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第六章 秘伝と知己の集い
287 それはきっと必然で
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昼食が終わると、提案していた通り、珀豪とエリーゼは春奈を買い物に連れ出した。
それに優希達や昊もついていく。
「お兄ちゃんは、ユウキたちがかえってくるまでに、ピアノなおしておいてねっ」
「分かったよ」
高耶は買い物について行かなくていいらしい。
「「「いってきまーす」」」
「ああ。気を付けて。春奈さんも無理しないように」
「ええ。行ってきます」
春奈も昊と手を繋いで笑顔で出かけて行った。
留守番になったのは、高耶と克樹だ。さすがに、高耶一人を家に残すというのはおかしいだろう。
「留守番になってしまってすみません」
克樹に申し訳ないと頭を下げながらも、作業にはいる。それを見ながら、克樹は近場の物の整理を始めた。
「いやいや。どのみち、ついて行かなかったよ。買い物はその……苦手でね……ほら、時間がかかるじゃないか……」
本当に苦手らしい。嫌そうな、恥ずかしそうな顔をしていた。高耶も分からなくはない。
「あ~……あれですよね。こっちが安いとか、こっちの方が量が多いとか、どこの国から来たやつかとか……女性は気にしますもんね。それで、通り過ぎた売り場に戻ったり」
「っ、そうなんだよっ。私は、決まった物を決めた分だけパパッとカゴに入れて終わるんだけど……」
「定番の物しか買わないとか?」
「いつものってやつをそれしか買わないから」
料理をあまりしない男性と主婦では、同じものを作るための買い物でも、店内を回るスピードも違ってくる。
「そうですね。欲しいものしか買わないですから、その売り場目掛けて、他に目もくれないで」
「そうそう。その売り場を探すのに必死で、周りなんて見ないから。それで事足りるし」
「余計な出費はしないからいい事だと思いますけどね」
「だよね」
女性の買い物には無駄があると言いたいわけではない。彼女たちは今後必要になるだろう物を買っているのだ。悪いことではないが、とにかくとても時間がかかる。
本人たちは、色々と考え続けている状態。ある意味ゾーンに入っている者もいるだろう。だから、時間の経過を感じていない。
しかし、それに付き合うだけの、カートを引いてついて行くだけの人は、とにかく暇だ。それが苦痛に感じる者もいるだろう。
克樹や高耶はそれだ。
手を動かしながらも、お互い話を止めない。
「あと、知り合いとばったり出会うと、そこで止まりますしね」
「それね。近所の人なのは分かるんだが、私とは接点がないし、目が合わないようによそ見して過ごすっていうのがね……また長いし……」
「気まずいんですよね……」
「巻き込まれるのも嫌だしね……」
しみじみと語り合う。
「高耶くんは、親御さんと買い物に?」
「いえ。珀豪です。あれで、かなりスーパーでの知り合いがいて……売り場の人たちともいつの間にか親しくなっていますし、この前は、店長さんと売り場のことについて話してましたよ……」
「……すごいんだね……」
店長から中々売れないんだという相談をされた商品を使って作るおすすめ料理を考えたり、今日の夕飯は何が良いかと悩む主婦の方々とメニューを決めたりと、高耶の家の近くのスーパーでは、珀豪は出会えたら幸運だと思われるヒーローらしい。
ファンクラブ的な、珀豪が来ないかとスーパーを張り込みする者も居るほどだと聞いている。
「式神って、もっと命令したことしかやらないお人形みたいなイメージだったんだけど」
「術者によっては、そういうのもなくはないんですけどね。俺はその……半分くらい珀豪達が育ててくれた感じなんで」
「親代わりとか?」
「それもなくはないですけど、術者としての心得みたいな……もっとこういう時は命令しろとか、主としての色々をです」
「なるほど……苦労してきたんだね……」
