができる本番の伴奏を勝ち取って欲しいだろう。
「気が早いですよ」
「確かにっ。中学はまだ先ね。だから、今回の学芸会を楽しみにしてるわっ」
「そうですね」
そんな話をしていると、珀豪が現れる。今日もロックな感じだ。だが、他の迎えに来た保護者達に警戒心はない。面倒見が良いのは知られているらしく、見た目とのギャップに、すっかりやられているようだ。すれ違う保護者達と、好意的に挨拶が交わされる。
《優希、可奈、美由、今日は花とお茶だろう。着物を選ぶ時間がなくなってしまうぞ》
「そうだった! カナちゃん、ミユちゃん、いそぐよ」
「「うん!」」
急げと子ども達が珀豪の下に駆け寄る。あらあらと笑う美奈深へも、珀豪は声をかけた。
《美奈深さん、子どもらを預けたら買い物に付き合ってもらえるか?》
「っ、もちろんよ! 今日のご飯は何かしら」
《姫に和食が良いと言われていてな。夜は気温も下がってきたことだし、具沢山のつみれ汁はどうだろうか》
「聞いただけで美味しそう!」
美奈深が目をキラキラさせながら駆け寄って行く。珀豪は高耶へ目礼し、優希達を連れて歩き出す。
《芋は入れるから……葉物系のもので、卵とじを付けるとするか。主も好きなのだ》
「へえ。高耶くん卵とじ好きなのね」
《うむ。まあ、卵を使った料理全般が好きだな。お陰で優希も好きになった。一時期、卵とじを色んな葉物で試していたら、他の野菜もあまり嫌わなくなったようでな》
「ハクちゃんのごはん、なんでもおいしいよ? あと、ちゃわんむしたべたい」
何気にリクエストしてきた優希に、珀豪が少し考えてから頷く。
《む。いいだろう。小さいのになるが、作ろう》
「小さくてもいいよ! やったー! お兄ちゃ~ん! 今日はちゃわんむしだよー!」
それはメインではないだろうというのは、この後、学芸会のピアノの話をするため、学校に残っていた高耶にも察せられた。とりあえず、手を振って了解を伝え、見送った。
「いいなー。珀豪さんなら、手作りだろ? スーパーで売ってる茶碗蒸しじゃなくて、ちゃんと手作りする茶碗蒸しだろ? めちゃくちゃ美味しそう……っ、やべえ、よだれ出るわ」
俊哉がゴクリと唾を呑んで続ける。
「ほら見ろよ。あの辺の子どもら、茶碗蒸しねだってる。今日はスーパーから茶碗蒸しが消えるな」
「そんなわけあるか……」
否定してはいるが、先程の優希の茶碗蒸し宣言は、近隣住民にも聞こえたはず。かなりの確率で、今日か明日の夕飯に茶碗蒸しが出そうだ。
「なんかさ。アレは急に食べたくなるじゃん。帰りにコンビニでとかも無理じゃん? そうなると、もう食べたくて仕方なくなってくんのよ。どうしよう! 俺も我慢できそうにない!」
「今すぐスーパー行って来い……」
付き合ってられんと、投げやりな返事をしてやると、俊哉は時島へ声をかける。今回、高耶について来た用件はこれだ。
「時島先生。同窓会しよ! 小学校の。でさ、担任って、俺らの学校、あんま変わらんかったじゃん。だから、他のクラスのやつらも合同になりそう。それも泊まり! 十一月の半ばくらい。週末の金、土、日!」
来れそうなのは、金の夜から入って、土曜日の昼から夜にかけて同窓会。日の昼には解散。その間、それぞれの友人達で交友を持つという計画らしい。
「また……すごいことを考えたな……だが、どこでそんな大人数を集めるんだ?」
「夫馬武雄っての覚えてる? そいつのばあちゃんがやってる旅館を貸し切れるらしい。合宿みたいになるけど、修学旅行みたいで面白くね?」
「それは……確かに面白そうだな」
時島も興味を持ったらしい。懐かしいというのもあるだろう。そして、俊哉は高耶へ顔を向けた。
「これさ! 高耶との修学旅行も出来るだろっ」
「……あ……」
修学旅行。それに、高耶は参加していない。幼い頃から怨霊や妖を寄せてしまう体質だった高耶は、泊まりになる行事は全て不参加。いくらそれらを除けるお札を持っていたとしても、泊まりは危険と判断したのだ。
