秘伝賜ります

紫南

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第六章 秘伝と知己の集い

284 すごいお嬢さん達

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その家に行くと、ソラくんとその祖父が出迎えてくれた。

「タカヤ先生っ」

ソラくんは思わずというように、高耶を先生と呼んだ。これは、今までも口にはしなくてもそう思ってくれていたのだろう。

嬉しそうにするソラくんの後ろには、厳格そうな初老に差し掛かろうとする男性がいる。

最近の祖父母は若いようで、まだ年金生活にもなっていない、まだまだ働ける年齢の祖父母が多い。この男性も、まだ働いていそうだった。それもそれなりの役職を得ているだろう。

高耶は丁寧に挨拶をする。

「こんにちは。校長より依頼されて、学芸会のピアノ伴奏を指導しています秘伝高耶と申します」
「……ん?」

そこで、男性の表情が変わった。険しく眉間に眉を寄せ、目を細めて高耶を見る。

この時、高耶も気付いた。

「あ、フクハラ機器の……」

最近はあまり顔を出さなくなった重役の一人だったのだ。いつもはメガネをかけていたので、すぐには分からなかった。

「っ、やっぱり! 高耶くん!? エルタークの!?」
「はい。お久し振りです」
「おおっ。すまないっ。い、今メガネをっ。そうだっ。上がってくれっ。そっちのお嬢さん達も」
「ありがとうございます。お邪魔します」

優希達だけでなく、ソラくんまでもポカンと口を開けて、それらのやり取りを呆然と見ていた。

「優希。可奈ちゃん、美由ちゃん。上がるよ」
「っ、う、うんっ。お兄ちゃん、しりあいだったの?」
「ああ」

苦笑しながら、家に上がる。

「おじゃまします」
「「おじゃまします」」

優希達は、きちんと靴を揃えて上がり、振り返って膝をつき、靴を端に寄せて立ち上がった。

その流れるような所作に、メガネをして戻って来た男性が目を丸くする。

「これは……礼儀正しいお嬢さん達だ……」
「ありがとうございます。マナーや作法などを教えてくれる方がおりまして。楽しみながら学んでくれています」
「それはそれは。素晴らしいね。ああ、こちらに。今、お茶を淹れるよ。そら、座敷の方に」
「うんっ。こっちっ」

案内された座敷には、立派な神棚があった。それを確認しながら待っていれば、お茶の用意の一式を持って男性がやって来た。

「いやあ。すまないね。いつもは家内が用意するもので、不味いお茶を出すことになるかもしれん」
「お構いなく。奥様はお出かけですか?」
「いや、少し寝込んでいてね」
「そうでしたか……」

神棚との繋がりを感じ取ると、男性とはあまり繋がっていない。ということは、彼の妻が巫女なのだろう。

少し考えていると、慣れない様子でお茶を淹れようとする男性が気になったのだろう。優希が申し出た。

「あの……わたしがいれてもいいですか?」
「ん? お茶をかい?」
「はい。ダメですか?」
「いや……それは……」

どうしようかと、高耶へ目を向ける男性。それに頷いて見せる。

「お茶の淹れ方も勉強しているんです。よろしければやらせてもらえませんか?」
「あ、ああ。では、お願いしよう。熱いから気を付けて」
「はいっ」

覚えた成果を見せられると喜ぶ優希。可奈と美由も一緒に動く。

「てつだうね」
「おゆ、ふっとうしたばっかり?」
「うん。おゆがはねるかもそれないからきをつけて」
「「わかった」」

三人は、協力してお茶を淹れだした。

「そろそろカップからうつそうか」
「このちゃば……すこしながめにむらす?」
「そうだね」
「う~ん。そろそろよくない?」
「いいね。じゃあすこしずつ」

三人で考えながら挿れていく様を、男性は目を丸くしながら、そらくんは不思議そうに見つめる。

「はいりました。どうぞ」

一人ずつ配られた緑茶は、とても綺麗な色だった。

思わず男性も一口飲んで感心する。

「これはすごい……美味しいお茶だ」
「「「ありがとうございます」」」

声を抑えてお礼を言うのも慣れたものだ。

「ふふっ。とても上手に淹れられたな。ほら、三人とも一緒に飲もうか」
「「「はいっ」」」

嬉しそうに自分達のお茶を一口飲み、子どもらしく笑った。

「すごい子達だ」
「ありがとうございます。ああ、こちらをよろしければどうぞ。子ども達と作ったマドレーヌです」

一つずつラップで包んであるので食べやすいだろう。

「これは、美味しそうだ。いただくよ。だが……」

男性が気にして見るのは昊くんだ。その理由は優希達が知っていた。

「ソラくんもたべてっ。あのねっ。コレ、『小麦粉』とか『牛乳』つかってないの。カボチャパウダーと『米粉』とか『豆乳』でつくったんだよっ」
「ソラくん、ぎゅうにゅうダメだってきいたから」
「とうにゅうはだいじょうぶだったよね?」
「っ、うんっ」

嬉しそうに昊くんはマドレーヌを一つ手に取った。アレルギー持ちの子はこういったものも、食べたいと思っても食べられない。

それを気にしたのは、優希達だった。学校でクラスが違うとは言っても、こういったことは耳に入るのだろう。

特に子どもならば、悪気なく話してしまう者も多いはずだ。

「っ、おいしい!」
「えへへ。よかった~」
「やったねっ」
「さくせんせいこう!」

何やら作戦だったようだ。

「本当に美味しい。お茶も上手に淹れられて、お菓子まで作れるとは……」
「なんでも面白がってやってくれるので、頼もしいです」
「本当に大したもんだ」

こうして、和やかに一息ついた。

そろそろ本題に入ろう。

**********
読んでくださりありがとうございます◎
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