そうして、話している内に、ピアノの状態も整った。
「よし。じゃあ、調律に入りますね。あ、将棋の相手を喚びましょうか」
「他にも、珀豪くんみたいなのが?」
「ええ。あ、でも……そうですね……その、もし良ければ、将棋を教えてやってくれませんか?」
「いいよ。楽しそうだ」
「なら【果泉】、【瑪瑙】、【清晶】」
《はーい。あるじ様っ》
《あるじさまっ》
《あれ、珀豪とエリーゼは?》
出てきたお子様組は、喜びながら高耶へ突進してくる。その頭を撫でながら苦笑する。
最初は果泉と瑪瑙だけにしようと思ったが、この二人だけにすると、何をするか分からない。そこで清晶を喚んだのだ。
清晶達式神は、今誰が高耶に喚ばれて顕現しているのか分かる。だから、喚ばれているはずの珀豪とエリーゼが居ないことを不思議に思ったらしい。
「珀豪とエリーゼは、優希達と買い物だ。克樹さん、この子達は、果泉と瑪瑙です。将棋を教えてやってください。清晶は二人の保護者役な」
《わーいっ。果泉、ショウギやりたい! おねがいします!》
《おねがいします!》
「ああ……ならやろうっ」
果泉と瑪瑙の可愛さに、克樹も余計な事を考える余裕は無くしたらしい。
《まったく……》
仕方ないなと、面倒見の良い清晶も、将棋盤のある部屋へと向かって行った。
「さてと……調律しながら、場も整えるか」
神の力が通りやすいよう、巫女の気鬱が晴れるよう、場の浄化も同時に行う。
子ども達を買い物に連れ出したのは、高耶にとっても都合が良かった。
珀豪ならば、先ず春奈を神社に連れて行ったはずだ。そして、買い物で外に出たことで、近所の知り合いにも出会える確率が高い。そうなれば、巫女としての力で、神との縁も渡せる。
そうすることで、この場所を中心として神の力が通りやすくなる。
放っておけば、完全に途切れてしまったかもしれないその細い縁は、この一日で一気に本来のあるべきものに戻るだろうと、高耶は確信していた。
「ピアノがあって良かった」
これが一番の幸運だった。昊がやりたいと思うことこそが、必然であり、何よりもこの場に必要なことだったようだ。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
それに優希達や昊もついていく。
「お兄ちゃんは、ユウキたちがかえってくるまでに、ピアノなおしておいてねっ」
「分かったよ」
高耶は買い物について行かなくていいらしい。
「「「いってきまーす」」」
「ああ。気を付けて。春奈さんも無理しないように」
「ええ。行ってきます」
春奈も昊と手を繋いで笑顔で出かけて行った。
留守番になったのは、高耶と克樹だ。さすがに、高耶一人を家に残すというのはおかしいだろう。
「留守番になってしまってすみません」
克樹に申し訳ないと頭を下げながらも、作業にはいる。それを見ながら、克樹は近場の物の整理を始めた。
「いやいや。どのみち、ついて行かなかったよ。買い物はその……苦手でね……ほら、時間がかかるじゃないか……」
本当に苦手らしい。嫌そうな、恥ずかしそうな顔をしていた。高耶も分からなくはない。
「あ~……あれですよね。こっちが安いとか、こっちの方が量が多いとか、どこの国から来たやつかとか……女性は気にしますもんね。それで、通り過ぎた売り場に戻ったり」
「っ、そうなんだよっ。私は、決まった物を決めた分だけパパッとカゴに入れて終わるんだけど……」
「定番の物しか買わないとか?」
「いつものってやつをそれしか買わないから」
料理をあまりしない男性と主婦では、同じものを作るための買い物でも、店内を回るスピードも違ってくる。
「そうですね。欲しいものしか買わないですから、その売り場目掛けて、他に目もくれないで」
「そうそう。その売り場を探すのに必死で、周りなんて見ないから。それで事足りるし」
「余計な出費はしないからいい事だと思いますけどね」
「だよね」
女性の買い物には無駄があると言いたいわけではない。彼女たちは今後必要になるだろう物を買っているのだ。悪いことではないが、とにかくとても時間がかかる。