「なっ? 修学旅行しようぜ!」
「……」
キラキラと明るい気を発しながら、俊哉はそう宣言した。
因みに、この後しばらくして先に帰る俊哉だが、この学校の側のスーパーには、既に茶碗蒸しが無くなっていたと、夜に笑いながら報告をしてくるのだった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
そこに、優希の友達であり、高耶がピアノを教えている宮島可奈と来海美由が駆け寄って来た。
「タカヤ先生、こんにちは」
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優希と毎日のように習い事を一緒にする二人は、高耶を先生と呼ぶようになっていた。優希も、普段は瑶迦を『ヨウカ姉』と呼ぶが、習い事の時は『ヨウカ先生』と呼び、高耶も先生と呼ぶ。
この歳からきちんと使い分けている優希は、ひいき目に見てもすごいと感心する。
そこに、可奈の母親である美奈深がやって来た。
「遅くなってごめ~ん。あら、高耶くんっ。今日もご指名?」
「ええ」
「ふふふっ。ん? 俊哉くん? 優希ちゃんに叱られてるの?」
未だに優希の前で膝を突いたままでいた俊哉を見て、美奈深が笑顔で冗談を言う。
「聞いてよ、美奈深ちゃんっ。優希ちゃんにまで、落ち着きないって言われた~」
「あははっ。大丈夫よ。うちの旦那もつい最近まで落ち着きなかったからっ」
「それ、安心していいところ!? はっ! 俺……っ、慰められてる!」
なぜか喜ぶ俊哉は放っておいて、高耶は美奈深に話しかける。優希に『ほら、シュンヤお兄ちゃん、そういうところ~』なんて言われているが気にしない。うんうんと可奈と美由が俊哉を囲んで頷いているが、無視だ。
「そういえば、また習い事が増えましたけど、良かったんですか?」
優希が以前、やりたいと言っていたダンスを、先週から瑠璃を教師にして始めたのだ。
「いいのよ。それに、習い事が全部高耶くんの所でしょ? あっちへこっちへと送っていって、迎えに行くなんてこともないし、こうやって仕事が無い時は、珀さん達とお夕飯を兼ねたお料理教室が出来るのよ? こんな楽で楽しくていいのかしらって思ってるくらいよ」
他のお母さん達に申し訳ないわと小さな声で囁いて笑った。
確かに、何時に送って行って、一時間もしない内にまた迎えに行くなんてこと、とても大変だ。
だが、可奈達は高耶の家から繋がる瑶迦の屋敷での習い事のため、学校帰りに直接向かうことも出来る。子ども達は一人になることもなく安全に習い事が終わった後も母親の迎えを待っていられる。
「由香理もダメな時でも、宿題もちゃんと終わらせて待っててくれるしね。この前なんて、可奈達でお夕飯のおかず作って待っててくれたのよっ。ほんと助かるっ」
可奈と美由も、面倒くさがらずに楽しそうに習い事に向かっているようだ。お互いが頑張っているのを支えにしているらしく、厳しく指導されても、挫けることなく続けていた。
「あっ、そうだ。学芸会でピアノやるって可奈が言ってたけど」
「優希と美由ちゃんと、もう一人で数曲をと聞いてます」
「そうなのね。嬉しいわ~。ほら、中学とか合唱コンクールとかあるじゃない? そこで伴奏するとか、憧れたな~」
「可奈ちゃんなら出来ますよ」
「ふふふ。今からドキドキよ。けど、その時は、同じクラスになったらライバルね。大変な戦いだわ」
優希や美由ちゃんが同じクラスになった場合は、オーディションがあるはずだ。なるべく多くの子にチャンスをと学校も思っているので、本番で演奏する子の他に、授業の時に弾く子も選ぶそうだが、やはり母親としては、見ることができる本番の伴奏を勝ち取って欲しいだろう。
「気が早いですよ」
「確かにっ。中学はまだ先ね。だから、今回の学芸会を楽しみにしてるわっ」
「そうですね」
そんな話をしていると、珀豪が現れる。今日もロックな感じだ。だが、他の迎えに来た保護者達に警戒心はない。面倒見が良いのは知られているらしく、見た目とのギャップに、すっかりやられているようだ。すれ違う保護者達と、好意的に挨拶が交わされる。
《優希、可奈、美由、今日は花とお茶だろう。着物を選ぶ時間がなくなってしまうぞ》
「そうだった! カナちゃん、ミユちゃん、いそぐよ」
「「うん!」」
急げと子ども達が珀豪の下に駆け寄る。あらあらと笑う美奈深へも、珀豪は声をかけた。
《美奈深さん、子どもらを預けたら買い物に付き合ってもらえるか?》
「っ、もちろんよ! 今日のご飯は何かしら」
《姫に和食が良いと言われていてな。夜は気温も下がってきたことだし、具沢山のつみれ汁はどうだろうか》
「聞いただけで美味しそう!」
美奈深が目をキラキラさせながら駆け寄って行く。珀豪は高耶へ目礼し、優希達を連れて歩き出す。
《芋は入れるから……葉物系のもので、卵とじを付けるとするか。主も好きなのだ》
「へえ。高耶くん卵とじ好きなのね」
《うむ。まあ、卵を使った料理全般が好きだな。お陰で優希も好きになった。一時期、卵とじを色んな葉物で試していたら、他の野菜もあまり嫌わなくなったようでな》
「ハクちゃんのごはん、なんでもおいしいよ? あと、ちゃわんむしたべたい」
何気にリクエストしてきた優希に、珀豪が少し考えてから頷く。
《む。いいだろう。小さいのになるが、作ろう》
「小さくてもいいよ! やったー! お兄ちゃ~ん! 今日はちゃわんむしだよー!」
それはメインではないだろうというのは、この後、学芸会のピアノの話をするため、学校に残っていた高耶にも察せられた。とりあえず、手を振って了解を伝え、見送った。
「いいなー。珀豪さんなら、手作りだろ? スーパーで売ってる茶碗蒸しじゃなくて、ちゃんと手作りする茶碗蒸しだろ? めちゃくちゃ美味しそう……っ、やべえ、よだれ出るわ」
俊哉がゴクリと唾を呑んで続ける。
「ほら見ろよ。あの辺の子どもら、茶碗蒸しねだってる。今日はスーパーから茶碗蒸しが消えるな」
「そんなわけあるか……」
否定してはいるが、先程の優希の茶碗蒸し宣言は、近隣住民にも聞こえたはず。かなりの確率で、今日か明日の夕飯に茶碗蒸しが出そうだ。
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「時島先生。同窓会しよ! 小学校の。でさ、担任って、俺らの学校、あんま変わらんかったじゃん。だから、他のクラスのやつらも合同になりそう。それも泊まり! 十一月の半ばくらい。週末の金、土、日!」
来れそうなのは、金の夜から入って、土曜日の昼から夜にかけて同窓会。日の昼には解散。その間、それぞれの友人達で交友を持つという計画らしい。
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「……あ……」
修学旅行。それに、高耶は参加していない。幼い頃から怨霊や妖を寄せてしまう体質だった高耶は、泊まりになる行事は全て不参加。いくらそれらを除けるお札を持っていたとしても、泊まりは危険と判断したのだ。
「なっ? 修学旅行しようぜ!」
「……」
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因みに、この後しばらくして先に帰る俊哉だが、この学校の側のスーパーには、既に茶碗蒸しが無くなっていたと、夜に笑いながら報告をしてくるのだった。
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※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。
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