本人たちは、色々と考え続けている状態。ある意味ゾーンに入っている者もいるだろう。だから、時間の経過を感じていない。
しかし、それに付き合うだけの、カートを引いてついて行くだけの人は、とにかく暇だ。それが苦痛に感じる者もいるだろう。
克樹や高耶はそれだ。
手を動かしながらも、お互い話を止めない。
「あと、知り合いとばったり出会うと、そこで止まりますしね」
「それね。近所の人なのは分かるんだが、私とは接点がないし、目が合わないようによそ見して過ごすっていうのがね……また長いし……」
「気まずいんですよね……」
「巻き込まれるのも嫌だしね……」
しみじみと語り合う。
「高耶くんは、親御さんと買い物に?」
「いえ。珀豪です。あれで、かなりスーパーでの知り合いがいて……売り場の人たちともいつの間にか親しくなっていますし、この前は、店長さんと売り場のことについて話してましたよ……」
「……すごいんだね……」
店長から中々売れないんだという相談をされた商品を使って作るおすすめ料理を考えたり、今日の夕飯は何が良いかと悩む主婦の方々とメニューを決めたりと、高耶の家の近くのスーパーでは、珀豪は出会えたら幸運だと思われるヒーローらしい。
ファンクラブ的な、珀豪が来ないかとスーパーを張り込みする者も居るほどだと聞いている。
「式神って、もっと命令したことしかやらないお人形みたいなイメージだったんだけど」
「術者によっては、そういうのもなくはないんですけどね。俺はその……半分くらい珀豪達が育ててくれた感じなんで」
「親代わりとか?」
「それもなくはないですけど、術者としての心得みたいな……もっとこういう時は命令しろとか、主としての色々をです」
「なるほど……苦労してきたんだね……」
そうして、話している内に、ピアノの状態も整った。
「よし。じゃあ、調律に入りますね。あ、将棋の相手を喚びましょうか」
「他にも、珀豪くんみたいなのが?」
「ええ。あ、でも……そうですね……その、もし良ければ、将棋を教えてやってくれませんか?」
「いいよ。楽しそうだ」
「なら【果泉】、【瑪瑙】、【清晶】」
《はーい。あるじ様っ》
《あるじさまっ》
《あれ、珀豪とエリーゼは?》
出てきたお子様組は、喜びながら高耶へ突進してくる。その頭を撫でながら苦笑する。
最初は果泉と瑪瑙だけにしようと思ったが、この二人だけにすると、何をするか分からない。そこで清晶を喚んだのだ。
清晶達式神は、今誰が高耶に喚ばれて顕現しているのか分かる。だから、喚ばれているはずの珀豪とエリーゼが居ないことを不思議に思ったらしい。
「珀豪とエリーゼは、優希達と買い物だ。克樹さん、この子達は、果泉と瑪瑙です。将棋を教えてやってください。清晶は二人の保護者役な」
《わーいっ。果泉、ショウギやりたい! おねがいします!》
《おねがいします!》
「ああ……ならやろうっ」
果泉と瑪瑙の可愛さに、克樹も余計な事を考える余裕は無くしたらしい。
《まったく……》
仕方ないなと、面倒見の良い清晶も、将棋盤のある部屋へと向かって行った。
「さてと……調律しながら、場も整えるか」
神の力が通りやすいよう、巫女の気鬱が晴れるよう、場の浄化も同時に行う。
子ども達を買い物に連れ出したのは、高耶にとっても都合が良かった。
珀豪ならば、先ず春奈を神社に連れて行ったはずだ。そして、買い物で外に出たことで、近所の知り合いにも出会える確率が高い。そうなれば、巫女としての力で、神との縁も渡せる。
そうすることで、この場所を中心として神の力が通りやすくなる。
放っておけば、完全に途切れてしまったかもしれないその細い縁は、この一日で一気に本来のあるべきものに戻るだろうと、高耶は確信していた。
「ピアノがあって良かった」
これが一番の幸運だった。昊がやりたいと思うことこそが、必然であり、何よりもこの場に必要なことだったようだ。
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